海洋立国論

勉強のつもりで書いています。

NATOは変わるだろう。日本も共に。

ロシアによるウクライナへの侵略でNATOが注目されています。

 

NATO北大西洋条約機構)は向こう10年間の同盟のあり方を纏めた「NATO2030」を専門家会合が作成し2020年11月に事務総長に提出しています。

ここではNATOの機能強化や対ロシアは勿論のこと、注目しているのは地理的に遠く直接の脅威では無いはずの対中国の言及もされており、「体制上のライバル」としている点です。

 

この時点で2000年代とは認識が大きく変わったと考えていいでしょう。

 

NATOは拡大を続けた結果、政治的軍事的に各国の脅威利益が一致している訳では無いため決して一枚岩ではありません。しかし2014年のロシアのクリミア侵攻、中国の台頭などで大きな変化に対応する必要がありました。

 

しかし対ロシアでは地政学的に近いポーランドバルト三国エストニアラトビアリトアニア が直接的な脅威を感じているのに対し、ルーマニアハンガリーブルガリアは若干脅威度は低く、ましてやスペイン・ポルトガルではほとんど脅威を感じていませんでした。それらは各国の国防白書や国防費の対GDP比に現れています。

 

2000年代はNATOよりEUを重視し安全保障より経済の拡大に注力した結果でもあり、移民問題やトランプ政権によるNATO軽視などもその要因であったように思います。

 

今回のロシアの侵略によって、この脅威認識はさらに大きく変わってきました。今回のプーチン大統領の判断はNATOを再結束させる契機となりましたし、2022年2月4日のプーチン・習金平会談の共同声明でロシアは「台湾における中国の主権」を、中国は「NATO拡大反対」と、互いに対米・対NATO姿勢を明確にし、ロシアのバックアップになっている中国にとっても好ましい状態ではありません。

 

さてNATO2030のアジェンダ(2021年NATOサミットで合意)では「テロ、サイバー攻撃、破壊的技術、気候変動、ロシアと中国の脅威など、予測不可能な脅威があります。ルールに基づく国際秩序への挑戦 より予測不可能で競争の激しい世界に立ち向かうために、共に強く立ち向かいましょう。」と宣言し2024年までに国防費をGDP比2%に、年間防衛費の20%を新装備に充当することを確認しています。

 

さらにこうもあります。「同盟国の安全、自由、繁栄を支えるルールに基づく国際秩序は、ロシアや中国など私たちと価値観を共有しない権威主義的な国々から圧力にさらされている。このことは、私たちの安全保障、価値観、そして民主的な生活様式に影響を与えるものである」 「中国の台頭がパワーバランスを根本的に変える」 と。

 

今回の侵略で危機感を高めたドイツは一気に国防費を増大させることを宣言しましたし、他国も追随するでしょう。北欧のフィンランドはロシアと1300キロもの国境を接しながら、NATOにもワルシャワ条約機構にも属せず独自の路線を歩んでたのですが、NATO加盟論が強まっています。フィンランド加盟が進むならスウェーデンも同様に加盟論が強くなるでしょう。

 

NATO加盟を目指したウクライナは中国の「一帯一路」に参画していますが、中国がこのままロシアに対して融和的な政策をとるのなら、西側各国はウクライナを中国から引き離す契機になるかもしれません。

 

日本は防衛装備品などの物品データ管理をアメリカ発NATO基準のものに(いわばISOのようなもの)2020年に加入(Tier2)できたこともあり、相互運用性を今後さらに高める事ができるようにもなり、アメリカ以外にNATO諸国との軍事的親和性も高くなりました。

 

先の報告書ではNATOとパートナー国である日本・韓国・オーストラリア・ニュージーランドとの協議を通じての新たな枠組みを作ることなどにも触れています。

 

ロシアと中国の最前線にあり、韓国を挟んで北朝鮮と核保有国と対峙しなければならない日本は今回の事態を対岸の火事と傍観はできず、中距離核戦力全廃条約(INF条約) を脱退したアメリカと歩調をあわせて、攻撃力(中距離)の保有、基地の抗堪性向上、情報ネットワーク共有をさらにすすめ、有事の際の国内法整備も進めなくてはなりません。またそのような世論も高まるでしょうし、防衛費の増額もしやすくなります。

そうしないと日本の有事には誰も助けてくれないでしょう。ウクライナに世界の多くの国が力を合わせているのは、まずは自国の必死の戦いがあってこそでしょう。ありもしない「ロシアとの平和条約」を気にしつつロシアに付き合う必要は無くなりました。

 

ウクライナは2014年のクリミア危機前に徴兵制を廃止しましたが、クリミア併合を受け2015年に徴兵制を復活させ、多くの国民に基礎的軍事訓練をおこなってきましたが、これが奏功し今回の戦いでは抵抗ができています。

 

本日のゼレンスキー演説でも触れられていましたが、機能不全に陥ってる国連の大改革が中露の拒否権でできないなら、G7主導で(NATO+QAUD+AUKUS)新しい安全保障枠組みを作れればいいですし、日本は先導してアジア(ASEAN)各国のリーダーとして共通の価値観、法による秩序と平和、自由と民主主義を広げるよう主導し、平和国家としての信頼を勝ち得ていくべき努力をしていきたいですね。

 

その為の増税なら私は理解しますけどね。

 

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