海洋立国論

勉強のつもりで書いています。

現代の魚雷

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「魚雷」(ぎょらい)名前くらいはご存知でしょうか。

正しくは「魚形水雷」と呼びます。
魚雷の歴史は古いのですが、日本はこの分野では先の戦争(大東亜戦争第二次世界大戦)から現在まで最も高性能な魚雷を開発・運用し続けています。

魚雷の構造はざっと「弾頭部(炸薬が入っています)」と「機関部(エンジン・モータ)」「推進機(プロペラ・ウォータージェット)」で構成されています。

先の戦争で日本は「酸素魚雷」を世界に先駆けて開発しました。
これはエンジンの酸化剤に純酸素を使用したもので他国ではなかなか実現できなかった技術です。

通常の窒素の混じった空気は燃焼後に二酸化炭素を排気するため、水面に白い泡の形で航跡が見えるため、攻撃後に発見されやすく回避される可能性が高かったのですが、酸素魚雷は燃焼後に排出するのは、水に溶けやすい炭酸ガスであるため航跡がほとんど見えないものでした。
また、空気と異なり結果的には酸化剤を多く搭載できるため、高い燃焼効率と相まって他国の魚雷よりも数倍の射程距離と遥かに早い速度を誇りました。

さて、現在はと言うと、(と言っても兵器情報は機密事項ですから公開している情報通りでは無いと考えられます)潜水艦用国産魚雷として装備中なのが、89式魚雷長魚雷です。

最高速は100km~130kmと言われています。なによりも「深深度性能」が高く900m程度の深度からも発射できるのです。
この魚雷を搭載している新型の「そうりゅう」型潜水艦は同じく900m程度の潜航能力があると考えられます。

近年、装備の近代化が著しい中国の潜水艦は潜航深度が300m程度で魚雷も同じ。これは「そうりゅう」型が900m深海に潜ってしまえば、相手は攻撃もできない立場になり、こちらは一方的な攻撃が可能という事になります。自衛隊が潜水艦戦力が最も効果的な抑止力であると考えているのは、近頃の海自潜水艦の建造ペースからわかります。
日本は潜水艦の艦体に使用する「高張力鋼」の製造技術が非常に高いため、このような潜航能力を持つことができます。

現在は後継の新型魚雷(G-RX6)を開発中ですが、これはセンサー類の探知能力向上などの高性能化を柱としており、音響画像認識によるデコイ(囮物体)対抗能力、海底・海面の距離検出による目標の直下直上検知するセンサの採用、水素と酸素の燃焼によるタービン推進(排出するのは水)としたため無航跡となるなど機能満載。さらに光ファイバーケーブルによる有線誘導も可能です。大量の情報を軽量な光ファイバーで素早く送信できます。

大型の装備品(水上艦、潜水艦、戦闘機など)に目が奪われがちですが、このように細かな装備品の質が高い事が非常に重要です。

写真は97式短魚雷です。魚雷には潜水艦用の「長魚雷」と水上艦や航空機搭載の「短魚雷」があります。
短魚雷は水上艦においては垂直発射器(VLS)からロケットで発射され、10kmほど飛行後ロケットから分離しパラシュートで着水、目標に向かって音響探査し攻撃する「アスロック」と呼ばれるものもあります。

レーダー

知ってるようで知らないレーダーを今回は取り上げます。

レーダーの発達は凄まじいものがあります。
現代はレーダーの優劣が戦闘を左右するレベルです。
近年、護衛艦はじめ多くの軍艦が採用している最新のレーダーが「フェイズドアレイレーダー」と呼ばれるレーダーですが、このレーダーを中心にレーダーについてざっくりと解説してみたいと思います。
前回取り上げたBMDで中心的役割を果たすのが、この方式のレーダーである「SPYレーダー」です。

「一般的なレーダーの基本的な仕組み」

現在使われているのは「パルスレーダー」という種類です
これはアンテナから電波を一瞬だけ発信します。ほぼ光速の電波の波は真っ直ぐに進み、何か電波を反射するものがあるとすかさず返ってきます。アンテナはこの反射波をキャッチ、往復にかかった時間などから反射したものとの距離や大きさを図ります。

従来のレーダーは二次元レーダーと呼ばれ、平面的な測定しかできないものでした。距離・位置・高度・大きさなどを詳しく知る必要がある時は、性質の異なったレーダーを組み合わせて使うなど工夫が必要でした。衛星放送などを受信する時に見るアンテナはパラボラアンテナですが、これは極めて指向性の強いアンテナで、発信した電波のエネルギーは拡散せずに遠くまでアンテナの向きに真っ直ぐ飛びます。逆に弱い電波でもお皿(反射器)キャッチすれば、中央の受信機に収束します。この能力は極めて重要で、電波望遠鏡が巨大なパラボラアンテナであるのはこのためです。

しかし、飛行機を見つけるなどの対空レーダーとして使う場合は、全周360度を探る必要があるため、アンテナ自体を回転させ、なおかつ秒間に何百回と言う電波のパルスを発信しなければなりません。
また、アンテナが向いていない時は目標を一時的にロストしているため、(1周すればまたキャッチ)ミサイルの誘導などには不向きです。ミサイルを誘導するためには目標にアンテナを固定しなければならないので、戦闘艦艇には専用の「射撃管制レーダー」が搭載されています。
しかし多数の目標が見つかった場合はレーダーの数以上となれば同時対処ができません。前回も書いたようにイージスシステムは「ソ連のミサイル飽和攻撃」に対抗するために開発されています。このレーダーの方式では対応できない事は明白です。

「フェイズドアレイレーダーの登場」

そこで、開発されたのが「フェイズドアレイレーダー」という革新的なレーダーです。

写真を見てください。艦橋両脇に六角形ぽい板が取り付けられています。これがそのフェイズドアレイレーダーです。この中に小さなアンテナ素子が沢山入っています。アンテナ素子がそれぞれの電波を飛ばす角度をちょっとずつ制御して、電波の波を上手い具合に任意の方向へ飛ばすことができます。(これは上下左右45度~60度くらいの範囲)一秒間に何千回もこの作業を繰り返すのです。

事実上はずっとレーダー波を照射し続けているのと同じになります。索敵と射撃管制、誘導など、従来は複数のレーダーが担った機能が、このレーダーだけで可能になりました。
またこのレーダーのエネルギーは強烈なようで、レーダーの作動中は甲板に出てはいけないという話もあります。
電子機器の塊で大きく重いため、小型艦艇には装備できず、膨大な電力を消費します。
全周を見張るためには4基ほど必要な為、護衛艦などは艦橋前面左右や後部構造物の左右など4か所に取りつけられています。

自衛隊ではイージス艦にはSPYレーダーを装備していますが、一部機能を簡略化し小型・軽量にしたFCSー3とかOPYというフェイズドアレイレーダーも開発し、汎用護衛艦などに採用しています。米軍も小型軽量な多機能レーダーを開発し装備しています。これらは電子制御技術とコンピュータの高性能化が実現させたものです。

画像に含まれている可能性があるもの:空、屋外

 

イージスBMD(弾道ミサイル防衛)とは何か

 北朝鮮がロケットを発射するたびにニュースに出て来る言葉が「イージス艦」と「PAC-3」ですが、今回は海上自衛隊が受け持つ「イージスBMD」を取り上げます。

 現在、我が国では弾道ミサイルによる攻撃を防ぐ手段として、「BMD」があり、これは弾道ミサイルを多層な手段で迎撃するシステムの呼称で、一般的には弾道ミサイル防衛と呼ばれます。そして海上自衛隊が運用するのが、イージス艦(イージスシステム搭載護衛艦)によるBMD(この場合は正しくはイージスBMD)。

 以前にも取り上げたかもしれませんが、イージスシステムとは米軍が当時のソ連のミサイル飽和攻撃(迎撃が間に合わないくらいの沢山のミサイルで攻撃すること)と言う攻撃から艦隊を守るために開発された防空システムで、既に40年ほど経過したシステムです。常に進化を続けており、現在でも最強の防空システムで、システムを搭載した護衛艦が日本には6隻あり、今後2隻の追加調達が決まっています。(米軍に次ぐ規模です)

 このシステムに垂直発射式の弾道弾迎撃ミサイル(SM-3)を組み合わせたものがBMDです。
ミサイルの入れ替えでは無くシステムの改修が必要になります。

 弾道ミサイルを大気圏外で撃ち落とす・・・このことは「拳銃の弾を拳銃の弾で撃ち落とす」と例えられるほどの難しさと言われます。これが可能になったのもイージスシステムの中核をなす「フェイズドアレイレーダー(SPYレーダー)」なればこそです。(レーダーについてはいずれ取り上げようと思います)

 海上自衛隊では既に発射実験を行っており、ほぼ100%の迎撃成功率を達成しています。このBMD能力を持っているのは実は日米の2か国だけ。専用のミサイルであるSM-3ですが、ミサイル本体の開発は日本が担当しています。実は日本のロケットやミサイル技術は極めて高いレベルにあります。

 さて、どのような過程を経て撃ち落とすのか?ですが・・・
1)まずはイージス艦のSPYレーダーが弾道ミサイルの発射をキャッチ。
2)飛行コースの算出を瞬時に行い、垂直発射器(VLS)からSM-3を発射。
3)SPYレーダーによる管制と誘導を受け乍ら三段のロッケトブースターを燃焼させ大気圏外へ。
4)弾頭部を分離したのちシーカー(センサーみたいなもの)が弾道ミサイルを補足し、スラスターによる制御をしながら標的に直撃し破壊します。
この間、数分。
弾道ミサイルの中間段階での迎撃を担います。

 また、このシステムは他のイージス艦からの情報に基づき発射することも可能です。
展開しているイージス艦同士は互いにリンクしているため可能なのです。
これで撃ち漏らした場合は地上配備のPAC-3で迎撃する事になります。

 我が国はSM-3とPAC-3の二段構えですが、韓国が配備を決めたTHAAD(サード・終末高高度ミサイル)などは再突入前の高高度の終末段階での迎撃を担います。
米軍はSM-3・THAAD・PAC-3と複層的に迎撃体制をとっています。

 しかし、いくらシステムが揃っても、日本は迎撃できないかもしれません。
戦争を仕掛ける国が発射予告はしません。まして、弾道ミサイルは「核」である可能性が高いのです。
北朝鮮のように発射予告などすれば、通常は発射基地を攻撃されます。
しかし専守防衛の我が国は先制攻撃や敵基地攻撃は今のところ行えません。
相手の武力行使があって初めて反撃可能なうえ、「防衛出動」や「破壊処置命令」などの命令が出ていることが前提です。

ミサイルが発射されてから、閣議を開きNSC(安全保障会議)で発令を決定してからでは間に合わないのです。
いざと言うときの為の「交戦規定」のような、前線の指揮官が判断できる規定が必要な時期にきていると考えるのが妥当ではないでしょうか。

画像に含まれている可能性があるもの:屋外、水

 

大戦機の概要(番外編)

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前回、「零戦」について少し触れました。
先の戦争での航空機で最も有名で開戦初頭には、搭乗員(パイロット)の高い技量も相まって、無敵を誇った高性能機でした。

しかしこのほかにも多くの航空機が生まれたのもこの時代です。現代では考えられない事ですが、機種も多様であり開発側、運用側共に頭をひねった時代です。直接戦闘行動に関わる機体だけでも書ききれませんが、その中でいくつか代表的なものを並べてみましょう。

=海軍=
実は戦闘機は「零戦」がそのほとんどを占めています。型式は11型とか22型や52型など多くあり、その中でも丙型とか甲型とかもう沢山です。
これは零戦が優秀であったため後継機の開発が遅れたこともあり大戦末期まで使われました。

しかし他にも「局地戦闘機雷電(らいでん)」(写真)という機体があります。
零戦と比べると人気はイマイチなようですが、爆撃機迎撃用として開発された機体です。
航空母艦の甲板に離発着する必要の無い陸上機。翼面荷重も大きなため、着陸速度は早く旋回性は悪い。巨大なエンジンのため前方視界も劣悪とされ、搭乗員には人気が無く「殺人機」とまで呼ばれたそうです。
しかし、零戦よりも上昇力、速度ともに上回り一撃離脱戦法を採用できる機体であったようです。

また、末期には「紫電」「紫電改」という局地戦闘機も登場しています。
このころになると海軍には空母はほぼ残されておらず、艦上戦闘機としての開発・製造はされず陸上基地からの運用が主でした。

紫電」「紫電改」は陸軍の「四式戦・疾風」と発動機は同じです。
この機体は川西航空機という会社が作ったものですが、現在は新明和工業として存続しており、海上自衛隊のUS-2飛行艇(世界一の飛行艇です)の製造も行っています。
(US-2については過去にアップしていますが)

元々は「二式飛行艇」というエンジンが4発の優秀な飛行艇や「強風」と言う水上戦闘機を作っていましたのでその系譜とも言えるかもしれません。
新明和工業は現在飛行機以外にも「特装車」(消防車とか・・・ま、フツーのクルマ以外の働くクルマ)を作っており、林業機械車両も手掛けています。

=陸軍=
陸軍の戦闘機は実は多様で、
「一式戦・隼(はやぶさ)」
「二式戦・鐘馗(しょうき)」
「三式戦・飛燕(ひえん)」
「四式戦・疾風(はやて)」
「五式戦(愛称ナシ)」などがあります。
毎年産み出していることになりますね。
それぞれ個性があり、隼は稼働率も高く生産数も多く主に中国戦線で運用されました。
鐘馗は重戦と呼ばれ、大出力の発動機と重武装で上昇力、速力、急降下速度とも速い戦闘機です。反面、旋回半径は大きく航続力は短いのが特徴です。
隼や鐘馗の設計にはペンシルロケットを開発し、後の「ロケットの父」と呼ばれる糸川教授が関わっています。
「探査機はやぶさ」が行ったのが「小惑星イトカワ」であったのは記憶に新しいところですね。

飛燕は日本には珍しい「V型液冷」の発動機を搭載していました。エンジンはドイツ・ダイムラー社製のものをライセンス生産していました。しかし構造が複雑で稼働率も悪くあまり搭乗員の評判は良くなかったようです。
しかし、飛燕の機体は後に発動機を空冷星形の「誉(ほまれ)」(陸軍呼称はハ-45)を搭載し五式戦闘機として再登場しています。

「四式戦・疾風」は大戦機で最も優秀と言われた戦闘機で、速力・旋回能力ともに優秀な戦闘機でした。大戦末期で米軍の戦闘機と渡り合えるのはこの疾風くらいであったと言われています。用兵に関してはダメダメな大日本帝国陸軍ですが、実は航空機の開発に関しては、意外とすっきりしています。

このほかにも先の戦争では多種多様な航空機が計画・開発・試作・製造されています。
今回はせめて愛称がある航空機の名前だけご紹介します。
「烈風」「流星改」「彗星」「月光」「彩雲」「天山」「屠龍」「呑龍」「震電」「彩雲」「銀河」「飛龍」「晴嵐」「烈風」「秋水」などがあります。

(写真は「雷電」)

零式艦上戦闘機(番外編)

先ごろ、復元された「旧日本海軍零式艦上戦闘機22型」が日本の空を飛びました。いわゆる「ゼロ戦レイセンと呼ぶ場合も)」です。多くの日本人にとって最も有名な戦闘機かもしれませんが、今回は「ゼロ戦」を詳しくご存知ない方のためのオレ様的夜ネタにしましょう。ゼロ戦礎知識です。兵器ではありますが、その美しさは美術品とまで言われます。

まず、名称についてです。正しくは「(零式艦上戦闘機れいしきかんじょうせんとうき」と呼びます。
当時の大日本帝国には空軍はありません。航空機はありましたが、大戦初期には戦力としてはあまり重要ではなかったのも一因です。しかし旧日本海軍、陸軍には「航空隊」があり、そこに飛行機を配備していました。

まず「零式」というのは何か?ですが、ゼロ戦も軍からの性能要求書があり、三菱重工業が受注、堀越二郎技師を設計主務者として開発、試作を重ね「制式採用(型番と名称を付与し正式に採用)」されたのですが、その採用年が「皇紀2600年」であり、その末尾二桁の数字をとって零式となりました。これは当時のルールでした。戦車なども同じです。(その前の飛行機には「九九式」とか「九七式」とか「三式」なども。)

皇紀とは神武天皇の即位から数えてのことです。(学術的な正しさは証明されていません)
これとは別に「A6M2」などの型式があります。Aは艦上戦闘機、6は6番目。Mは三菱で2は二番目の型のゼロ戦ということです。(因みに陸軍では機体番号は「キ」とカタカナ表記でエンジンは「ハ」(発動機)でそれぞれの後ろに数字がつきます。同じ国の軍隊でも呼び方さえ違う。^_^;)

「艦上」と言うのは「航空母艦」などに搭載し運用する事ができる事を意味します。海軍の戦闘機ですから、当然と言えば当然ですが、「陸上運用」のみの飛行機も勿論あります。

空母に載せるなら狭い飛行甲板で離発艦できる能力、母艦内で整備できる整備性、沢山搭載できるようにコンパクトな機体、塩害対策などが必要です。つまり低速でも発艦でき低速でも失速せず着艦できる事が必要です。

「戦闘機」ですから、戦闘をする事が目的です。当時としては珍しい20ミリ機銃を左右主翼に夫々一門、機首には7.7ミリ機銃が装備されています。

ゼロ戦の特徴として挙げられるのが「高い運動性」「航続距離」「速力」でしょう。採用当時は並ぶものがないほどの高性能でした。

「高い運動性」は機動性のことであり、それは「格闘戦」の能力になります。
現代と異なり、当時の武装は機銃のみ。多くの場合は敵機の背後に回り込み射撃する必要があります。
回りこむ際には小さな旋回半径がものを言います。そこに優れていました。

「航続距離」とは飛び続けられる距離のことですが、言い換えれば「滞空時間」の長さとも言えます。
レーダー(電波探針儀)の発達していない時代ですから、見張りは目視です。飛行機で高空から、または遠くへ偵察するにも必須の能力です。
遠くの基地や母艦から飛び立って攻撃する能力でもあります。(この能力がある種の悲劇の元とも言えます)

「速力」当然、速さ。当時としては画期的な500km/h以上の高速でした。

また、それらすべてを支えたのが、隅々まで行き届いた「軽量化」です。勿論多くの問題点・弱点も抱えてはいます

日本軍には戦闘機をはじめ数多の航空機が存在し、初期を除いて自国での開発・生産でした。
なのに、なぜゼロ戦だけが有名なのか。日本の大戦機の代名詞ともいえるのか。
そのことについてはここでは触れることができません。
それはあまりに深く重いテーマだと思うからです。

もし、興味が沸いた方がいらっしゃるのなら、小説、記録、などあらゆる資料があります。そしてご自身でお考えください。

ひとつ言いたいのは、復活した零戦には平和の空を存分に飛んでほしいということです。

(写真は2013年大和ミュージアムで撮影したものです

 

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掃海艦というフネ

以前海上自衛隊は「哨戒」と「掃海」に特化した「軍」であると書きました。「哨戒」については種々書きましたので、今回は「掃海」についてです。

「掃海」とは、艦艇や航空機により「機雷」を除去することを言います。

まずみなさんは「機雷」をご存知でしょうか?もしかして海にプカプカ浮かぶ球体でトゲトゲのついたものを想像していませんか?確かに初期の機雷はこんなイメージですし、アニメでもそのような描き方される事がありました。
しかし、実際の「機雷」はと言うと非常に高性能で多様な形態があります。海底に沈んでいて「音」や「磁気」に反応して爆発するものやワイヤーで重りに繋ぎ任意の深度に設置するもの、一定の条件で作動し指定の深度まで浮上するもの、目標を追尾するものから魚雷を発射するものなど実に多様です。
これらは海のどこにあるかは判りませんし、見つけてもどのタイプの機雷かは容易には分かりません。

この機雷を見つけて除去する能力が非常に高いのが海自です。
先の大戦の終盤では米軍が投下した機雷によって海上封鎖され物資の搬入や艦船の移動すらできなくなったのですが、戦後もその機雷は日本の湾内には多数残りました。(投下された機雷はおよそ6万以上とも)海自はその為に「掃海」能力を早くから重要視して装備と練度を上げてきました。

通常「掃海」は掃海艇やヘリコプターによって行われる事が多いのですが、非常に危険な任務であり、戦後すぐに「掃海」は開始されましたが、その頃には多くの殉職者をだしています。

もし、日本の重要な海上ルート(シーレーン)などを機雷によって封鎖された場合、我が国はすぐに干上がってしまうため、「掃海」は日本の生命線とも言える任務です。

戦後の「掃海」任務は将来のためにも必要なノウハウをもたらしてくれました。
結果、海自は世界一の能力と装備を持つと呼ばれるようになりました。
掃海ヘリ母艦の「掃海母艦」中型「掃海艦」小型「掃海艇」など艦艇も多数装備しています。また優秀なダイバーや隊員と高性能な掃海具も。

実はつい先ごろまでは掃海艦は木造でした(やえやま型)
これは磁気機雷を避けるためでしたが、寿命の面や強度、大型化できないなどの面で不満の残るものでした。最新の哨戒艦(あわじ型)は強化プラスチックで作られています

湾岸戦争の際に、海自の掃海部隊はペルシャ湾に派遣されましたが、これには多分に政治的な意味合いもあるのでしょうが、実際のところ、湾内に大量に敷設された機雷を効果的に除去できるのは海自だけだったとも言われています
ペルシャ湾の日本のタンカーの航路に機雷が敷設された場合、直接影響を受けますし、自国の事は自国で解決する努力は払って当然でしょう。

海外に自衛隊が派遣される事で、「海外派兵だ!」などと物議を醸しましたが、掃海艦はほとんど戦闘行動はできません。攻撃兵器は機関銃程度であり、艦体は木とかプラスチック。
防御も攻撃能力も非常に脆弱なのです。

つまり戦闘行為が発生する海域では活動させられません。しかし機雷に接近するので非常に危険であるが、各国が絶対に必要とする任務が「掃海」です。

こういった実態を知っていれば、「海外派兵だ!」などと、単純に目くじらを立てる必要は無かった話です。
(写真は「あわじ」進水式の様子 海自サイトより)

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早期警戒機という飛行機

飛行機は現代では非常に重要な戦力です。しかし先の戦争の頃と異なり運用方法は全くと言っていいほど異なります。

例えば戦闘機に関して言うと、零戦に象徴されるように、過去は「空中戦」を行いました。「格闘戦」や「一撃離脱」などの戦法も、結局は目視によって(末期はレーダーもありますが)相手を発見し、接敵(近づき)し装備された機銃で射撃して攻撃を行います。

現代は全く異なります。航空機搭載の主な兵器はミサイルとなり射程も延長され命中精度も非常に高いものです。エンジンも強力な為、多くのミサイル、爆弾を携行できます。また、空中給油を行えば航続距離も延長できます。航空機は攻守にわたり強力な兵器となっています。

さて、「早期警戒機」「早期警戒管制機」と言う航空機についてですが、現代の戦闘機はこの「早期警戒機・管制機」がある意味では司令塔なのです。

まだ私が子供だった頃、ソ連(当時)の戦闘機MIG-25に乗ったベレンコ中尉が函館空港に強行着陸し亡命を求めるという、「ベレンコ中尉亡命事件」が発生しました。
当時の新聞は大騒ぎだったのを覚えています。

最初の段階では航空自衛隊のレーダーは、MIG-25を捉えていたようですが、MIG-25が超低空飛行にうつると地上レーダーから消失しました。

これは地上のレーダーでは地形に影響され、また地平線以下では捉えられないという原理的な問題があるためです。
また、最初の段階で空自はF-4戦闘機をスクランブル発進(緊急発進)させていましたが、このF-4もMIG-25を発見できませんでした。
これはF-4に搭載しているレーダーが地上近辺では地上か敵機か区別がつかず、また自身のレーダー波の反射の影響で「盲目」状態となったのです。(この能力の事をルックダウン能力と言います)

目的が亡命であったので、被害はありませんでしたが、これが攻撃目的ならば?と考えたならば非常に問題です。民間空港にまで侵入を許したのです。これを契機として、防空体制の見直しが始まりました。
そのひとつが「早期警戒機(AEW)」や「早期警戒管制機(AWACS)」の導入が検討され、まずは早期警戒機・E-2Cホークアイが導入されました。

では、どういった航空機なのか?と簡単に言いますと、写真のように機体の上部にでっかいお皿が付いていますね。これがレーダーです。

要するにルックダウン能力の高いでっかいレーダーを積んだ飛行機を飛ばして高度を上げりゃ、遠くまで見渡せるのでレーダーも地形に影響されず良く見えるよね!ってことです。
「低高度での侵入の発見」「通信の中継点」「地上レーダーサイトの代替」などが任務です。
E-2Cは空自で13機運用しているようです。

このような能力に「管制能力」を与えたのが「早期警戒管制機AWACS)」ですが、これと戦闘機との関わりについてはまた。

(写真は海自サイトより)

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