オレ様的夜ネタ ~平和を守るために~

山奥で農業・林業・養蜂をしつつ、安全保障・軍事について自分自身の勉強のつもりで書いています。

「ブレイクスルーとイノベーション」

ブレイクスルーとは、進歩、前進、また一般にそれまで障壁となっていた事象の突破を意味する英単語 。
イノベーションとは物事の「新結合」「新機軸」「新しい切り口」「新しい捉え方」「新しい活用法」(を創造する行為)のこと。 (共にウィキペディアによる)

どちらも言葉にはポジティブな意味があり、多くの方のイメージもそのようなものでしょう。でも物事にはポジとネガがあるのはご承知の通り。一般にはネガのイメージで語られる軍事の世界でも同じ状況があるのです。

「V1飛行爆弾」
今年4月6日に米軍が巡航ミサイルによってシリアの空軍基地を攻撃しましたが、この巡航ミサイルの元を辿ると、ナチスドイツのV1に辿りつきます。当時のナチスドイツの正面の敵はイギリスでした。しかし占領したフランス沿岸部からロンドンを直接攻撃できませんでした。ドイツの各都市をイギリスに爆撃され報復に燃えるナチスドイツはV1(通称:飛行爆弾)を開発します。

これは現代では無人攻撃機ドローンや巡航ミサイルに該当する攻撃兵器です。爆弾に羽根とエンジンを取りつけ無人機化し攻撃するのは「イノベーション」といえるでしょう。
V1は2万発以上発射されイギリス本土に被害を及ぼしましたが、現在のように慣性誘導やGPS誘導が不可能であったため精密攻撃はできませんでした。また、発射器は固定の大型のものは連合国側に発見され爆撃されるため、組み立て式の移動式発射台を開発しました。現在のTEL(移動式発射機)に通じるものがあります。

V2ロケット
そして悪名高いのがV2ロケットです。こちらは現在の弾道ミサイルに相当するもので、技術的なブレイクスルーを多く成し遂げなければできなかった兵器です。アメリカが人類を月に送りこんだアポロ計画を主導した、フォンブラウン博士の開発によるものです。戦争終盤から戦後にかけては米ソがロケット技術者の確保合戦を繰り広げました。

ティーガーⅠ戦車」
知られていないのが、フェルディナント・ポルシェ博士のことです。ポルシェ博士とは、そうあのスポーツカーのポルシェの源流の天才自動車工学者です。フォルクスワーゲン・ビートルや、多くの航空機用エンジンも生みだし戦闘機に採用されています。そしてヒトラーの依頼によってそれまでの4号戦車に代わるティーガー戦車の開発を行っています。

ナチスドイツは1号戦車から4号戦車までドンドンと大型化していきましたが、それでも当時のソ連T-34戦車には対抗できませんでした。そこでさらに大型のティーガー戦車の開発が始まり、ヒトラーのお気に入りだったポルシェ博士にも開発依頼がきたのです。
この開発は試作のみで制式採用とはなりませんでしたが、(採用されたのは競争相手のヘンシェル社)ポルシェ博士のティーガー戦車の駆動方式が画期的でした。通常はディーゼルエンジンを搭載し変速機を介して駆動力を伝えますが、博士はディーゼルエンジンを発電用とし、その電力で駆動輪についているモーターを動かすというものです。
この方式は現在ではニッサンのNOTE e-powerに相当しますね。

「V3 15㎝高圧ポンプ砲」
マイナーですがV3という兵器も存在します。
これはロンドンを直接砲弾で攻撃しようとした巨大な大砲ですが、普通の大砲とは仕組みが大きく異なります。砲弾を長距離飛ばすためには、炸薬(火薬)が大量に必要で砲身内(薬室)で大爆発させてその爆発力を利用することと砲身を長くする必要があるのですが、砲身が長くなると自重でたわむ事や、炸薬の爆発力に薬室が絶えられないなどの問題が発生します。それを解決するため、砲身をいくつもに分けて製造し、(全長150m!)薬室は砲身の途中ごとに側面にいくつも分散して取りつけます。(合計28箇所)そして発射後は砲弾の移動に従って順次薬室内の炸薬に点火し砲弾を加速し撃ちだします。
試射での飛距離は88kmに及んだと言います。実践ではほとんど使われ無かったようですが、アイデアとしてはまさに「イノベーション」なのではないでしょうか。

軍事はカネ食いムシで兵器は使う事がないのに限りますが、天才を生みだしたり、革新的な技術を開発します。近年はその逆で民生品を軍事に流用するなども積極的におこなわれています。

現在、アメリカが開発を進めているのが、レーザー兵器と超電磁砲(レールガン)です。
世の中にイノベーションを起こすきっかけになるのでしょうか。