海洋立国論

勉強のつもりで書いています。

2021.07.21に発表された『ロシア人とウクライナ人の歴史的統一について』(プーチン論文)を再読してみた。

全文は原文で約4万字にもおよぶ、2021年7月21日に発表されたいわゆる「プーチン論文」ですが、発表された当時、多くの専門家が解説をしてくれていますので、正直今更感もあるのですが、実際にコトが起こったあとに読むと解釈も違うかもしれないと思うことと、もしかしたらプーチン大統領の心情が少しは読み解けるのではないか、と思い翻訳ソフトの力を借りて改めて読んでみました。

 

長い論文(?)なので思いっきり要約したうえで、私なりの解釈を付け加えます。太字は論文の要約、細字の記述は私です。原文解釈の間違いなどをご指摘いただければ幸いです。

 

私はロシアとウクライナの間で不幸な壁が生じていることは十分認識しているが、それは私たちの過ちの結果でもあるが、意図的に団結を弱体化しようとする軍隊の活動の結果でもある。

 

NATO拡大・EUのことを指摘しているのだと思われますが、冷戦終結以降NATOとロシアは協調路線を模索していた時期もあり、NATOEU拡大が特段の脅威であったとは言えないと思います。

東欧に配備するイージスアショアは弾道ミサイル迎撃のみの機能しかなく、モスクワを攻撃できる能力はありません。

またNATOはクリミア侵攻前まで「NATOロシア基本文書」を遵守しており、戦術核や兵力の常駐はしていませんでした。

しかし冒頭に言及するということは、やはりNATOに責任があると言いたいのでしょう。

 

 

本論のなかで千年以上にわたる歴史のすべてを網羅することはできないが、ロシア人、ウクライナ人、ベラルーシ人はどちらも、ヨーロッパ最大の国家であった古代ロシアの継承者で言語や経済的にも深いつながりがあった。

(ここからしばらくは歴史談義が続きます)

リトアニア大公国」や「モスクワ大公国」などの古代~中世ヨーロッパの歴史を延々と述べ、1667年アンドルソヴォ条約によってロシア-ポーランド戦争が終結ロシアはキーウ、ポルタヴァ、チェルニーヒウ、ザポリージャを含むドニエプル川の左岸の土地を得てリトルロシアと呼ばれたとか、ソ連時代にはウクライナ人はウラル、シベリア、コーカサス、極東の開発に参加し最も重要な役割を果たしたし、フルシチョフやブレジネフとも密接な関係があったなどウクライナとロシアの不可分性を延々と述べています。

さらに191712月、ロシア国内にウクライナ人民共和国UNR)が設立されたが、ドイツ・ポーランドオーストリアが食料を欲しさに軍を送りこみ外国に支配されたなどを述べた後こう言います。「現代のウクライナは完全にソビエト時代の発案によるものです。それが歴史的なロシアを犠牲にして作成され、17世紀にどの土地がロシアと併合し、どの領土とウクライナソ連邦を去ったかを比較するだけでわかる」とも言います。

このくだりのプーチン式歴史講義?で印象に残るのは、プーチン大統領が一体性の根拠として繰り返し述べているのは、文化や宗教は勿論、言語にも重きを置いているだろうと思われる点。

私も言語は思考や文化の基礎であり地域性そのものであると考えています。

近年日本語の荒廃と劣化が指摘されていますが、自国の言語を疎かにする国家は亡国となるのではないかといつも危惧しています。

安易な英語化などによって、表現の豊かな日本語を置き替えようとする行為は日本の味わい深い文化をじわじわと破壊する行為とも考えています。

 

この点(言語に対する考え方)ではプーチン大統領と共通するのかもしれません。

 

 

ソ連崩壊後の困難な1990年代にロシアはウクライナに巨額の支援をしてきた。

1991年から2013年でウクライナ820億ドルのガス費用を節約しガス通過料の15億ドルを得ているが、両国が良好な関係になればさらに数百億ドル得ることができる。

ウクライナソ連時代のようにロシアと一体であれば、欧州トップレベルの国家であるはずだったが、かつて誇ったハイテク産業(インフラストラクチャ、ガス輸送システム、高度な造船、航空機製造、ロケット製造、計器製造、世界クラスの科学、設計、工学の学校 )は、全盛期の半分程度に落ち込み欧州最貧国となった。

その責任はウクライナの指導者にある。

 

ロシアは財政的にも苦しい時代にあってもウクライナに支援をし続け、ウクライナは安いガスで利益を得ており、ロシアに恩があるはずだ。しかし現在のウクライナの経済的困窮はウクライナ指導者に責任があると指摘。

確かにソ連崩壊後に多くの先端技術がウクライナで開発されていることが明るみになりました。

原子力技術、造船技術(実際に中国初の空母「遼寧」はウクライナ・ムィコラーイウで建造中だったソ連空母)、ロケットモーターやエンジン、ミサイル開発技術など高い技術と工業力を誇っていたのは確かですが、ソ連崩壊後の混乱の中で困窮したのは東側諸国共通の課題であり、ウクライナ一国だけの問題ではないでしょう。

もし指導者に責任があるとしても、それを他国が指図するのはおこがましいでしょう。

 

 

2014年まではロシアとウクライナは協調して歩み双方に利益をもたらしてきた。しかしウクライナのエリートたちは過去を否定し独立を正当化してきた。2014年よりも以前からロシアはEUとウクライナとの対話を望んだが、EUウクライナーEU当事国の問題であるとロシアとの対話を拒否した。

ウクライナは欧州によって地政学的に利用され、欧州とロシアを隔てる障壁とし、またロシアに対する橋頭保とし、「反ロシア」国にしようとしている。

20142月には西側諸国によって内政に干渉しクーデター(マイダン革命)を支持し、ウクライナの国家政策を決定し始めた。

ウクライナ人は大祖国戦争(第二次大戦)で多くの英雄を生んだがナチズムたちはそれを忘れさせようとしている。

ウクライナ代表は「ミンスク合意」を履行しようとせず、「犠牲者」を演出し、恐怖を作りだし、内外に敵を作りだすことで西側に依存させ、NATOによる軍事的開発や外部からの統制、西側企業による農地や資源の収奪がおこっている。

この負担は子々孫々支払わせることになる。

 

ロシアはEUとの和解を望んだが、マイダン革命を西側により扇動され国家を転覆させミンスク合意も遵守していないとは被害妄想も甚だしい。

ソ連解体後の政情不安は東ヨーロッパ諸国共通であったし、ウクライナ汚職は現在も深刻で、これはソ連時代の負の遺産

またロシアでは確かに見かけは普通選挙が行われているが、対抗勢力は権力によって潰したり、不都合な記事を書くジャーナリストは不慮の事故死を遂げる、投票用紙に「プーチン」と書いたかどうか写メで選挙担当者に送らせるなど不正まみれでとても正当な選挙が行われたとは言えない。

 

ウクライナがゼレンスキーを選んだのは選挙監視団の監視下で行われた選挙であってゼレンスキーは法的・手続き的に正当に選ばれました。

「犠牲者を演出」もウソで監視団の監視下で大量虐殺などできるはずもないし証拠もありません。

要はウクライナEU/NATO寄りになることで、モスクワが前線に近づき戦略的縦深を喪失することが許せない。ロシアからみれば歴史的にも脅威は常に西からやってきているのでNATOを遠ざけたいがNATOの東方拡大は止められませんでした。

ウクライナの食料資源も西側資本に食い物にされている(資本の進出)のが我慢ならないのでしょう。

 

クリミア人とセバストポリの人々は「反ロシア」を否定する選択をしたが、ナチズムの信奉者によってテロリストとされ、民族浄化と虐殺の恐れのため命を守るため武器をとった。

ウクライナ大統領(ゼレンスキー)は「平和」を公約としたが、それが嘘である事がはっきりした。

「反ロシア」に反対する多くのウクライナ人は迫害され殺される。

 

クリミアは民族自決のためにやむを得ず戦う選択をしたが、ゼレンスキーは反ロシアの政策をとり、親ロ派は迫害されている。などとは全く根拠がありません

ウクライナには欧州安全保障協力機構(OSCE )の特別監視団が人権状況監視などのために派遣されており、日本も資金200万ユーロの財政支援や人員派遣などをしています。各国の監視のもとで迫害などできません。

 

 

しかしオーストリアとドイツやアメリカとカナダは民族構成、文化、実際には同じ言語で密接に関わっているが、夫々が主権国家のままであり、同盟関係を妨げるものではない。

ロシアとウクライナもそのようになれるはずであるが、「反ロシア」がそれを妨げている。

ウクライナにはロシアと連携したい人達が多くいるにも関わらず、法的に阻害され脅迫され追いやられているが、ロシアはそれらを解決する対話の用意がある。

 

ロシアとウクライナは一体になっても独立性は保持できるはずである。とはつまりウクライナを併合する訳では無く独立性は担保するという事なのでしょうが、国力が圧倒的に異なる国による併合の恐れを払拭はできないだろうし、その国がどの道を選択するのかは力によって強制されるものではありません。

どうせ選挙や行政・立法に介入するでしょうし。このなかでは「対話」と言っていますが、ソ連時代に辛苦を経験し、ハイブリッドによるクリミアを併合されたウクライナロシアを信用できないのは当然でしょう。

 

ウクライナはロシアとのパートナーシップによってのみ、真の主権を守る事ができる。何世紀にもわたって繋がりが形成されたきたロシアとウクライナは、結局のところ一つの民族なのだ。

 

ウクライナの多数はウクライナはもはや独立した国家で、ロシアとは異なると思っています。その選択の結果がゼレンスキー大統領です。

たとえ歴史的・民族的・文化的ルーツが一つであろうとも、武力を背景にした意思の強制は21世紀において許されるものではないことをプーチン大統領は知るべきで、今回の戦争はロシアは負ける必要があります。

その経験(武力による一方的な現状変更の試みは通用しない)が、今後の世界にとって必要なことであるのは間違いないでしょう。特に中国が隣にある日本にとっても死活的に重要です。このルールがあるため、日本もロシアに実行支配されている北方領土を武力で取り返すことは許されません。たまに日本にも武力奪還を唱える人がいるのは恥かしい限りです。

 

 

論文全体を読んだ「印象」はプーチン大統領、だいぶ拗らせてますね。

西側相手に対峙した過去のソ連の栄光が忘れられないようです。

プーチン大統領にとってソ連崩壊後にロシアが弱体化した隙をついてのNATO拡大は、かつての構成国の裏切り行為、資本主義者の搾取であって、経済的にも力を取り戻しつつある現在のロシアはそれを容認しないということでしょう。

大ロシアの復活は自身の務めであり、ロシアの兄弟と考えているウクライナの肥沃な土地、黒海とその沿岸は手放したくないんでしょうね。

 

ウクライナポーランドリトアニア大公国モスクワ大公国オスマントルコ帝国などの支配をうけ続け、ようやく20世紀以降何度も独立を宣言しそのたびに挫折してきました。

第二次世界大戦のころにはソ連による弾圧、ナチスドイツによる強制労働や迫害、戦中はソ連・ドイツ側に分断され殺し合わなければなりませんでした。

人口の75%以上を占めるウクライナ人にとって「独立」の意味は、島国日本の我々とは全く違う渇望するものであるのでしょう。

 

だからこそロシアは負けねばならないと思うのです。

防衛費・軍事費の傾向ーその2

岸田総理が「防衛費増額」を日米首脳会談で約束しました。

 

我が国の防衛費はかなり少なく、義務的経費と言われる経費が8割。隊員の生活にもしわ寄せが来ており、個人負担でしのいだりするのが現状。装備品も部品の手配ができず、所謂「共食い整備」をせざるを得ないほど。

 

その中から装備品の調達もしなければならないのに、防衛産業は利益が少ないため撤退する企業が続出。自国の防衛装備が海外からの購入に頼る始末。有事の際にどうするのでしょうか。

 

防衛費増額は必須だと思います。

 

 

とはいえ、無制限な増額もできる訳がありませんし、GDP2%が適正である論理的な根拠はありません。

 

防衛費・軍事費は安全保障環境に応じて増減するものでしょうが、それでも一応の目安は必要ですし、他国はどうなのかを知る事も重要でしょう。

 

そこで、前回は一人当たり軍事費をGISソフトを使って色分けし表現してみましたが、今回は対GDP比で分類。

傾向を見てもらえればと思います。

 

さらに世界中の軍事費(2020年ドルベース換算)を円グラフで。

因みに、データが不明な国も多くありますので、それらは除外しました。

 

世界(対GDP比)

ヨーロッパ方面(GDP比)

アジア方面(対GDP比)

全軍事費における各国の軍事費比率

 

一人当たり軍事費をQGISで書いてみました。


防衛費の増額が話題になっている昨今ですが・・・
世界的シンクタンクであるSIPRI(ストックホルム国際平和研究所)が公開しているデータベースに世界中の軍事費を国民一人当たりで算出したものがありました。
 
私は仕事で時折QGISという地理情報システムのソフトを使うのですが、いつも文章ばかり書くので目先を変えたいなと思い、先ほどのデータを元に、いくつかの段階に分類したマップを作ってみました。
 
データがあったのは159ケ国でしたが、軍事費を機密事項・非公開としている国や、どこまでを軍事費とするかで集計方式が国ごとに異なったり、会計年度がビミョーにずれてたりしますので、まぁ目安くらいに見てもらえればと思います。
世界中のマップとNATO中心にしたもの、東アジア中心にしたものと。3枚アップします。
 
地図は勿論メルカトルぽい世界測地系で図化してるので、極方向になるほど広く表示されています。そこはご理解ください。
 
因みに一人当たり軍事費のあらまし。
金額は2020年平均ドルベースで計算しておおよそ額で書きますね。
 
1位 カタール 4,000$ 金持ちの道楽か?初公開の数字らしい
2位 イスラエル 2,800$ ずっと戦争してるから仕方が無いですね
3位 アメリカ 2,500$ ジャイアンの意地でしょうか?
4位 クウェート 2,000$ 昔、大変な目にあったからでしょうか
13位 韓国 980$ 一応、戦争中。休みが長いだけ。
23位 ドイツ 670$ これでも平和主義で今後増やすそうですけど
25位 スイス 660$ 自主防衛ゆえカネかかる永世中立です
26位 台湾 550$ 中国に備えなければなりません
31位 ロシア 450$ 実はこんなもん。もはや核だけの国かも
33位 日本 430$ ん?妥当なのか?G7中最下位なんですが
54位 中国 200$ 人口多いしデータが不正確なので見積もり額
64位 ウクライナ 140$ これでも精一杯なの!がんばれ!

正距方位図法にて北極点を中心に描画

世界地図

世界版

欧州方面

NATO近辺

東アジア

東アジア

もう2か月ですね。

今回の侵略も2か月を超えましたね。よく持ちこたえていますが、ここで若干のまとめとして。
 
ウクライナ公式ツイのやらかし案件》
4月1日にTwitter@Ukraineアカウントが動画を公開しました。
その動画ではファシストと戦う意思を表明しているものでしたが、そのなかでヒトラームッソリーニ昭和天皇の写真御真影というべきででない)が並べられていました。これに多くの人や日本政府も反応。在日ウクライナ人も謝罪と削除を要求しました。(詳細は略)結果、在日ウクライナ大使館は動画を一旦削除したうえで修正し謝罪しました。
 
一部の方は「がっかりした」「募金を返せ」「もう応援しない」などの意見も多く、私は皇室は愛されているんだなと再認識するとともに、少し残念な思いをしました。しかし少なくとも私はこの件について謝罪をもって終止符を打っています。
 
私がそもそもウクライナを応援する意思を明確にしているのは、何も特段ウクライナが好きな国だとか、親日だとか可哀想だなどの理由ではありません。
 
数千万の犠牲者を生んだ数々の戦争を経て、「法による秩序の維持」「力による現状変更は認めない」と言う 国際社会が規範としようとしている原則を、経済的には中流であるとはいえ安保理常任理事国で核大国であるロシアが踏みにじり数々の国際法や条約違反をおこなっていることは、ロシア、中国、北朝鮮の核保有国に囲まれている我が国にとって看過できない事態であるからにほかなりません。
 
 
《代理戦争という陰謀論
国連による集団安全保障体制を築いたものの、国家の上位組織は無いため、国際規範を無視し国際司法裁判所などで有罪になったとしても国連は強制力を行使できません。このため価値感や危機感を共有する国々でNATOのような軍事同盟による集団防衛体制を築いてきたのですが、その隙間にあるウクライナのような国々に対する力の行使を許せば、力による現状変更を認めることに他ならず、例えば中国が台湾に対して同様の行動をとる事を認めるメッセージとなりかねません。
また同様に日本が北方領土竹島に対し武力攻撃を行い奪還することも許される事になってしまい、世界は「武力」を持つ者が勝つ世紀末世界になってしまいます。
 
今回不法に侵略しているロシアに対し自国防衛の為に戦うウクライナを各国が独自の判断で支援するのはこの為であって一部の陰謀論者の言う様な「代理戦争」ではありえません。
 
またロシアはたびたび「核使用」に言及していますが、「核の恫喝」に屈しては核の拡散に繋がりかねず断じて認められません。特にG7を中心とする国々は、「国際規範に則った公正な競争と自由」を原則としていますから、この観点からもロシアの行為は許し難く、ウクライナを支援し続けるのです。
 
橋下徹氏の言う「政治的妥結論・早期降伏論」などは論外です。
 
 
《日本は例外的だった》
「早期降伏で人命が助かる」などと信じるのは、あまりにも安易で能天気であると言わざるを得ません。日本は先の戦争のあと降伏し占領統治されましたが、アメリカは占領軍として日本国民の虐殺や弾圧はしていませんし、比較的早い段階で主権回復しました。苛烈な占領統治を経験していないのです。
 
所謂戦犯に対しての処罰はしていますが、全ての将校が裁かれた訳でもなく、巨額の賠償金を直接的に支払った訳でも二等国民扱いされた訳でもありません。軍国主義を排し民主的に平和国家になることを宣言する事で主権を回復し国体護持もできました。
 
しかし通常は違います。民族弾圧は現代に至っても常識的におこなわれますし、先の戦争ではソ連が戦力を喪失した日本軍や満州国民、北方領土に対して何をしたかは忘れてはいけないでしょう。
 
アメリカは早期に日本という前線基地を利用するため、平和的な占領統治をすることで内乱を抑えました。第一次大戦後では考えられなかったことです。
 
今回のように侵略者が善人であるかのような解釈をする橋下氏の言説はあきらかに間違いと思います。
 
 
アメリカが儲かるという謎理論》
また戦争をすれば軍需産業が儲かる。
つまりアメリカが儲けるためにおこなっているという話も散見されますがこれも誤りです。
確かに世界の武器製造企業の売上トップ5はアメリカで
1位ロッキードマーティン
5位ジェネラルダイナミクス
で6位にようやくイギリスのBAEシステムズ
1~5位までの総売上額は凡そ1,834億ドル(SIPRI・2020DB)ですので一大産業ではあります。因みに7~9位は中国です。(正しい数字かどうかは疑わしい)
 
日本の防衛費は総額で500億ドル弱、そのうち4割ほどが人件費、装備調達や研究に2割ほど。アメリカの防衛産業は規模も日本とは比較になりませんが、戦争が長引けば世界経済も落ち込み実質GDPは下がります。今回アメリカは多くの資金や武器を供給していますが、儲けたいだけならリスクの高い「戦争」に武器の形で投資する理由がありません。
 
当然ですが武器生産は国家管理下で行われています。政府は独占的需要家です。競合試作に勝ち残り、武器生産の段階になれば製造企業は独占企業ですが、国際情勢の変化などで見込みどおりの発注が無く初期の開発投資を回収できない場合もありますし、富を生む「知・労働・財」などのリソースを武器生産にのみ使うため、機会ロスが生じているかもしれません。秘密を守るためのコストもかかります。実際に日本の防衛産業は儲からないのでどんどん縮小や撤退しています。
 
例えばトラクターなら穀物を効率的に作る手助けをし生産を増やしますが、武器は使う事で何かを生みだすモノではありません。しかもいつ使うか再発注があるかわかりません。また戦争はインフレを起こすなど国全体としては損をするかもしれません。
 
むしろ武器供与などで資金を使うなら、初めから資源開発や人材に投資する方がよほど合理的です。それに戦争は富を生むインフラを破壊し貿易を減少させます。
 
マクドナルドがあると戦争がおきない?》
1996年にニューヨークタイムズ紙が「金のアーチ理論」を提唱しました。これは「マクドナルドが開店した国同士ではそれ以降戦争をする事が無い」というもので、確かに暫くはその通りになっていました。
世界貿易の活性化は戦争を減らすという実証研究もありました。
しかし今回はその反例です。ウクライナ・ロシア双方にマクドはあります。平和が貿易を盛んにするのであってグローバル化や貿易・交流が盛んであっても戦争は起きうるということでしょう。グローバル化は戦争・紛争を抑制しないのかもしれませんね。
 
 
《自主防衛》
今回の侵略により所謂自主防衛論が目立ってきています。一義的には自国は自国で守るべきものであって、そうであるからこそウクライナに多くの国(主に欧米ですが)が支援しているのです。自国の防衛をないがしろにするならば、誰も手助けしてくれないのは明白で自主防衛の努力はし続けねばなりません。
 
ただし単独自主防衛を目指し在日米軍を追い出し安保破棄となるとアメリカが敵に回るうえ、ある試算によると防衛費がひとケタ上に膨れ上がり、そもそもそんなに人員もいません。米軍撤退後の空白期間も危ないですし流石にこれはありえません。単独自主防衛を提唱する人は夢でも見ているのでしょうか。
 
日本の進む道はひとつしかありません。価値観を共有する国同士で、「国際規範に則った公正な競争と自由」を守るため、日米同盟の深化と片務性の解消、英・仏・独・豪・韓などとの同盟関係の強化や新たな集団防衛の枠組み構築、装備品の共同開発、危機シナリオの策定とそれに則った防衛政策の立案と実行、関連法の整備、防衛費GDP比2%への増額(現在は当初、補正あわせて1.2%ほど)など課題は山積です。まぁ普通に経済成長してれば1%前後でもかなりな防衛費だったんですが・・・
 
なんとなくアメリカイェーイ!的な感じになりましたが、別に私は親米でも反米でもありません。ただ我が国が好きなだけです。
 
 
とにかく今はこのような不法行為をした国は負けるという事実が必要です。

Google先生、嫌がらせをする。

今回のロシアによるウクライナ侵略でOSINT(Open source Intelligence)が注目されていますね。
 
OSINTとは、「特定の情報要件に対処する目的で、一般に入手可能な情報を収集、利用し、適切な対象者に適時に普及させた情報 」(米国防総省)と定義されていて、情報収集、諜報活動の一種であり、安全保障・軍事の分野では比較的馴染みのある用語です。
 
特に今回はウクライナ・ロシア共SNSを活用しておりその精査が必須です。
軍事関連では昔から有名ブログもあり、今回の戦争でもあらゆる情報を集積し、ウクライナ軍・ロシア軍の戦果や発表を検証したり、戦力分析したり、プロパガンダを見破ったりしています。
 
ネット情報のみならず書籍・新聞・インタビュー・映像(背景も含む)などあらゆるものがその対象で、画像に記録されている位置情報など表面にあらわれていない情報も分析します。兵士の通話記録まで検証材料に使います。
 
例えば発表どおりの緯度経度か影の長さなどから撮影時間はどうか、爆発なら光の色や広がり方から使用された兵器を特定するなどまでも分析していますし、デジタルデータである衛星画像や航空機・船の位置情報、地形、植生、気象データは簡単に入手できます。(軍の場合は作戦上位置情報を意図的に消したり欺瞞しますが)
 
 
先日の「モスクワ」沈没では、事実かどうかから始まり、攻撃方法、被弾数、命中か所などを検証しています。これが無ければウクライナの虚偽では?と疑われたり、ロシアの言う通りただの火災?沈んだ?曳航?となったかも知れません。
 
北朝鮮なんて画像を沢山だしてくれるので、OSINTの良いネタです。
 
普段から大きな力を発揮しているのはやはり衛星画像ですが、どうやらGoogleはロシアに対する抗議の意味を込めて、ロシアの軍事施設・戦略施設に関する高解像度の衛星画像をGooglemapに公開し始めたようです。
1ピクセルあたり0.5mの解像度とのことですが、もうめちゃくちゃ見えます。(他の衛星画像などではモノによって30cm解像度とかもあります。)
 
これらによってロシア軍の施設規模や収容人数、航空機数などの推定があからさまになります。研究も進むかもしれません。
 
リアルタイム画像では無いので、これが今回の戦況にただちに影響する訳ではないでしょうが、Googleの意思表示(いやがらせ)です。
 
 
昔は軍事的に秘密だった場所は地図上に表記しないとか、それこそ天気予報まで秘密だった時代もあったのですが、現代は商業衛星でも光学探査以外に他の波長も活用して探査して地球丸ごと丸裸です。軍や政府機関などは勿論もっと詳細に把握しているでしょう。
 
OSINTは使い方によっては非常に役立ちますが、収集した膨大なDataを精査し必要な情報を取捨選択しInfomationとし、裏取り、分析などをおこなってIntelligence に高める事が大事なんでしょう。
 
日本語ではdataもinfomationもintelligenceも、ざっくり情報と訳しますが、このあたりに何か情報に対する認識の「違い」があるように思います。
 
これを誤ると「好ましい情報だけを取得」(確証バイアス)して「脊髄反射的に安易に拡散する」ことになり、フェイクニュースの片棒を担ぐことになりかねないので、私はできる限り注意するよう心がけていますが、これがなかなか難しい。
 
また日頃信頼している人の言動や、印象に残った本の著者などは無条件に信用してしまうことにも注意しています。
 
このことは安全保障や軍事に限らず全ての分野・産業に通じると思います。
 
日本はこっち方面に疎すぎると常々思っているのですが、多数の一般人の
 
集合知
 
は戦争の抑止にきっと役に立つはずです。もっと勉強して能力を高めたいと思います。
三人寄れば文殊の知恵ですよ。
 

どうすんのこれ・・・

ロシアよ…
 
スラヴァ級大型巡洋艦「モスクワ」(黒海艦隊旗艦)が撃沈されてどうすんのこれ…被害甚大やで。ますます士気が下がるでしょーに。
 
アメリカ相手に飽和攻撃するために作った巡洋艦が、ウクライナの陽動とUAVの飽和攻撃のスキに鈍い対艦ミサイル(亜音速)ぶち込まれたようやけど・・・先月は揚陸艦弾道ミサイルで沈められてるし・・・(弾道ミサイルでも相手の位置がバレて動かなければ当たる)
 
 
ウクライナ自前の兵器でさえこれだけできるのに、イギリスがハープーンを供給したら、数も揃ってロシア艦船は沿岸に近寄れないんちゃうか。
 
これでオデーサ(オデッサ)を抑えても、海からの大規模な上陸や補給ができないし、広範囲の防空もできないし・・・
 
これ、日本も参考になりますなぁ。亜音速の対艦ミサイルでも使い方で役立つし、もっと速くなればさらに。
 
日本は中国の接近だけ阻止できりゃええもんな。
 
 
しかし・・・このうえノルウェースウェーデンNATO加盟したら、バルト海艦隊(バルチック艦隊)がホンマに無用の長物になるで。ポスポラス海峡封鎖されてるし。
 
陸から攻めてもジャベリンとスティンガーでやられてるし。
 
 
あいつらますますABC兵器の使用に傾くぞ。無差別大量殺りくの始まりや。
 
 
==教訓==
艦艇に首都の名前はやめましょう。沈んだら凹むやろ・・・
 
そういやアメリカの空母って歴代大統領名あるんで、意地でも沈められる訳にはいかんぞ。まぁ沈めに行くやつはそうはおらんと思うけど。
 
 
それはそれとして日本は一日でも早くASEANを説き伏せましょう。色んな意味で。
 
 
                         (ニュースを聞いた直後の投稿こっそり公開)

イージスアショアおさらい

北の将軍、撃ちまくる!
北朝鮮金正恩が政権を引き継いで以降に、昨年末(2021)時点で94発のミサイルを発射し、4回の核実験を実施。今年は既に10回14発(うち巡航ミサイル2発、失敗1発)で、以前は難しいとされていた「長射程化」「発射方式の多様化」「核弾頭の小型化」「固体燃料」「再突入体」「多弾頭化」「高機動化」など技術的課題は克服してきています。
 
なにより私が危惧しているのは、厳しい経済制裁と国連決議にも関わらず、その発射”数”です。ミサイル本体や発射器などの製造がこれほどのペースでできるとは驚きです。
 
中国は当然ですが、北朝鮮のミサイル能力向上に伴い、弾道ミサイルに対する防空能力の向上が課題となったため、地上配備型イージスシステム(イージスアショア)の設置が望まれましたが、紆余曲折があり迷走しています。
 
ロシアのウクライナ侵略や本年3月24日に北朝鮮が新型とされるICBM大陸間弾道ミサイル)火星17号を打ち上げたりと危機意識が高まっているようですので、自分のためにここではそのおさらいをしていこうと思います。
 
《地上配備型イージスシステム(イージスアショア)》の利点
・米海軍、自衛隊でも実績のあるイージスシステムを地上設置型にし、ミサイル防衛に特化したもの。
・24時間365日間断なく弾道ミサイル防衛がおこなえる。
・ミサイルはSM-3・SM-2・SM-6など各種を運用できる。
・人員と艦船不足の海自の負担軽減ができる。
・艦船と異なりライフサイクルコストが抑えられる。
ルーマニアポーランド、グアムでも運用実績がある信頼性。
護衛艦に搭載しているので訓練期間も短く済む。
・陸上であるので補給が艦船に比べて容易
《経緯》
平成29年(2017)12月 国家安全保障会議閣議を経て導入を決定
平成30年(2018)6月 新屋演習場(秋田県)、むつみ演習場(山口県)を候補地とした旨公表
平成30年(2018)6月 地元(阿武町議会全員協議会)が、ブースター落下の懸念を提起、防衛省は安全な場所に落下させると説明
平成30年(2018)10月 測量・地質・電波環境などの調査開始
令和元年(2019)5月~ 地元説明会などを開始
令和2年(2020) システム改修のための協議をアメリカ側と開始
令和2年(2020) システム改修によるコストと改修期間の増大が判明
令和2年(2020)6月 イージスアショア配備のプロセスを停止すると河野防衛大臣(当時)が公表。
時系列をざっくり並べるとこんな感じです。
 
《なぜこの2か所なのか》
・演習場であるため、土地取得に時間が不要で電力などインフラがある程度整備されている。
・遮蔽物が少なくレーダー視界がとれる。
陸上自衛隊による基地警護が可能な点。
・システムを多数配備すれば迎撃能力は高まるが、コスト面、運用面などから最も効率的に日本をカバーできる数理的な観点から、秋田・山口などの周辺であれば2基で済むとの判断。
他にも候補地はあったんですが、その候補地が落ちた理由は割愛。
 
《配備プロセス停止理由》
ブースター落下による地元への影響が懸念されました。これについては当初防衛省側は迎撃ミサイルSM-3の発射ブース―ターを海や演習場に落下させるように改修し制御すると説明したのですが、その後に供給元であるアメリカ側と協議した結果、大幅なシステム改修が必要でコストとそれに伴う改修期間が10年程度かかるだろうことが判明。この方式は得策では無いとなりました。
 
費用はともかくも急速に近代化が進むミサイル技術のまえで10年もの時間を浪費できないのは確かですが、現段階で既に5年を浪費しています。
 
 
そもそも核攻撃の脅威に瀕している時に、迎撃ミサイルのブースター落下を気にするのは馬鹿げているとしか言いようがありません。
 
ルーマニアポーランドにも配備されているイージスアショアですが、そんな話は聞いたことが無いですし、まして日本は周囲が海であるにも関わらずです。言い換えれば、「核ミサイルが東京に落ちるのは構わないが、自分の近所にブースターが落ちる可能性が少しでもあるのは嫌だ」となります。
 
これを言いだすと極論すれば都市上空でミサイルや敵航空機の迎撃すらできません。撃墜したミサイルの破片や航空機が落ちる可能性があるのですから。
 
 
ほかにも、迎撃ミサイル発射場所ですから、敵の先制攻撃にさらされる恐れがあるとの地元反対がありました。しかし想定する敵国が、そもそも高価な弾道ミサイルや、核報復を招きかねない核攻撃を地方の一基地に行うことは合理的ではないでしょう。同じ攻撃するなら効果の高い都市部を狙います。
(勿論人間が関わる以上、合理的でない判断をすることはあります。)
 
これは可能性と費用対効果の問題で所謂リスクマネジメント。
安全が良ければ、登山をせず自宅にいるべきですが、訓練・装備・登山届けなど可能な限りの努力を尽くし登山するのと同じです。
 
また防衛省側の説明資料のミスが見つかったり、職員の杜撰な対応が非難されたこともありました。しかしイージスアショアは国内で初導入なうえ、また日本側はシステム本体の開発に関与していないので、システムの情報が充分に入手できずに不十分な資料しか作成できなかったののも要因としてはありえます。
 
しかし、それを十分説明できなかったのは大きな落ち度です。対抗勢力によるディスインフォメーションの可能性も噂されますが、それをさせないように備えるのも「政治」と「国防」の役割でしょう。
 
これらのことは防衛省の説明、自治体の理解、双方の努力不足でしょうし、軍事を忌避してきた戦後教育の成れの果てとも思います。
 
 
また有事の際の「保護処置」「避難」などの強制的な法整備が十分なされていないため、防衛省としては「お願い」するしかないのも現状です。
(説明会資料にレーダー照射してても飛行機が飛んでたら照射やめますとか書いてあるんですよ・・・)
 
基地問題同様に地元理解が不十分であれば進めることができず、首長や議員も地元民の意向を反映せざるを得ませんが、国家全体の問題であり、全国民で考えるべき問題のひとつ。
 
端的に言えば、政治とは多数の利益を少数の利益に優先させることであり、その選択権を我々は選挙によって委託したのです。特に危機的状況においては大多数の国民を守るためには少数の不利益を受容してもらうことに他なりません。
 
資料のミスや不誠実な対応など防衛省の手落ちも相当にありましたが、国防に関わる問題であり、防衛大臣や総理などが真摯に対応すべきであったと思います。
総理が地元に直談判しても良かったくらいです。
 
秋田県知事》
3月24日の北朝鮮によるICBM(火星17と推定)発射によって、佐竹秋田県知事は「本当に極めて遺憾だが、遺憾と言っても(北朝鮮は)聞かない。防衛をどうするか真剣に考える時期でないか」と取材に答えましたが、
 
え?いまさら何を・・・
 
感しかありません。当時から当事者だったのに、能天気にもほどがあります。
 
 
《選択肢はない》
ともかくも北朝鮮弾道ミサイル対処は必須であるため、イージスアショアに変わる案が策定されてはいますが、どれも不完全なものばかり・・・迷走としか言いようがありません。
 
コストパフォーマンスにおいても最適解は「イージスアショア」一択です。弾道ミサイル防衛はSM-3が担い、巡航ミサイルはSM-6で対処、ミサイル開発とソフトウェア改修によって、将来的にはさらに高度な迎撃が可能になるでしょう。
 
現在は弾道ミサイル防衛能力がある海自のイージス艦ミサイル防衛を実施していますが、艦船は任務・休養・メンテナンスが必要なため、交代でローテ―ション配置となります。配備された艦は常時ミサイル監視に貼り付けられる事になり、その間は他の作戦、訓練、監視に使えません。訓練時間の減少は練度低下に繋がるうえ、そもそもイージス艦は艦隊防空が主な任務です。
 
《自助努力を》
前回も触れましたが、ウクライナに世界が味方しているのは、自国の必死の戦いがあってこそでしょう。ウクライナよりもはるかに資金力も技術力もある日本が自助努力をせず他力本願では、有事の際には誰も助けてくれないのではと思います。
 
 
今回のロシアの侵略行為によって日本でも安全保障や軍事に少しでも関心が高まればと願いますし、政府・議会には具体的な行動をお願いしたいものです。
 
どうやって抑止し、抑止が破たんした場合はどうやって防ぎ、どうやれば相手は諦めるのか、そのシナリオづくりと装備・法体系を具体化しなければなりません。国際関係づくりも重要です。
 
 
日本のドタバタ劇を見て中国・北朝鮮・ロシアは呆れているかも・・・
 
ロシアの件でもそうですが、無慈悲・無遠慮な暴力は存在するんです。話し合いなんて通じると思いますか?なんでもそうですが能力を備えるのには時間が必要なんです。もう猶予は使い果たしたんじゃないですか?
 
(住民説明会用資料、すっごく気を使ってるんですけどね。他国ならあそこまでは配慮してないでしょう・・・)