海洋立国論

勉強のつもりで書いています。

9月の日本周辺の動き。

9月は色々動きました。まずは日付順に並べていきます。

 

9/11 北朝鮮新型巡航ミサイル実験

9/15 北朝鮮鉄道発射弾道ミサイル実験

9/15 AUKUSの設立を発表

9/16 中国がTPPへ加盟申請

9/22 台湾がTPPへ加盟申請

9/24 Quad首脳会議開催

9/26 イギリス海軍フリゲート艦「リッチモンド」が台湾海峡を通過。

9/27 アメリカは極超音速ミサイルの実験に成功

9/28 北朝鮮極超音速(滑空)ミサイル実験。

9/28 イギリスは日本との防衛関係強化に向けて「円滑化協定」の交渉を本格化させると発表。

 

AUKUS

最も注目すべきは、やはりビックリのAUKUS(オーカス)でしょう。もう寝耳に水であり、関係国であるフランスも一応は公式発表で知った体裁レベルですし。

改めて整理すると豪・米(AUKUS)間の新しい三国間安全保障パートナーシップであり、軍事的進出を強める中国に対しての明確な抑止力向上を狙ったアングロサクソン連合ですね。

 

現在、オーストラリアと中国の関係は極めて悪化しており、今後さらに中国海上戦力が増強されると脅威の増大が想定されますが、太平洋地域にはNATOのような包括的な軍事同盟が存在しないため、その空白を埋める目的があるのでしょう。

AUKUSのトピックは、なんといってもオーストラリアが原潜保有(最大8隻)を目指すこと。

オーストラリアは運用している「コリンズ級」潜水艦がダメ潜水艦なので、その代替を急いでいますが、まともな建造技術ない(1998年に禁止)ことと、雇用確保もあって、技術移転付の導入を進めていました。

一時日本の「そうりゅう型」も候補に挙がりましたが、結果的にはフランスの「バラクーダ型」を選択し、原潜だった「バラクーダ型」を通常型に変更し、米軍との共通性を高める為に、各種システムを置き替える予定とするなどしたため、建造予算が膨れ上がり計画がスムーズにすすんでいませんでした。

正直言うと「そうりゅう型」が採用されなかったのは、日本にとってかえって幸運だったかも。個人的にはオーストラリア大好きなんですが。

 

イギリスはブグレジット以降、EUから距離をとりつつあるため、軍事協力は経済的メリットもあります。技術者や管理者などの人員をオーストラリアに送る余裕はあまり無いようですが、一応の原潜技術はあります。アメリカは原潜大国ですからそれほど問題無し。この枠組みならばシステムの共有性が高いので、協調しての運用がしやすくなります。オーストラリアは新型潜水艦を通常型からより強力な原潜に変更できます。このことから当初契約していたフランスを切ってもメリットがあると判断したのでしょう。

 

イギリスはアスチュート級、アメリカはバージニア級・ロサンゼルス級などがあり原潜のノウハウはあるため、新規に設計開発するよりより早く導入できるかもしれませんが、どちらかの型を選択するのか、ミックスするのか、新型を選択するのか、いずれも難しい選択ですし、作戦能力を獲得するまでかなりの期間を要しますので、それまでのつなぎ役も必要になるかもしれません。

余談ですがオーストラリアはイギリスからType26フリゲート艦の購入を予定しており、2020年代後半に就役させる予定です。

激おこマクロン

潜水艦建造契約をきられた仏は、大使を召還するなどブチ切れモードだったのですが、マクロン大統領が「インド太平洋戦略は不変だ」として米豪との関係を修復するなど大人の関係を保っています。このあたりは見習いたいものですね。

 

北朝鮮は前に進む

北朝鮮もバタバタしていますね。正直言って国民が飢えようが日米の政権がどうだろうが、ひたすら前進してますね。もう侮れませんよ。

巡航ミサイル極超音速ミサイルの実験、鉄道から発射するなどランチャーの多様化、北朝鮮の報道では、核搭載も可能と言及していますので極めて憂慮すべき事態。液体燃料のアンプル化もされているとの情報もあるので、燃料注入に時間がかからず即発射能力が高くなるでしょう。

今後、潜水艦発射型(海中発射型)や核弾頭の多弾頭化、固体燃料ミサイルの長射程化(アメリカ向け)など、ますます危険度が増します

ほぼ、同時にアメリカが極超音速ミサイルの実験成功を伝えましたが、この分野ではロシアが先行しており米中が追いかける形。しかし日本はようやく途に就いたばかりです。

極めて速く、低空を飛行しある程度の機動もできるため、従来のシステムでは迎撃が困難なミサイルですので、防衛戦略を見直していく必要があります。

万一北朝鮮が日本に攻撃を開始すれば全ては防げません。比較的効果的と思われていた「イージスアショア」は河野太郎が潰しましたしね・・・

発見して先に叩くなんて実質無理ですし、発見しずらいうえ種類も数も増やすでしょうから防ぎきれません。敵地攻撃となれば犠牲も覚悟しなければなりませんし、紛争時に中露を関与させずエスカレートさせない戦略も必要です。核抑止力を持たない日本は所謂「懲罰的抑止」は実現できないので、「拒否的抑止」しか選択肢がないのが現状です。

 

太平洋版NATO

FiveEyes(ファイブアイズ・米英豪加NZ五か国の情報共有の協定)と、Quad(クアッド・日米豪印4か国の外交・経済安保の取り組み)と今回のAUKUSは補完性が高いため、今後、中国の脅威論が高くなれば、これらが統合されていく可能性も低くはないと思います。勿論軍事協力ありきです。

この時に「平和憲法」云々の論理で逃げを打つなら、日本は西側諸国から信用されない三流国になります。国民一人当たりの防衛費が周辺国の数分の一と低予算では済ませられない時代がきています。

昔は「安全と水はタダ」とか言ったものですが。

実際に中国や北朝鮮、ロシアが日本に直接ミサイルをぶち込むシナリオは考えずらいんですが、ゼロでは無い限り想定と備えはしないといけませんから。

 

岸田さんはどうする?

日本は米とは日米安保があり、日英・日豪間は物品役務相互提供協定などを通じて既に準同盟関係ですが、日英同盟はこれから交渉を始める「円滑化協定」でさらに深化するでしょう。

総裁選でも論点だった「日本の原潜保有論」がさらに強まるかもしれませんが、核アレルギーの我が国で原潜保有は合意が得られるのか、技術的な問題はどうするのかなど難しい。個人的には原潜保有にそれほどメリットがあるのか懐疑的ではあります。

日本は地理的に重要な位置であるとともに、米英仏加豪とも友好的な関係であり、地域では優勢な海上戦力、高い技術力も整っています。その意味では中心的なプレーヤーになれるのですが、さて、岸田新総裁(総理)はどのようなかじ取りをするのでしょうか。

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米潜水艦