海洋立国論

四方を海に囲まれて。

中国を舐めたらアカン!

戦前の世界(欧州)は軍事的にバランスを取る勢力均衡によって平和を維持し、第二次世界大戦で日本とドイツという挑戦国を退けたのちアメリカは、日独を同盟国として取り込んでロシアに対抗しバランスをとってきました。
 
広大な国土ゆえに戦略的に縦深性が高いため、ほぼ侵攻不可能なソ連に対し日米独英という巨大連合はアメリカの覇権維持に重要な役割を果たしつつ、冷戦という一歩間違えば世界の破滅を迎えそうであっても、大国間の戦争は抑止されてきました。
結果からみれば不安定であっても大国間戦争の抑止された状態で言わば平和な状態でした。
 
競争に負けたソ連は解体され、ロシアは経済的に縮小し大きな脅威とならない国になりました。
 
自由主義国は国際法に則って、自由に経済活動を行い繁栄を目指しましたが、挑戦国として覇権的な振る舞いを中国がしはじめました。
 
日米同盟の強化が必要な理由は東アジアに「力の真空」を作らせず、安定的な東アジア情勢を構築するためですが、欧州のNATOのように共通の価値観や歴史的繋がり、政治体制などがある訳では無い東アジアは、価値観・政治体制・経済力などが異なりすぎるため、アメリカの圧倒的「力」によって安定させ、東アジア各国は、ある種の「共同体」を構成し目的を達成しようとしています。
 
もし、日本が防衛努力を怠り、日米同盟の信憑性が低くなった場合、敵対国は戦争を仕掛けるかもしれません。
 
こちらが望まなくても戦争で得る利益が大きいと相手が判断すれば起きうるのが戦争。
意志×能力=戦争リスクですが、相手の能力が急速に高まりつつある現在において、物理的な能力としての「防衛力」と同盟などの信憑性を高める努力をし続ける必要があります。
 
万一、日本が中国に占領されないまでも、所謂フィンランド化」してしまえば、東アジア~西大西洋の軍事バランスは中国に有利になります。その観点からもアメリカは日本を手放しません。
 
 
中国の目的はアメリカの駆逐です。
どこまでいっても中華思想が根底にあるのでしょう。確かに冊封体制を2000年維持し周辺国に影響を与え続けてきた中国は、東アジアの盟主であった自負と誇りがあります。日本も昔は多くを学びました。
 
しかし明治維新後に急速に成長した日本との日清戦争に負け、巨大国家「清朝」の脆弱さが露わになり列強に半植民地化されました。アジアの盟主の没落です。
国土の広さ故に攻めきれなかった日本を退けて戦勝国の立場に立った第二次世界大戦後に至っても、地理的に遠いアメリカが圧倒的軍事力によって東アジアに関与する事がどうしても許せないのです。
 
攘夷です。夷荻は打ち滅ぼさなければならない。との思いが根底にあるのだろうと思います。
 
ニュースでの報道官声明などを見ても「中国によって統治されて安定的な世界を築くことができる」と真剣に思っているような気がします。
 
習金平主席は、「今世紀中葉までに世界一流の軍隊を目指す(つまりアメリカに対抗しうる軍隊)」と言い、「先端科学技術によって強い人民解放軍を建設することであって対米劣勢を挽回することを目指しているし成功しつつある。」と言っています。
 
将来の戦いは「智能化戦争」と認識しています。正確な認識だと思いますし、そうなるように技術の軍民融合をすすめ先端技術の軍事転用を国策として推進しています。
 
智能化戦争は 人間の判断を助け、兵器の自律化、敵の判断を狂わせるデータの破壊やかく乱、センサーへの干渉、Aiによる無人化(命のコストが低くなる) などによって有利に戦うことができ、無人化は命のコストが低い、作戦時間・行動半径の制限が異なる、損もう率の高い作戦に投入できる、救助し無くても良い、生産コストが低いなどのメリットがあります。
 
表を見てください。こうして並べてみると、中国のしたたかさがわかります。
日本が防衛費1%を越さず、憲法も改正せず、靖国神社参拝を中止し、ミサイルの射程も延ばさず、核も戦略原潜も空母も持たず、それどころか国家の姿を議論すらせず、ひたすら隣国たちを刺激しないように、隣国に円を供給し続けている間にも、中国はしっかりと自分の論理に基づいて行動しています。
 
こちらを忖度なんてしません。
 
ハイテク兵器が必要だと認識すればその為の政策を打ち、湾岸戦争GPSの有効性を認識して開発に着手。
第三次台湾海峡危機でそのGPS信号をアメリカに遮断されたら、独自のGPSを運用。
国際法に準拠しなくてもまずは独自の判断で制定できる「領海および接続水域法」「海警法」などを続々と整備。批判も「国内問題」として一蹴。
 
国際ルールに則らず独善的で軋轢はあるものの、経済ではある種まっとうな投資をしてきました。
 
優秀な子供には高い教育や留学を与え、成長させる産業には集中的に投資し企業を育成。
海外からの投資と企業誘致を呼びこみ、都市部は急速に発展させました。
 
 
経済力こそが力の根源であり、その源は膨大なエネルギーに支えられます。
 
南シナ海にはクウェートの埋蔵量に匹敵する海洋資源と豊富な漁業資源があるといわれ確保を目指しつつ、それだけではエネルギー需要を支えられないため、中東からの輸入に頼らざるを得ない事も認識しチョークポイントである海峡の安全保障も確保しようと陸軍を削減しても海空軍を強化しています。
 
能天気な日本も官僚の不祥事ごときで時間を割くのではなく、国家運営に関しては見習うべき点も多いと思います。
 
さて、プロイセン国の軍人で軍事理論で有名なカールフォンクラウゼビッツ(1780-1831)の著書「戦争論」の冒頭の有名な言葉に「戦争は異なる手段をもって行われる国家の政策の延長にほかならない」とありますが、中国はそのことをよく理解しています。
逆説的に言えば「戦争は武力行使や戦力投射であるとは限っていない」と。
 
現在はあらゆるものがネットワークで繋がり、高速化で人やモノ間の距離も障害となりにくくなりました。
 
軍事的手段と非軍事的手段は区別されず、あいまいです。政策目標を達成するための手段は武力で無くても良いのです。
 
その考え方から人民解放軍上級大佐「超限戦」という概念を提唱しました。中国公式の戦い方ではないとされていますが、現状をみると非常に影響を受けているとしか考えられません。
 
これには軍事的・超軍事的・非軍事的の3種類の手段があります。マスク外交や台湾のパイナップル禁輸、尖閣近海での行動、ファーウェイ騒動、レアメタルの禁輸や海外資産の購入、(最近はアメリカにある資産の購入額は減少している)メディアコントロールや世論誘導、ハッキングなど数多あります。
 
また高度なレベルで軍民融合した情報コントロールは戦時において有効なだけでなく、他国および国内の世論誘導や情報統制に有効である事は、近年の「アラブの春」でもSNSが大きな役割を果たしていたことからも伺えるます。
 
クラウゼビッツはこうも言っています「戦争を抑制するものがあるとすれば、戦争に内在する力の均衡だけである」

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できごと年表

 
 
まずは2027年が注目すべきポイントです。
 
我が国も政府も進むべき道をしっかり見定めてく議論をして欲しいものです。

弱点は日本かも。

自己中心的な行動で迷惑な中国ですが、各国軍隊はそれなりに対抗しようとしています。
 
もはやアメリカ単独では中国を抑えることはできないのは明白ですし、米軍関係者からもそのような声が聞こえてきています。
 
日米豪印英加などとの連携をすすめ、中国も署名批准しているUNCLOS(国連海洋法条約)などのルールに則った海洋利用と、力による一方的な現状変更をさせない姿勢を明確にする必要があります。
 
【米国】
バイデン米大統領の就任早々、オースティン氏が国防長官に決定しました。
軍人だった人が就任するには退役後7年を経過しているか、またはこの規定の例外とするため議会での承認が必要なのですが、私は巨大防衛産業レイセオン社の役員でもあった人が国防長官になることは無いと思っていました。
 
しかし大統領の就任後たった2日で圧倒的賛成多数(93:2)で承認。軍事に無知な素人が国防を担うより、精通しているプロのほうが望ましいのかもしれませんが、軍のシビリアンコントロールを重視するアメリカにしては意外でした。
(トランプ政権の初代国防長官マティス氏も例外として承認)
 
国内と軍の安定化も勿論ですが、NATOとの関係修復、何といっても対中国の事を考えるとノンビリしていられないというところでしょうか。
また同氏は黒人である事も政権には重要な要素であったかもしれません。
どちらにしても経歴からしてかなり優秀な方のようです。就任直後のコメントが「さぁ仕事にとりかかりましょう」ですからね・・・部下にとっては厳しい上司。今後を期待しましょう。
 
米軍は老朽化した兵器や対中国に役立たなさそうな兵器の早期退役を進めているようですが、これは維持コストを抑制し新兵器開発などに予算を回すためでしょう。勿論、対中国を睨んでのことだと思います。潜水艦に対する予算も増額されているようですしね。
 
【豪州】
イマイチ頼りないオーストラリア海軍ですが、中国の脅威は日本と同様に感じており、海軍の近代化に巨額の投資を計画しています。
 
新型の潜水艦をフランスと共同開発していますし、対中抑止を睨んでオーストラリアでは、巡航ミサイルの長射程化(1,500km)、スタンダードミサイルSM-2/SM-6の能力向上の為の投資もおこなうようです。
 
自衛隊
自衛隊も動きが早くなってきました。陸自装備の12式対艦ミサイルを原型として、
 
(1)射程延伸 200kmから1,500kmへ(最大目標2,000km)
 
(2)ステルス化 レーダー断面積(RCS)を減少させることで、レーダー探知を遅らせてリアクションタイムを減らします。
 
(3)マルチプラットフォーム化 発射器のみならず、老朽化してきたF-15J戦闘機にも搭載できるようにします。
ステルス性の無いF-15Jでも長射程ミサイルキャリア―として敵の防空圏外から攻撃をおこなえるようになります。
これには対艦・対地両方の能力を付加します。
 
(4)データリンク 敵の位置情報の取得をデータリンクを通じて更新できるようにします。
これによって命中精度を高めるとともに、最終段階(着弾前)にも迎撃回避の為の飛行ルートの変更をできるようにします。
 
これを2023年度までに開発するとしています。マジすか??
しかし、予算は増えず人員も増えずでは対応にも限界があるでしょう。予算の増額を望みたいところです。
 
【連携】
イギリスは「日米豪印」のいわゆるQuad(クアッド・4か国戦略対話)、CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定 )に加わる動きも見せていますね。
 
派遣が決まった英空母QEには米海兵隊のF-35Bも搭載し米駆逐艦も随伴だそうです。
南シナ海あたりで米海軍、海自と共同訓練しつつ日本へ寄港するかもしれませんし、経済で中国依存が強かったドイツも苦しい人員をやりくりしてフリゲート艦を派遣するようですので一緒に訓練することがあるかも。
 
ドイツ海軍はさほど力がありませんが、QuadとNATOが連携して南シナ海東シナ海での中国の振る舞いに対処しようということでしょうか。
 
そうそう・・・実はフィリピンも新型フリゲート艦の導入を進めています。(韓国・現代重工業製2,600トン)艦砲もミサイルも載ってる立派な「軍艦」ですよ。
 
【中国】
中国は早速にもバイデン大統領の様子を伺ってきています。
台湾の周辺にうっとしいい行動をとっています。
 
台湾の防空識別圏ADIZ)に1/23日にY-8対潜哨戒機×1 H-6K爆撃機×8 J-16戦闘機×4、 24 日にはY-8対潜哨戒機×2 Su-30戦闘機×2 J-16戦闘機×4 J-10戦闘機×6 Y-8電子偵察機×1 の述べ28機の侵入させています。
領空とは違い、防空識別圏ADIZ)進入そのものはさほど問題はありません。ロシアも26日にアラスカの防空識別圏に2機のTu-142(哨戒機)を侵入させていますしよくある事。
 
しかし今回は「爆撃機」を8機も入れている事は示威行為であり、飛行コースも南シナ海で航行中の米空母打撃群の比較的近くであったことを考えると、これは台湾に対する威嚇であり、核心的利益である台湾は離さない、アメリカに関与させないという意思表示であり、バイデン政権の出方を伺っての行為としか考えられません。
 
中国による南シナ海での実効支配もなかなか進んでいませんが、この海域での活動を通じてバイデン政権を値踏みすることは今後するかもしれません。
どこがデッドラインか測るため、従来より少し強硬な姿勢や行動をとる可能性があります。
 
【ミサイル長射程化の利点】
ミサイルの長射程化には多くの利点があります。
南西諸島防衛を考えた場合、前線となる尖閣やその周辺に対しては沖縄諸島など各所にランチャーを設置できます。
沖縄本島なら島内を移動しやすく発射器の遮蔽、補給、人員の配置など全てにおいて有利です。
 
島内に無差別に着弾させるなんて流石にできませんから、中国はランチャーを破壊するには位置の特定をし精密誘導兵器による破壊をしなければなりませんが、ランチャーは発射後に島内の道路を利用して移動すれば良いため、簡単にはランチャーを狙えません。
 
また長射程ということは長く飛ぶ訳ですから、飛行ルートや飛行高度の選択肢が増えますので迎撃がしにくくなります。
自衛隊の計画どおりにマルチプラットフォーム化されれば、戦闘機からも発射できますので、防御側(艦船)にとっては厄介です。
 
ただし長射程が有効に機能するにはセンサーが重要で、リアルタイムで相手の情報を把握できるようにならなければなりません。
 
イージスアショアで茶番劇を演じた我が国ですが、限りあるリソースを対中・露・北朝鮮にどれだけの量と比率で配分するのか、どのように抑止し破れた場合はどう戦えば負けないかを事前に十分練り上げる必要があります。
 
相手チームの連携を崩すには弱点を突くのが常道ですが、その弱点になりたくはないですから。
もはや「安保と水はタダ」と言われた時代はとっくに終わっていますね。

「散る桜残る桜」―甲飛十期の記録― より

【最後の紫電改パイロット】
2021年1月9日ー
「最後の紫電改パイロット」笠井智一さんが94歳で亡くなられました。
 
この事に因み、最初は乗機だった局地戦闘機紫電改」や「紫電」、それらの原型となった「水上戦闘機・強風」を取り上げようと思ったのですが、笠井さんは甲種・海軍飛行予科練習生(通称:予科練)十期出身であったこと、また手元に分厚い冊子(全600ページ)の「散る桜残る桜」―甲飛十期の記録―(昭和47年発行・甲飛十期会編・非売品)がありますので、この内容を少し紹介しつつ、先の大戦で亡くなられた多くの方々を偲ぼうと思います。
 

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予科練
私は子供の頃、「予科練の歌(作曲:小関裕而 作詞:西条八十」)を聞いた覚えがありますが、世代で予科練に対する印象が全然違うでしょうし、そもそも予科練という呼称を若い方は聞いたことが無いかもしれません。
 
先の大戦では航空機の重要性が高まり、搭乗員の育成が急務となっていました。
このことから戦況がひっ迫してから搭乗員速成のために組織されたと思われがちですがそうではありません。
 
昭和の初めごろから将来の搭乗員需要の高まりを見越して、従来の方法に加えて創設された制度であり、予科練制度自体は昭和五年に第一期が募集されています。
 
受験対象は高等小学校卒業者で90名の採用枠に対し5,764名の応募で採用76名、その後も年2回の募集で平均競争率80倍という超狭き門であり、学業体力とも優秀なものが採用されています。修学年限は3年間。
 
当時は学業優秀でも経済的理由で進学を諦めざるを得なかったり、衣食住が保障され兵学校にも進学でき士官になれる可能性があったとPRされていたこと、最先端の飛行機に乗れることへの憧れなどもあって応募が多かったと書かれています。
 
【甲種の創設】
甲種というのは昭和12年にできた制度で、採用資格は旧制中学4年1学期修了程度の学力、修学年限は1年半。
 
予科練習生は殆ど飛行機には乗らず基礎鍛錬・基礎教育が殆どであり、娑婆っ気を抜く事が主要な目的だったようです。
飛行訓練は「予科」が取れて飛行練習生になってから始まります。従来の一期から八期は「乙種」とされ、一応区分されてはいます。
 
甲種の入隊状況を見てみると、第一期(昭和12年9月)212名から第七期(昭和15年10月)312名まで徐々に入隊数が増えていますが、開戦濃厚であった第九期(昭和16年10月)は841名、開戦後に入隊している第十期(昭和17年4月)は1,097名と急増し、戦況がひっ迫してきた第十三期(昭和18年)は、28,111名と第一期の130倍以上になっています。
 
しかしこの制度自体が右往左往している様子が書いてあります。戦況などによって状況が変わったのも一因なのでしょうが、この本には「われわれ予科練出身者の者にさえ、身分規定が良く理解できない」とか「取り扱いの無責任さは常識では考えられない」と書いてあり、そのような組織マネジメントの杜撰さ、グランドデザインの無さは随所に出てきます。
 
開戦に至る経緯や終戦時のゴタゴタ、現代のコロナ対応まで、これはもはや「国民性」なのかと言いたくなります。
 
【激戦地へ】
この甲飛十期は多数の戦死者を出しています。入隊者数1,097に対して戦病死者数は777名。戦病死率は7割にも及びます。
 
開戦劈頭、新人でさえ搭乗員は千時間に迫る飛行時間で、先任搭乗員にも中国戦線で実践を経験した者も多数おり、乗機も当時世界一の性能を誇った零戦であったのに対し、甲飛十期は育成機関が短縮され実機訓練も1カ月そこそこの訓練不十分、指導にあたる実践経験豊富なベテラン搭乗員や優秀な士官が不足した状態で、質の悪い燃料と故障の多発する飛行機に搭乗させられ、アメリカ機動部隊と直接対峙する「第一航空艦隊」などの中心搭乗員として配属するという上層部の愚策が、戦死率の高さの一因であったことは間違いないでしょう。
 
さらには昭和19年10月フィリピンにおいておこなわれた初めての神風特別攻撃隊(特攻)など多くの特攻隊員として、また全戦線において中堅搭乗員となっていたことにも求められます。
 
【追悼】
最後に笠井さんのことも少し触れておきます。
笠井さんは山本五十六連合艦隊司令長官パプアニューギニアブーゲンビル島上空で戦死した時、長官乗機の一式陸攻を「空戦の神様」と呼ばれた杉田正一一飛曹と護衛しています。
(その時の護衛機6機のうち杉田・笠井の他は当地で戦死)
 
ヤップ島では「撃墜王」菅野直大尉の3番機を務め、(4番機も同期の松尾一飛曹、その後体当たりで戦死)ており、技量優秀な搭乗員を集めた本土決戦部隊であった第三四三海軍航空隊 (343空)でも杉田機の二番機を務めています。
 
このことから、笠井さんはじめ予科練生は練度未熟故に「突っ込むだけで良い特攻をさせた」などの非難はあたらないでしょう。空戦で米軍機を撃墜している記録も沢山あるのです。
 
特攻機に十期生が搭乗し、その「直掩(上空援護)」機も同期生がしていたことも多く、この時の同期生を特攻に送り出す心境はどのようなものだったのでしょうか。
無事に護衛任務を果たす時は「特攻」する時なのですから。
 
【遺書】
さて、この本の冒頭には遺書や遺稿が多く掲載されています。
どれも涙無くしては読めないものばかりですが、ほぼ共通するのは「親への感謝」「郷里への想い」「ご心配ご無用」などと書いてあります。
検閲があるため書きたい事が全て書けた訳ではないでしょうが、非常に達筆で入隊時には平均17歳だった少年の言葉とは思えません。予科練時代によほど精神を鍛錬したのでしょう。
当時の彼らがそのような厳しい鍛錬にもよく耐えている様子も書かれています。筆舌に尽くしがたい体罰や厳しい課業、暮らしぶり、そんな中で醸成されていく仲間意識が読み取れます。
 
【生き様として】
とにもかくにも、十期生は20歳になるかならないか、またベテランといっても25歳前後の青年たちがどのような想いで生きて戦ったのか、そのことはいつまでも深く考えていきたいと思います。
甘えと怯えの時代と言われる現代に生きる私は、亡くなった方々に恥ずかしくない生き方ができているとは思えません。わが身を振り返ると恥ずかしくなります。
 
【雑記】
昭和17年1月20日は衣料の購入が点数切符制に変わっています。(正式名は「繊維製品配給消費統制規則」)
またこの頃に有名なラバウルを占領し、ビルマ進攻作戦も開始されています。
 
写真上 散る桜 残る桜 -甲飛十期の記録ー
写真下 自作の紫電改のプラモ(ハセガワ1/48)

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令和の日英同盟

本年も長文をお読みいただいた方、ありがとうございました。更新ものんびりのブログですが、来年もよろしくお願いします。
 
日英同盟破棄から100年】
日本は1921年(大正10年)ワシントン海軍軍縮会議において日英同盟を廃棄しました。それから丁度100年。令和の時代に新たな形で日英同盟が復活しつつあるようです。
 
【QE展開】
2021年初頭にも英海軍新鋭空母クイーンエリザベス(約6.5万トン)を中心とした「空母打撃群」が、アジア太平洋地域(西太平洋)に長期展開されます。
「空母打撃群」とは空母と艦隊護衛の戦闘艦、補給艦、潜水艦などで構成される艦隊です。(同型艦にプリンスオブウェールズ
 
海洋覇権を強める中国を牽制するため、各国との共同訓練や航行の自由作戦を実施するほか、EU離脱後の日本やアメリカとの外交強化など軍事・外交両面を睨んでの展開と考えられます。
 
【日本の存在感】
英国が空母打撃群を長期展開できるのは、ある意味日本のおかげとも言えます。その理由は、艦隊を収容できる港、整備に使える大型ドックを横須賀に保有しています。米第七艦隊も利用していますから実績も能力も申し分ありません。
ただキャパシティに余裕があるわけでは無いでしょうから、やりくりには苦労するかもしれませんね。
 
また、空母クイーンエリザベスは艦載機としてF-35Bを運用可能ですが、日米英とも共通の機体ですので、運用の柔軟性が高くなりますし、F-35Bを強襲揚陸艦で運用する予定の米軍にとっては強襲揚陸艦不足を助けてもらえます。
自衛隊も「いずも」「かが」をF-35Bが運用できるように改修していきますので、こちらでも共通の運用がおこなえます。空自はF-35を選定して正解でした。
 
さらにF-35のアジアでの機体整備拠点(リージョナル・デポ)は「小牧」にあるため、充分な整備も日本で行えます。
英軍の西太平洋への長期展開は日米にとっては対中抑止の助けになりますし、英国は日本の拠点を利用できます。
装備品開発においても協力しやすくなることで自国負担が小さくなったり、より高性能のものを開発できるでしょう。
 
香港の一件で一国二制度の約束を反故にされ大英帝国の面目を潰され、かつての植民地であった豪・印が中国に危機感を募らせてる今、知らぬ顔をする訳にもいかないでしょう。
 
【防衛協力】
対中脅威の高まりと共に日本は米国以外とも防衛協力を深化させてきており、オーストラリアとは2013年に日豪物品役務相互提供協定(ACSA)を日豪情報保護協定(ISA)を発効させ、2014年以降には防衛装備品技術移転協定を、2020年11月には日豪円滑化協定を大枠合意しています。
 
日本が他国と締結したこの種の協定では米国以外とは初めての締結で、オーストラリアは首相ステートメントで「日豪交流における歴史上の転機」「高いレベルの日豪防衛協力に、新たな章を切り開くもの」として高く評価しています。英国はEU離脱後を睨み、2021年1月の日英EPA発効に続き、この日豪円滑化協定にも関心を示しています。(英国の他にも仏・印とも協議中とみられます)
 
英国とは既に、2014年に新たな「防衛装備移転三原則」に基づき、2014年以降に防衛装備品技術移転協定、情報保護協定を締結しており、(他にもNATO・豪・独・伊・仏・印など)2015年には連絡幹部の常続的派遣の受け入れを開始、2018年に日英物品役務相互提供協定(ACSA)が発効しています。
 
これらに基づき、航空自衛隊保有するF-2戦闘機に代わる次期戦闘機、英国の次期戦闘機「テンペスト」に搭載できるとみられる新たなミサイル開発(JNAAM)にも着手しています。さらに日米英の三か国による共同演習も実施していますし、今後も増えるでしょう。
 
【新たな秩序】
世界は力の序列による宗主国と植民地のような「弱肉強食」「上下関係」の時代を経て、冷戦時代の「イデオロギー」で分断された時代に移行し、現代のような「航行の自由」を軍事力の誇示によって保証することで海洋覇権を維持するアメリカのもとで、自由に経済文化の交流を図り共通の価値観と利益を持つ国々と、それに異を唱える国々、「力こそ正義」な独善的な国々におおまかにグループ化されました。
 
当然日本は最初のグループですから、英国や豪・仏などとも連携が深まるのは当然なのかもしれませんが、同盟と言っても準同盟と言うべきレベルであって、日米のような関係にはなりません。
 
軍事同盟は「即応性」「双務性」が重要なため、純粋な意味では実現可能性は高くありません。
実現するとしてもかなり先の話でしょうし、そうでないならば中国の脅威が日英とも差し迫った状況になったときでしょう。
 
しかし「ファイブアイズ」に加盟する話がチラホラでたり、日米英仏豪印などとの多国間協力を深化させるうえで、現実的には日英同盟とも言える関係構築にいずれは繋がるかもしれません。
 
安倍政権が長期政権であったことと、安倍総理の提唱した「自由で開かれたアジア太平洋」構想が世界で支持された結果がここにも表れていると思います。
 
1905年の日本海海戦明治38年)で、バルチック艦隊を破った日本艦隊旗艦「三笠」、日本初の超弩級戦艦「金剛」は英国ビッカース社の建造であり、人材交流も含めて英国海軍から日本海軍は多くを学びました。帝国海軍の師匠とも言うべき存在です。
 
英国車は日本ではあまり人気がありませんが、クルマは左側通行。日本初の鉄道(新橋~横浜)を最初に走ったのも英国の蒸気機関車。日本は開国以来多くを英国に学びました。
 
開戦当初、マレー沖海戦で一式陸攻などによって沈められたのは「レパルス」と最新鋭艦「プリンスオブウェールズ」で、これは世界初の航空攻撃による航行中の戦艦の撃沈記録です。
 
空母の艦隊運用を本格的に行ったのは、帝国海軍による真珠湾攻撃ですが、空母として最初から設計し起工されたのはイギリスの「ハーミーズ」で、起工は遅れたものの帝国海軍の「鳳翔」が先に完成しました。
 
なにか不思議な縁があるように感じます。今後どのように日英の関係が深化していくのか注意深く観察したいと思います。
 
 
※ACSA・・・両軍間の物品・役務を相互に提供することや、その際の決済手続等の枠組みを定めた協定で、これにより共同訓練や共同での情報収集活動、PKO活動、人道支援災害派遣、外国での緊急事態における自国民の保護措置などがおこなえるようになります。物品については相手国の同意を得ずに第三者移転はできません。

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英空母クィーンエリザベス
(写真は英海軍HPより)

あの戦争をなんと呼ぶべきか

今年も12月8日がやってきます。毎年この日には何かを必ず書くようにしています。
まず社会の歴史の時間みたいですが、時間軸を一旦整理してみます。学生時代には歴史の授業が嫌いだったんですけどね。
 
1931(昭和6年) 9/18満州事変
1937(昭和12年)7/7 支那事変
支那事変は元々は北支事変であったものを支那事変(1937/7/7・盧溝橋事件を発端)と呼び変えました。→戦後日中戦争と呼称を変えましたが、当初は宣戦布告がない武力衝突だったため、『事変』と呼称しています。
=======================================
1941(昭和16年)12/8米英に宣戦布告真珠湾攻撃・マレー攻撃
           12/9中華民国重慶政府が日本に宣戦布告
           12/10 オランダが日本に宣戦布告
1942(昭和17年)1/12オランダに宣戦布告
1945(昭和20年)8/14ポツダム宣言受諾 9/2調印・発行
1952(昭和26年)4/27サンフランシスコ平和条約発効
=======================================
 
▲戦前~開戦直後
1941(昭和16年)7/2の御前会議『情勢の推移に伴う帝国国策要綱』では、ざっくり言うと「大東亜共栄圏建設を目指し、自存自衛の為に南方進出し、このため情勢により米英ソとの戦争も辞さず」としました。
 
9/6の御前会議では「10月下旬を目途とし、対米英蘭戦争準備に入る」としています。まだ名称は何もでてきていません。想定する相手国の名前が出てきているだけです。
しかし同年11/5の『帝国国策遂行要領』では、「自存自衛」と「大東亜共栄圏」を併記して「対米英蘭戦争を決意し」となり、戦争は避けられないものとしていますが、まだ呼称は決めていません。
 
陸海軍で想定する主な戦域・相手国がそれぞれ異なる事や、海軍は『太平洋戦争』を呼称として提案していたり、他の呼称もいくつか検討課題になっていたようです。
 
この要領をうけて海軍は11/5に『大海令(海軍・天皇の決裁を受けた命令書)第一号』を発令しますが、そこには「自存自衛のため米英蘭に対し開戦を予期し戦争準備をする」としか書いていません。
大陸命(陸軍・同じ)には、「大東亜共栄圏の建設」と『大東亜』という言葉を明示しています。
 
陸海軍夫々の思惑の違いが読み取れます。海軍は自衛の為に米軍を接近させないことを主眼とし、陸軍は資源確保の為の南進を主眼としています。
対日禁輸処置を受けて東アジアへ資源確保に向かうのか、資源確保を確実にするために米軍を接近させないのか。とにかくこの段階でも呼称は決めていません。
 
開戦後の12/10にようやく大本営連絡会議では、「12/8をもって支那事変も含めて『大東亜戦争』と呼称する」と決めて、12/12の閣議決定で正式決定されます。
12/7までは支那事変、12/8以降は支那事変も大東亜戦争に含むという解釈になりますが明文化はされていません。
 
このとき内閣情報局では「『大東亜戦争』と称するは、大東亜新秩序建設を目的とする戦争なることを意味するものにして、戦争地域を大東亜のみに限定する意味に非ず」としていて、戦争目的が主題となった名称という説明です。
 
▲戦後
【太平洋戦争史】
1945(昭和20年)12月8日
GHQが新聞に連載した「太平洋戦争史」が『太平洋戦争』の呼称が広く認識された始まりで、以降日本の学会や研究者の出版物にも『太平洋戦争』の呼称が広く使われるようになっています。
この「太平洋戦争史」は太平洋を主戦場とした米軍の正当性を主張し、極東軍事裁判東京裁判)と一致するように記述され、日本軍の不当さや残虐行為を強調したもので、その後の戦後史観を形作るものになりました。
 
神道指令】
1945(昭和20年)12月15日 
GHQ神道指令により『大東亜』の呼称を禁止しました。刊行物には全て検閲が入る事になり、政府は暫定的に呼称を『先の戦争』『今次大戦』『戦争』などと改めるようになり、公文書もそれにならいました。
 
【指令の失効】
1952(昭和27年)年4月11日に公布された法律第八十一号(昭二七・四・一一)【ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に関する法律
によって、すでにこの指令の効力は失効していますので、公的には『大東亜戦争』と呼称しても差し支え無いことになります。
 
【法的根拠】
そもそも『大東亜戦争』と閣議決定はされてはいますが、法令上の根拠はありません。
そして『太平洋戦争』との呼称についても法令上の根拠はありません。
また公文書に大東亜戦争の呼称を用いる事を禁じる法令上の根拠もありません。
このことは2006年(平成18年)11月30日と、2007(平成19年)1月26日、衆議院に提出された質問主意書に対する答弁で明確になっています。
 
【何を使っているか】
法令には『今次の大戦』や『太平洋戦争』が使われ、『大東亜戦争』は使われていません。
昭和天皇は『長きに亘れる戦争』『先の大戦』『不幸な一時期』などを使用されておられます。
国会図書館の分類は『太平洋戦争』で統一されています。
防衛研究所によって編さんされた公刊戦史『戦史叢書』はタイトルに『太平洋戦史』とも『大東亜戦史』ともせず、単に『戦史』としています。
教科書では最も多くが『太平洋戦争』を使用し、次いで『大東亜戦争』、最近は『アジア・太平洋戦争』も検定を通るようになったようです。
靖国神社では1941年12月8日を境に『支那事変』『大東亜戦争戦没者数をそれぞれ分けていいます。
日本的玉虫色な感じがします。
 
【論争は続く】
呼称については当然論争があります。決着していません。
開戦前には海軍も『太平洋戦争』を提唱していましたが、地理的には正しくなく中国戦線を無視しているようになりますし、『太平洋戦争』という呼称は既に中南米での戦争(1865-66、1879-84)で使用されているので、不適切という指摘もあります。
また、支那事変を『日中戦争』とし、『大東亜戦争』を『太平洋戦争』と分けて呼ぶ場合もありますが、個別の戦争をイメージし日本が長くおこなった戦争とは言い難い面もあります。
陸海軍どちらが主体であったかで分離する訳にもいかないでしょう。
 
特に中国に対しては、建前は「自存自衛のため、アジア開放の為、東亜の安定を目指した大東亜共栄圏建設」と言えども、侵略戦争の面は否めず、それらの行為を擁護する訳にはいきません。
 
当時の欧米列強に並ぶべく植民地を持っていた日本が、解放を謳う矛盾がありつつも、結果としては英国などは日本の進出によって植民地の多くを失ったのも事実であり、その後に多くの国は独立を果たしました。これも事実です。
 
そのような政治的イデオロギーを排し戦域的観点や閣議決定されている合法性、日本自身が名付けた点、『太平洋戦争』と呼ぶのは「歴史を直視せず覆い隠すような行為である」とする意見、太平洋のみならず東アジア~アジアに対して「侵略と開放」の二面性があった戦争であったことなどから考えると『大東亜戦争』と呼ぶのが相応しいとする主張も多いのも事実です。
 
【ドナルドキーン氏の意見】
日本文化の研究者として有名なドナルド・キーン氏は、『戦争の歴史的性質を最も的確に表現し、戦争の実体を最も広く蔽いうるもの』とし て『大東亜戦争』を用いるべきであると主張しました。
 
【そのほかの主張】
これは国際的呼称であり、イデオロギー性も無いが日本の直接関わった戦争として視野を限定できない弊害がありますし、あまりに広範囲過ぎるでしょう。
 
支那事変以降を言いますが、一般的に定着しなかったし、満州事変や対米戦争終了後の日中戦争が入ることになるうえ、戦域が分かりにくい。
 
と呼ばれたこともあります。これは日本古来の戦争(乱)が、応仁の乱壬申の乱など元号を冠しているので単純な呼称としては適切とし、また戦争には「侵略と開放」の二面性があり、日本も多くを攻めたが、またABCD包囲網からシベリア抑留や原爆、無差別爆撃を受けた被害も内包する意味からも、このように新たな呼称が相応しいとする論もかつてはありましたが定着しませんでした。
 
『極東戦争』
と呼称する提案も欧米にはあったのですが、「極東」という視点はあまりにヨーロッパ中心主義的であり、欧米がそのような呼称を用いるならば、『大東亜戦争』も日本視点ではおかしくはないことになります。
 
【合意は得られるか】
イデオロギー性を排除して合理的かつ科学的で地域・相手・時間を表現できる呼称。
なかなか見つかりそうにありません。
戦争目的も定まらず、両論併記や玉虫色で決着させ、戦争指導も右往左往した戦線の日本。
呼称すら決められずにいる戦後日本。
簡単に民族性は変わらないということでしょうか。
 
因みに私は『先の大戦』と呼んでいます。
 
皆さんはどうですか。

祝!新型護衛艦進水

2020/11/19 三井E&S造船玉野艦船工場において進水した、新型護衛艦(30FFM)は「くまの」と命名されました。
熊野川」に因んで命名されました。艦番号は「2」ですが、「1」より先行して進水した2番艦です。

その為、通常なら1番艦進水時に「○○型」とネームシップが型式になるのですが、ネームシップ(1番艦)がまだ進水しておらず、艦名が未定(未発表)の為、当面は型式が「3900トン型」となっています。
艦種はFFMとなりますが、これは海自独自。「多用途なフリゲート艦」と言う意味です。他にはDE,DD,DDG,DDHなどが護衛艦の艦種としては存在します。


なお、本艦はこのあと、艤装などを施し、2022年就役の予定です。

艦首部分にスラスター(小さな穴)が見えますね。これで方向転換をおこない、小回りが利くのでタグボート無しでの接岸もできますし、なにより最近は大型の護衛艦が多い中で小型なので、小さな港にも入港できますので、海外の寄港地の幅も広がり、まさに「多用途」な運用ができるようになるでしょう。

全体のシルエットがスッキリしているのは、ステルス性を高めた結果ですが、マストも面で構成していますし、アンカーさえ艦内に収容する作りのようです。

従来の護衛艦からはかなり異質な艦形ですね。


帝国海軍・軽巡洋艦「熊野」、先代護衛艦「くまの」(2001年除籍)に続いて3代目です。

以前にも書いたことがありますが、護衛艦艦内では神社が祀られていますが、過去にならい「熊野本宮大社」に因んだものになるんでしょうか。DDH-182「いせ」は艦内神社に伊勢神宮のお札が祀られているそうです。

 

航海と任務の安全を祈ります。

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くまの進水式

 

5年以内に習金平は台湾を目指すかもしれない

何度も書いていますが、台湾の吸収は中国の核心的利益です。国民党の面影すらも無くさなければなりません。
 
香港返還後にイギリスとの約束を反故にして一国二制度も無くそうとしているのも、中国が支配されていた負の歴史を清算共産党が唯一正当な政権となり、中国を名実ともに世界の覇権国にするためです。それは習金平のプライドでもありそれ自体は施政者として当たり前です。この目標はなんとしても達成しようとします。
 
しかし台湾を吸収するには「力による現状変更」が必須です。台湾は話し合いに応じる意志がない事は明白です。
 
また、隣国である日本(倭国)には多くを与えた教師としての自負がありつつも、海洋の壁に阻まれて冊封体制に組み込めませんでした。さらに日本は開国以来急速に成長し繁栄。清王朝の時代やそれ以前も見下していた日本によって、一時は大陸にまで進出しされました。
 
アメリカの介入によって日本は排除されましたが、中国の力ではありません。そして敗戦後も驚異的に復興しアメリカに次ぐ自由主義社会での大国となりましたが、このことは中国のプライドを傷つけたはずです。
 
力による台湾との統一(吸収)よりも、台湾を国として認め、融和的に関係を深めたほうが損得勘定で言えば得なのに、一切それをしないのはプライドの問題なのです。
 
これは解決できないため、いつかは衝突します。私はここ5年くらいがポイントだと思っています。
なぜそんなに急ぐ必要があるのか?少し相手の立場で考えてみようと思います。
 
【積極的要素】
(1)中国の国力増大に伴い、海軍力・ミサイル戦力を強化した結果、台湾近辺に米軍・自衛隊を接近させないことができるようになってきたとの自信がついた。第一列島線内の聖域化ができるブルーウォーターネイビー(遠征能力のある外洋海軍)としての自信がついた。
 
(2)予算や人員などに縛られてきた海上自衛隊との戦力差がもうすぐ3倍になる。「数の質のうち」で、いくら海自が練度が高いと言っても数でひっくり返せる。
 
(3)海自を排除できれば、世界一とも言われる対潜哨戒網に穴ができるため、米海軍の接近を拒否できる。
 
(4)米軍はINF(中距離核戦力全廃条約)によって中距離ミサイルという運搬手段を保有しておらず、反対に中国は多数保有している。目的は米国本土への攻撃では無く、米軍の接近を阻止するだけで良い 。
このため中距離ミサイルという有利な武器の土俵で戦える状況である。しかし時間がたてばINFを破棄した米軍に追いつかれると予想できるし、本気になった米軍のペースは早い。
 
(5)今まではアメリカに対抗し米軍基地を攻撃する能力のある国家は無かったため、米軍基地は攻撃に対してはかなり脆弱。
今なら多数の中距離ミサイルで、在日米軍基地、自衛隊港湾、飛行場を攻撃しレーダー、滑走路、格納庫などを破壊し即応性を喪失させられる。
時間稼ぎできればその間に台湾を吸収できるかもしれない。
 
(6)日米のイージスシステムによるミサイル迎撃能力には、多数のミサイルによる飽和攻撃やDF-17などの極超音速ミサイルで突破可能。これにより艦船の接近を拒否できるのではないか。
 
(7)米軍は中国より圧倒的な核戦力(ICBM)を保有するが、使えない戦略核は最早意味を持たない。
 
(8)融和的なバイデンが大統領となれば、あと4年はオバマ時代のように時間を稼ぎつつ体制構築ができる。
 
(9)自由主義社会の脆弱性である、資本による世論のコントロールや誘導、社会の分断、経済の深化を進めてきた結果(シャープパワーの行使)、反中勢力は一定量いるものの、親中(もしくは妥協的な)勢力も増えつつある。
しかし徐々に脆弱性を閉じる法整備や規制が進められており、これ以上の効果は見込みにくい。
 
(10)コロナによって疲弊した自由主義社会の経済界は、いち早く回復しつつある巨大市場中国を捨てることはできず、施政者の判断にも影響を与え「台湾を見捨てても自国経済を優先」するだろう。
 
(11)自由主義社会と覇権主義社会では、同じ価値観、人権意識の元では行動していないため、人命の価値は等しく無く、戦術的に負ける事があっても戦略的勝利を得ることができるかもしれない。
 
(12)国際法では民間人への攻撃はできないため、民兵の乗る漁船を民間船に偽装し、これを保護するという名目で、軍用艦艇を航行させグレーゾーンを作り、島嶼部の占拠や沿岸接近拒否に利用する。
民間船への攻撃(無差別攻撃)はハーグ条約8条で禁じられているため、自衛隊保有する機雷による海上封鎖も避けることができる。
 
(13)中国の海洋進出にとって脅威は潜水艦だが、大陸沿岸部は浅い大陸棚が広がっているため接近されにくい。水上艦艇の接近も対艦ミサイルを多数配備してたため拒否できる。
 
(14)北朝鮮・ロシアを背後に抱えたまま正面に中国の三面打ちを強いれば有利に戦える。
 
(15)日米に対し核使用をすれば、核の信頼性を担保するためにアメリカは必ず核報復をおこなう。
これは中国にとって望まないシナリオだが、通常兵器であれば核攻撃は行われない。
 
【消極的要素】
(1)台湾占領の為の攻撃手段は十分だが、兵員の輸送手段が不十分。国民総動員で徹底抗戦された場合、占拠に時間がかかり世界中の介入を招くかもしれない。
台湾の世論調査では戦争になれば8割の国民が戦うと回答している。これを一気に抑えられるほどの上陸戦はおこなえない。
 
(2)これ以上時間がたてばアメリカによる武器売却などによる台湾支援が進む。現在も戦闘機やミサイル及び発射器など多数購入契約しており、またアメリカ議会もそれを認めている。このことはアメリカ議会が台湾危機が近いと感じている証拠である。
台湾はリング中央で足を止めて打ちあう覚悟である事がわかる。
 
(3)価値観が近く同じ海洋国家である日米豪加英印などの軍事的な連携は時間がたてばたつほど深化するが、これは中国にとって好ましくない。
 
(4)移民によって若い活力を維持し続けるアメリカに対し、急速に社会が高齢化する中国には時間が無い。
 
(5)今まで低コストで入手(盗む)できた科学・軍事技術だが、対中包囲網によって今後は入手しにくくなると予想されるため、先延ばしすると先端技術力での差が広がる。
 
(6)連携されてチョークポイントを封鎖されるような長期戦になれば不利になる。
巨大国家を支えるには大きなエネルギーと食料が必要である。太平洋戦争時の日本が好例である。
 
(7)多数の固定目標の攻撃に必要充分なミサイルはあってもISR能力は未だ備わっていない。
 
【防衛側の打てる手】
 
(1)ISR能力(情報収集・警戒監視・偵察)の強化と阻害。
防衛側にとっては相手の行動をつぶさに監視できるようこれらの能力を高めるとともに、攻撃側の能力を阻害する能力を高めること。防衛側がいつどこで何をしているのかを把握させなければ、攻撃できず、また攻撃しても戦果確認させなければ次の行動(攻撃)に移れない。
 
(2)基地の抗堪可
攻撃による被害の低減を図るため、通常弾頭ミサイルに耐えられるような格納庫や滑走路の整備、攻撃されても直ぐに復旧できるような体制を整える。
アメリカがトマホーク巡航ミサイル59発による攻撃でシリアの空軍基地を攻撃したが、通常弾頭の巡航ミサイルでは復旧にはそれほど時間がかからなかったことから、巡航ミサイルに対して基地の強化は効果を見込める。
ただし慣性力がある弾道ミサイルに対抗するには不充分であるため、武器弾薬の分散配置も必要である。(例えば民間空港への分散配備)
 
(3)IAMD(統合ミサイル防衛)体制の早期構築
防衛計画の大綱に従い、またイージスアショア配備断念に伴う防空能力の弱点を補うため、少なくともNATO並みのIAMD体制の構築を急ぐ必要がある。
 
日本はすでに射程1000km前後のミサイル防空体制は地域最高レベルであり、これに従来防空アセットも組み合わせ、JADGE(自動警戒監視システム・空自運用)による一元的な指揮統制をおこなうことで、これらをスムーズに機能させる。
 
その為のクロスドメイン(領域横断)能力をさらに深化させることと、予算処置を十分におこなう。予算の増加はNATO基準に沿った対GDP比2%を目標とする。これにはアメリカの関与を強める効果がある。
 
(4)敵基地攻撃能力の保有
法理的には敵基地攻撃能力の保有は認められる(1956年鳩山首相答弁)うえ、この能力の有無と軍拡競争とはリンクしていないことは明白。
 
日本は法的に問題が無いとしつつも攻撃手段の保有をしてこなかったが、そのことで中国や北朝鮮が軍備拡張をしなかったとは言えないことは現状を見ればあきらか。
 
そしてこの能力の保有によって敵の飽和攻撃や敵ISR能力の阻害をこなう事や増援の阻止が可能(但しミサイル狩りができる訳では無い)。また攻撃を担う米軍の補完戦力ともなり米軍の関与をさせやすくできる。
 
(5)日米同盟の強化と他国間連携
日米が密接に連携し、また日米と連携する国が増えるほど、中国の判断は複雑にならざるを得ず、行動の選択肢を制限し結果を不確実なものにできる。
 
戦略的成果を得られない場合、共産党(習金平)への支持が失われかねないため、行動を抑止することに繋がる。
また、中国のISR能力に負担を強いる事ができ戦力の分散化と大きなコストを強要できる。EPAFTAなどの経済連携や多国間軍事演習、新・防衛法制などによる軍事協力の発展など多くの連携手段を使う。
 
(6)ASEANへの関与
ASEANへの日本の民間投資は成長し続けており、相手国によっては中国以上となりつつある。RCEPなどで中国の経済的な影響力を相対的に弱める事はASEAN自由主義社会を「裏切る」リスクを下げる。
 
(7)新たなアセットの保有
長期戦を見越してチョークポイント封鎖などコストを課すことのできるアセットを保有する。
 
(8)法整備
領海法の制定や武器使用権限の拡大、海保や海自の行動にある程度幅を持たせるため、「できること(ポジリスト)」から「できないこと(ネガリスト)」化する。
 
 
もし有事となれば、全ての攻撃を防ぎ被害を防止するなどは不可能です。
 
戦争になれば被害の一定量は許容しなければならない覚悟を官民とも持たねければなりません。また重点的にどこを守るのかも優先順位も含めて決めておく必要があります。
経済力と軍事力は強い相関関係が認められており、経済力の向上と共に戦力と運用能力向上は嫌でも進みます。
 
しかし相手にとって計算しなければならない要素を増やし判断を複雑にし、攻撃の意志を持つことを躊躇させることならば可能です。
 
我が国としては「現状維持」ができればよく、武力行使に至らなければいいのです。勝つ戦いはできなくても負けない戦いはできると思います。
 
要は「相手が嫌がる事をする」のであって「自分がしたい事をする」のではないのです。政府の議論にはその視点が欲しいと思います。日本は対中国には「弱者」の立場にすでに立っている事を認めることから議論を始めるべきです。
 
また国際関係において「武力の行使」は国連憲章で禁止されているので、中国はあくまで台湾は国内問題として処理しなければなりません。
この点も大いに利用すべきでしょう。
台湾をもっと表舞台で活躍できる場を関係各国で与えるのです。これは民間レベルでもできることがあります。学術的なフォーラムや会議開催、経済と観光、大学や研究機関によるあらゆる共同研究の推進、台湾の得意分野である科学技術を採用した機器やシステムの開発などが考えられます。
 
日米は「自由で開かれたインド太平洋」構想を進めていますが、中国はそれを閉ざそうとしています。開かれると都合が悪いのです。
 
また尖閣沖が騒がしいですが、海保と海警での小競り合いを超える軍レベルにエスカレーションさせてしまえば、これを口実に中国はさらに進出します。
それは相手の思う壺。
中国は少しづつレベルを上げてきており、残された時間はあまり多くありません。
 
東アジア地域は世界中で最もミサイル戦力が多く展開している地域でもあり、中東や欧州などよりよっぽど『火薬庫』であることを日本人も自覚してほしいと思います。
 
(画像:チョークポイントを通過する多くの艦船 MarineTrafficより)

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