海洋立国論

勉強のつもりで書いています。

日米同盟の意味

G20直前、トランプ米大統領が「日米同盟は不公平だ」と言ったとマスコミではニュースになっていましたね。相変わらず面白い人ですね。

 

日米同盟は非対称

確かに、日米同盟は非対称です。アメリカは日本の防衛義務を負いますが、日本は集団的自衛権の範囲を超えての防衛義務は負わず、アメリカ本土どころかハワイが攻撃されていても自衛隊はハワイ防衛ができる訳ではありません。まぁ、トランプ大統領の言うように第三次世界の時に、日本はソニーのテレビを見ているだろうとは思えませんが。湾岸戦争の時はそうでしたが、なんせ世界大戦ですからね・・・・

 

見落としがちな点

日米安保はその点では非対称ですが、この条約によってアメリカは日本に基地を置き、日本の予算も費やして維持しています。

そもそもこの条約のカタチを決めたのは、日本の再軍備を自由にさせないようにコントロールしようとした結果であり、またアメリカが太平洋~インド洋、対ソ連・対中国などの共産主義国家などに対応するために日本に軍事力を置く必要があったためです。日本はお蔭で戦後復興が進みました。

 

地理的に重要な日本

最強の海軍と言われるアメリカ第七艦隊は、遠くインド洋までを任務地としており、その範囲は広大です。

艦隊には母港やドック、乗員の休息地などが必要ですが、日本はアメリカ本土~インド洋においてちょうど良い位置にあるうえ、かつての帝国海軍の名残もあって、巨大なドック、親米的な国民、高い技術と造船能力、本土以外では最大の燃料や弾薬の貯蔵量があります。

勿論ペルシャ湾東シナ海南シナ海、それらのシーレーンに戦力投射をおこなうには、日本はアメリカにとって好都合なのです。ハッキリ言いますが、日本が無ければアメリカの覇道は成立しません。

 

対中国にとっても

また近年中国の軍事的脅威が高まっていますが、アメリカにとって核抑止力を確保するには、中国の戦略原潜弾道ミサイル搭載原子力潜水艦)を遠ざける必要があります。今のところ、中国の戦略原潜ソ連時代の旧型を数隻保有しており、搭載ミサイルの射程距離もそれほど長くはありません。

この貴重な報復能力によってアメリカ本土・ハワイなどを核攻撃(報復)するなら、日本海や沖縄などの第一列島線を超えて進出しなければなりませんが、このラインは世界一とされる海上自衛隊の対潜哨戒能力によって監視されています。

もし、危険な兆候があった場合は、旧型で大柄な戦略原潜を見つける事は容易であり、ミサイル発射の為に潜望鏡深度まで浮上すれば、追跡していた自衛隊からの連絡を受けた米軍に即座に撃沈されることになります。

逆に言うと中国はアメリカに対して軍事的恫喝をおこなう為には、海自のディフェンスラインを突破しなければなりません。

日米同盟によって自衛隊は掃海、哨戒に注力できるので米軍の負担は相当に軽減されているはずです。

この点でも日米同盟はアメリカにとっても必要なのです。

 

本音は違う

今回の発言は日米同盟は日本にとって死活的に重要な同盟関係だが、アメリカにとっては、重要ではあるが死活的ではないと受け取るべきだと思います。

アメリカは覇権を握れなくはなるが、すぐに滅亡する訳ではありませんが、日本は中国・ロシア・北朝鮮に囲まれており、韓国も旗色は分かりませんし、狭い国土は縦深性が無いため、海という防衛ラインを突破されれば、まさに死活問題です。

NATOなどと比べても多くの駐留経費を負担している点は、トランプ大統領も評価しているところですし、マティス前国防長官も日米同盟の重要性は高く評価していました。軍事専門家はその事はよく判っています。「日米同盟破棄によりアメリカが得るものは何も無い」のです。

日本はアメリカとあらゆる点で深い関係性を持っています。アメリカが日本を守らない時、アメリカは多くを失います。

世界第三位の経済大国の信用、4億ドル以上のアメリカ製防衛装備品購入国、130か所以上の基地や軍事施設、1,200億ドルの貿易相手国、日本企業の雇用する80万人以上のアメリカ人、EU28か国よりもはるかに多い対米直接投資。これら全てがアメリカ経済に影響を及ぼします。

経営者でもあったトランプ大統領がこの事を軽視するはずがなく、来日前のこの発言はもっと対等になるような同盟関係に見直したいとのメッセージかもしれません。もし費用負担が増えるのなら、逆に地位協定をさらに見直すことや、日本の施政下にあるとした尖閣について、日本の領有権を明言させるなどの取引をおこなうなどすればいいだけです。

トランプ大統領は今のところ平和主義者のような振る舞いをしています。過去に例のないほど攻撃性の高い言葉とは裏腹に、実際に戦闘行動を米軍に命令したのは、効果のあやふやなシリアへの巡航ミサイル攻撃くらいのものです。今回のホルムズ海峡でのタンカーへの対処も今までのところ言葉だけの攻撃です。

 

マスコミは発言をセンセーショナルなものとして取り上げるだけでなく、もっと冷静な報道を望みたいと思います。