海洋立国論

安全保障・軍事について自分自身の勉強のつもりで書いています。

国際法と平和構築

国際法には国際条約(人権、環境、経済など)と慣行の積み重ねによって認知された慣習国際法があり、平時国際法戦時国際法に大別されます。

本来は非常に複雑な議論が必要なのですが、専門家ではないのでそこはまぁざっくりと解釈してます。

 

国連憲章13条には、

 総会は、次の目的のために研究を発議し、及び勧告をする。

 『1.政治的分野において国際協力を促進すること並びに国際法の斬新的発達及び法典化を奨励すること。

とあり、これによって多くの条約、協定が決められています。

こうして主に国家間の行動の大半を規制したり制限していますが、多くが通常のありきたりな規範です。

国連憲章33条には

『いかなる紛争でも継続が国際の平和及び安全の維持を危うくする虞のあるものについては、その当事者は、まず第一に、交渉、審査、仲介、調停、仲裁裁判、司法的解決、地域的機関又は地域的取極の利用その他当事者が選ぶ平和的手段による解決を求めなければならない。』

とあります。

 

しかし日本のような三権分立が機能している国内法と異なり、国家にはそれの上位の権威・権力のある組織がないアナーキーな世界。

法執行のための”強制力”のある警察機関も裁判所もありません。国際司法裁判所などは紛争国同士の合意によって裁判が開かれるので、同意がなければ裁判が行われない場合もあります。また殆どの場合は勧告程度の効力しかもちません。

 

中国が南シナ海の領有権主張(九段線)に対し、常設仲裁裁判所国際法違反(国連海洋法条約)違反として裁定しましたが、中国は無視をしています。法的拘束力はあるため、中国が「国際法に則っている」と主張できる根拠はなくなりましたが、強制力は無いため現状を覆すことはできません。常設仲裁裁判所は一方の当事国が拒否しても手続きはおこなえます。この例はまさにそうでした。

 

このように国家は国益を追求するため、時に威嚇や戦争などの武力行使によって現状変更をおこなおうとしますが、その際にしばしば国際法を無視するのでたま~に注目されます。

 

しかし、ほとんどの場合に国家は「国際法」を順守しています。それは法を破る事が不利益となり国益を損ねる事になるのを知っているからです。

多くの国家は秩序そのものが「公共財」であることを理解しているのです。法の恣意的解釈をせず、他国に信頼される国家になろうと振る舞います。その結果自己の利益に繋がるのですが、このことが法に価値を与えています。法を守らない「ならず者国家」は信頼されず、他国の投資も人材も呼びこめず不利益を被ることになります。

 

武力行使は政策の最終手段ですが、この段階に至れば「武力行使によって達成される政策目標にかかるコストが妥当かどうか」で一義的には判断され、法に依るどうかは無視されるか、法に依拠(正当化)しながら法を破ることがおこります。

コストには1、生命・財産のような「直接的コスト」2、正当性があるか法に則るかの「政治的コスト」3、大国の横暴から軍事的に弱い小国は守ってもらえる「規範上のコスト」などがあり、生存戦争、領土紛争などはコスト高、他国への人権や福祉への介入は低コストと判断されます。

実はほとんどの国は、通常は国際法によって主権と独立を守られており、軍事的に守られているだけではありません。

 

また現代兵器の破壊力はあまりに強大で破滅的なである「核」が存在するため、軍事行動をコントロールできない場合は際限なく突き進み破局を招きます。核でなくても現代兵器の破壊力は第二次世界大戦の比では無いのです。

このことも軍事力による政策目標達成よりも、法による達成が選好される一因です。もしそのように選択されなければ、ゲーム理論に則って言えば世界はひたすら軍拡に突き進み破滅です。

 

国連憲章第7章には平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動』が数多く規定されています。

51条には『武力攻撃が発生した場合、個別または集団的自衛権の固有の権利』を認めていますが、テロリストのネットワーク化が進行した現代ではテロ支援国家への先制攻撃は合法なのでしょうか。2014年にロシアがおこなったクリミア併合は国際法の恣意的解釈そのものです。プーチン大統領が言った建前である「在留ロシア人保護のための軍事介入」「国際法に基づき併合した」はどう解釈すればいいのでしょうか。

どうやら7章にはグレーゾーンや空白があるようです。この空白を補うのが軍事力だったり、多国間の軍事協力やNATOに代表されるような組織です。

 

国連の安全保障理事会は唯一加盟国に対して決定の実施を義務付けることができる権限がありますが、常任5か国(米英仏中露)に与えられた拒否権(ときには棄権)によって効果的な集団安全保障メカニズムが機能しないのが現状です。

それでも第三次世界大戦が起こらないのは、国連のような国際機関と国際法が一定の役割を果たしていると言えるかもしれません。