海洋立国論

安全保障・軍事について自分自身の勉強のつもりで書いています。

イージスアショア設置を考えた。

多極化する世界

北朝鮮の緊張が最高潮に達した時、政府は検討を続けていたイージスアショア(地上配備型イージスシステム)の配備を決定し、設置候補地の自治体への説明を開始しましたし、部隊の創設や組織の改変、DDH(ヘリコプター搭載護衛艦)の空母化の検討、長距離滑空弾や長距離ミサイルの研究及び導入など、自衛隊の重武装が進展しています。予算規模はそれほど増えていないにも関わらず、やりくりは大変そうですが、アメリカの傘に入っていればよかった冷戦時代とは異なり、世界は多極化してきており不安定的要素が増えてきていますので、仕方が無いのかもしれません。

 

マクロ的安全保障の視点

装備・武装を強化しておくことの意味は簡単に言えば以下のようになります。

1.我が国が敵対的な国家(もしくは不安定な国・組織など)による、武力による威嚇や恐怖を感じる。

2.その国が地政学的に近距離にあって武力侵攻が可能な距離であり、侵攻する能力がありまたその意志を否定できない。

3.我が国が相対的に強力な装備・武装があれば相手国はより強力な装備がなければ侵攻ができない。特に四方を海が隔てており、障壁の機能を果たすため、攻撃側はさらにコスト高になる。

4.攻めて得る利益より損失が大きければ攻めを躊躇するか諦める

5.正攻法より搦め手を考えたほうが良い

ま、島嶼部の占領などについては当てはまるでしょう。

 

これをガラッと変えてしまうのが「核」や「長距離巡航ミサイル」。

具体的には

1.南西諸島などを電撃的に武力侵攻し上陸。実際に中国の戦力投射能力は高まっている。

2.自衛隊が航空・海上優勢を確保しようと進出

3.自衛隊を退かないと、弾道ミサイル(核・非核は公言せず)を発射すると威嚇。中国の弾道ミサイルは日本のどこでも命中させられる能力を保有している。

4.上陸部隊が対空対艦能力を構築し、接近阻止を図る。

5.武力による奪還を自衛隊は選択できない。(安易に接近できないうえ、核による威嚇をされる)

6.既成事実化させ自国に編入し実効支配。

7.在日米軍の来援も威嚇によって接近を阻止する。

8.東シナ海の小さな島の取り合いにアメリカはどこまで関与するか?

 

核弾頭を装備した弾道ミサイルで日本を狙い恫喝したのが北朝鮮米朝会談後融和ムードだが、ムードだけで実際に非核化されたわけではない。(中国は一部の軍関係者以外はそれほど公言していないが、軍事的には北朝鮮以上の脅威であることは事実)

 

従来は十分な対抗手段が無かった我が国ですが、それをガラッと変えてしまうのが、弾道ミサイル防衛システム(BMD)で、そのひとつがイージスアショア。

※イージスアショアについては割愛します。過去記事(イージスおさらい)はこちら

ロシアが配備に反応していますが、嫌がる事は効果的な証明ですので、軍事的に中露が嫌がる事はやりましょう ( *´艸`)

 兎に角、前述の1~3をおこなったとしても3は通用しないかもしれません。

さらに、日米安保条約5条の適用になりかねず米軍に来援され、万一エスカレーションしたら米中紛争になりかねず、それは中国経済にも大打撃。(人民解放軍は米軍や自衛隊と異なり政府の統率が完全には利いていないような行動にでることがある)

幸いにもマティス米国防長官は日米同盟重視であり、この点は中国も軽視できないでしょう。

 

==閑話休題==============

ロシアはワールドカップ効果でなんだかいい雰囲気ぽく放送されてますが、私個人としてロシアはシリア・ウクライナで散々悪さしてますから信用していません。それとロシア女性は美人だけど、プーチン大統領は顔が怖い。

何度も言いますが、北朝鮮も「軟化」したっぽい雰囲気で、報道でも扱いが優しくなった印象がありますが、世襲の独裁国で核保有で実際に威嚇して国内は恐怖政治で国民飢えてて兄ですら殺害してますからね。

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地上配備の利点

自衛隊イージス艦弾道ミサイル迎撃能力を概ね付与されてはいますが、(改修中もあり)艦艇はその他の任務や乗員の上陸・休息、補修・点検などもありミサイルの監視だけに使う訳にはいきません。そもそもイージス艦は対潜対空などの任務を多用途に行うことのできる高性能艦であり、弾道ミサイル防衛だけに張り付けるのは能力の無駄遣い。訓練もままならず練度の低下が心配されます。

また米海軍もイージス艦日本海や太平洋側に張り付けて監視をおこなっていますが、米海軍にとっても運用に余裕がある訳では無く、同じように負担となっています。(おまけに事故で2隻修理中)

その点、地上配備型なら、8時間勤務で3交代で監視できますし、地上ゆえ保守も行いやすく運用コストは低コストで済みます。イージス艦1隻には300名程度(艦により異なる)が必要ですが、イージスアショアなら12名程度。3交代で36名として2基設置で72名。これで24時間365日監視し、万一の際には迎撃できるのです。実際には休日の代替要員、基地警護などもあるのでもう少し多くなるでしょうが。防衛省は1基当たり100名規模で検討しているようです。

システムは2基で2000億円の予定ですが、イージス艦に搭載しているレーダーとは違う新型のレーダー(SSRロッキードマーチン社製・探知距離1000km)を採用するようですし、導入するミサイルも開発コストが上昇していますので、5000億円になるとも言われてますが。

イージスアショアを設置したら狙われる!と言いますが、ミサイル防衛ができなければ、相手はもっと低コスト・低リスクの方法も採用できる可能性が広がりますし、重要インフラや都市、他の基地に狙いを変えるだけです。イージスアショアの設置自治体に直接ダメージが無くても国家へのダメージには変わりがありませんので間接的にダメージを負うのは地方です。

SM-6ミサイルも配備すれば、巡航ミサイルにも対抗できます。

ただ導入予定の新開発の迎撃ミサイル「SM-3ブロック2A」の迎撃試験結果は思わしくはありません。試験を重ね導入予定時には迎撃率を高めて欲しいですね。

また、東シナ海での中国の不当な進出に関与し抑止したければ、南シナ海での米英豪仏印などとの協調的な活動(航行の自由作戦への参加、演習)や今回派遣するDDH-184「かが」の派遣など国際協調路線をとる必要があります。その為には柔軟にイージス艦を運用できなければなりません。

これは我が国にとっても重要な南シナ海では巻き込まれの恐れが増えますが、東シナ海では巻き込むことができる可能性が高くなります。結果的に抑止力が高まります。

中国は軍備(大型駆逐艦・空母・その他船艇・戦闘機)を絶賛大増産中。西太平洋を自国の権益とし自由に利用したいのは、習金平が高らかに宣言。軍組織も改変しまさにシーパワー大国としてアメリカに取って代わろうと言うのか、アジアでの覇権国になろうとしているのか。それとも弱腰な態度(国際協調)をとったら政権を追われるからなのか・・・

 因みにこのうちの日米豪印をQUAD(Quadrilateral:4)と呼びますが、この4か国とASEAN東南アジア諸国連合:加盟10か国)との協力関係も強化されてきています。先の大戦では資源を求めて南方に進出しましたが、現代では協力関係を築いています。

 

コストと安全

軍事支出と民間支出は負の相関(因果関係ではない)があることが知られていますので、如何に低コストで効果的な防衛を考えていくかは大切な問題ですが、「脅威無き軍事支出と軍事支出無き脅威は国家の成長を阻害する」とも言われています。つまり「脅威がある時の軍事支出は経済を成長させる」し「脅威がない時の軍事支出は富の創出を奪う(銃を作るかバターを作るか)」し「脅威のない時には軍事支出を抑えれば豊かになる(平和の配当)」となりますので、バランスが難しいところですね。

 かといって強度の脅威となると、「安全保障のジレンマ(ゲーム理論)」でのナッシュ均衡が「軍拡競争」となり、結果的には互いが疲弊することになります。米ソ冷戦時にはソ連が崩壊しました。勝利した米国は軍事支出を抑制することができて、経済が好調になりました。

そのようにならないように脅威はコントロールしなければなりません。脅威度を高めない工夫として、国際的な枠組みや同盟、一般的には互いの富を増やす貿易なども並行しておこなわなければなりませんね。敵対的だからと言って「敵視」のみするのも、対話だと言って「丸腰」になるのも極めてバランスを欠いた行動です。

 

軍事行動は「能力」がある者が「意図」を持ったとき発生します。「能力」は武力と経済力、政治力などが揃ってこそです。「意図」は容易に変わりうるものですが、「能力」の構築には長い時間がかかります。 その点を見誤ってはいけないのでしょうね。