海洋立国論

勉強のつもりで書いています。

第四次台湾海峡危機がくるのか

《できごと》

ペロシ下院議長の台湾訪問によって態度を硬化させた中国は、台湾周辺で最大規模の軍事演習を実施(マスの中が演習海域)しました。ニュースでも取り上げられていますが、弾道ミサイル等を発射して一部(12発?)を台湾上空を通過させたうえ、その一部を日本の排他的経済水域EEZ)に着弾させました。

これによって中国海軍は台湾を海上から封鎖できることを示唆し、また日本に対しても威嚇を強めました。中国に近い台湾の離島(金門島など)では、昨今、無人機が頻繁に飛来し台湾側の軍事施設を撮影するなどをおこなっており、台湾側はその都度警告射撃をおこなうなど対応していますが、信号弾から実弾による警告へレベルを上げました。

そもそも台湾を共産党が支配した歴史的事実は存在しません。台湾はれっきとした独立国です。

 

《米の対応》

さて米議員団が次々と訪問し台湾への関与をアメリカが示していますが、それだけではなく対中牽制の為にアメリ第7艦隊所属イージス艦2艦が台湾海峡を通過し艦載ヘリを飛ばす「航行の自由作戦(FOIP)」や、周辺で日米共同訓練なども実施しており、「台湾海峡は公海である」「米は座視しない」「日米連携は完璧である」ことを示しています。

 

自衛隊は》

一方、自衛隊は防衛費増をテコに、12式地対艦ミサイル能力向上型(射程1,000km超・ステルス化)の開発を前倒しし量産に入ること、極超音速ミサイルと新型対艦ミサイルの研究、F-15F-35戦闘機に搭載する長射程ミサイルの導入、FFMよりもさらにコンパクトな「哨戒艦」(4隻)の建造、基地の強靭化や弾薬類の備蓄及び製造ラインの確保、 イージスアショアに変わるイージスシステム搭載艦(2隻)の検討、F-2に変わる次期戦闘機(第6世代)の開発(英と共同開発の計画)などここにきて一気に有事に備えようとしています。

防衛費は5年間をめどに従来の対GDP1%から2%へ増額する予定ですが、これはおよそ毎年1兆円増額する事になります。このことは弱体化していた防衛基盤の維持に大いに役立つことにまります。

 

半導体と遅れる武器売却》

現代生活は半導体が必須ですが、半導体は台湾が多く生産(1位韓国232位台湾213位中国164位日本155位米国11%・2021年末時点) していますので、これを支えなくてはなりません。中国にコントロールさせる訳にはいかないのです。

半導体の行方は台湾が自主防衛するにも、日本が防衛力を強化するにも大きく影響するうえ、アメリカの対欧州向けの武器輸出が多くなると当然ながらアジア方面への武器輸出は遅延することになります。

ここで国産であることが効いてくるのです。半導体に限らず平時は輸入できても有事にはどうなるか判りません。サプライチェーンは民生以上に軍事では重要です。代替が効かない製品が多いためです。

 

また、アメリカが武器輸出する際には議会の審査や事務的な手続きが必要ですが、この手続きが長期化しています。台湾へは2019年のF-16V戦闘機売却決定(未納)に続き、2021年の自走りゅう弾砲売却決定、高機動ロケット砲システムや携帯型対空ミサイル「スティンガー」、空対地ミサイルSLAM/ER(射程280km)売却決定、2022年8月には空対空ミサイル「サイドワインダー」、対艦ミサイル「ハープーン」などの売却を検討していますが、契約済みで未処理分が140億ドル以上に及んでいます。

実際に台湾はようやくF-16Vを受領開始し、昨年ようやく運用し始めたところです。

 

《中露連携のリスク》

ロシアのウクライナ侵略は「防衛白書令和4年版」でも多くのページを割いて記載していますが、国連常任理事国でもある大国が、現代においても力による現状変更を行う事が証明されました。

経済制裁にも耐えているロシアですが、どのような形にしろ戦後は弱体化が進むのは間違いありません。対米協調で中露は連携していますが、本来中露は互いを信用していません。ロシアが弱体化することで背後の脅威が薄れた中国はさらに威圧的な行動を強める事は間違いありません。(当面は抑制的でしょうが)

第三次台湾海峡危機までと異なり米中の戦力差は大幅に縮まっており、また欧州に米軍戦力が大きく割かれている現状は長期化します。

横須賀を母港とする米第7艦隊は海軍戦闘艦艇のおよそ半数を保有する最大の艦隊ですが、それは広大なエリアを防衛する為に必要で、全てを一地域(台湾近海)に投入する訳にはいきません。

 

陸軍と違い未だ戦力を残しているロシア太平洋艦隊と中国軍が協調して活動した場合、台湾有事の際には米軍は台湾防衛に多くの戦力を割かれるため、日本の自主防衛力が問われる事態となります。端的に言えば米軍の全面的な支援は望めません。

ウクライナの例を見るまでも無く、国民の高い国防意思がなくては国は維持できないことは明白ですが、自主防衛努力のみならず、G7各国、NATO、とりわけ米・英・豪などとの連携がさらに重要になってきます。

 

《学術会議の傲慢さ》

また装備品の開発には研究機関との連携が必須ですが、日本学術会議は「軍事研究をしない」方針を変えていません。これは防衛の為の研究もしないため「座して死を待て」とも言えます。そもそも軍事研究も民生技術も区分が定かではない「デュアルユース」技術であるため、あまりにも勝手な言い分としか思えません。実際にウクライナでは民生技術の多くが戦闘に利用されています。

日本は憲法の制限上「攻撃型空母」「爆撃機」「中距離以上のミサイル」「核」は保有できず、「国家総動員」もできません。「軍事法廷」もありません。その状況で複雑な有事に対峙しなければならないのです。「技術の優位性」を捨てる事は、国を亡きものとしても構わないとも言えると考えます。

技術以外にも防衛力を強化するには、サプライチェーン・生産基盤の問題も解決しなければなりません。

国葬儀や統一教会などの些末なことに時間を割いている余裕はないのです。

自衛隊は「防衛」だけに特化しフルスペックの軍隊ではありませんが、「防衛」のあり方も状況に応じて変えなければ対処できません。

 

防衛費増を契機に多くの人が国防について考えて貰えればと思います。