海洋立国論

勉強のつもりで書いています。

北朝鮮の挑発と朝鮮半島有事

先日、日本のEEZ排他的経済水域)に北朝鮮のミサイル(ノドンERか?)が撃ちこまれたことは周知の事実ですね。
最早看過できないレベルにきました。
同じ時刻に同じ場所へ三発とも着弾させています。

G20の最中に(しかも議長国は中国)撃つとは意外でした。しかも着弾地点の距離は、方向を変えればG20開催地であることと、最大射程で発射せず1000キロという意図した距離で着弾させていることは「有事」を想定せざるを得ません。

弾道ミサイル試射から実践運用レベルへ到達しました。予想以上に早く進行しています。
核実験も頻繁におこない、威力をあげており弾頭の小型化も進んで製造能力も向上していると見なければなりません。

日朝間は正式な国交が無いこともあり、相手が対話に全く応じないうえ、安保理の決議もなんら拘束力を持たず無視し続ける以上、こちらもしっかりと準備する必要があります。

海自は弾道ミサイルに対してはいつでも迎撃可能な状態(即応体制)にありますが、前回も書いたように、現段階では敵策源地攻撃能力が無い我が国がどうなるのか、どうすべきかを考えなければなりません。

まず北朝鮮ができることといえば、弾道ミサイルでの攻撃と特殊部隊での重要施設(インフラへの破壊活動)への攻撃。
あとは国内にいる工作員の騒乱などでしょう。
見かけの兵力は大規模でも装備が旧式で我が国に進行する能力はありませんし、巡航ミサイル爆撃機もありません。

一方で我が方は弾道ミサイルはMD(ミサイル防衛)によって迎撃できますが、完全ではなく、着弾する可能性は排除できません。

北朝鮮の特殊部隊は小規模な攻撃ですから、被害は限定的です。
しかし、過去にも言及したように「国内法」が足かせになり迅速な対処(武力攻撃による制圧)が可能かどうかは疑わしい。

さて、数発のミサイルであればMDで対処可能ですが、大量にミサイルを同時発射されれば対応能力を超えてしまうこともあります。

これを飽和攻撃と言いますが、旧ソ連がアメリカに対抗するため採用していた戦術です。
相手の対処能力以上の大規模な攻撃をすることですが、具体的に言うと、迎撃ミサイルを50発装備していても当時のレーダーでは同時に捕捉誘導できる限界が低く数多くのミサイルを撃たれると、対処ができなくなりました。
それに対処するため「イージスシステム」が開発されたのですが、これは「対艦ミサイル」の話。

弾道ミサイル防衛は「イージスシステム」でも多くのリソースを割く為、同時対処能力に限界があります。(現在テスト中なのは、弾道ミサイルと対艦ミサイルの同時迎撃で一応の成功を納めています)。
北朝鮮が多数のノドン、ムスダン、テポドンを混在させ、TEL(移動式発射台)も使って複数を日本各地に発射されれば対応能力を超えます。

MDは非常に高価で運用にも高い能力が必要であり一朝一夕に増強できるものではありません。迎撃ミサイルの数を増やしても周辺の装備(レーダーやリンク、射撃管制など)が揃わないと意味がありません。

また、我が国の法律では「領海と領空(沿岸から12カイリ。約22kmほど)」に侵入した場合は迎撃可能ですが、それではあまりに近すぎます。
EEZ排他的経済水域)もしくはADIZ防空識別圏)内に侵入すれば迎撃可能とするなど法整備を行い、周辺国の理解を得る外交努力が必要と考えます。

こうなると初撃をどうにかしのぎ(被害をこうむる可能性はそこそこあります)、敵策源地攻撃となるのですが、これにはアメリカが対処するしかありません。
毎回言いますが、自衛隊にその能力(適策源地攻撃能力)は全くありません。

日米安保発動の理由づけとして、我が国がまずは独力で防衛にあたり、これの能力を超えた場合にアメリカが出るという順番になります。
日本が最大限の努力をしないと、アメリカの世論は軍事行動に賛成しないでしょう。
日米安保が有効に機能するのかどうかは日本次第です。

ただし、北朝鮮が韓国を攻撃した場合は話がかなり違うと考えます。
現在は「休戦」状態である朝鮮半島ですが、北朝鮮が38度線を超えて攻撃をした場合、休戦ラインに駐留している米軍が標的となります。
攻撃は弾道ミサイルはあまり使用されず、38度線から首都であるソウルは近距離であるため、迎撃不可能な「りゅう弾砲」「ロケット弾」などの一斉射撃が最初でしょう。
その後に米韓相互防衛条約によってアメリカは駐留軍の支援に増派することになります。

その際の前線基地(もしくは後方支援基地として)は日本です。
これをしっかり努めないと世界から日本は孤立することになります。
隣国が危機に瀕し同盟国のアメリカが支援に向かうのに、関わると巻き込まれるからという理由で何もしないなどと先進国として、また経済力3位の国として、ある意味では軍事大国として、無責任の誹りを免れません。世界での日本の信用は地に落ちます。

後方支援としてあるのは、在日米軍基地防護、物資輸送(食料や弾薬、装備品)日本海側の対潜哨戒などでしょう。

しかし北朝鮮は弾道ミサイルによって在日米軍基地への攻撃も辞さないかもしれません。
MDで防御したとしても、在日米軍基地を攻撃したと言う事実は「全面戦争」となり、北朝鮮は崩壊します。

そうなると困るのが中国。日米韓が勝利した場合は、国境沿いにアメリカの息のかかった統一韓国が生まれるかもしれません。また北朝鮮保有している核能力の流出もあります。
それを避けるため北朝鮮が負けそうになったら、仲介役・調停役に入ることもあります。

同じく国境を隣接しているロシアも同じように動くかもしれません。
朝鮮半島北半分にロシアの息のかかった政権を誕生させると、海洋進出への足掛かりが得られますし、中国の進出を阻むことができるからです。
もしかしたら混乱に乗じて北半分もしくはその一部を切り取りにくるかもしれません。口実は自国民の保護や停戦監視、国境警備などいくらでも考えられますし、クリミア半島での出来事を考えると、そう無茶な話ではないと思います。

地政学で言うところの「リムランド」に位置している日本は、有事に備えての想定と法整備、軍事面での整備と訓練を、否応なくしなければならない地理的条件にあると思います。
日米安全保障条約には「極東の平和と安全」がうたわれており、極東地域(明確な線引きはありませんが)は日米共同で安定を図るのがその趣旨です。

第一次世界大戦以後のヨーロッパは当時のドイツに対し、苛烈な賠償を行わせドイツ国内の愛国心に火をつけました。
その後ヒトラーが率いるドイツの横暴に手をこまねいて戦争を引き起こしました。
このような事態にならないように如何に我が国は備えるべきなのかを考えなければならないと思います。

写真は陸自の10(ヒトマル)式戦車「装備品ギャラリーより」

画像に含まれている可能性があるもの:空、屋外

敵基地(策源地)攻撃論の非現実

ミサイル防衛に絡みいくつか書きましたが、ミサイル防衛では完全無欠のものは無いため、どうしても行きつく先は「敵基地攻撃」になります。

特に北朝鮮を想定した場合は、このオプションを検討する事になりますが、中国に対してはあまりの非現実性に防衛省でも検討すらしていないようです。

意外かも知れませんが、「専守防衛」の自衛隊は実はこのような事態においては、法的には敵基地(策源地)を攻撃可能とされています。敵地への攻撃にはいくつかの分類がありますが、国際法上も憲法上も可能なものとして「反撃」による敵基地攻撃は可能となっています。

相手が殴りそうになってきても、歯を食いしばって、最初の一発は殴られなければ仕方が無いんですね。

自衛権の発動の三要件は以下の通り

(1)我が国、または我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること

(2)これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと

(3)必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと

これを素直に解釈すると、やられた時には、相手の基地を攻撃する他に危機から逃れる方法が無い場合は実力行使可能である となりますね。

ただし、日米安保において米軍が5条を適用し武力行使した場合は、この要件に当てはまらないと解釈もできます。(適当とされる方法があるため)
しかし一方では集団的自衛権の一環として(関連法整備がまだですが)米軍の任務の肩代わりをすることはあるでしょう。
防空監視や対潜哨戒、基地警護、ロジスティックなどの「楯」としての役割です。

仮に北朝鮮の中距離弾道弾ムスダンやテポドンによる攻撃について考えると・・・

ムスダンは射程距離から考えると「グアム」攻撃用です。
日本向けにはオーバースペックですが先ごろ書いた「ロフテッド軌道」で打ち上げると、日本にも着弾させることができます。テポドンは日本のほぼ全土を射程内に収めています。

ミサイルの脅威を取り除く為、時々言われるのが「敵基地(策源地)攻撃論」なのです。
要は「これ以上やられる前に策源地(攻撃の発生するところ。基地とは限りません)を壊してしまえ」です。

日米安保によって自動的に米軍が攻撃するとは限りません。
まずは一義的に自衛隊が攻撃する事になるのですが、種々の問題があり現実性は非常に乏しいものです。

理由を列挙していきます。

攻撃するには・・・
(1)航空自衛隊が主役となります。
海自の護衛艦には対地攻撃力は殆どありません。また有事は対潜哨戒と弾道ミサイル迎撃などで手一杯でしょう。しかし陸自は上陸戦となるので、正面戦争になります。中国が「侵略」と騒ぐことになりますし、この選択肢はありえません。

(2)空自の装備では攻撃できない。
敵地攻撃の装備がありません。有効な攻撃には「爆撃」がありますが、爆撃機は持っていませんし、また主力戦闘機F-15Jでは航続力が不足します。
解決するには空中給油機が必要ですが、戦闘機に比べ圧倒的に数が足りません。戦闘機を爆撃に使うなら護衛機が必要ですが、やはり数が揃いません。

(3)韓国の同意が得られない。
日米・米韓では締結しているような「防衛協力協定」が日韓では結ばれていません。
韓国のドタキャンなどもあり交渉はなかなか進展しません。
その為、現在の関係では韓国の領空通過は認められないでしょう。また韓国の基地を空自が使用することも同様にできません。

(4)どこを攻撃するのかがわからない
弾道ミサイルはいつもテレビで見るロケット発射台みたいなもので発射される訳ではありません。
近年はTELと言う移動発射器(トレーラーで運んで発射する)で運用する事が多くなっていますし、北朝鮮も相応の数を揃えています。
山間地に隠れたらレーダーも衛星もなかなか見つける事は困難です。
世界中でケンカしている米軍でも全てを発見し破壊する芸当はできなかったのです。
固定サイロも頑丈なコンクリートで固めて地下に設置すると、巡航ミサイルごときでは破壊できません。まして移動目標を攻撃する能力はトマホークは乏しいものがあります。

策源地攻撃はこのように難しいものです。

よく書きますが自衛隊には「戦力投射能力」が、全くと言っていいほどありません。

なんだかんだといっても日米安保に依存するしか無いのが現状です。
これは「安全保障のジレンマ」をはらみ、「巻き込まれるおそれ」と「見捨てられるおそれ」もあり、満点の回答ではありません。

経済・対話・軍事 三位一体となって取り組んで行かなければ平和な時代は続かないのが常です。人間の本質は「戦争」なのかもしれません。

あの物理学者 アルバート・アインシュタインはこう言っています。

「人類が存在する限り、戦争はなくならないだろう。」

そして、こうも言っています。

「我々は平和のためには、英雄的な犠牲を払って戦争に備えなければならない。それ以上に重要で大事な任務はない。 」

(写真は航空自衛隊HPより引用)

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ミサイル解説

用語集的になりますが、ミサイルについての基礎的解説です。

ミサイルと一言で言っても種々あります。網羅的に説明を・・・

※ミサイルのおおよそ一般的な基本構造(先端部から)

 シーカー(目標を探索するセンサー部)誘導システム・推進剤(燃料)・ロケットモーターまたはターボファンエンジンなどの推進部・安定翼や制御翼などの翼でできています。

※ざっくりとした分類

巡航ミサイル
有名なのは湾岸戦争でも使われた「トマホークミサイル」です。
ミサイルに飛行のための翼を取りつけたもので、発射器などから発射後、畳んでいた翼を展開し水平飛行し目標へ向かいます。

弾体は大きいので高性能な機器を搭載でき先端のカメラの情報、地図情報、GPS誘導、衛星とのリンクによる目標指示も行いつつ長距離を飛行(射程3000km)、極めて高い命中率(半数必中界10m以内らしい)を誇ります。

プログラムや誘導に従ってレーダーに見つかりにくい低高度で長距離を飛ぶことができますが、推進にはジェットエンジンの類を使いますので、ミサイルとしては速度が遅いので発見されると撃墜されやすいのが欠点です。
しかし欠点を補うため、一度に多数を発射することが多いようです。

過去にアメリカは「トマホークミサイル」に「戦術核」を搭載していましたが、現在は全廃しています。
性質上、固定目標(ミサイル発射台とか基地とか)に用います。

発射プラットフォームは「戦闘艦」「潜水艦」があり、イラク戦争時には多数が使われました。自衛隊は敵基地攻撃能力を持てないため、巡航ミサイルを装備していません。が、在日米軍はたっぷり保有しています。

日本が敵地攻撃力を持つなら、最初に選択されるのがこのトマホークの配備でしょう。イージス艦の垂直発射器(VLS Mk41)をそのまま使用できるので改修が簡単ですみますし、その他の装備に比べ低コストで運用も簡単。

「 ○○ 対 ○○ミサイル」
これは発射プラットフォームと目標の種類によって使い分けています。
○○にはおおよそ以下がはいります。

艦・・・艦船 空・・・航空機 地・・・地上目標

つまり「艦対艦ミサイル」なら、戦闘艦が発射し艦船を攻撃するミサイルという事です。

「地対空ミサイル」なら、地上の発射器から航空目標を攻撃するミサイルです。前回のPAC-3ミサイルはこれに該当します。
水平線ギリギリを飛行するもの、高高度まで打ち上げるもの、軽量なかわりに誘導が簡便なものなど、使用する条件によって機能や特徴は様々です。

「弾道ミサイル」
前回も触れましたが、最初の数分間をロケットで飛行し弾道コースをとりつつ目標に向かって落下していくミサイルです。巨大です。
お金かかります。

ほぼ誘導は不可能ですが、対艦弾道ミサイルという眉唾物のミサイルを中国は開発したと・・・終末段階(落ちてくる時)の高速では誘導電波も届かないうえ、艦船は移動します。ただでさえ命中精度の悪い弾道ミサイル。成層圏以上から落とすとなるとまめつぶ以下の大きさの艦船を攻撃するなら、「核」しかないと思うのですが。

因みに前回のネタの主役は「潜水艦発射弾道ミサイル」ですね。

(写真はトマホークミサイル。尾部にレイセオン社の文字が^_^; 米軍広報写真より)

自動代替テキストはありません。

北朝鮮のSLBM試射成功

今朝の報道で知った方も多いかと思いますが、北朝鮮が「潜水艦発射弾道ミサイル」を試射し成功した模様です。

日本の防空識別圏内を飛行し日本海に落下しました。

今回の北朝鮮の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBMと言います)について愚考してみました。

通常、SLBMは最初の一撃を食らっても核報復力を保持するために使います。
基地を攻撃され破壊されても、海に潜む潜水艦から核ミサイルを発射し報復するのです。

これを防ぐ手段は「潜水艦を探知し必要なら先制攻撃し沈める」ことに尽きます。

今回のSLBMは500キロを飛行したとのことですから、発射位置次第では東京に着弾させることも可能となった訳ですね。
また、日本海側の原発を狙えばかなりの被害を与えることができます。これは核による恫喝に使えます。

日米の潜水艦は北朝鮮の潜水艦の位置を常に補足していると考えられますが、攻撃される前に撃沈できるでしょうか

日本の潜水艦の前では北朝鮮の潜水艦は、赤子の手を捻るようなもの。能力的には何の問題もありません。

しかし現実は不可能です。「専守防衛」という不思議なお題目に縛られている以上、先制攻撃はできません。
海上警備行動では警察力に比例しますし、防衛出動でさえ先制攻撃はできません。
米国は情報提供と日米安保に基づいて協力はするでしょうが・・・

核ミサイル発射の兆候を掴み、国家安全保障会議(NSC)を招集、防衛出動が発令、ミサイルは我が国を指向していると確信できてようやく迎撃可能。しかし発射施設を攻撃できず、(基地攻撃能力は自衛隊にありません)ミサイルを落とすのみ。

また東シナ海で中国が活発に領海侵犯を繰り返すなどをおこなっており、潜水艦戦力は日本海側だけに振り向ける訳にはいきません。
絶対数が不足しています。

日本には非常時における交戦規定はありませんので、現場の判断で「これはミサイル発射の兆候だ!」となっても勝手に攻撃はできません。
その都度指示を仰ぐことになりますが、潜水艦は海中にいるためリアルタイムな通信は簡単にはできません。水面近くまで浮上し通信を行うか、通信ブイを使い通信します。

その前に発射されておしまいです。

現実はこのような状態と私は認識しています。

また現場の判断で攻撃した場合、指揮官や乗り組み員は刑法で裁かれかねません。
重要施設に攻撃があった場合に、自衛隊を急派し防衛に当たらせるとしても、非常事態宣言もできないので、戦車の移動すら道路交通法や車両運送法など法律に縛られ容易ではないでしょう。

自衛隊法の改正、交戦規程の整備、非常事態宣言可能な憲法整備など早急な法整備を期待したいところですが、政治家は党利党略。リベラル派は「人命第一」「護憲」に縛られ、結果として現実を直視しないまま国民を危険に晒しています。
保守派も解釈変更の繰り返しでその場しのぎ。自衛隊員のみならず国民の生命を一番軽視しているのはこの方々のように思えます。

以前にも書きましたが「能力と意志」が行動を決めるのです。能力を得つつある北朝鮮に確固たる意志が芽生えたら・・・

画像に含まれている可能性があるもの:立ってる(複数の人)、山、空、屋外、自然

 

(番外編)終戦記念日

皇紀2673年)西暦1945年8月15日
所謂「玉音放送」(大東亜戦争終結詔書の放送)によって、ポツダム宣言の受諾を、天皇自らが国民に知らされた日。(終戦の日

この日が何の日か、何を意味するのかを知らない世代が増えつつある。これは大いに反省せねばならない。知らない事は誤った道を進むことになりかねないからだ。

あの戦争は我々に何を残したのか。何を失ったのか。
敗戦から71年目を迎え、我々は何を考え何を成すべきなのか。
先人は何を残したかったのか。何を守りたかったのか。

多くを考えるきっかけの日としていきたい。

戦は世界中で今でも行われている。
私にはそれを単純に「悪」と切り捨てる事はできない。またその説明もできない。しかし、事実を学び現実を見据えていきたい。

弾道ミサイル防衛

今回は弾道ミサイル防衛についてです。

北朝鮮が毎度毎度発射したせいで、名前くらいはご存知なはずの「弾道ミサイル」ですが、まず、弾道ミサイルとは何ぞや?から。

一言でいうと「ロケットの先端部に”核”などの弾頭部をくっつけて、最初の数分間をロケットによって加速させ、宇宙空間まで高く打ち上げ、放物線を描く軌道で(野球のフライのように)目標点に落下させるミサイル」です。

発射の仕組みなどについてはここでは詳しく触れませんが、このミサイルを如何に防ぐか?を今回は解説します。

弾道ミサイルの特徴はその速度と到達高度です。

落下時は秒速.数キロに達し(北朝鮮の中距離弾道ミサイルのノドンで約3Km/S・マッハ9くらい)、発射から5分後くらいで最高到達高度に達し、およそ320km。(国際宇宙ステ―ションのISSが高度400km)
先ごろ、北朝鮮はムスダンと言う弾道ミサイルを試射し「ロフテッド軌道」という軌道に打ち上げましたが、この時の高度は約1000km。

さて、隣国の中国も北朝鮮も我が国に到達する、もしくは照準を定めている弾道ミサイルを多数(北で50以上、中国は数百)保有しています。

当然、有事や暴発に備えて防衛システムを構築しておく必要があります。その為のシステムを発射後の対応順にご紹介します。

【現状では】

1)発射を「情報収集衛星・早期警戒機・イージス艦のレーダー・地上設置のレーダー」などのセンサー群によってキャッチ。

2)即座に軌道計算を行い迎撃に適したポイントが割り出されます。

3)イージス艦搭載のSM-3 ブロック1A/1Bミサイル(保有数は32発・迎撃率80%前後)を発射します。
ミサイルの到達高度は500km~600kmなので、弾道コースの頂点付近のミッドコースで迎撃。

4)撃ち漏らしたミサイルは地上配備型のPAC-3ミサイル(348発保有)が迎撃。迎撃率は100%。

【実はこれに「在日米軍」も加わります。】

在日米軍イージス艦に搭載されているSM-3ブロック1A/1Bミサイルは45発。PAC-3は400発。

来年度以降にはSM-3ミサイルは、自衛隊が48発、在日米軍が63発とさらに増加。

因みにイージス艦ならどれでも発射できる訳では無く、イージスBMD(弾道ミサイル防衛)システムを搭載した艦のみが対応可能です。自衛隊では4艦。

【今後】
多様化し高性能化する弾道ミサイル攻撃に対応するため、さらに以下の検討・研究・実験が行われています。

1)SM-3ブロック2Aの開発と配備。

これは日米共同開発の新型迎撃ミサイルです。到達高度1000~2000kmほどで、ロフテッド軌道を描いて発射するムスダンにも対応します。イージス艦から発射します。

2)イージスアショアの配備

イージス艦に搭載されているイージス戦闘システムとBMDですが、これをそっくりほぼそのまま地上に配備しちゃおうというものです。艦と異なり機動性はありませんが、低コストで安定的な運用がおこなえます。NATOミサイル防衛システムとして、まずはルーマニアで運用が開始されました。我が国にも配備すべきだと言う意見があります。

3)THAAD(戦域高高度防衛ミサイル)システム の配備

先ごろ韓国が導入を決定したシステムで、米国以外では初。SM-3の迎撃(ミッドコース)とPAC-3(低高度)の迎撃の間を補完する迎撃システムで、発射器とレーダーなどシステムは移動式。PAC-3より広範囲で高々度で迎撃します。我が国への導入はあるのでしょうか?レーダーだけは既に自衛隊が使用しており、ミサイルの発見追尾に利用しています。

このように北朝鮮の弾道ミサイル実験によって我が国のミサイル防衛は一層高度化を加速しているようです。

弾道ミサイルはその性質上、命中精度が低いためにピンポイント攻撃が苦手です。その欠点を補うのが「核」であり、狙いを少々外しても核の破壊力でカバーする性質のものです。
その為弾道ミサイルが最も脅威な点は、「核とセットにされる」ことが前提であるからです。

これほどの備えをするという事は、一発のミサイルがどれほど危険かという事の証左ですね。

(写真は米軍HPより)

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そうりゅう型潜水艦と武器輸出

我が国は「武器輸出」を解禁しました。

長らく国内でのみ製造し調達していましたが、現在の兵器の開発コストの高騰もあるうえ、現在主流になっている国際共同開発の流れや、武器輸出による安全保障関係の向上も見込めることで武器輸出を解禁し、装備の調達、輸出、取得を一元的に管理するため「防衛装備庁」を2015年に発足させています。

解禁とされたことで我が国と安全保障上、関係の深い国々との交渉が始まっており、以前夜ネタで書いたP-1対潜哨戒機を海外の航空ショーでデモ飛行させて売り込みを図ったり、US-2飛行艇もインドに売り込みをおこなっています。

我が国以外は既に武器輸出を行う事で関係強化に努めたり、収益を得るなどしています。隣国の韓国、中国は非常に積極的におこなっており、外貨獲得の一つの柱です。

我が国の兵器は非常に優秀で各国が既に興味を示しています。

まず、兵器の輸出がなぜ安全保障に資するのか?という事ですが、一般的には兵器を外国に輸出する場合、モンキーモデルと言う自国兵器のダウングレード製品を輸出するか、コアになる技術はブラックボックス化するなどし開示しないなどを行います。

兵器の運用には訓練設備の導入や訓練自体も必要な為、軍民とも交流も深まります。
また定期的な整備も必要となりますし、追加調達も必要であったりしますので、輸入国は輸出国に逆らえない状況を作ることができます。
相手国の状況次第ではライセンスの停止や後継品を与えないなど対抗処置もとれます。

こうなると輸入国は他国のものに乗り換えることとなるのですが、コスト高となります。そもそも輸入を考えている国は、自国での開発力がないか資金が無い場合が多いので輸入するのです。

また、我が国と軍事的に友好関係を作りたい場合もです。

さて、タイトルの「そうりゅう型潜水艦と武器輸出」についてですが、輸出解禁後に我が国はオーストラリアに「そうりゅう型潜水艦」を輸出すべく働きかけていました。

なんせ4兆円規模の大型受注です。親日政権であった時に我が国に「そうりゅう型」を売ってくれないか?と話があり、安倍総理が「前向きに」進めた話です。
アメリカも「日本製」をオーストラリアに勧めていました

しかし、これにはドイツ、フランスも名乗りを上げており行方が注目されていました。
日本が戦後初の武器輸出(それも先端技術の塊)をするのか?という事です。

オーストラリアは日米豪の環太平洋での同盟国で、海洋進出が著しい中国とのせめぎ合いも今後あるかもしれません
今は東シナ海南シナ海での話なので、多分オーストラリア国民は対岸の火事なんでしょうが・・・
そもそもオーストラリアは潜水艦建造技術が無く、輸入するしかありません。

一時は日本が選定されるのではないか?と言われていましたが結果はフランスになりました。

何故フランスになったのか?を検証します。

オーストラリアの要求・条件としては・・・

1)現政権は親中派であり、中国を刺激したくない。
2)雇用問題もあり国内での建造に拘っている。
  つまり技術供与をして欲しい。
3)ただしアメリカは日本を推している。
4)EEZ排他的経済水域)が広いので、長期間の任務が可能な
  大型艦が必要だが、最も適した原子力潜水艦の運用能
  整備能力が全くない。
5)アメリカは原子力潜水艦は作れても、通常動力潜水艦は作れ
  ないロストテクノロジー。アメリカからは導入できない。
6)オーストラリア首相の訪中時に相当の働きかけがあったこと
  や、軍港であるダーウィン港の中国による租借など中国に
  よる外交的圧力が強い。

対して輸出側は・・・

1)そうりゅう型は通常動力潜水艦としては最大で静粛性や潜航能力などは高性能。自衛隊での運用実績も信頼性も高いが、日本での建造で完成品で輸出する。米国製装備品との親和性も高い。

2)日本は大型兵器の国際取引には素人で、ドイツやフランスは
  大ベテラン。
3)ドイツ、フランスは設計段階。もしくは計画段階。
4)フランスは原子力潜水艦を通常動力型に変更したものを提案。
  日本にはないポンプジェット推進を取り入れた大型艦
  静粛性と推進力に優れる。
5)ドイツは設計段階だが、AIP(非大気依存推進)機関が
  燃料電池であるため潜航時の速力が高い。
  ただし最新型をダウングレードとしたものを現地生産させる
  と提案。
  現行型や他の兵器の輸出実績も豊富でノウハウが豊か
  ので、機密保持に関する能力も高いため、自国兵器の先端
  技術漏えいに関しては心配していない。
7)ドイツ・フランスは中国との関係も日本より良好なため、
  オーストラリアにとっては中国を刺激しない。
8)日本政府は日米豪の軍事的強まりを高めて中国の脅威に対抗
  したいため乗り気だったが、防衛装備庁やメーカー
  (三菱重工川崎重工など)は、商業的なリスクや
  軍事情報の漏えいなどが心配で乗り気でない。

などなどが考えられますが、結果はフランスが選定されました。

大型艦であり、設計段階であるためオーストラリア仕様とできることと、現地生産が何よりも魅力だったのでしょう

まぁもっとも、一発の魚雷攻撃で場合によっては数百人の軍人が戦死する・させることのできる核兵器を除くと、現代最強兵器の潜水艦の輸出です。

その事に気づかない人が多いうえ、「自国製の兵器が他国で運用され戦死者を生む可能性」について、多くの政治家・国民が覚悟も無い議論すらされない現段階では選ばれなかったほうが良かったかもしれませんね。

(写真は海上自衛隊HPより)

画像に含まれている可能性があるもの:水、屋外