海洋立国論

勉強のつもりで書いています。

イージスアショアおさらい

日本にも「イージスアショア」導入が決まりました。まさか「THAAD」になるのかな?と思っていましたが、やはり「イージスアショア」でした。

今回は「イージスアショア」のおさらいをしておきます。

イージスアショアはイージス艦に搭載しているイージス武器システムの地上版で、ミサイル迎撃に特化したシステムです。

「イージスアショア」のハードウェア構成(勿論、細かな数字は機密事項ですので、おおよそこれくらいだろうと言われている数値です。仕様書やテストの様子などから推測されているものです)

・SPY-1レーダー

目標をまずは探知しなければどうにもなりません。

フェイズドアレイレーダー(SPY-1)と呼ばれる360度全周を常時見張りながら同時に128目標以上を追尾できるレーダーが受け持ちますが、探知距離は500kmほど。現在開発している新型レーダー(AMDR)は1000km以上らしい(^_^;)

・ミサイルランチャーMk41VLS

ミサイル垂直発射器です。コンテナ式になっておりこのなかに迎撃ミサイルを収納します。コンテナ式のため整備も容易です。

・スタンダードミサイルSM-3

弾道ミサイルを迎撃するためのミサイルです。現在はSM-3 BlockⅠAという型が海自のイージス艦に搭載されています。射程1000km射高500kmほどと言われています。テストは何度も行われており成績はほぼ満点です。新型の開発も進んでおりSM-3 BlockⅡA と呼ばれ射程は2000km射高2000km以上と物凄い性能です。これ以外に電源、冷却システム、射撃管制システム、データリンクシステムなど多くの付随するシステムがあります。


現在開発中のSM-3 BlockⅡAを装備した場合は1基あれば日本中をだいたいカバーしますし、2基あれば複層的にカバーします。同じイージスシステムでミサイルは(BlockⅠA)MD:弾道ミサイル迎撃能力を持ったイージス艦が2隻でカバーできると言われていますので、多分間違いないでしょう。

韓国は「THAAD」を配備しているのに、なぜ防衛省は今回「イージスアショア」の導入を決めたのは以下の理由があるのではと愚考します。

1)海上自衛隊イージス艦で運用実績があるので、ノウハウを蓄積しており作戦運用までスムーズにおこなえる。

2)整備設備、ミサイルなど共通するものが多いので維持費が安価になる可能性がある

3)ミサイル、レーダーの換装、ソフトウェアのアップデートで性能が向上する余地がある

4)イージス艦を前方進出させたり、早期警戒監視レーダーなど配備されているレーダーをセンサーノードとして活用しそれらとデータリンクする事により、実質的なレーダーの探知距離が広がり、イージス艦は監視、迎撃はアショアが受け持つことができ、イージス艦の能力に余裕がでる。このため、海上の他の脅威の監視に穴があかない。

5)常時配備のためイージス艦がドック入りや日本近海にいなくても(数が少なくても)迎撃能力を補完できる。

6)単純に迎撃ミサイルの数が増えるので、対処できる弾道ミサイルの数が増える。

7)SM-6とNIFC-CAも運用できるとあらゆる脅威に対処できるようになる。(NIFC-CAについては4月7日に解説しています)

8)当然ですが運用する人間の数がイージス艦を運用するより少なくすむ。

9)垂直発射器の数を増やせば迎撃数が増える。艦船ではランチャー数以上には増やせないまたランチャー全部にSM-3を搭載する訳にはいかない。

反面デメリットもあります。

1)ゲリラや先制攻撃の的になりやすい。先制攻撃する時はレーダー網を最初に潰します。

2)ばらして組み立てて移動できるらしいのですが、でかいので移動がやっかい。多分動かさないでしょうが。

3)設置場所の選定で揉めそう。青森、鹿児島、佐渡島、函館・・・管轄が空自か陸自か海自のどれになるかも関係しますし。

現在海自にはイージス艦が6艦あり、弾道ミサイル能力を付与されているのは「こんごう」「きりしま」「みょうこう」「ちょうかい」の4艦、「あたご」「あしがら」は改修中。新たに建造する予定の8200トン型イージス護衛艦2隻では初めから最新の弾道ミサイル対処能力が付与されます。

運用はノウハウのある海自が担当するのでしょうか。

海自は「破壊処置命令」が出っ放しで既に多く負担をしていますし、中国に対処するため潜水艦も増勢しています。任務が極めて多く人員の不足が心配されます。メカと違い練度の高い士官や隊員はそう簡単に育成できません。

空自はPAC-3や早期警戒監視レーダー(通称:ガメラレーダーJ/FPS-5)を運用していますが、近年中国による領空侵犯処置でのスクランブルで忙しい。

はたまた弾道ミサイルに直接対処していないが、基地警護能力のある陸自に新たに任務を与えるのか。どうなるんでしょう。防衛省の判断を見守りたいと思います。