海洋立国論

勉強のつもりで書いています。

国が無くなる・・・

周知の通り20年にわたる戦いはガニ政権の崩壊、タリバン勝利となりました。

どうみても西側自由主義諸国の敗北です。バーミヤン遺跡破壊からテロの温床となり、女性の自由を極端に束縛し、個人もタリバンの意に沿わなければ、容易に命を奪うなど、我々の価値観とあまりに違い過ぎるタリバンですが、そのことについて日本としてどのような態度で接するのでしょうか。

タリバン政権を承認すれば人権問題も容認することになります。となれば中国の人権状況についても批判できないでしょう。

 

まず関心事なのはアメリカの(力の)信頼性が崩れるのかどうか。

20年ものあいだ巨額の軍事費と兵士の命、資金や武器援助をしてきたのにも関わらず、米軍が撤退すると見るや一気呵成に国土を掌握したタリバンと、それに対抗できないアフガン政府。

アフガン政府は完全に舐められていたのでしょう。アメリカ依存の体質と汚職や寝返り、反米国パキスタンの援助がこの状態を生んだのは一因だが、アメリカ(西側諸国)の長期的な支援にも関わらず、自助努力を怠った国の末路といえばそれまでですが、日本も同じではないかと思えます。

世界中で無慈悲で理不尽な暴力は明確に存在しており、いまのところそれに対抗する術は武力しかありません。

力無き正義は無力であり、正義無き力は暴力となりますが、力は正しく制御すれば有益です。そのための戦後76年であったのではないでしょうか。

 

日本にとって台湾有事は日本有事に直結しているわけですが、その時に米軍に大きく依存することになります。

しかし今回のことで同盟の信頼性が揺らいではいないでしょうか。アメリカは自助努力しない国をいつまでも助けるほどもう余力はありません。

アメリカにとっては対中を考え「イラク」「アフガニスタン」からの兵力引き揚げなのかもしれません。そうだとすれば本当に余力がないのです。アメリカが日本を引き上げる時は太平洋を失うので、今回のように簡単に撤退できませんが、そのことに胡坐をかいていい訳ではないでしょう。

 

中国は早速にもタリバンに接近し「経済援助」「融資」を約束していますが、アフガンを一帯一路に組み込み、豊富な資源を独善的に確保し良好な関係を築けるのか、それとも旧ソ連のように泥沼にはまり疲弊させられ国力の浪費につながるのでしょうか。

中国は物資の輸送の為に鉄道を作るのでしょうが、一枚岩ではないタリバンの内部分裂があった時、中国の独善的な進出に反発が生まれた時、鉄道もテロの対象となりかねませんが、どのように保護し自国の利益に合致するようにするつもりなのでしょうか。

日本の倍近くある国土のアフガニスタンでも他国と同じように中国人労働者を送りこみ、資源開発とその開発資金援助という搾取の構図を描くことはできるのでしょうか。

しかし、現在の中国も毛沢東八路軍によって、国内でテロ活動や破壊活動、毛思想の浸透を図り軍事クーデターによって国民党政権を追い落して成立し、文革天安門事件で虐殺し、思想の自由を奪い、現在でも民族浄化少数民族の弾圧や搾取をおこなっている点では、タリバンと構図は変わらないので、ある意味では親和性があるのかも知れませんが。

 

在留邦人退避も大事な視点。日本の場合自衛隊法で規程がありますが、自衛隊は相手国政府の同意無しに在外邦人輸送や保護措置はとれず、同意があったとしても「保護処置が行われる場所の安全が確保」されていることが条件になっています。

今回は現地警察は機能しておらず治安は乱れており、相手政府はすでに崩壊しているので、邦人救出は他国に依存するしかありません。

 

これは海外派遣を厳しく縛る法律を現状にあわせて改正しなければならないのではないでしょうか。

とはいうものの、アフガン難民が空港に溢れ、輸送機にしがみつくなどさながら地獄絵図ですが、その任務を自衛隊員にしてもらう覚悟が政府も国民にもあるのか、問われることになります。

 

今後、中国との関係がぎくしゃくし、同じような事態に遭遇した時、現状では中国の勢力圏に在留する日本人は人質となることを覚悟しておくしかありません。

日本には助けたくても助ける法と装備がないのです。それをさせてこなかったのは我々国民です。

カブールの空港には輸送機が大挙しているのですが、これはタリバンに航空攻撃能力があまり無いことと、20年前と違い各国の大規模な介入を避けるためでしょう。しかし対空攻撃がありうる事態の場合、どのようにして退避させるのかその想定もしておかなければなりません。

邦人の避難には非戦闘員退避行動(NEO) の経験が豊富な米軍が取り沙汰されますが、今回ではイタリアでさえ見事に脱出させていいます。

 

日本はトルコ頼りであることは情けない限りでしょう。トルコに借りを作るのは「独裁者・エルドアン政権を支持」すること他なりません。

 

大国を自称しG7の一角を占めている日本国民は危機感と自助努力が足りず、これでは国際社会での信用は得られず地位向上も望めません。カネは出すが血は流さないと言われた湾岸戦争当時と何も進歩していません。

国会議員が靖国神社に参拝しただけでギャーギャー騒ぐマスメディアや知識人、左翼人はこのことをどう考えるのでしょうか。

 

アフガニスタンでは20年間も自由と民主主義、法による統治を西側諸国は推進してきましたが、暴力を抑止する武力を引き上げただけで、簡単にこの国は崩壊し権威と抑圧が勢力を拡大しました。このことを我々は重く受け止めなければなりません。

 

それにしても20年も米軍に抗し続け経験を積み上げ、組織の統制を高めてきたタリバンの進軍はあまりに早かった。周到な準備があったのでしょうが、当初の目的を達成した今後はどうなるのでしょうか。

タリバン広報官は、柔軟なイスラム式統治による国家の樹立、女子の教育を阻害しない、戦闘員や民兵による暴力は制御される、と言うが信じられるのか。昔と違いSNSで世界に情勢は発信し易いですが、タリバン側のプロパガンタも同様に発信されるため、しっかりと事実を見極めなければならなくなります。

人権が―!とか女性の権利がー!といつも騒ぐフェミニストの方々はこのような事に対してどのように考えるのでしょうか。

また、アフガンの人々の為に尽くした多くの方々や、テロに倒れた中村医師の想いが無駄にならないよう願います。

 

それに比してなんと我が国は自由で平和でしょう。

殆どの場合、言論は保証され、思想信条で殺される事も無く、コロナ禍と言いつつも食べものに困る事はない。しかしそれは永遠ではありません。

先の大戦で無くなった方々が戦後のために残してくれた遺産を我々は食い潰しつつあります。