海洋立国論

勉強のつもりで書いています。

日米同盟の意味(続編)

6月27日にアップしました「日米同盟の意味」の続編です。

 

前回、「日米同盟は双務性がある。トランプ大統領の言う不公平であるという指摘はあたらない」といくつか理由を述べさせてもらいました。

また、安全を守るジレンマ「同盟のジレンマ」(2017/10/09)に少し詳しく書きましたが、同盟には見捨てられる恐れが常にあります。

自主防衛ができない構造の我が国は常にこれにさらされていますが、それが表面化したような形になり、マスコミでは大きく報道されました。

マティス前国防長官さえいてくれたら・・・と思いますね。

1期4年・最大8年の任期でアメリカ大統領は変わりますが、8年ごとにコロコロ安全保障政策が変わってしまうようでは、世界の覇権国の地位は維持できるはずもなく、そのあたりは米議員・閣僚・軍は認識しているでしょう。あの民主党オバマ政権でさえ日米同盟は堅持したのですから。

しかし日米同盟が永遠に不滅であるという保証もなく、今後どうなるのかは我が国でもしっかり考えて準備はしておく必要はあるでしょう。思考停止は最も危険です。

さて、今回は現状でアメリカは同盟を破棄した場合どうなるのかを考えようと思います。(多少の毒舌バージョンでお送りします)

日米同盟破棄となると・・・

 

基地返却

日本は在日米軍の撤退を要求します。安保条約第6条には「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。」とありますので、駐留の根拠が無くなり撤退を要求することになります。

撤退すると基地は不要です。基地が無くなるとは米軍人も帰還することになるか、他の基地に移動するしかありませんが、在日米軍5万人。簡単に移動ってできると思いますか。米軍は配置に苦労することになるでしょうが、知ったこっちゃありません。

それに伴い、米軍基地で働いていた多数の日本人と食料など物資の納入業者なども仕事が無くなります。5万人の米軍人相手の商売は成り立たなくなります。飲み屋からレジャー施設までなにもかもです。「基地よ出ていけー!」派の人に聞きますけど、倒産・失業増えますね。米軍人と結婚した日本女性沢山いますけど。どうしますか?

 

核の傘

そもそもあるかどうかわからない「ハッタリの核の傘」ですが、一応多少の安心には役立ってはいるようです。核保有国に囲まれつつも核の恫喝を受けた事がほぼ無い事や、核保有国同士の正面戦争が起きていないことがその証明です。

しかし正真正銘「核の傘」は無くなりますので、日本は周辺国の核の脅威におびえる事になります。そうなると「核武装論」が勢いを増すでしょう。日本にとって核保有はハードルが高いですが、アメリカのコントロールできない核保有国の登場もあり得るシナリオが。

国際的な締め付けがあっても、もし、中露北朝鮮から僅かでも威嚇されれば「見捨てられた日本」は「アメリカのせい」にして核武装を進める世論が強くなります。世論は民主主義の根幹です。核保有という選択をしても手続きに不備がなければOKです。また核不拡散条約(NPT)があっても、日本が核保有するかもしれないとなると、アジアに核保有論が拡がりかねません。日本が核拡散の先べんをつける事になってもいいんですか?自国の原発でさえ騒ぐのに。

 

予算

在日米軍関係経費(平成31年度予算)で総額およそ5,823億円と巨額の予算が必要なくなります。突然無くなる訳では無いですが、撤退となると施設の土地を提供している地主に借地料が入らなくなりますし、漁業補償も騒音対策の費用も貰えなくなりますが、そのお金も元々は日本政府が支出しています。(間接的に個人・団体へ税金を投入していた)このお金は他に回せますが、米軍の穴埋めに使うことになるでしょう。ただし米軍の穴は巨大です。この額では全く不足していますので、防衛費増額は間違いありません。それでいいんですか?

 

装備品

海兵隊もいないので独自で島嶼防衛しなければなりません。輸送艦揚陸艦、補給艦などの補助艦艇が全く不足なので増備。さらには電子戦機や早期警戒機、空中給油機、現場の航空優勢確保の為の空母や強襲揚陸艦、艦隊護衛のためのイージス艦や潜水艦、それらを常時運用できるように最低でも3個護衛隊群(空母込み)を追加。なんなら広大なEEZの監視に原子力潜水艦も。将来の核報復能力確保の為には実績は必要でしょう。

弾道ミサイル防衛のための早期警戒衛星の増備、イージスアショアやTHAADミサイル導入、指揮命令システムなどへのサイバー攻撃対応能力の確保など。反対にアメリカに気を使う事無くEU諸国の兵器も買えますが。それらの配備場所には在日米軍基地の後がいいでしょう。あれ?米軍が出ていっても基地は全部は返ってきませんね。

ホルムズ海峡、マラッカ海峡などのチョークポイントのシーレーン防衛は我が国とっても死活問題。そのためのアセットと法整備、なんなら憲法改正しないと、石油入らなくなりますよ。護憲派の方々はどう思いますか?

もう目白押しです。ミリタリーマニアにはたまらない展開かもしれませんが、自衛隊にはそんなに人がいないのでリクルートに苦労することになります。「徴兵制になる!」って声が聞こえてきますが、海空はシステム化されたハイテク兵器ですので邪魔なだけです。それどころか教育に回す人材・機材すら不足するでしょう。

※「徴兵制はあるのか」(2019/02/26)に他の要素については書いています。

余談ですが戦闘機の独自開発なんて我が国には無理です。そんな技術力はありません。民間機のMRJでさえ何年かかっても飛ばないじゃないですか。前回テーマのUS-2はUS-1Aという下敷きがあったし、F-2はF-16というベースがあった。F-15導入時には「侵略兵器だー!」とか言って、「空中給油口を塞げ!」とか、F-35の国際共同開発でさえ参加させなかった左巻きが多いのに、国産戦闘機なんて夢です。ゼロ戦の時代じゃないんですよ。お金も無いし。

かかる予算の試算はいくつかありましたが、現在GDP比1%の防衛費が1.3%~2%になるようです。当然、増税と他の予算カットです。埋蔵金も打ち出の小づちもありませんので。

 

アメリカと第三国との関係

同盟関係は即応体制が命です。

軍事同盟であっても、有事の際に助けるのが遅れれば既成事実化され対応が後手に回ります。つまり南シナ海や台湾が中国による危機に晒された時、米軍は介入してくれるのか疑わしくなり同盟関係の信頼性が低くなります。

また、ホルムズ海峡やアメリカにとってのシーレーンの維持に艦隊を派遣し任務を果たしたあと、補給・休養で帰港することになりますが、グアムやハワイまで帰らなければなりません。時間とコストが増大します。費用対効果が悪化しますが日本を使えませんので仕方ありません。

当然、「力の空白」が生まれますので、中国は海洋進出、台湾併合、南シナ海の聖域化、第二列島線への進出でハワイがミサイル射程圏内。日本の南西諸島などの占領と既成事実化をコツコツ進めます。日本が独自対応できるまでの軍備を拡大するには10年や20年はかかりますので間に合いません。

それらの結果、アメリカへの不信がアジアで増すことになり覇権国としての地位を失いますが、それで良いんですか?トランプ大統領

 

結論

ということで、日米同盟は堅持することが最も安上がり。アメリカにとっても良い事しかありません。駐留経費を増やせ!と言って来たら顔を立てて少し増やせばいい。自国民に自慢してくれること請け合いです。その代わり、地位協定を日本にとってもっと使いやすいようにすることとバーターです。ディール好きなトランプ大統領はこれで大丈夫。 

 

あースッキリ(笑)