海洋立国論

勉強のつもりで書いています。

日本と韓国(朝鮮戦争―2)

2か月ほど前(2019/12/3)に、日本と韓国(朝鮮戦争-1)として、朝鮮戦争時の後方支援として日本の役割について書きました。主に「特別掃海隊」の事を書いたのですが、今回は海上輸送について纏めようと思います。(大まかな流れは前回に書いたので割愛します。)

 

終戦後から朝鮮戦争前までの状況

それまでの日本では戦時統制の「国家総動員法」「海運統制令」などによって船舶管理は「船舶運営会」が一元的におこなっていました。

占領後にGHQ連合国軍最高司令官総司令部)は船舶の移動を禁止しました。その後GHQが「日本商船管理局」を組織し、その下部組織として「船舶運営会」が存続されました。「船舶運営会」は「復員」「捕虜の送還」「復興資材の輸送」などを担うことになったのですが、戦争によって輸送船等がほぼ壊滅的被害を受けた日本には、十分な船舶がありませんでした。そこでアメリカから借りることになったのです。武装を取り外した輸送船、LST(戦車揚陸艦)などを改装し日本人船員の手によって運航されました。

1950年4月1日に戦時統制下で船舶の一元管理をしていた「船舶運営会」は「商船管理委員会」と名称を変更し、アメリカから「復員や物資輸送」の為に貸与されていた輸送船、LST(戦車揚陸艦)などはそのまま管理下に残されました。

朝鮮戦争勃発前において連合国側の主力であるアメリカは太平洋戦争以降、軍備を縮小しており、輸送船についても同様でした。これは政府支出を抑制し民間部門の拡大をおこなう必要があるからでした。(平和の配当と呼ばれます)

 

朝鮮戦争勃発

 6/25の開戦以降、北朝鮮軍の猛攻によって韓国軍は敗走を続け、あっという間に首都ソウルが陥落(6/28)、どんどんと南進するのを傍観している訳にはいかないため、急きょトルーマン米大統領マッカーサーに出撃を許可します。

そのため「日本商船管理局」は日本人乗員の船舶に戦闘部隊と戦車などを積載し海上輸送を行わせました。貸与されたLST、商船、客船、貨物船。多数の艦船が動員され、米軍の兵士や武器弾薬の輸送は勿論、韓国避難民の輸送までおこなっています。韓国の沿岸地形や港湾に詳しい日本人船長は高い評価を受けました。船舶の乗員だけではありません。港湾荷役作業にも多くが従事して北朝鮮軍の侵攻を裏方として支えました。

 

多くの日本人が働いた

朝鮮戦争のターニングポイントとなった「仁川上陸作戦」は、日本人運用の多数のLST、米軍指揮下に組み込まれた商船が運用され、同じく「元山上陸作戦」などでも港湾の荷役作業に多くの日本人が働きました。船舶だけでも2000名以上、荷役等も含めると人員は8000名以上となります。戦争期間中に機雷によって沈没する艦船もあり、荷役作業中の死亡事故もあわせて50名以上が死亡しています。傭船された船には、「日本丸」「海王丸」もあったようです。

 

タテマエによって消えた事実

タテマエとしては「GHQと民間企業との契約行為であるため政府は関与していない」となっていますが、占領下で政府に拒否できる訳もありません。しかし、このタテマエのため公式記録はほとんど残っていません。中曽根内閣時にも国会で質問がなされていますが、「確認しえない」のほぼ一点張りです。

 

すでにおこなっていた後方支援

当時は占領下であって特殊な事情のなかで行われた行為ですが、立派な「後方支援」です。ある意味では「平和安全保障法制」が成立するずっと以前に既に日本は米軍(国連軍)と一体となって「後方支援」をおこなっているとも言えますが、同時に不法入国する韓国人も激増すると予想した政府は、対策を島根県に要請していたり、九州各地や広島県呉(軍港)での空襲を警戒し対策を練っています。「後方支援」といってもリスクを負うことになります。

 

それでも支援した日本

占領下でGHQには逆らえない状況だったとはいえ、これだけ韓国の支援の為に働いた事実、その後の「日韓請求権経済協力協定(無償3億ドル、有償2億ドル、民間借款3億ドル合計8億ドル」「1970年代の円借款と無償資金協力(ソウル地下鉄建設、ソウル大学機材支援供)」「1983年円借款(7年40億ドル)」「1997年アジア通貨危機の際、IMF国際通貨基金)を通じて100億ドルの支援」などをおこなってきました。すべて日本国民の税金で賄われているわけですし、請求権協定時には外貨準備の大半がもっていかれたのです。

その見返りと言えば、一方的な李承晩ラインの設定による竹島の占拠、それに伴い日本漁民4000人の逮捕、8名の死者。近年では潜水艦に「安重根伊藤博文の暗殺を実行)」ドック型輸送艦に「独島(竹島の韓国名)」と名付ける、旭日旗問題・慰安婦像・徴用工判決・射撃管制レーダー照射・・・他にも日本がイージス艦を配備したら同様にイージス艦を持ち、空母保有の議論も出てきています。仮想敵国を日本としている情報も常々出てきます。保有しているミサイルの一部は日本を射程圏内に収めています。GDPが日本の1/3ながら軍事費は同じ程度で武器輸出は年々増加し30億ドル以上。

このような現状を考えると、一部の日本人が感情的になって怒るのは理解できますが、それでも冷静に国際法やルールに則って合理的に粛々と対応すべきだと思います。隣国であるというだけでは妥協する理由にはならないし、かといって感情論が先行しては世界の全体像を見失いかねず、限られた軍事的・外交的リソースの振り分けを誤ると、国益を損ねるのではないでしょうか。