海洋立国論

勉強のつもりで書いています。

戦い方を変えるNIFC-CA

以前にも概要を説明したことがありますが、前回・前々回との流れで再度取り上げようと思います。

イージス艦と呼ばれる戦闘艦があるのはご存知でしょうか。イージスシステムを搭載した艦艇を一般的にそう呼んでいます。そのシステムの中心となるのが「イージス武器システム」です。この特徴は多数の目標を同時に補足追尾できるSPYレーダーです。このレーダーは360度全周を常時見張る事ができ、多数の目標を同時に探知できる優れモノです。ソフトウェアの改修などでどんどんアップデートされ高機能化しています。

しかしレーダーである以上、超えられない限界があります。

それが水平線の向こう側です。地球は丸く、電波は直進するため、水平線の向こう側は視えません。できるだけ遠くを索敵する為にレーダーを高い位置に取りつけてはいますがやはり限度があります。

攻撃側は水平線の向こう側(OTH/超水平線)から対艦ミサイル、巡航ミサイルを発射、ミサイルはなるべく見つからないよう、またできるだけ近づけるよう海面ギリギリを飛行(シースキミングと言います)します。

まして中国が開発中の超音速対艦巡航ミサイルであれば、近くまで隠れて飛行し、そしてレーダーに捕捉されても速度が極めて速いため、防衛側は対処する時間が短くなります。これは艦船にとって非常に脅威です。中国にしてみれば現在進めているA2/D2(接近阻止・領域拒否)戦略を実現するため、できるだけ以遠で米海軍や海自を迎え撃ちたいのです。

しかし米海軍が運用を始めたこのNIFC-CA(ニフカ)というネットワークシステムはこの問題を解決し飛躍的に防空能力を高めます。

その運用はと言いますと・・・

まず高高度に最新のE-2D早期警戒機(航空自衛隊も導入します)を複数飛ばします。

飛行機なので勿論早く移動でき遠くまで見通せます。E-2Dのレーダーは非常に優秀で、ステルス機、小さな巡航ミサイル、弾道ミサイルまで補足し追尾できます。

探知した脅威の情報はTTNT(戦術ターゲッティングネットワーク技術)を使い、見通し外にあるリンク先の地上の基地や司令部、射手であるイージス艦などの艦船へリアルタイムで転送されます。そしてCEC(共同交戦能力)なども活用して適切な射手が選定され、低空目標ならSM-6ミサイルを発射し迎撃します。E2-Dは探知からデータの中継機能、管制と多くの機能を果たします。

SM-6(スタンダードミサイル6)は新しいミサイルです。現在SM-2が艦対空、SM-3が弾道ミサイル迎撃用として運用されていますが、このSM-6ミサイルは新型艦対空ミサイルで、従来のSM-2ミサイルが発射母艦からの誘導が必要であったのと異なり、発射母艦以外での誘導や、データリンクでの情報のやり取り所謂「撃ちっぱなし」ができるミサイルで従来より長射程(370km)となりました。

このミサイルによってイージス艦はシステムの負担が減り「同時交戦目標数」が増えることになります。発射母艦であるイージス艦には最新のイージスシステムベースライン9が搭載されていることが条件です。

NIFC-CAは「イージスシステム・ベースライン9」と「E-2D」「SM-6」の組み合わせによって従来よりも飛躍的に高い防御力を提供するものです。

このシステムは陸上、航空、海上のあらゆるものと統合運用が可能であり、米軍では各種のテストが行われています。

さて、自衛隊にも同じものがあります。イージス艦は米海軍に次いで保有数が多く、E-2Dは導入が決まり、SM-6は運用が可能なイージスシステム・ベースライン9搭載艦が建造されれば(予定あり)導入されるでしょう。

 

イージスシステムにはさらにイージスBMDという弾道ミサイル対応のためのシステムがあります。これも最新バージョンにいくつかの機能を付加すると、複数の弾道ミサイルに複数のイージス艦が対応します。どのミサイルをどの艦が迎撃するのか、いつ発射するのか、管制はどの艦が受け持つのかなどまで、情報を共有しながら対応します。平たく言うと、複数の移動可能なSPYレーダーで多数の目標を探知し、適切などれかが発射管制をし、適切などれかが迎撃することになります。

探知も発射も管制もすべてがリンクで共有されることになります。リンクで共有されたものは全てが一つの兵器として扱われるという事です。中国はこの点においてアメリカに大きく差をつけられています。

そして、次に日米で共同防衛ですね。例えば米軍のE2-Dが探知、日本のイージス艦が迎撃し、米空母打撃群を防衛するとか、日本の防空を行うとか・・・この場合においてもやはり「集団的自衛権」の運用になります。

もはや、単独で戦える時代ではありません。仕事もネットワークがなければ何事もできなくなってきたのと同じように防衛もローカルではできないのです。集団的自衛権はいわばLANみたいな感じでしょうか。

(SM-6ミサイル)

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