海洋立国論

勉強のつもりで書いています。

NATOは変わるだろう。日本も共に。

ロシアによるウクライナへの侵略でNATOが注目されています。

 

NATO北大西洋条約機構)は向こう10年間の同盟のあり方を纏めた「NATO2030」を専門家会合が作成し2020年11月に事務総長に提出しています。

ここではNATOの機能強化や対ロシアは勿論のこと、注目しているのは地理的に遠く直接の脅威では無いはずの対中国の言及もされており、「体制上のライバル」としている点です。

 

この時点で2000年代とは認識が大きく変わったと考えていいでしょう。

 

NATOは拡大を続けた結果、政治的軍事的に各国の脅威利益が一致している訳では無いため決して一枚岩ではありません。しかし2014年のロシアのクリミア侵攻、中国の台頭などで大きな変化に対応する必要がありました。

 

しかし対ロシアでは地政学的に近いポーランドバルト三国エストニアラトビアリトアニア が直接的な脅威を感じているのに対し、ルーマニアハンガリーブルガリアは若干脅威度は低く、ましてやスペイン・ポルトガルではほとんど脅威を感じていませんでした。それらは各国の国防白書や国防費の対GDP比に現れています。

 

2000年代はNATOよりEUを重視し安全保障より経済の拡大に注力した結果でもあり、移民問題やトランプ政権によるNATO軽視などもその要因であったように思います。

 

今回のロシアの侵略によって、この脅威認識はさらに大きく変わってきました。今回のプーチン大統領の判断はNATOを再結束させる契機となりましたし、2022年2月4日のプーチン・習金平会談の共同声明でロシアは「台湾における中国の主権」を、中国は「NATO拡大反対」と、互いに対米・対NATO姿勢を明確にし、ロシアのバックアップになっている中国にとっても好ましい状態ではありません。

 

さてNATO2030のアジェンダ(2021年NATOサミットで合意)では「テロ、サイバー攻撃、破壊的技術、気候変動、ロシアと中国の脅威など、予測不可能な脅威があります。ルールに基づく国際秩序への挑戦 より予測不可能で競争の激しい世界に立ち向かうために、共に強く立ち向かいましょう。」と宣言し2024年までに国防費をGDP比2%に、年間防衛費の20%を新装備に充当することを確認しています。

 

さらにこうもあります。「同盟国の安全、自由、繁栄を支えるルールに基づく国際秩序は、ロシアや中国など私たちと価値観を共有しない権威主義的な国々から圧力にさらされている。このことは、私たちの安全保障、価値観、そして民主的な生活様式に影響を与えるものである」 「中国の台頭がパワーバランスを根本的に変える」 と。

 

今回の侵略で危機感を高めたドイツは一気に国防費を増大させることを宣言しましたし、他国も追随するでしょう。北欧のフィンランドはロシアと1300キロもの国境を接しながら、NATOにもワルシャワ条約機構にも属せず独自の路線を歩んでたのですが、NATO加盟論が強まっています。フィンランド加盟が進むならスウェーデンも同様に加盟論が強くなるでしょう。

 

NATO加盟を目指したウクライナは中国の「一帯一路」に参画していますが、中国がこのままロシアに対して融和的な政策をとるのなら、西側各国はウクライナを中国から引き離す契機になるかもしれません。

 

日本は防衛装備品などの物品データ管理をアメリカ発NATO基準のものに(いわばISOのようなもの)2020年に加入(Tier2)できたこともあり、相互運用性を今後さらに高める事ができるようにもなり、アメリカ以外にNATO諸国との軍事的親和性も高くなりました。

 

先の報告書ではNATOとパートナー国である日本・韓国・オーストラリア・ニュージーランドとの協議を通じての新たな枠組みを作ることなどにも触れています。

 

ロシアと中国の最前線にあり、韓国を挟んで北朝鮮と核保有国と対峙しなければならない日本は今回の事態を対岸の火事と傍観はできず、中距離核戦力全廃条約(INF条約) を脱退したアメリカと歩調をあわせて、攻撃力(中距離)の保有、基地の抗堪性向上、情報ネットワーク共有をさらにすすめ、有事の際の国内法整備も進めなくてはなりません。またそのような世論も高まるでしょうし、防衛費の増額もしやすくなります。

そうしないと日本の有事には誰も助けてくれないでしょう。ウクライナに世界の多くの国が力を合わせているのは、まずは自国の必死の戦いがあってこそでしょう。ありもしない「ロシアとの平和条約」を気にしつつロシアに付き合う必要は無くなりました。

 

ウクライナは2014年のクリミア危機前に徴兵制を廃止しましたが、クリミア併合を受け2015年に徴兵制を復活させ、多くの国民に基礎的軍事訓練をおこなってきましたが、これが奏功し今回の戦いでは抵抗ができています。

 

本日のゼレンスキー演説でも触れられていましたが、機能不全に陥ってる国連の大改革が中露の拒否権でできないなら、G7主導で(NATO+QAUD+AUKUS)新しい安全保障枠組みを作れればいいですし、日本は先導してアジア(ASEAN)各国のリーダーとして共通の価値観、法による秩序と平和、自由と民主主義を広げるよう主導し、平和国家としての信頼を勝ち得ていくべき努力をしていきたいですね。

 

その為の増税なら私は理解しますけどね。

 

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ロシアは止まらない

ロシアはウクライナに武力(威嚇も含む)による現状変更・国境線の変更を行う。
 
冬季の地域紛争は数万の死者では済まないかもしれない。弾を食らうだけが死者になるとは限らないからだ。コロナどころの話ではない
 
クリミア半島の時のようなグレーゾーンを演出しハイブリッド戦を仕掛け、物流やインフラ破壊、ハッキングによるネットワーク破壊、情報操作、もちろん民間軍事会社などを使っての武力もある。
 
国境付近にはイスカンデル中距離ミサイルを30発以上配備しており、首都キエフをいつでも攻撃できる体制にある。
 
ロシアは戦術核使用を公式には否定してはおらず、場合によっては威嚇の為に無人地帯に戦術核を撃ちこみデモンストレーションをする事だってありうる。
戦術核使用が考慮されるのなら、軍事力の行使は対抗勢力の介入の閾値をあげてしまい、西側は大規模介入を躊躇することになる。そのうちに暫定政権を立ち上げるなどして実効支配するだろう。冬季作戦はロシアのお家芸。雪解けになると重車両の移動が困難になる。その前にやるのだ。
ロシアは既に長年の経済制裁に耐えてきており、今更経済制裁など怖くない。
 
ロシアの圧力に対抗するのはNATOだが、その足並みはエネルギーをロシアに依存するドイツが乱しており、また今ならコロナ対策、対中国で軍事リソース、財政的にも厳しいこの隙を突く事ができる。
また、ウクライナNATO加盟国では無いため、NATO軍が血を流す事に国民は納得ができるのか、血を流してまでウクライナNATOに引きこむメリットがあるのか、この点からもロシアは楽観視している。民主国家の弱点である。
バルト三国NATO加盟国として、アメリカ製兵器をウクライナに供与しているが、地理的距離の近いスカンジナビア三国はヒヤヒヤしているだろう。
 
 
若かりし頃のKGB時代のプーチンソ連が西側から崩壊していくのを目の当たりにしており、相当悔しい思いをしているはずで、いつかは大ロシアの復活を目指している。
 
米露外相会談も型通り済ませて、大義名分「NATO東方不拡大を確約させることができない」を得られたので、プーチンの夢「ロシア帝国復活」の機会を逃せないうえ、またここまでの部隊展開にかけたコストも無駄になり、軍部の支持を失いかねない。つまりここで折れると強い大統領では無くなってしまう。
そのうえ、西欧諸国に利益をもたらす国がロシアの近傍に生まれ、その影響で政権の安定性を失うことになっては取り返しがつかない。それにはソ連時代に西側のバッファとして存在していた東欧諸国がNATO側に与するのは絶対に阻止しなければならない。
 
そもそもウクライナ東部はロシア系民族が多数を占めている。ロシア部隊は既に三方向に展開し、渡河作戦用の機材も展開済み、両国の戦力差は歴然。
英米の武器供与はかえってロシアに口実を与えることになろう。ロシアとしてはウクライナは西側諸国の利益の為に動いており、ロシアの安全保障を脅かす存在として認識している。
 
ただ心配なのはNATOが本気で介入した時、ロシアはエスカレーションをどのようにコントロールするのか。中国は漁夫の利を得ようとするのか。そのレベルはどの程度か。
 
一方、中国にとりウクライナは軍事技術の出どころでもある。中露は基本的には互いを信用しておらず、安保理でも全てにおいて一致している訳では無いし、ロシアの軍事技術が現在の中国の軍事技術の基礎なのだが、それの多くはパクリでもある。空母遼寧しかりJ15戦闘機しかり。そこをロシアが抑えるのだ。
 
日本は対中圧力協調を求めてきた関わりもあり、対ロシアでも共同歩調を米英などから求められるが、プーチンが返すとは一言を言っていない北方領土が、ますます帰らなくなると勘違いして、おっかなびっくりな中途半端な態度をとって、西側諸国の信用を無くすのかもしれない。
ロシアは北方領土への免税特区開発を中韓と共同で進めるとして法整備を進めているほどなのに。ロシアの論理で言えば戦争で分捕った領土は戦争で取り返せとしている。話し合いなどは論外なのだ。中韓を巻き込み実効支配を進めている。
 
それなのに、日本に至っては岸田総理の施政方針演説でロシアとのエネルギー分野での協力推進を打ち出した。全くアホの所業である。
 
これらの結果、中国・韓国・北朝鮮につけ入れる隙を与える事になるだろう。対中圧力の穴は日本としてますます認識され、メディア工作などもさらに強力に展開するだろうし、北朝鮮は着実に抑止力の為の核開発を進めている。韓国もこの期に乗じて嫌がらせをおこなうだろう。
 
しかし日本がいつまでも曖昧な態度なら「自由で開かれたインド太平洋構想」は画餅に帰すのではないか。そのような国に力を貸すほど米英豪などは甘くない
 
こんな時に能天気なメディア報道、政治家の発言には呆れるばかりだ。
 
 
世界には武力を用いる事を厭わないどころか正しい事とする価値観はある。
 
言葉や話し合いなどは無力な場合もある。良い人ばかりで世の中は成り立っていない。
いい加減気づかないと国も文化も歴史も全部無くす事になる。

祝! NORAD Tracks Santa (サンタ追跡)は今年で50周年!

サンタさんの季節ですね。

 

サンタさんはいったいどこを通って世界中の子供たちにプレゼントをとどけているのでしょう。我が家の子供たちはすっかり大人になってしまいましたが、小さな子供たちにとっては大きな疑問のはずです。

 

それに大真面目に答えてくれているのが、北米航空宇宙防衛司令部(通称NORAD、ノーラッド)という米軍の組織。

NORADアメリカとカナダが共同で運用する国防組織で北米地域の警戒監視を行のが主な任務で、司令部はコロラド州コロラドスプリングスピーターソン空軍基地にあります。(写真はGoogleストリートビューで見られます)

 

通常はレーダー網と衛星などで弾道ミサイルや不審機などの監視活動をおこなっていますが、その能力はサンタ追跡にも役立てられています。(建前だけど)

 

今年のサンタの追跡には以下の装備が活用されました。

 

航空機

E-3セントリー早期警戒管制機、通称AWACS)・ボーイング社製

旅客機を改造し機体上面にお皿のような巨大なレーダーを取りつけた飛行機です。レーダー波は電波ですから高い位置からのほうがより遠くを探知できます。

サンタが地平線の向こうでも追跡可能でレーダー情報は機内のコンピュータで処理され、監視任務に役立てたり、艦船や基地などへ送信されます。

 

F-15イーグル (戦闘機・制空)・ボーイング社製

航空自衛隊も使用している名機。

長い間最強戦闘機として君臨していました。大出力のエンジンと頑強な機体で、ほとんど撃墜されたことが無いのが自慢な戦闘機です。格闘戦(空中戦)では未だにトップクラスでしょうし、派生型も多く作られています。

 

F-16ファイティングファルコン(戦闘機・多用途)・ロッキードマーティン社製

F-15よりもずっと安価で運用もしやすく世界中でバカ売れした戦闘機。

航空自衛隊F-2戦闘機の原型機ですが、F-2は当時の最新技術で魔改造したため最早別物と言えるかも。しかし、それだけ基礎設計が優れていたということでしょう。

 

F-22ラプター (ステルス戦闘機・制空)・ボーイング社、ロッキードマーティン社共同開発

言わずと知れた世界最強と謳われたステルス戦闘機。

同じステルス機でも最新のF-35よりさらにレーダーに捉えられにくいほどの高ステルス性を誇りますが、あまりの機密事項の多さに米軍でのみ採用され輸出はされませんでした。

 

CF-18 (戦闘機・多用途)・F/A18ホーネットのカナダ仕様

原型のF/A-18は映画TOPGUN-マーベリックーでトムクルーズが操縦するシーンがCMででていましたが、米軍で重宝されている戦闘攻撃機

A型~F型など多くの型式がありますが、A~D型は「レガシーホーネット」E~F型は「スーパーホーネット」と区別されるほど大きく異なります。

 

衛星群

DSP衛星

静止軌道(高度約36,000km)上の、DSP衛星(Defense Support Program Satellite) も任務についています。主に赤外線センサーによる探知をおこないますが、通常任務は弾道ミサイルなどの発射時の熱を探知することですが、サンタの熱源はそれほど巨大なようですね。現在試験中だったかの低軌道で監視するSTSS衛星Space Tracking and Surveillance System)なら、飛行するミサイルの弾頭を追跡できるらしいので、サンタもトナカイも熱源だし、高速で大気圏内を飛行しているなら摩擦熱が発生するので追跡はさらに容易になりますね。

 

SBSS衛星

高度630Kmの低軌道を周回するSBSS衛星(Space Based Space Surveillance)は光学センサーによる監視をおこないます。24時間ずっと観測し(1日平均15,000回)で、1㎥のサイズまで捉えます。

 

その他

NORADのレーダ網による監視もおこなわれています。データはGoogleなどがサービスで提供したりしていますが、特設サイトも開設されます。クリスマス以外は休みなサンタさんですが、勤務中は高度なネットワークで勤務状態を監視されています。

 

最近、中国やロシアが衛星破壊実験を成功させたと発表していますが、サンタ追跡の衛星は破壊しないでね。

中露の狙いは「ネットワーク中心の現代戦ではアメリカに勝てないので、その土台となる衛星を破壊しネットワークを壊す」ことですが、

サンタ追跡を妨害すると世界中の子供たちが敵に回りますよ。

 

 

『追悼12月8日』

久しぶりに書いた気がします。
80年前の12月8日(昭和16年(1941年)12月8日月曜日)
午前7時にラジオ(当時の放送はNHKのみ)から「海ゆかば」が流され、続いて臨時ニュースが流れました。
 
大本営陸海軍部十二月八日午前六時発表。帝国陸海軍部隊は本八日未明、西太平洋においてアメリカ、イギリス軍と戦闘状態に入れり】
 
この時点では、ハワイ攻撃の詳細が伝わっていなかったため、戦域を「西太平洋」と発表されています。
一般的には大東亜戦争(太平洋戦争)は、ハワイ真珠湾攻撃によって始まったと認識されていますが、実際の時間軸では、のちに《マレーの虎》と呼ばれた山下奉文中将指揮の陸軍第二十五軍が少し早くマレー半島に上陸し攻撃を開始。
ハワイが目標である第一航空艦隊は約1時間ほど遅れて真珠湾(正しくはパールハーバー:真珠港)を攻撃しています。
日本軍は同日一斉に多方面に攻撃しており、当時日本だった台湾の基地からも航空機が飛び立ちフィリピン・シンガポールを空襲。空母『龍驤』も攻撃機を発進させてました。
台湾には台南海軍航空隊(通称:台南空)があり、熟練の搭乗員であった横山保大尉が所属していました。横山大尉は九〇艦戦、九五艦戦、九六艦戦を乗機として基地航空隊に所属し支那方面で実戦経験を積み、その後に新鋭空母「蒼龍」の戦闘機分隊長、横須賀航空隊所属時(昭和15年6月)に、十二試艦戦(後の零戦)に搭乗、実用試験に従事したのち重慶上空において零戦隊初の本格的な空戦をおこない、零戦隊は敵機のほぼ全てを撃墜するという戦果を挙げました。
12月8日午前10時55分、横山大尉は53機の零戦を率い高雄基地を飛び立ちフィリピンのクラーク基地を攻撃し戦果をあげています。
大戦初期には優秀な技量と零戦の性能とが相まって撃墜数合戦ともいえる状況となり、その後に撃墜王と呼ばれる戦闘機搭乗員も多く生まれています。
有名なのは
・坂井の上官だったラバウルの貴公子『笹井醇一』
零戦虎徹『岩本徹三』
紫電改に乗り最強剣部隊・新撰組を率いた『菅野直』
・その部下の『杉田庄一』
・横山の2番機も務めた空の宮本武蔵『武藤金義』
・坂井・岩井が最強と称する『赤松貞明』
・その分隊で活躍した『岩井勉』などがいます。
勿論、陸軍航空隊も撃墜王が多数誕生しています。主な乗機は一式戦「隼」で『加藤建夫』(加藤隼戦闘隊で有名になりました)『黒江保彦』(のちの航空自衛隊空将補)など。
 
海軍の「零戦」はあまりにも有名ですが、他にも「紫電改」や陸軍の「隼」「飛燕」「疾風」など名機が誕生しています。機体設計は先進諸国に充分追いついていましたが、エンジン開発、無線や機銃、防弾性能などにおいては遅れをとりました。
 
 
午前十一時半に「軍艦行進曲」に続いて
【帝国海軍はハワイ方面のアメリカ艦隊並びに航空兵力に対し決死の大空襲を敢行しシンガポールその他をも大爆撃しました】
とハワイ奇襲成功の報が流され、多くの国民が米英に対する帝国陸海軍の戦果を喜んだのです。
 
続く正午には「君が代」に続き『宣戦の詔書』が発せられたことを伝えています。
 
海軍は、「赤城」「加賀」「蒼龍」「飛龍」「翔鶴」「瑞鶴」などを擁する空母機動部隊と高い運用能力。
高性能な艦上戦闘機零戦」と練度が達人の域にまで達していた「母艦搭乗員」。
ロングランスと呼ばれた必殺「酸素魚雷」を搭載して高い攻撃能力を持つ「陽炎型駆逐艦」。
就役間近な世界最大46cm主砲9門を搭載した戦艦「大和」。
反面低い兵站・輸送・哨戒・諜報・土木・工業力などや、統制がとれない組織などの問題も徐々に露呈していきます。
 
 
長く続いた鎖国によって独特な文化を育んではいたものの、資源も技術も何もない日本が明治の開国後に、法や政治、軍、を急速に整備し西洋列強に追いつけ追い越せとまい進してきましたが、多くの国民は苦しい生活を強いられていたそのなかで初戦の勝利は「とうとう列強に追いついた」と国民が歓喜した、そんな瞬間だったように思います。
 
 
決して戦争を賛美する訳ではありませんが、国家的な目標をたててそれに向かい何十年も準備してきたからこその「開戦」であるのですが、今の我が国にはそのような長期視点にたった安全保障環境の整備ができているのでしょうか。
 
平和の維持には多くの時間と費用、人材と時間が必要で充分な準備ができていないと、相手につけ入る隙を与えることにならないかと心配になります。
 
 
戦争を忌み嫌うあまりに、不都合な状況に目を瞑り続けるのはあまりにも不誠実で、日本がチベットやクリミアのようにはならないとは誰も保証できないでしょう。
 
過去に日本が至った道のように、どの国であっても政治が世界を読み誤り、軍が能力を過信し、メディアが扇動し、国民がそれを支持すれば戦争はいつでも起こります。
 
歴史は流れの中で動くものですから一面的な見方は避けねばなりませんが、この日は昭和20年(1945)8月15日等とともに日本の転換点となったのは間違いがないと言え、しっかりと記憶し伝えていきたいと思います。
 
 
我が国では学生時代に学校教育であまりこのあたりを学ぶ事がないようですので、戦争を知らない人達にも色々と知っておいて欲しいと思います。
もう開戦から80年も経ったんですね。この戦争によって亡くなられた多くの方々のご冥福を祈ります。

昭和19年10月25日(再掲)

「昭和19年10月25日」
この日が何か知っている方は多くは無いでしょう。しかし、「特攻隊」この言葉はご存知でしょう。当時の海軍の正式名称は「神風(しんぷう)特別攻撃隊」と言います。
 
昭和16年12月8日に始まった「太平洋戦争(大東亜戦争)」は、開戦初頭と様変わりし、じり貧の日本軍はフィリピンで戦いを繰り広げていました。
昭和19年10月に着任したばかりの大西瀧次郎中将(20日に第一航空艦隊司令長官)は、部下と相談し戦闘機に爆弾を搭載し体当たりさせることを立案し、名前を「神風特別攻撃隊」と名付け20日に関大尉を隊長として「敷島隊」「大和隊」「朝日隊」「山桜隊」合計24名で編成しました。
設立の経緯は諸説あるのですが、大西中将の案に対し及川古志郎軍令部総長が「決して命令してくださるな」と念押ししているようです。
大西中将も前年に部下からの進言があった際には「統率の外道」として却下、フィリピン着任前にも上官に対し「強制命令でやれとはどうしても言えぬ」と言っており、かなり迷った様子が伺えます。
しかし、既に日本は機材も不十分で技量の未熟な搭乗員(パイロット)が多く、大西洋戦線で戦ってきた歴戦の米軍パイロットが乗る最新鋭機には到底太刀打ちできなくなっており、艦隊戦でも戦力差は歴然でした。
既に海軍は組織的に特攻兵器を数種作り始めており、「特攻」しかやれぬと決断したようです。
大西中将は三国同盟や開戦に反対の立場でしたが、開戦後は航空戦力に力を入れるべきとしており、その航空戦力の弱体化が特攻を誘引したのはなんとも皮肉です。
大西中将の写真を見ると、どっしりとした体躯、ふくよかな顔の人でしたが、非公開の写真では特攻機を見送る頃には、別人のように痩せこけて暗い表情になっていたそうです。
特攻が始まって以後も「統率の外道」と言い続け、終戦の翌日には切腹によって果てました。享年55歳でした。
切腹は腹を十字に割き、胸を突き刺しましたがなかなか死ねず、駆けつけた軍医や部下に「介錯と延命は不要。できるだけ長く苦しんで責任をとりたい」と言ったそうです。
最後に残した遺書です。
(改行等はスペースの都合上変更、原文には句読点は無し。)
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特攻隊の英霊に日す、善く戦ひたり深謝す。
最後の勝利を信じつつ肉弾として散華せり、 然れ共其の信念は遂に達成し得ざるに到れり、 吾死を以て旧部下の英霊と其の遺族に謝せんとす。
次に一般青少年に告ぐ。 我が死にして軽挙は利敵行為なるを思ひ聖旨に副ひ奉り自重忍苦するの誡ともならば幸なり。
隠忍するとも日本人たるの矜持を失ふ勿れ。諸子は国の宝なり。
平時に処し猶克く特攻精神を堅持し日本民族の福祉と、世界人類の為 最善を尽くせよ…
海軍中将大西瀧次郎
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今日は平成29年10月25日。多くの亡くなられた方のご冥福を改めて祈ります。
戦争は始めることは簡単ですが終わらせることはなんとも難しい。このような事を二度と繰り返さないように、しっかり学びたいと思います。

海峡通過。

こちらのブログにアップするのを忘れていましたので、今更ながらアップしておきます。
 
ロシア海軍と中国海軍の艦艇が津軽海峡を東進し太平洋に抜けた事を発表しました。
【中国海軍】
・レンハイ級ミサイル駆逐艦×1
・ルーヤンⅢ級ミサイル駆逐艦×1
・ジャンカイⅡ級フリゲート×2
・フチ級補給艦×1
・ウダロイⅠ級駆逐艦×2
・ステレグシチー級フリゲート×2
・マルシャル・ネデリン級ミサイル観測支援艦×1
なお、ロシア海軍潜水艦は国際ルールに則り、浮上航行し軍艦旗を掲揚しているのが写真で確認されています。
宗谷海峡津軽海峡対馬海峡西・東水道、大隅海峡 の五海峡は特定海域として我が国が独自に指定しています。利便性や政治的目的によって、領海を3海里に制限し、「国際海峡」に準じた扱いとしています。(領海は12海里)
海上保安庁サイトによる解説)
UNCLOS(国連海洋法条約)でいうところの「国際海峡」ではないこと、領海であっても「無害通航」であればルール上問題は無いことなどから、特段騒ぐ必要はありません。
通過通航権」を行使するなら潜水艦は潜没航行が可能ですが、それもしていません。
そもそも狭い海峡を通過すること自体、艦艇にとって危険な行為はありません。
ただし我が国が、独自に設定しているため自国の判断で閉じる事は法的には可能です。
最近の自由主義諸国の動きに対する行動の一環である以上のものはないでしょう。
ただ台湾も日本もこのような相手に囲まれている事を意識し粛々と対応していけばいいのです。
北朝鮮がミサイル撃ったことも含めてセンセーショナルな報道や識者、政治家の口車にのらないようにしましょう。

現代の連合艦隊

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(米太平洋艦隊フリッカ―の写真より)

いやー 圧巻ですね。

10月4日にプレスリリースされましたが、沖縄南西の海で共同訓練を実施した、日本・アメリカ・イギリス・オランダ・カナダ・ニュージーランドの《連合艦隊

日本   ヘリ搭載護衛艦「DDH-182いせ」(ヘリ空母

     ミサイル護衛艦「DDG-174きりしま」(駆逐艦

     汎用護衛艦「DD-152やまぎり」(フリゲート

アメリカ 空母「CVN-76ロナルド・レーガン」「CVN-70カール・ヴィンソン」

     巡洋艦「CG-67シャイロー」「CG-57レイク・シャンプレーン」

     駆逐艦「DDG-68ザ・サリバンズ」「DDG-90チャフィー」

イギリス 空母「R08クィーン・エリザベス」

     駆逐艦「D36ディフェンダー

     フリゲート「H78ケント」

     補給艦「A387フォート・ビクトリア」「A136タイドスプリング」

オランダ フリゲート「F805エファーツェン」

カナダ  フリゲート「FFH-338ウィニペグ

ニュージーランド フリゲート「F-77テ・カハ」

 

ガチ空母3隻+ヘリ空母1隻 戦闘艦艇11隻(フリゲート4隻含)補給艦2隻

まさに圧巻。合計17隻。

(10/3にはSVTOL機が運用できる軽空母化改修の一環として、「DDH-183いずも」でアメリ海兵隊のF-35B戦闘機による発着艦検証も実施してます。)

どうせ海中には日米英の潜水艦がウロウロしてるんでしょう。

ちょっとした都市ならあっという間に焼野原にできる火力と航空戦力。

 

このあと、東シナ海方面に進出したみたいですし、中国は対抗して?多数の航空機を飛ばして「台湾防空識別圏」に進入していますね。

国際的圧力を強める自由主義各国と核心的利益は放棄しないと意思表示する中国。

 

おや?オーストラリアがいないぞ?

まぁ1945年(昭和20年)以前はひとりぼっちの海軍だったんですが、各国からも積極的に情報発信もされていますし、本当に時代はかわりましたね。

 

岸田政権発足早々賑やかなことです。別にタイミング合わせた訳じゃないでしょうけど。