海洋立国論

安全保障・軍事について自分自身の勉強のつもりで書いています。

3種類のパワー

Yahoo!ニュース 「【ロンドン時事】スウェーデンの首都ストックホルムを訪れた中国人観光客に対する警察の処遇が「人権侵害」だとして、中国がスウェーデン政府を非難し、外交問題に発展している。(時事通信)」 という記事を読んでいて思いだしたものがあるので、今回はそれをテーマにします。

このニュースの元記事はこちら

ざっと掻い摘んでみると、9月2日に中国人家族3人が宿泊予定ホテルに前日到着したため、ロビーでの寝泊まりを要求、ホテルは拒否(防犯上もそりゃ無理でしょう)。

居座る家族に対し警察に通報し強制的に連れだし、その際に「これは殺人だ!」と叫びながらの映像がSNSに流出、中国政府は「人権侵害で謝罪と賠償を要求」し、外交問題化しているというもの。スウェーデンダライ・ラマ14世が訪問したり、共産党批判本を扱う香港書店関係者のことなどが背景にあるとされています。

 

このニュースを読んで思いだした言葉が3つあります。

それは「ハードパワー」「ソフトパワー」「シャープパワー」です。

 

パワーとはなにか・・・解釈や多くの理論があってやや複雑なんですが、ざっくり言うと以下のようなことでしょう。

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 国家は国益を追求するものであり、国益とは行動目標であり、他者よりもより多くの利得を求める。国際社会は上位の政府が無くアナーキーであり、国家の頼りにするものは自助であってその為にパワーを必要としパワーによって望ましい結果を得るために他者に影響(他国の内政・外交)を与えようとする。パワーを生みだす源泉は資源(領土・人口・地政学的位置・天然資源・経済規模・軍事力など)であり、これを変換するプロセスを経なければならない。

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第1のパワー「ハードパワー」

ハードパワーとは、そのものずばりなイメージですが、昔から国家(または集団)に多用されてきた、「軍事力」「経済力」などある種直接的・物理的な強制力や支配力を言います。主体は国家や企業であり未だ決定的に重要なパワーです。個人的にはこのパワーは世界を理解するための基礎であると思っています。ODA(政府開発援助)などはその為に活用されていました。決して善意のみで円借款や無償援助をしたのではないでしょう。

第2のパワー「ソフトパワー

ソフトパワーとは、ジョセフ・ナイ教授(ハーバード大が1990年の著書で初めて用いた言葉です。国会議事録を検索すると「ソフトパワー」と言う用語が多くでてきますし、書籍も多数ありますので、言葉や概念は定着したと言えるでしょう。

これは相手を引き付ける「魅力」とでも言うもので、その源は文化・歴史・国民性・価値観など有形/無形・可視/不可視に限らないもので、主体は必ずしも国家や政府ではありません。個人や団体、地域だってソフトパワーの担い手であり、他者に対して影響を与える可能性があるものです。

しかしソフトパワーの源泉はハードパワー(経済力や政治力、軍事力)に依るところが大きく、ましてハードパワーに取って代われるものでは無いものです。

我が国でも「観光立国」としてインバウンド受け入れ増大を図っていますし、海外で日本食サブカルチャーなど日本を紹介するイベントを多数実施していますが、これらによって日本に対し理解を深めてもらうとともに、他者の選好に少なからず影響を与えようといています。

アメリカは強大な軍隊、世界一の経済という「ハードパワー」とマクドナルド・ディズニー、ハリウッドなど「ソフトパワー」の輸出で世界の覇権国となりその地位を守り続けています。

第3のパワー「シャープパワー」

しかし近年新たに「シャープパワー」という概念が提唱されました。

シンクタンクである全米民主義基金(NED)が提唱し、前述のジョセフ・ナイ教授によって明確に定義づけられました。

ハッキリ言うと中国・ロシアが民主主義国の開放性を逆手にとり、影響力を行使し言論・報道の自由などの価値感に影響を与えているとするものです。「買収」「威嚇」「情報操作」など悪意をもった手段を行使し世論工作を行うのです。

このことについては、英エコノミスト誌(2017/12/16-22号)が記事にしており日経新聞が邦訳し話題となりました。(一読をお勧めします)

記事の中でその行動は最近、威嚇的で幅広い範囲に及びつつある。中国のシャープパワーは、取り入った後に抵抗できなくさせる工作活動、嫌がらせ、圧力の3要素を連動させることで、対象者が自分の行動を自制するよう追い込んでいく。」と言いきっています。

中国政府を批判する研究者、ジャーナリスト、報道機関などにはビザの発給停止や学会へ招待しない、民間企業への圧力(社員のスパイ容疑や課税など)、報道機関への資金提供による世論誘導、中国語教育の「孔子学院」での思想教育、政治家・官僚への資金提供などを通じた政界工作・・・

冒頭で書いた抗議やノーベル平和賞劉暁波氏に授与したノルウェーへの経済的な報復、国際的な研究機関への資金提供によって中国の不利益になる研究の抑制、国際機関への不当な介入など枚挙に暇がありません。

北朝鮮に韓国がTAARDミサイルを配備した時、中国は韓国への旅行を制限し観光産業に影響を与えました。

中国がオーストラリアのダーゥイン港の99年租借権を得ることができたのもそのパワーを行使したためかもしれませんし、習金平主席の「一帯一路構想」もシャープパワーのひとつと見なされています。

国家が国民の活動を監視し制限できる「権威主義国家」なればこそです。

 

しかし、 これらは自由主義社会の「開放性」を利用した「脆弱性の窓」と言えるものです。かといって自由主義社会において規制強化や排除を過度に進めると人権弾圧や不平等性を生むことにもなりかねません。しかし制度上の問題は解決しなければなりませんし、国家の価値観を破壊するような行為は糾弾しなければなりませんが、民主義国家の「良い点」も守っていかねばなりません。ジレンマですね。

オーストラリアは中国のこうした行為に対抗するため、2018年6月に外国政府干渉対策法を成立させました。外国政府によるロビー活動、政治行為への資金提供などの規制や禁止などの項目から成り立っています。

他にもドイツ、ニュージランド、アメリカ、韓国、ニュージランド、カナダ・・・各国ともシャープパワーを脅威と認識してきており、対抗しようとしているようです。

アメリカの政治学A.F.Kオーガンスキー(1998没)は(現状への)挑戦国は国際社会において自分のための新しい場所を確保することを求めつづける。自分たちは力をつけつつあるので、その権利を有すると感じるようになるからである。こうした国家のほとんどは力を急速に増長させているものであり、さらに成長は今後も継続すると見込んでいる。つまり、台頭国家は好戦的になりやすいということである。としています。

挑戦国「中国」が覇権国「アメリカ」に対抗するには、ハードパワーだけでは挑戦するコストが高すぎるため、他の2つのパワーを利用し挑戦するコストをさげる効果が見込めます。

先ほどのエコノミスト誌ではこうも書かれています。

「中国のシャープパワーの手口を白日の下にさらし、中国にこびへつらう者を糾弾するだけでも、その威力を大いに鈍らせることになる」辛辣ですね。近頃英海軍が南シナ海に進出しており中国に軍事的圧力をかけつつありますが、脅威認識の現れでしょうか。

日本にとって

我が国は隣国です。そして中国の海洋進出にとって最大の障害です。シャープパワーを最も行使するなら日本でしょうし、沖縄はその例ではないでしょうか。沖縄の「行政、世論」を中国に有利な状況に導くことは、中国にとっての優先事項ではないでしょうか。北海道の土地を大規模に買収しているのも、単なる土地取引、投資と楽観視してよいかどうかも怪しむべきかもしれません。

(日米なら資金次第で双方の土地でも企業でも対称に買収できますが、中国とは非対称です。)

急激に成長した軍事力・経済力だけに目を奪われていてはいけないようです。第3のパワーにも今後注目していきたいと思います。

 

 

ルールオブエンゲージメント

戦いのルール

ルールオブエンゲージメント(Rules of Engagement・以下ROE)とは、いわゆる交戦規程と言われるものです。(自衛隊呼称は部隊行動基準)

これは軍隊などがどのような事態の時にどう行動するのか、武器使用はどこまで認められるのかなどを詳細に規定したものですが、これがなければ現場は非常時にどのように対処してよいのか分からず混乱を招いたり、被害を拡大させたりすることになりかねませんし、武器使用の結果、過剰防衛に問われ裁かれたりすることも想定され、最前線の兵士は武器使用を躊躇することになります。

それは正当な行為(自衛)を妨げる事になりかねず被害が拡大したり、その逆に無制限の武器使用による事態の深刻化・戦闘のエスカレーションを招きかねません。政治が軍を適切にコントロールするには必要なものです。つまりROEは強大な武力を持つ軍隊を政治のコントロール下におき、また現場指揮官の政治的判断から開放し、純粋に軍事作戦の指揮に専念できるようにしようとするものと言えます。

 

我が国では

驚くことにわが国では2000年ごろまでは明確な決まりがありませんでした。自衛隊はあくまで「軍隊ではない」と言う建前もあり、国内世論の反発を恐れて政治が後手に回っていました。

その後イラク派遣などのPKO活動の参加、テロ組織の活発化、東シナ海での緊張の高まりなどもあり、2000年12月4日(平成12年12月4日・防衛庁訓令第1号)において、部隊行動基準を策定することになり、その2条、3条には、(要約し抜粋)

国際法や慣例・国内法の範囲内で自衛隊がとり得る具体的行動の限界を示し、行動し得る地理的範囲、使用し又は携行し得る武器の種類、選択し得る武器の使用方法その他の特に政策的判断に基づく制限が必要な重要事項に関する基準を定めたもの」

であって

統合幕僚長が策定し防衛大臣の承認を必要」

とします。

統合幕僚長とは昔でいうところの「参謀総長(陸軍)と軍令部総長(海軍)」を足したような立場で、陸海空自衛隊のトップ

 

国際的な取り決め

現代では自衛戦争と集団安全保障に基づくもの以外の武力行使は違法です。しかし戦争は起こり続けていますので、戦争にルールを設けることで、一定の制限を加え戦闘行為の拡大や民間への被害の極小化を目指しており、ジュネーブ条約やハーグ陸戦条約に代表される「戦時国際法」ととか「武力紛争法」と呼ばれる法体系がありますし、一般的には国連憲章や、国連安保理決議など非常に多岐にわたっており複雑ですが、とにかくも国際関係では第一次世界大戦以降少しずつ整備が進められていますし、多くの国が自国の法律、国際法などに基づいてROEを作成し運用しているようです。

 

非公開が原則

ただしこのROEはあまり開示されていません。それは開示すると敵対勢力(軍・テロ組織など)がそれを逆手に取って攻撃するかもしれません。この件に関しては防衛大臣の諮問(H28.11.1・諮問第661号)に対する答申(H29.5.24・答申第64号)では「存否情報は,これを公にすると,特定の状況における部隊行動基準の適用の有無が明らかとなり,今後,自衛隊の任務遂行の妨害を企てる悪意の相手方が,特定の状況下にある部隊等の緊急事態における対処態勢や準備状況を推察することによって,対抗措置を講じることが可能となり,ひいては国の安全が害されるおそれがある」このことから情報公開法5条3と8条に基づき非公開は妥当と判断しています。

また、参議院での藤末議員の質問に対する首相答弁(H28.3.29)でも、「存否を含め答弁を差し控える」となっています。

軍事機密に属する重要な情報です。

このように「ROEはあるだろうけど、内容はちょっと分からない」のが実態ですが、我が国もROEは作成しているでしょう。多くの国連PKO活動等に自衛隊を派遣していますので、その状況や任務に応じて都度作成されて要るんだろうと思います。

ROEで重要なのは「やってはいけないこと(ネガリスト)」化することです。「やっていいこと(ポジリスト)」では、想定しきれない事態に対処できるかどうかはわかりません。また、簡潔に末端の隊員にも理解できるようにしなければなりません。

 

軍事司法制度

次に考えなければならないのが、「違反したら」どうするのかです。海外に派遣される自衛隊員は、対象国と締結する「地位協定(通称)」によって身分が確定し、派遣先でも日本の法律によって裁かれます。例えばジブチ共和国ジブチ海賊対処派遣)との地位協定でも、派遣要員は日本の法令(刑事裁判権など)が適用されます。

しかし、訴追され刑事裁判となると裁判までの起訴手続きや実況見分、証拠収集などを不安定な紛争地などで実施できるのか、長期間にわたる裁判期間中は事案が正当なのか不当なのかが分からない、被告を召還できるのか、召還したとしたら代替要員はどうなるのか、専門性が高く軍事機密を扱う事案に裁判官や検察が対処可能か、などの問題も考えられます。

この問題に対しては「軍事裁判(軍事司法制度)」を設けている国が多くあります。裁判官が軍人であるため専門性が高く迅速に判断を行える利点があります。

 

 正式名称は「ジブチ共和国における日本国の自衛隊等の地位に関する日本国政府ジブチ共和国政府との間の交換公文」・・・長いわ!

 

最後に・・・

国家間の大規模戦争は起こりにくくなったとはいえ、可能性が無い訳でもありませんし、訪日外国人の増加に伴いテロの可能性は増すばかりですし、「日本を火の海にするぞ!」と恫喝する国がすぐ近くにあり、EEZに不法侵入を繰り返す国との島嶼部での領域紛争は起こると考えるべきでしょう。 

ROEを含めあらゆる法や制度を整備することは日々任務についている自衛隊の法的根拠を強め、それを国際的にも認知させることで抑止力が向上し、その結果として自衛隊員の安全と身分を保証するものです。

それにはまず現実の国際関係と武力の存在を認めたうえで、憲法を改正し自衛隊を軍として認める必要があると思います。

 

いつも言う事ですが、我々を守ってくれるのは自衛隊ですが、自衛隊を守るのは我々なのです。

 (写真は陸上自衛隊HP・フォトギャラリーより引用しました)

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玉音放送はしたものの・・・

明日8月15日は終戦記念日です。

政府主催の全国戦没者追悼式を行っていることから、一般的にはこの日を「先の大戦(太平洋戦争・大東亜戦争)が終結した」と認識されていますね。昭和20年(1945年)8月15日・正午の玉音放送があったことから、国民サイドとしては異論があまり出ないところだと思います。

玉音放送と一般的に呼ばれますが、これは「大東亜戦争終結詔書終戦詔書)を、天皇自身の肉声を録音しラジオで放送したものを言います。

 

さて、日本国内ではこれでいいんですが、戦争状態の正式な終結は9月2日のアメリカ戦艦ミズーリの艦上での「降伏文書への調印」をもって、正式に終結しています。

つまり、日本としては8月14日に降伏を受け入れたものの9月2日まで正式な降伏にはなっていません。当時のソ連中華人民共和国などは9月3日を対日戦勝利の日などとしています。

 

 昭和20年8月15日以降になにがあったのか

我々はその間に一体何があったかは忘れてはならないと思います。

明治38年ポーツマス条約で南樺太(北緯50度以南)は日本領となり、開戦時には40万人以上が暮らしていましたし、開戦後も戦場から遠いため比較的平穏だったようです。

anzenhoshounobenkyou.hatenablog.com

 

ソ連の進出

8月6日の広島への原爆投下を知ったソ連は、8月8日に日ソ中立条約を一方的に破棄し宣戦布告し翌9日には、南樺太満州北朝鮮に進軍します。(予定は8月11日)

総兵力150万以上、対する関東軍は75万とは言え精鋭部隊は南方に取られており張り子の虎同然の裸部隊でした。

8月16日に日本は「即時停戦命令(自衛戦闘を除く)」を出しますが、南樺太・北海道のソ連による占領を防ぐため、大陸命第千三百八十二号にある止ムヲ得サル自衛ノ為ノ戦闘行動ハ之ヲ妨ケス』により自衛戦闘は継続した。

南樺太~北海道の利権を欲しがったスターリン首相は、トルーマン米大統領に分割統治を要望しますが、共産化の南下を防ぎたいトルーマンは8月18日に拒否(その意味もあっての原爆投下)

進軍するソ連軍は各地で日本軍守備隊を全滅させ、また停戦申し入れに向かった将校・軍史も多数銃殺、民間人への無差別攻撃を実施、一般家庭への強盗・強奪、女性への強姦などが続発。8月20日には樺太の真岡に上陸した部隊が無差別攻撃を行い約800名を殺害、真岡郵便局では電話交換手の女性がソ連軍の女性への暴行を恐れ集団自決(真岡の悲劇)。樺太から避難する民間人を乗せた船団を魚雷や爆撃で沈め、子供・女性・老人など1700名以上が死亡しました。この事実はソ連崩壊後までソ連は秘密にしていました。このように国際法を無視した不法行為を続発させました。

満州でも同様に悲劇がおこりました。(書くのも辛い)

 

北海道での自衛戦闘が無かったら、南樺太北方領土に限らず、北海道もソ連領だったかもしれません。不法占拠とは言えロシアの姿勢は「領土は一寸たりとも返さない」(メドベージェフ大統領:当時)です。取られたら返ってこないのが領土。

※因みに米軍は8月15日午前は攻撃してきたものの午後はマッカーサーの命令で攻撃中止されています。

 

信義に信頼できるのか

戦争は悲惨なものです。起こると止められないものですし、軍民双方の人的被害に収まらず、歴史・文化あらゆるものに影響は及びます。

また、条約は「紙切れ」での約束です。簡単に反故にされるのです。戦争により得られる利益(若しくは損失)と天秤に掛けられその損得で「紙切れの価値」は変わります。

同様に日米関係を信用し国家防衛を丸投げするのも無謀です。アメリカとて自国の利益と損失を比べつつ「日米安全保障条約」を運用するでしょうしまたそれが当然ですし、現在のシリア情勢を見ていると、ロシアも信用ならない国です。

 

そう考えると、日本国憲法・前文の一節「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」は、ロシア・中国・北朝鮮に囲まれた我が国が、この理想を掲げている事は夢想しているとしか思えないのです。どの国も「国益」が最優先です。

 

毎年この時期になるといろいろ考えさせられます。

索(ケーブル・綱)取り扱い。

以前、DDH-182「いせ」の見学に行きました。

 

 その際に各種銘板等を注目していたのですが、「策具取扱安全守則」をご紹介。

 

 船乗りにとって索(綱やケーブル類)を扱う事は非常に多いでしょう。

 でも、物凄い張力がかかるものですから、事故が起これば即死亡事故に繋がりかねません。

 毎日の作業では「うっかりミス」が大事故に繋がる事もあるのでしょうから、普段の教育と共に、目につくところにしつこく表示しておくのは大事ですね。

でも、ちょっと読みづらいですね・・・

 

 

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27DDG進水しましたね

海上自衛隊の最新イージス護衛艦 27DDGが本日進水式をおこないました。

進水式と同時に艦名が発表され、「まや」と命名されました。個人的には「たかお」になるかなと思っていたんですけどね。自衛艦の名前は平仮名表記ですが、帝国海軍では漢字表記でした。漢字だと「摩耶」になります。

 

まだ進水しただけなので、これから各種装備の搭載や公試、艤装、を経て就役となり戦力化は2020年頃の予定です。公試というのは、船そのもの、搭載兵器、装備類の最終試験のようなもの。

「まや」に続き28DDGも建造されており、これらを含めると日本のイージス艦は8隻と

なります。アメリカは90隻ほどを保有していますが、日本はそれに続く保有数になります。

こんごう型」・・・こんごう・きりしま・みょうこう・ちょうかい

あたご型」・・・・あたご・あしがら

「まや型」・・・・・まや・28DDG(建造中)

となります。弾道ミサイル迎撃能力があるのは「こんごう型」のみですが、「あたご型」は能力を付与するための改装を順次実施しています。「まや型」は最初から弾道ミサイル迎撃能力を保有しCEC能力(共同交戦能力)NIFC-CA(海軍統合火器管制-対空・ニフカ)も最初から付与されることになっています。近年高まる脅威に対応するため高性能艦になりました。

新型汎用護衛艦や新型潜水艦の進水、空母保有が議論されたり、イージスアショア導入が決まったり、巡航ミサイル、電子戦機、新型戦闘機の国際共同開発の検討、組織の大幅な刷新などがすすめられています。

アメリカの東アジアにおける軍事プレゼンスは相対的にかなり低下してきています。中国は脅威的な速度で軍事費を増額し、空母・ステルス機・潜水艦・各種ミサイルなどを増強しています。我が国は独自で防衛を考えなければなりません。アメリカに頼っていれば良い時代は終わりです。防衛費のGDP比2%は遠くないかもしれません。

※写真は海上自衛隊Facebookより

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まや

 

戦争プロパガンダとガンダムー(1)ギレン・ザビ

名作アニメ「機動戦士ガンダム」でジオン公国の実質的指導者であったギレン総帥。

声優の銀河万丈さんの名演技もあり、その演説はアニメ史上屈指の名演説だと思います。

ストーリー中で弟である「ガルマ・ザビ」が戦死しますが、その際の国葬で演説し弟の死でさえ国威発揚のために利用しました。

ネット上でもこの部分だけを取り上げた動画がアップされており、人気の高さが伺えます。

 

また、逆襲のシャアクワトロ・バジーナシャア・アズナブル)も、ガンダム0083でのエギーユ・デラーズも、同様に演説を行っています。(次回以降に)

 

過去にも簡単に書いたのですが、プロパガンダとは特定の思想や世論に誘導したり、行動を起こさせたりするものとされています。政治・宗教・思想教育・心理操作などありとあらゆるものが含まれています。

国策や政治の世界だけでおこなうものだけでは無く、ありとあらゆるものを含みますが、最近では主に悪い意味で使うことが多いようですが、戦時においてはそれは戦争プロパガンダとなり、かつてのナチスドイツの宣伝相ゲッペルス「十分に大きな嘘を頻繁に繰り返せば、人々は最後にはその嘘を信じるだろう」と語っており、ヒトラー「簡潔なテーマを繰り返し感情に訴える」ことが重要であると語っています。

 

多くの研究者がプロパガンダについて研究していますが、今回は【戦争プロパガンダ10の法則】(アンヌモレリ著・永田千奈訳・草思社)の中で例示されている10の法則が、ギレン・ザビ総帥の演説にどれだけ当てはまるか検証したいと思います。

 

10の法則とは

(1)我々は戦争を望んではいない

  (和平のために最大限努力した)

(2)敵側が戦争を望んだ

  (だから防衛のためやむを得ず戦うのだ)

(3)敵の指導者は悪魔のような人間だ

  (敵の顔の具体像を描かせて憎しみを煽る)

(4)領土や覇権の為ではなく偉大な使命の為に戦うのだ

  (知性・論理ではなく倫理観や感情に訴える)

(5)我々は意図しない犠牲を出すことがあるが敵は故意に残虐行為に及んでいる

  (敵は野蛮であり、我々、文明人が野蛮人へ制裁を加えるのだ)

(6)敵は卑劣な兵器や戦略を用いている

  (敵はアンフェアで非人道的兵器を使うなど卑怯な戦いをおこなっている)

(7)我々の被害は小さく敵に与えた被害は甚大である

  (人は勝者の立場を好む)

(8)芸術家や知識人も正義の戦いを支持している

  (感動を呼び世論を動かすことのできるのは役人ではない)

(9)我々の大義は神聖なものである

  (倫理的正当性を訴え国民の支持を得る)

(10)この正義に疑問を投げかける者は裏切り者である

  (愛国心が足りないと評されマスコミなどによる攻撃の対象となりえる)

 

 の10か条が挙げられています。

 

では、その演説(国葬時)です。

 

 ▼==繰り返し感情に訴える==▼

我々は一人の英雄を失った。これは敗北を意味するのか?否!始まりなのだ!

▼==法則7==▼

地球連邦に比べ我がジオンの国力は30分の1以下である。にも関わらず今日まで戦い抜いてこられたのは何故か!諸君!我がジオンの戦争目的が正しいからだ!これは諸君らが一番知っている。

▼==法則1・3・4・9==▼  

我々は地球を追われ、宇宙移民者にさせられた!一握りのエリートが宇宙にまで膨れ上がった地球連邦を支配して50余年、宇宙に住む我々が自由を要求して、何度連邦に踏みにじられたかを思い起こすがいい。

▼==法則9==▼

ジオン公国の掲げる人類一人一人の自由のための戦いを、神が見捨てる訳は無い。

▼==繰り返し感情に訴える==▼

私の弟、諸君らが愛してくれたガルマ・ザビは死んだ、何故だ!

新しい時代の覇権を選ばれた国民が得るは、歴史の必然である。 ならば、我らは襟を正し、この戦局を打開しなければならぬ。我々は過酷な宇宙空間を生活の場としながらも共に苦悩し、錬磨して今日の文化を築き上げてきた。 

▼==法則5==▼

かつて、ジオン・ダイクンは人類の革新は宇宙の民たる我々から始まると言った。 
しかしながら地球連邦のモグラ共は、自分たちが人類の支配権を有すると増長し我々に抗戦する。 諸君の父も、子も、その連邦の無思慮な抵抗の前に死んでいったのだ!

▼==繰り返し感情に訴える==▼

この悲しみも怒りも忘れてはならない!それをガルマは死を以って我々に示してくれたのだ!我々は今、この怒りを結集し、連邦軍に叩きつけて初めて真の勝利を得ることが出来る。この勝利こそ、戦死者全てへの最大の慰めとなる。

▼==法則4==▼

国民よ立て!悲しみを怒りに変えて、立てよ国民!我らジオン国国民こそ選ばれた民であることを忘れないで欲しいのだ!優良児たる我らこそ人類を救い得るのである!

▼==簡潔なテーマ・スローガン==▼

ジーク・ジオン!!  個人的には最後の一行で胸アツ('◇')ゞ

 

どうでしょうか。

ヒトラーの言う「感情」に繰り返し訴えかけてもいますね。

 

 プロパガンダはなにも「保守」「右派」に限る話ではありません。「リベラル」「宗教」「メディア」「テロ集団」ありとあらゆる分野で行われるものです。

プロパガンダを行う側は人間の心理や行動原理をよく理解したうえでおこなわれるものですから、惑わされず真贋を見極めるのは非常に困難です。

少なくともそのような社会に生きている事を理解しておく必要はあると思います。

 

次回は個人的に好きなエギーユデラーズデラーズフリート)にするとかしないとか。

イージスアショア設置を考えた。

多極化する世界

北朝鮮の緊張が最高潮に達した時、政府は検討を続けていたイージスアショア(地上配備型イージスシステム)の配備を決定し、設置候補地の自治体への説明を開始しましたし、部隊の創設や組織の改変、DDH(ヘリコプター搭載護衛艦)の空母化の検討、長距離滑空弾や長距離ミサイルの研究及び導入など、自衛隊の重武装が進展しています。予算規模はそれほど増えていないにも関わらず、やりくりは大変そうですが、アメリカの傘に入っていればよかった冷戦時代とは異なり、世界は多極化してきており不安定的要素が増えてきていますので、仕方が無いのかもしれません。

 

マクロ的安全保障の視点

装備・武装を強化しておくことの意味は簡単に言えば以下のようになります。

1.我が国が敵対的な国家(もしくは不安定な国・組織など)による、武力による威嚇や恐怖を感じる。

2.その国が地政学的に近距離にあって武力侵攻が可能な距離であり、侵攻する能力がありまたその意志を否定できない。

3.我が国が相対的に強力な装備・武装があれば相手国はより強力な装備がなければ侵攻ができない。特に四方を海が隔てており、障壁の機能を果たすため、攻撃側はさらにコスト高になる。

4.攻めて得る利益より損失が大きければ攻めを躊躇するか諦める

5.正攻法より搦め手を考えたほうが良い

ま、島嶼部の占領などについては当てはまるでしょう。

 

これをガラッと変えてしまうのが「核」や「長距離巡航ミサイル」。

具体的には

1.南西諸島などを電撃的に武力侵攻し上陸。実際に中国の戦力投射能力は高まっている。

2.自衛隊が航空・海上優勢を確保しようと進出

3.自衛隊を退かないと、弾道ミサイル(核・非核は公言せず)を発射すると威嚇。中国の弾道ミサイルは日本のどこでも命中させられる能力を保有している。

4.上陸部隊が対空対艦能力を構築し、接近阻止を図る。

5.武力による奪還を自衛隊は選択できない。(安易に接近できないうえ、核による威嚇をされる)

6.既成事実化させ自国に編入し実効支配。

7.在日米軍の来援も威嚇によって接近を阻止する。

8.東シナ海の小さな島の取り合いにアメリカはどこまで関与するか?

 

核弾頭を装備した弾道ミサイルで日本を狙い恫喝したのが北朝鮮米朝会談後融和ムードだが、ムードだけで実際に非核化されたわけではない。(中国は一部の軍関係者以外はそれほど公言していないが、軍事的には北朝鮮以上の脅威であることは事実)

 

従来は十分な対抗手段が無かった我が国ですが、それをガラッと変えてしまうのが、弾道ミサイル防衛システム(BMD)で、そのひとつがイージスアショア。

※イージスアショアについては割愛します。過去記事(イージスおさらい)はこちら

ロシアが配備に反応していますが、嫌がる事は効果的な証明ですので、軍事的に中露が嫌がる事はやりましょう ( *´艸`)

 兎に角、前述の1~3をおこなったとしても3は通用しないかもしれません。

さらに、日米安保条約5条の適用になりかねず米軍に来援され、万一エスカレーションしたら米中紛争になりかねず、それは中国経済にも大打撃。(人民解放軍は米軍や自衛隊と異なり政府の統率が完全には利いていないような行動にでることがある)

幸いにもマティス米国防長官は日米同盟重視であり、この点は中国も軽視できないでしょう。

 

==閑話休題==============

ロシアはワールドカップ効果でなんだかいい雰囲気ぽく放送されてますが、私個人としてロシアはシリア・ウクライナで散々悪さしてますから信用していません。それとロシア女性は美人だけど、プーチン大統領は顔が怖い。

何度も言いますが、北朝鮮も「軟化」したっぽい雰囲気で、報道でも扱いが優しくなった印象がありますが、世襲の独裁国で核保有で実際に威嚇して国内は恐怖政治で国民飢えてて兄ですら殺害してますからね。

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地上配備の利点

自衛隊イージス艦弾道ミサイル迎撃能力を概ね付与されてはいますが、(改修中もあり)艦艇はその他の任務や乗員の上陸・休息、補修・点検などもありミサイルの監視だけに使う訳にはいきません。そもそもイージス艦は対潜対空などの任務を多用途に行うことのできる高性能艦であり、弾道ミサイル防衛だけに張り付けるのは能力の無駄遣い。訓練もままならず練度の低下が心配されます。

また米海軍もイージス艦日本海や太平洋側に張り付けて監視をおこなっていますが、米海軍にとっても運用に余裕がある訳では無く、同じように負担となっています。(おまけに事故で2隻修理中)

その点、地上配備型なら、8時間勤務で3交代で監視できますし、地上ゆえ保守も行いやすく運用コストは低コストで済みます。イージス艦1隻には300名程度(艦により異なる)が必要ですが、イージスアショアなら12名程度。3交代で36名として2基設置で72名。これで24時間365日監視し、万一の際には迎撃できるのです。実際には休日の代替要員、基地警護などもあるのでもう少し多くなるでしょうが。防衛省は1基当たり100名規模で検討しているようです。

システムは2基で2000億円の予定ですが、イージス艦に搭載しているレーダーとは違う新型のレーダー(SSRロッキードマーチン社製・探知距離1000km)を採用するようですし、導入するミサイルも開発コストが上昇していますので、5000億円になるとも言われてますが。

イージスアショアを設置したら狙われる!と言いますが、ミサイル防衛ができなければ、相手はもっと低コスト・低リスクの方法も採用できる可能性が広がりますし、重要インフラや都市、他の基地に狙いを変えるだけです。イージスアショアの設置自治体に直接ダメージが無くても国家へのダメージには変わりがありませんので間接的にダメージを負うのは地方です。

SM-6ミサイルも配備すれば、巡航ミサイルにも対抗できます。

ただ導入予定の新開発の迎撃ミサイル「SM-3ブロック2A」の迎撃試験結果は思わしくはありません。試験を重ね導入予定時には迎撃率を高めて欲しいですね。

また、東シナ海での中国の不当な進出に関与し抑止したければ、南シナ海での米英豪仏印などとの協調的な活動(航行の自由作戦への参加、演習)や今回派遣するDDH-184「かが」の派遣など国際協調路線をとる必要があります。その為には柔軟にイージス艦を運用できなければなりません。

これは我が国にとっても重要な南シナ海では巻き込まれの恐れが増えますが、東シナ海では巻き込むことができる可能性が高くなります。結果的に抑止力が高まります。

中国は軍備(大型駆逐艦・空母・その他船艇・戦闘機)を絶賛大増産中。西太平洋を自国の権益とし自由に利用したいのは、習金平が高らかに宣言。軍組織も改変しまさにシーパワー大国としてアメリカに取って代わろうと言うのか、アジアでの覇権国になろうとしているのか。それとも弱腰な態度(国際協調)をとったら政権を追われるからなのか・・・

 因みにこのうちの日米豪印をQUAD(Quadrilateral:4)と呼びますが、この4か国とASEAN東南アジア諸国連合:加盟10か国)との協力関係も強化されてきています。先の大戦では資源を求めて南方に進出しましたが、現代では協力関係を築いています。

 

コストと安全

軍事支出と民間支出は負の相関(因果関係ではない)があることが知られていますので、如何に低コストで効果的な防衛を考えていくかは大切な問題ですが、「脅威無き軍事支出と軍事支出無き脅威は国家の成長を阻害する」とも言われています。つまり「脅威がある時の軍事支出は経済を成長させる」し「脅威がない時の軍事支出は富の創出を奪う(銃を作るかバターを作るか)」し「脅威のない時には軍事支出を抑えれば豊かになる(平和の配当)」となりますので、バランスが難しいところですね。

 かといって強度の脅威となると、「安全保障のジレンマ(ゲーム理論)」でのナッシュ均衡が「軍拡競争」となり、結果的には互いが疲弊することになります。米ソ冷戦時にはソ連が崩壊しました。勝利した米国は軍事支出を抑制することができて、経済が好調になりました。

そのようにならないように脅威はコントロールしなければなりません。脅威度を高めない工夫として、国際的な枠組みや同盟、一般的には互いの富を増やす貿易なども並行しておこなわなければなりませんね。敵対的だからと言って「敵視」のみするのも、対話だと言って「丸腰」になるのも極めてバランスを欠いた行動です。

 

軍事行動は「能力」がある者が「意図」を持ったとき発生します。「能力」は武力と経済力、政治力などが揃ってこそです。「意図」は容易に変わりうるものですが、「能力」の構築には長い時間がかかります。 その点を見誤ってはいけないのでしょうね。