海洋立国論

勉強のつもりで書いています。

航空自衛隊【小松基地】に行ってきた

先日、小松基地へ行ってきました。

石川県小松市にある小松空港には、航空自衛隊小松基地があります。日本海側唯一の航空基地で、「対領空侵犯処置」という国籍不明機(まぁ中露)への対応を任務としています。 

そのため、沖縄を除くと唯一F-15戦闘機を装備した2つの飛行隊のほか、アグレッサーと呼ばれる「飛行教導隊」があります。
飛行教導隊は、熟練の搭乗員によって構成され、専技研究や飛行訓練指導などを行う舞台です。訓練では「敵役」を担いますので、識別のため通常のF-15とは異なる目立つカラーリングをしています。
(今回撮影した写真でもカラーリングの派手な機体はアグレッサーです。)

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F-15

全力で上昇するさまは、とても力強くあり、日々昼夜を問わずおこなわれる厳しい訓練と命がけの任務にただ感謝です。

近年、中国・ロシアの領空侵犯対応が極めて多くなっており、スクランブルが激増しています。
名機とは言え、飛行時間の増加で老朽化が進むF-15。更新を急がなければ、任務にも支障をきたすでしょうし、搭乗員の安全も確保できなくなります。

 

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上昇中



空港の前には「石川県立航空プラザ」があり、子供も楽しめるようになっていますし。往年の空自機の展示もあります。

私の訪問時には、幼稚園児が走り回っていました。(^◇^)

F-104JやT-2など懐かしがコクピット内まで見ることができます。

入館無料。飛行機も近くで見られますしお土産グッズもなかなかの品ぞろえ。


お勧めですよ。

 

因みに私の撮影技術(&カメラ)ではこれが限界でした・・・

2~3人スティンガーかよ!みたいなレンズで撮影している人もいましたが、いい写真撮るんでしょうねぇ。

しかし、F-15は頻繁に離陸&着陸してるんですが、その間に民間機の離発着が無かったのは残念でした。

徴兵制はあるのか

時折、議論になる徴兵制。

平和安全保障法制の審議の時も「戦争になる」→「徴兵制が復活する」と野党の皆さんが騒いでいましたね。我が国で徴兵制はありうるのかをちょっと考えてみました。

 

1.徴兵制は違憲である

この話は有名ですね。

憲法十八条には、『何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。』とあります。

これに対する政府答弁と解釈

92回国会(昭和55年・衆議院鈴木善幸内閣)では、「平時であると有事であるとを問わず、憲法十三条、第十八条などの規定の趣旨からみて、許容されるものではないと考える。」(抜粋)であり、その後の、94回国会で再度の質問が出た時も「徴兵制度を違憲とする論拠の一つとして憲法第十八条を引用する従来の政府の解釈を変更することは考えていない。」です。その後も政府解釈は変更されていません。

あくまで解釈であって、明示的に「徴兵の禁止」とか「兵役の義務」ともどちらも書いていないので、自衛権の話と同じで、やっぱり日本国憲法って穴だらけです。

これは「徴兵は政府解釈次第で変わりうる」ですが、解釈変更のハードルは高いでしょう。

もうこれで終わりでもいいんですが、それではあっけないので他の要素も考えます。

 

2.先進国は志願制が主流である

冷戦時にはNATO諸国など多くが徴兵制でした。しかし冷戦崩壊後、ソ連の脅威が減じた結果、「徴兵制」は欧米各国で「停止」されてきました。一例を列挙します。

イギリス(1960)

アメリカ(1973)

オランダ(1996)

フランス(2002)

イタリア(2005)

ドイツ(2011)          ※( )内は停止した年

あくまで停止であって、憲法基本法)には徴兵が記載されているものの、法律によって徴兵をおこなっていないだけの国も多く、法改正で容易に徴兵制になる可能性があります。冷戦崩壊後に脅威が減じたため、徴兵を一旦停止しただけで、これをもって「志願制」がトレンドであるとは言えません。テロの脅威が高まったこともあり、ドイツ・フランスは徴兵制復活の議論があります。

 

リトアニア』・・・2008年に停止しましたが2015年に復活。

スウェーデン』・・・2010年に停止。2018年に男女とも徴兵が復活。   (男女平等社会とはこんな一面も?)

ノルウェー』・・・いまも徴兵制。ノーベル平和賞を授与する国ですけど。)

『スイス』・・・国民皆兵で、予備役のあいだは各家庭に自動小銃が常備してたり。永世中立ですけど)

『中国』・・・徴兵制。でもほぼ志願兵のみで人員を賄えるので、実際の徴兵はほぼ無いそうです。国民の数が半端ないですからこんな事ができるのでしょう。ただし「有事」の際は多くが徴兵されるでしょうし、拒否なんてできないでしょうけど。

 

福祉国家は相対的に徴兵制がありがち。徴兵制は人件費を抑えるので、人件費を福祉に回せるのでしょう。

 

3.経済面で考える。

  国家には富を生むための2つのリソース(物理リソースと労働リソース)がありますが徴兵制は強制的に兵役に就かせることになり、企業の人材を強制的に「軍」へ奪い、その結果、生産労働者が減るので企業収益力は落ちます。

さらに従軍期間中は、好きな買い物もしにくく、旅行にも行きにくくなるので、個人消費が落ち込みます。

また、どんな才能を持っていても、「兵隊」さんで一律の職に就くわけですから、分配が非効率になり、人的資本が経済的に有効に利用されなくなり、適材適所ができないので、国が持つ人材という労働リソースの振り分けがアンバランスになります。特に徴兵される若い世代の能力を活かせないのは損失以外の何物でもないでしょう。

これも政策的には得策とは言えません。

また、「従軍」を労働市場のように考えると、予算が同じなら徴兵制と志願制では以下の通りと考えられます。

▲徴兵制

  低い給料で必要な人数だけ兵士にでき、一人当たりの人件費は抑制できる。

   →労働単価は安い

▲志願制

   待遇(給料)が良ければ志願する人も増えるが、民間との競争になるため、

   一人当たりの人件費は増える。→労働単価が高い

 

これを元にざっくり比較してみると・・・(米ドル)

 

▲日本(志願制 ・GDP4.9兆・GDP比0.95% )

 自衛隊員数 250,000人 予算454億ドル(2017)一人当たり181,600ドル

 

▲韓国(徴兵制・ GDP1.5兆・GDP比2.55%)

  兵員数 640,000人 予算392億ドル(2017) 一人当たり61,250ドル

 ストックホルム国際平和研究所(2017)発表をもとに計算

 

やはり志願制は単純計算では人件費が高いですね。

ただ、韓国は北朝鮮と戦争中であり、国家予算、人口が日本よりもかなり小さいのにこれほどの『予算』を支出しているので、物凄く経済を圧迫しています。 

 

安全=売上、軍=産業 と考えると、売り上げをあげる方法はおおきく2つでしょう。

労働集約型にする => 兵士・増 => 低い生産性、人件費・増

資本集約型にする => 設備投資・増 => 人件費・低、維持コスト・増

ではないかと思います。

 

資本集約型の『軍』なら人件費を抑え、設備投資でロボット化、AI化を進めることが、高い能力を持つ『軍』を構成できますので、最新鋭装備の導入は徴兵制を避けつつ、安全を高める為に合理的。

 

1~3を纏めて考えると、現在の日本では徴兵制は、ナシだと思います。

 (正面装備品についての合理性は次回)

 

 

 

 

 

 

 

日本と韓国(朝鮮戦争―2)

2か月ほど前(2019/12/3)に、日本と韓国(朝鮮戦争-1)として、朝鮮戦争時の後方支援として日本の役割について書きました。主に「特別掃海隊」の事を書いたのですが、今回は海上輸送について纏めようと思います。(大まかな流れは前回に書いたので割愛します。)

 

終戦後から朝鮮戦争前までの状況

それまでの日本では戦時統制の「国家総動員法」「海運統制令」などによって船舶管理は「船舶運営会」が一元的におこなっていました。

占領後にGHQ連合国軍最高司令官総司令部)は船舶の移動を禁止しました。その後GHQが「日本商船管理局」を組織し、その下部組織として「船舶運営会」が存続されました。「船舶運営会」は「復員」「捕虜の送還」「復興資材の輸送」などを担うことになったのですが、戦争によって輸送船等がほぼ壊滅的被害を受けた日本には、十分な船舶がありませんでした。そこでアメリカから借りることになったのです。武装を取り外した輸送船、LST(戦車揚陸艦)などを改装し日本人船員の手によって運航されました。

1950年4月1日に戦時統制下で船舶の一元管理をしていた「船舶運営会」は「商船管理委員会」と名称を変更し、アメリカから「復員や物資輸送」の為に貸与されていた輸送船、LST(戦車揚陸艦)などはそのまま管理下に残されました。

朝鮮戦争勃発前において連合国側の主力であるアメリカは太平洋戦争以降、軍備を縮小しており、輸送船についても同様でした。これは政府支出を抑制し民間部門の拡大をおこなう必要があるからでした。(平和の配当と呼ばれます)

 

朝鮮戦争勃発

 6/25の開戦以降、北朝鮮軍の猛攻によって韓国軍は敗走を続け、あっという間に首都ソウルが陥落(6/28)、どんどんと南進するのを傍観している訳にはいかないため、急きょトルーマン米大統領マッカーサーに出撃を許可します。

そのため「日本商船管理局」は日本人乗員の船舶に戦闘部隊と戦車などを積載し海上輸送を行わせました。貸与されたLST、商船、客船、貨物船。多数の艦船が動員され、米軍の兵士や武器弾薬の輸送は勿論、韓国避難民の輸送までおこなっています。韓国の沿岸地形や港湾に詳しい日本人船長は高い評価を受けました。船舶の乗員だけではありません。港湾荷役作業にも多くが従事して北朝鮮軍の侵攻を裏方として支えました。

 

多くの日本人が働いた

朝鮮戦争のターニングポイントとなった「仁川上陸作戦」は、日本人運用の多数のLST、米軍指揮下に組み込まれた商船が運用され、同じく「元山上陸作戦」などでも港湾の荷役作業に多くの日本人が働きました。船舶だけでも2000名以上、荷役等も含めると人員は8000名以上となります。戦争期間中に機雷によって沈没する艦船もあり、荷役作業中の死亡事故もあわせて50名以上が死亡しています。傭船された船には、「日本丸」「海王丸」もあったようです。

 

タテマエによって消えた事実

タテマエとしては「GHQと民間企業との契約行為であるため政府は関与していない」となっていますが、占領下で政府に拒否できる訳もありません。しかし、このタテマエのため公式記録はほとんど残っていません。中曽根内閣時にも国会で質問がなされていますが、「確認しえない」のほぼ一点張りです。

 

すでにおこなっていた後方支援

当時は占領下であって特殊な事情のなかで行われた行為ですが、立派な「後方支援」です。ある意味では「平和安全保障法制」が成立するずっと以前に既に日本は米軍(国連軍)と一体となって「後方支援」をおこなっているとも言えますが、同時に不法入国する韓国人も激増すると予想した政府は、対策を島根県に要請していたり、九州各地や広島県呉(軍港)での空襲を警戒し対策を練っています。「後方支援」といってもリスクを負うことになります。

 

それでも支援した日本

占領下でGHQには逆らえない状況だったとはいえ、これだけ韓国の支援の為に働いた事実、その後の「日韓請求権経済協力協定(無償3億ドル、有償2億ドル、民間借款3億ドル合計8億ドル」「1970年代の円借款と無償資金協力(ソウル地下鉄建設、ソウル大学機材支援供)」「1983年円借款(7年40億ドル)」「1997年アジア通貨危機の際、IMF国際通貨基金)を通じて100億ドルの支援」などをおこなってきました。すべて日本国民の税金で賄われているわけですし、請求権協定時には外貨準備の大半がもっていかれたのです。

その見返りと言えば、一方的な李承晩ラインの設定による竹島の占拠、それに伴い日本漁民4000人の逮捕、8名の死者。近年では潜水艦に「安重根伊藤博文の暗殺を実行)」ドック型輸送艦に「独島(竹島の韓国名)」と名付ける、旭日旗問題・慰安婦像・徴用工判決・射撃管制レーダー照射・・・他にも日本がイージス艦を配備したら同様にイージス艦を持ち、空母保有の議論も出てきています。仮想敵国を日本としている情報も常々出てきます。保有しているミサイルの一部は日本を射程圏内に収めています。GDPが日本の1/3ながら軍事費は同じ程度で武器輸出は年々増加し30億ドル以上。

このような現状を考えると、一部の日本人が感情的になって怒るのは理解できますが、それでも冷静に国際法やルールに則って合理的に粛々と対応すべきだと思います。隣国であるというだけでは妥協する理由にはならないし、かといって感情論が先行しては世界の全体像を見失いかねず、限られた軍事的・外交的リソースの振り分けを誤ると、国益を損ねるのではないでしょうか。

防衛計画の大綱と中期防とレーダー照射

昨年12月「平成31年度以降に係る防衛計画の大綱」と、「中期防衛力整備計画(平成31年度~平成35年度)について」が閣議決定されました。また、タイムリー?な事に韓国海軍がやらかしたので、それとリンクさせつつ。

 

「防衛計画の大綱」とは・・・

概ね10年を目安に閣議決定された「国家安全保障戦略」(外交・安保の指針)を元に、防衛の基本方針や自衛隊に関する方針などを策定したもので、こちらも概ね10年を目安にしていますが、状況に応じて見直されます。実際に前回は平成25年12月17日に閣議決定されましたが、これを平成30年で廃止することになりました。改定のペースが速いのはそれだけ安全保障環境の変化のペースが速いという事ですね。

 「中期防衛力整備計画」とは・・・

「大綱」を具体化するために向こう5年間の防衛力整備計画をまとめたもの。

 

クロスドメイン・マルチドメインに対応

さて、今回の大綱にも書かれていますが、我が国を取り巻く安全保障環境、国際社会のパワーバランスは極めて速いスピードで変化、複雑化し既存秩序の不確実性の増大に対応するとし、特に「陸」「海」「空」だけでなく、サイバー空間、宇宙、電磁波などの新しい領域での対応を迫られてきているとしています。この新しい分野では中国などがアメリカの軍事力に対抗できる可能性が高く、またその方面の投資や開発が積極的に行われており、さらに以前にも書いた「シャープパワー」の行使や「グレーゾーン」の創出なども取り上げられています。物理的な軍事力の行使に関しては一定の国際的ルールがありますが、新しい分野ではそのようなルール・規範づくりが遅れておりその点を指摘しつつ対処するとしています。

 

アジア諸国への役割

我が国も独立国家として、またアジア諸国に範を垂れようとするのなら、国家間や地域の秩序維持に努めなければならないでしょう。その為には従来の考え方に留まらず迅速かつ実効的な防衛力整備とアジア地域でのプレゼンスを高める努力も必要です。その観点から、インド太平洋沿岸国との海洋安全保障能力向上に関する協力も進めていき、不当な南シナ海への進出を続ける中国への抑止力強化も図ります。12月22日には、初の「日米英」三か国での共同訓練を実施しました。

 装備の新規導入に関しては、DDHいずも(ヘリコプター搭載護衛艦)を改修し戦闘機F-35B(SVTOL・短距離離陸垂直着陸型)を搭載できるようにすることと、高速滑空弾などの新たな装備品、水陸機動団や物資輸送の為の輸送力強化、装備品の国産に拘らず、米軍との連携を重視するなどいくつかの目玉はありますし、報道の中心になっています。確かに装備品は単価が高く予算の使途としてきちんとチェックしなければなりません。

 

少子化が問題

 しかし私は装備品の調達に関してよりも、日本が少子高齢化に向かう中で果たして人員が確保できるのかが心配です。女性自衛官の活用や定年の引き上げなどは少しずつ進めてきていますが、自衛隊は「軍隊」という特別な世界。そして決して待遇が良いとは言えません。所謂「労働条件が良い」だけで集まるような人材は「軍隊」には不向きなのかもしれませんが、「情熱や想い」だけでは現実的には人が集まらないでしょう。

任務が多様化・高度化し優秀な人材が必要なのに、労働条件も厳しいのであれば人は集まりません。せめて「軍隊」として社会から尊敬されるようであればいいのでしょうが、決してそうとばかりは言えないでしょう。自衛隊員の社会的地位向上も図らねばなりません。阪神大震災以降の災害派遣等で認知度は高まり、航空祭や艦艇公開、総火演なども人気のイベントになりましたし、ネットやDVD、雑誌などのメディア露出も多くはなりましたが、いつも書くように日本を守る自衛隊員を守るのは、我々一般人です。

 

インド太平洋ビジョン

 また、今回の大綱に多く登場するのが「自由で開かれたインド太平洋」と言う文言。安倍総理の提唱した「自由で開かれたインド太平洋戦略」から始まり、最近はビジョンと表現されています。このビジョンは、法の支配の下の海洋の自由を訴えつつ、中国の横暴な海洋進出をけん制するものと解釈されています。(ただし一定のルール、例えば高い透明性、財政の健全の確保などに基づくならば中国との協力はあり得る)

つまり諸外国は日本は海洋権益に関して自国のみならずインド太平洋地域において、プレゼンスを発揮し、不法な行為や威圧に対してはコミットする事と解釈しているでしょう。低成長が続くとはいえ、日本は未だGDP3位、74年前には世界相手に戦争をし、日米同盟はNATOに並ぶ軍事同盟です。戦後はODAなどでもアジア諸国の発展に寄与し、一時は日本製品は世界を席巻しました。日本に安全保障面でも期待するアジア諸国があってもおかしくはありません。「いずも」空母化はまさにそう解釈されるでしょうし、英海軍との演習、アジア諸国への自衛艦の寄港などもその為です。

レーダー照射

この点から今回の大綱は纏められたと考えていますが、それならば今回の韓国駆逐艦の射撃管制レーダー照射に関しては、毅然とした態度を取るべきなのです。

飛行ルールを守りつつ自国のEEZ排他的経済水域)の監視活動をしていた自衛隊機に射撃管制レーダーを照射し、呼びかけに応じなかったのは明らかに準同盟国としてのふるまいではありません。その後の推移も概ねご存知の通りですが、日本政府が韓国に対してさえあやふやで腰の抜けた態度を取るのなら、眼前の中国の軍事的脅威にさらされているアジア諸国は日本を信用しなくなります。

 韓国との関係が一旦冷え込んだものになったとしても、他に多くのアジア太平洋諸国が「日本は強くなった」と思ってくれるのなら、信用も高まるでしょうし、信用は発言力に繋がりますし、中国に対する抑止力の一端となるのではないでしょうか。

 

”狂犬”マティス国防長官の辞表

あまり時事ネタ的なものは書かないのですが、どうしても書きたいネタができたものですから。

 

先ごろアメリカのマティス国防長官が辞表を提出しました。これに対してトランプ米大統領は「更迭」の形をとることにして、マティス国防長官の希望する2019年2月28日を受け入れず、2019年1月1日としました。 

トランプ大統領の考えは分かりませんが、強固な同盟関係である日米同盟の行き先も左右するかもしれない人事ではないでしょうか。

マティス国防長官の辞表は公開されましたので、日本語訳もあります。以下から読めます。

マティス国防長官「同盟国に敬意を」 辞表を公開 (写真=ロイター) :日本経済新聞

 

辞表全文(赤字は筆者による)====================

親愛なる大統領閣下

私は第26代の国防長官として国防総省の職員らとともに米国の国民や理念を守る職務を担当してきました。

2年間で国家防衛戦略に盛り込んだいくつかの重要な目標に向けた進展があったことを誇りに思います。たとえば、国防総省の財政基盤を整えたり、軍の機動力や攻撃力を高めたり、高いパフォーマンスを実現するために省の働き方を変えたりしたことがあります。米軍は紛争で勝利し、世界での強い影響力を維持する能力を提供しています。

国家としての強みは同盟やパートナーシップという唯一無二で包括的な概念と緊密に結びついていると私は固く信じています。米国は自由な世界において不可欠な国でありますが、同盟国との強い同盟を維持し敬意を示さなければ、国益を守ったり、国益を追求したりすることはできません。あなたと同じように私も米軍は世界の警察ではないと言ってきました。その代わりに、同盟国に効果的な指導力を示すことを含めて(同盟国の)共同防衛に向けて、米国が持つ全ての手段を提供する必要があります。民主主義を重視する北大西洋条約機構NATO)29カ国は2001年9月の米同時多発テロ後に我々に寄りそって戦うと約束してくれて(同盟の)強みを証明しました。(過激派組織の)イスラム国の壊滅に向けた連合軍ももう一つの同盟の証しです。

同様に戦略的利益が我々の利益と衝突することが増えた国に対しては、我々のアプローチを断固かつ明確なものとしておく必要があります。中国やロシアが自国の利益を追求するために経済・外交・安全保障に関する他国の決断を否定し、権威主義的な政治モデルと整合的な世界をつくりだしたいと望んでいるのは明らかです。だからこそ、我々は共同防衛に向けて、あらゆる手段を尽くさなければならないのです。

同盟国に敬意を払い、悪意に満ちた者や戦略的な競争相手に注意を払うべきだという私の考えは、こうした問題に取り組んだ私の40年以上(の経験)に基づき、培われたものです。我々の安全保障や繁栄、価値観に最も資する国際秩序を推進するためにできることは全てやるべきです。我々は同盟という結束によって強くなるのです。

あなたは、これらの点について、あなたの考えにより近い人物を国防長官に据える権利があります。だから私は身を引く時だと考えています。私の任期の最終日は2019年2月28日とします。この日付にしたのは、次期議会の公聴会や2月のNATO防相会合で、国防総省の利益を適切に説明し守っていくだけでなく、後任が指名され承認されるために十分な時間を確保するためです。さらに来年9月の米統合参謀本部議長の交代に先立って新しい国防長官に移行し、省内の安定を確かなものにするためでもあります。

私は215万人の軍人や73万2079人の国防総省文民が職務に集中し、米国民を守るための不眠不休のミッションを遂行できるよう円滑な移行に最善をつくすことを誓います。

この国や軍人たちに仕えることができて大変感謝しています。

 辞表ここまで======================

 

マティス国防長官はバリバリの軍人だっただけあって、国家の安全はどのように保たれているのかを十分理解し活用し評価している人物ですね。がちがちのリアリスト。トランプ政権にあって唯一(日本にとって)頼りになる人物だったと思います。

アメリカが片務的な軍事負担を負うのではなく、日米同盟やNATOを強化・重視し、中露やIS(イスラム国)などのテロ組織などの不当な行為は同盟国との共同防衛を行う事が重要で、それがアメリカの国益にも叶うと。その為に同盟国には敬意を表すべきと言っています。でも大統領とはその点で食い違うので辞めますということですね。見限ったのでしょうか・・・

アメリカ】は挑戦国である【日本】に勝って覇権国家の地位を確立し、冷戦では【ソ連】を退けましたが、次は【中国】がその挑戦国となりました。これを退けなければ覇権国としての地位は危ぶまれますし、無理やり維持しようとすれば戦争になります。この状態を【トゥキディスの罠】と呼びますが、そうなれば第二次世界大戦の惨劇の比ではありません。かといって中国がとって代わると従来の自由主義的価値観は否定されるでしょう。

アメリカは【西側】に太平洋が広がり、ハワイ、グアム、日本を前線基地とし、【東側】には大西洋があり、NATO諸国が防衛ラインを引いています。地政学的に極めて有利な国家ですが、日本やNATOがあってこそその地位が確立されています。

我が国に限って言えば、日米同盟があるからこそアメリカは防衛ラインを米本土から遠ざける事ができました。我が国は米軍の強大な軍事力を「矛」として活用できたので、片務的な日米安保条約の中で自衛隊は「楯」としての役割の一部を負えば良く、結果的に憲法違反することなく低コストな防衛費で国家を維持できました。(しかしこのあたりは新たな「防衛計画の大綱」でも今後どうすべきかが語られています)

 

兎に角も同盟と協調重視のマティス国防長官の退任は非常に残念でなりません。

 この人事が負の世界への出発点だったと後世が記録しないですむようになる事を願います。「日本は世界と繋がっている」と語るのなら、最も繋がりの深いアメリカの国防戦略は注視せざるを得ないでしょう。これは日本に最も影響するのです。

 

日本と韓国(朝鮮戦争ー1)

日本の若者の多くが「太平洋戦争(大東亜戦争)」を知らないと聞きますが、韓国でも「朝鮮戦争(他にも呼称あり)」を知らない世代が増えているそうですね。ある調査によると約半数とか。日本でも隣国で起こった戦争の事をあまり知らない人が多いのも仕方が無いのかもしれません。

 

【時間軸

かなりざっくりですが。

1910年(明治43年)8月29日、ロシアの南下を恐れた大日本帝国は、大韓帝国を「韓国併合に関する条約」によって併合し統治していましたが、1945年(昭和20年)9月9日の朝鮮総督府による降伏文書調印をもって終わりました。(伊藤博文は当初は併合に反対。その後桂太郎首相、小村寿太郎外相の説得に応じる)

その後38度線以南をアメリカ、北部はソ連が統治。1948年(昭和23年)8月15日、李承晩(後の韓国初代大統領)による独立・建国宣言によって韓国が成立、9月9日に金日成による北朝鮮建国。1952年4月28日サンフランシスコ講和条約発効により、日本と連合国との戦争状態終結

 

朝鮮戦争勃発】

1950年(昭和25年)6月25日、北朝鮮軍が38度線を超えて南下し進軍。朝鮮戦争が始まりましたが、中国とソ連の支援を受けた北朝鮮軍が当初は優勢でした。開戦3日後には首都ソウル陥落。しかし最終的には国連軍(アメリカを中心とした16か国)の反撃によって押し戻し、1953年7月27日に休戦し38度線を休戦ライン(軍事境界線)としました。

 

【日本の後方支援】

この戦争の時にアメリカが中心となって国連軍を構成し反撃したのですが、先の大戦を終えたばかりの日本が、そのバックアップとして韓国を支えた事はもっと知られてもいいのではないかと思います。

 

戦後の荒廃から立ち直ろうとしている我が国には当時の韓国よりも技術や人員、ノウハウが残されており、国連軍の支えになり、出撃を支え兵站・補給基地として機能しました。

アメリカ本土から朝鮮半島へ直接出撃するよりもはるかに効率的であるうえ、兵士、兵器や装備品の保管や輸送、兵士の休息や医療にも、旧帝国軍人とそのノウハウを活かした海上輸送、後方支援能力、高い技術水準とを持つ我が国だったからこそ基地機能を果たす事ができ、米軍を支え休戦に持ち込めたのです。日本の商船も人員や物資の海上輸送に深く携わり、日韓両国で荷役作業にも多くの日本人が従事しました。

 また韓国国内の日本人も支えました。朝鮮総督府関係者は勿論、出張と言う形で日本から韓国へ渡るなどして、海運、港湾荷役、鉄道輸送、兵器の製造や修理、通信などで8000人とも言われる人が働き、半年で400名弱の死傷者があり、個人ベースでは日本人パイロットによるスパイ空輸、諜報活動などもあったと言われます。

 李承晩ライン(竹島領有のきっかけ)の設定などで有名な李承晩初代韓国大統領は、日本人を毛嫌いし戦争に関与させまいとしたようですが、日本人の代わりができる韓国の人材が非常に少なかったことなどから、戦争遂行に問題を抱えたくないアメリカがその要求を飲みませんでした。

 

もし、アメリカが日本に戦略拠点を築いていなければ、敗北していたかもしれませんし、そうなれば韓国の消滅、日本の共産化(中国やソ連の占領)もありえたかもしれません。過去の日本による併合はロシア(ソ連)を畏れたゆえですが、戦後はその肩代わりを結果的にはアメリカがしたのです。

一方、戦後のインフレに苦しむ我が国には「特需」が舞い込み一気に復興が進みましたが、そこだけがクローズアップされてしまい、韓国では「日本人は朝鮮戦争で儲けた悪い奴」とのイメージがあるようです。

 

【日本特別掃海隊】

海軍の戦闘艦艇の作戦上も、地上軍の進行に伴う物資補給にも海路の安全確保は必須でしたが、最も有名なのが海上保安庁の「日本特別掃海隊」による機雷掃海です。

 

1950年10月~12月にかけて元海軍軍人隊員1,200名、掃海艇46隻、327kmの水道と607平方キロ以上の掃海を実施。27個の機雷を処分しました。

当時は「極秘」とされた任務ですが、これは朝鮮海域への機雷掃海任務であり、戦闘行為への参加とも解釈される行動です。元山沖で掃海作業中に1隻爆沈し殉職者(戦死)1名、重軽傷者18名を出しました。派遣の事実は30年間、公にはされませんでした。

 

3次にわたる試行船「桑栄丸」による朝鮮海域への派遣は、「人の命1万円で買います。乗務員募集」という広告が新聞に載るほど命がけの任務でした。旧海軍出身者のノウハウが活かされたこの命がけの任務は朝鮮戦争での国連軍を支え、海上自衛隊の創設にも関わり、また講和条約の締結にも有効に働いたでしょう。

 

当時発足したばかりの韓国海軍は、戦闘艦と言えるようなものは無く、また機雷掃海能力もありませんでしたし、米海軍も能力不足でしたので、旧帝国海軍省から掃海業務を引き継いでいた日本が適任だったと考えられました。但し終戦後に徐々に規模を縮小されており、もう少しでこの能力も無くなるギリギリのタイミングでした。

 

このあたりのことは国会でも中曽根内閣当時(参議院通常国会第108回)に質問がされていますが、政府の答弁は「確認しえない」「承知していない」であり、公式には政府は関与していないことになっています。

占領下の日本で米軍極東海軍司令官の命令によるものだからです。実態はマッカーサー元帥の命令を受けた吉田首相が逆らえる訳ではありません。逆らって講和が遅れたりすることや講和条件が厳しくなる事を避けたのでしょう。その証左に吉田総理から特別掃海隊宛に、「我が国の平和と独立のため、日本政府として国連軍の朝鮮水域に於ける掃海作業に協力する」と電報が届けられています。

 

当時の掃海隊が韓国軍兵士に言われたエピソードで、「自分の国の危機に日本特別掃海隊が手助けにきてくれているということを皆大変感謝している。中には日本を憎んでいる者もいるが、こんな皆さんの仕事を知らない人が多い。」残念ながら今も現状はかわっていません。

 

派遣された隊員も心中は複雑だっただろうと思いますが、隊の解散の際の海上保安庁長官訓示「国際社会において、名誉ある一員たるためには、手をこまねいていてはその地位を獲得できない。私達自らの努力と汗で獲得しなければならない」との言葉に従ったのでしょうか。私にはわかりません。

にも係らず30年間も秘匿され続け、命がけの努力が日韓どちらにも認められなかった隊員の心情は察するに余りあります。このことを思うと激しい憤りを感じます。しかし米軍の反日感情は和らぎ、そして信用となり後の日米同盟に繋がりました。

少なくとも現代を生きる我々日本人は記憶に留めるべきですし、韓国の人にも知って欲しいと思います。

 

【日韓の安全保障】

日本の安全保障は韓国の安全保障と直結しています。「反日」「嫌韓」でネットは時々荒れますが、安全保障上は切っても切れない関係です。

旭日旗問題、慰安婦像、徴用工裁判、原爆Tシャツ・・・怒るのは理解できますし、私も腹立たしい。

だからといって「国交断絶」などど簡単に言う人がいますが、そんな簡単にできません。万一「韓国」の北朝鮮化が起こればどうなるのでしょうか。背後には中国がついています。中国は第2次大戦後に次々と国境紛争、戦争、民族問題、宗教弾圧、果ては天安門事件のような弾圧を起こしており、今も南シナ海尖閣諸島で関係国と争っています。その事を踏まえると断絶はできません。

韓国も軍事政権から近年ようやく民主化が進んできましたが、北朝鮮のような独裁国家に飲み込まれることを望むのでしょうか。

 

【挨拶ぐらいが丁度いい】

日本と韓国は地政学的にも経済的にも民族的にも近しい関係ですが、近すぎると軋轢を生むのかもしれません。フランスやオランダなどの植民地を支配していた欧州諸国もかつての植民地に謝罪はしていませんし、緊張関係が続いていますので、無理に「和解」などを期待せずに緊張感を持ちつつ「是々非々」で「丁々発止」やり取りをするのが正解なのかもしれません。

国家間の約束事を守らないことに関しては、現実的な対処を取る必要があります。それが対等な国家間の付き合いであって、慣れ合いは決していい結果は生みません。日本は毅然とした態度を、韓国は国際ルールに基づいた内政をしてほしいものです。

 

 

軍もSNS。

最近、仕事が忙しくあまりブログ書く時間も無くなってしまいました・・・ネタが思いつくと、検証の為に本や論文を読んだりしてから書くのですが、その時間が「ごはん中」とかぐらいになってしまいました。行儀悪いですね・・・

 

睡眠時間を削ればいいじゃないか。と昔は思っていたのですが、「寝不足は良い仕事の敵だ」とポルコ・ロッソが言うもので。早寝早起きです。

 

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さて、先日まで実施されていた「キーンソード19(2018年)」の写真を見つけました。

 

『キーンソード』とは隔年実施の陸海空自衛隊アメリカインド太平洋軍との日米共同統合演習(軍事演習)で10/29~11/8まで実施されました。
自衛隊は47,000人艦艇20隻航空機170機・アメリカは第7艦隊、第5空軍ほか10,000人、カナダ軍も艦艇が初参加、オーストラリア、イギリス、フランス、韓国もオブザーバー参加。

 

アメリカインド太平洋軍とは、第7艦隊や在日米軍などひっくるめた巨大な統合軍です。】

 

即応性や相互運用性、指揮統制能力の向上などを演習し運用能力と抑止力を向上させます。今回、独善的な活動を続ける中国海軍を想定した訓練(対潜作戦)も行われた模様です。

他にも夜間発艦訓練、脱出したパイロットを捜索救援する訓練など大規模なものです。
大規模演習は対外的なアピールの目的もありますので、このようにSNSでかなり高画質の写真を公開しています。艦艇の運用練度では海自は世界一とも言われるほど高い能力を持ちますが、米海軍との連携は高いレベルで必須です。練度に上限はありません。今後はインド軍やオーストラリア軍との連携もさらに深めていくでしょう。

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【これはU.S.Pacific Fleet Flickrからダウンロードしたものです。】

 

SNS活用という点では、自衛隊は遅れている感じですね。もっと組織的にSNSを活用し一般国民に多くを知らせるべきだと思います。一応各種アカウントはあるんですが、広く知られているとは言い難い。邪推ですが日本的組織運営が邪魔してる?自衛隊の上のほうの方々が実はSNS音痴だったりして理解が無いとか・・・まぁでも自衛隊ごとの公式や、基地隊のものなど各種あるので是非フォローしてください。どのような活動をしているのかよく判ります。「守る」のが自衛隊の役割。災害からも急患も水不足からも、勿論外国の脅威からも。その為に日々どのような事をしているのか、まずは知ることができます。大臣記者会見や各種文書は少し敷居が高いですが、SNSなら気軽に知る事ができます。

 

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【写真】なんとか判別してみたんですが間違ってるかも(>_<)


左側に「空母ロナルドレーガン」,右は「DDHひゅうが」

航空機前列は左からF-15×2 F-2×2 中央でかいのがB-52 右はF/A18×4 後列中央はP-1対潜哨戒機を挟んで両翼にF-15

潜水艦は(左)ロサンゼルス級 (右)そうりゅう型

艦艇は班別しづらいですね。「DDGあたご」他、あきづき型、ましゅう型補給艦、など。

個人的にはF-2A戦闘機の「洋上迷彩」ってやっぱり迷彩してるなーと思いましたが。

 ダウンロードしたこの写真は個人PCのデスクトップに使っていいそうです。(在日米軍公式ツィッターより)

 

さて、日韓は旭日旗問題や労働者の問題などで騒がしいですが海軍は連携を図らなければいけません。実は海軍同士は仲が悪い訳ではないようですが、そうであるなら旭日旗問題は韓国海軍にしてみれば辛い立場だっただろうと思います。今回の所謂徴用工判決問題や旭日旗問題を契機に日韓関係の軍事的意味合いを改めて書こうと思います。