海洋立国論

勉強のつもりで書いています。

平成30年度概算要求を読んでみた

防衛省が「我が国の防衛と予算~平成30年度概算要求の概要~」を公開しましたので、そのまた概要を掲載します。

【金額について】

まず、総額ですが防衛予算は長い間、横ばいから微減でした。平成25年度以降微増に転じ、今回は2.5%増、およそ5兆円としています。(当然予算折衝で減る事が予想鵜されますが、初の5兆円突入)

平成24年は尖閣の国有化があり、中国の海洋進出が脅威となり島嶼防衛の重要性が増してきた頃でした。

今回は勿論北朝鮮を想定して「ミサイル防衛」が重要な項目となっていますが、北朝鮮の脅威が高まれば高まるほど、日米が緊密に連携して対応するための装備やシステムの強化が進められます。防衛費の増額も世論的にもスムースに受け入れられるので、これは中国にとっては面白くない状態ですので中国にしたら北朝鮮が少々目障りなことでしょう。

平成26年度~30年度中期防衛力整備計画の最終年度でもあり、装備品などの調達が進められます。

 

【注目の装備品】

3900トン型コンパクト護衛艦2隻の建造、イージス艦の増勢は計上されていません。

また、SM-6ミサイルの試験用調達=以前に「海のNIFC-CA」で取り上げましたが、この新型のミサイルは長射程、撃ちっぱなし(発射した艦の誘導が不要)可能で、また早期警戒機E2-DやF35などのセンサーによって、イージス艦のレーダーの視界の外の目標に対象可能な迎撃ミサイルです。エンゲージ・オン・リモート(EOH)超水平線(OTH)攻撃能力と言います。要はイージス艦から探知できない目標を航空機のセンサーを使って探知し攻撃するものです。アメリカはテストで6発同時迎撃など成果をあげています。準中距離弾道ミサイル迎撃にも成功しています。イージスシステムやE2ーDなどのセンサー類も対応するシステムに更新する必要があるんですが、31年度以降にどうなるんでしょうか。

また、弾道ミサイルに対応するため、PAC-3の能力向上型PAC-3MSE、イージスアショアの整備に着手すること、新型迎撃ミサイルSM-3ブロックⅡAの調達(ブロックⅠBも)、空自が運用するジャッジシステム(防空用のシステム)の能力向上など目白押しです。

 

【研究開発】

研究開発では、ちょっと驚きのものがありました。

島嶼防衛用高速滑空弾の要素技術研究」と「島嶼防衛用新型対艦誘導弾の要素技術研究」の2点です。

想定は南西諸島防衛でしょうが、「高速滑空弾」についてはよくわからないのが実情です。似た感じのものは過去にもあるようなんですが、ロケットモーターで発射・上昇し弾頭部分を切り離しグライダーのように滑空し攻撃する兵器ですね。我が国では前例が無いのでよく判りませんね。もう一方の「新対艦誘導弾」ですが、巡航ミサイルと言っても差し付けないようです。自衛隊は「専守防衛」の観点から長射程の対地・対艦攻撃兵器はありませんでしたが、近年は各国のミサイルはどんどん射程距離が延びており、このままでは一方的にやられる事になりますので対応する為の研究を進めるようです。

 

【宇宙・サイバー】

また、ネットワークのクラウド化と監視機能の強化、人員も少しですが増勢するようです。宇宙関連では、JAXAと連携し情報収集、指揮統制、通信能力の強化に取り組みます。現在、弾道ミサイルの情報はまずアメリカの早期警戒衛星の情報をアメリカ本国、在日米軍経由で入手していますので、この点についてはもっと強化して欲しいですね。アメリカ側では日本の準天頂衛星「みちびき」の信号を受信し活用できるような研究も進めているようですし。「みちびき」4号機の打ち上げは10月10日だそうです。

 

【そのほか】

細かなところかもしれませんが、自衛隊が使う軽油引取税の免除を求めていたりします。

また、女性隊員の増加に伴ってトイレや育児環境整備もすすめるとわざわざ書いてます。意外にも「ワークライフバランス」って言葉が出てきます 男社会でしたからしっかり進めて欲しいと思います。

衛生機能については・・・やはり心許ない。海外に派遣される事が増えた事もあり、その点ではもっと進めて欲しいと思います。