海洋立国論

勉強のつもりで書いています。

空母「いずも」について考えた。

防衛省はヘリコプター搭載護衛艦「いずも型」を改修し、固定翼機(F-35B)を搭載し空母化することを検討していると報道されています。

=空母大国だった日本=

我が国は先の戦争(大東亜戦争・太平洋戦争)前にすでに空母を運用しており、開戦時には世界一と言える空母大国でした。空母として最初から建造された「鳳翔(ほうしょう)」は世界初の純粋な空母であったし、開戦時には練達の搭乗員(パイロット)、練度の高い艦隊運用、世界一の航空魚雷を持ち、開戦劈頭は無敵空母艦隊であったと言えるでしょう。

=再燃する空母保有論=

海上自衛隊発足以降、憲法との整合性や専守防衛というお題目の元、攻撃的兵器と見なされる空母は保有できませんでしたし、日米同盟がある以上その必要もさほど無く、周辺国への対日感情も考慮してさほど議論すらされてきませんでした。しかし近年、北朝鮮・中国・ロシアの軍事的脅威が高くなるにつけ、空母保有論は再燃するのは目に見えていました。(他国を攻撃する為の空母では無く離島防衛を目的とした空母)

そこで考えられるのはアメリカのような大型の原子力空母では無く、「いずも型」の改修だとすると、強襲揚陸艦クラスになります。アメリカは既に「ワスプ級」次いで「アメリカ級」を配備しつつあります。正規空母ほど多数の艦載機は積みませんが、戦闘機を搭載し空母と同様な運用が可能です。さらに輸送や揚陸も可能になっている艦もあります。

=いずも=

「いずも型」は現在2艦あり、満載排水量26,000トン、全長248mと海上自衛隊最大の護衛艦で、対潜哨戒ヘリコプターSH-60J/Kを主に運用しています。艦内に広大な格納庫を持ち、最大14機のヘリを搭載できオスプレイの搭載も可能です。

=F-35B=

空母の能力はなにを搭載するかによって決まります。(空母自体は”航空機の入れ物”)F-35Bとは最新鋭のステルス・ネットワーク能力を持つ戦闘機です。航空自衛隊に順次配備されているF-35Aは通常の滑走路を利用した離発着をおこないますが、F-35Bは短距離離陸・垂直着陸が可能で、カタパルトを必要としません。その代わりに燃料と武器の搭載量も少なく航続距離が短いのが欠点と言えます。

 

さてこの空母保有計画について考えてみます。

 

=利点=

(1)陸上基地が長距離ミサイル・弾道ミサイルの標的となった場合、脆弱な自衛隊の航空基地ではかなりの被害を受けることが予想されます。滑走路に穴が開けば離着陸ができません。回復までの間、空母は残存性を活かして航空作戦を実施できる。

(2)必要な地点まで進出し航空作戦を実施できることは戦略上多様な選択肢を与え、それによって抑止力が高まる事が期待できる。

(3)自衛隊には敵地攻撃能力(目標設定・偵察・装備)が無く、数も少数で航続力も短いF-35Bなら、他国への攻撃論は的外れであり憲法にも抵触しない。

(4)離島防衛の場合は周辺海域への進出を行う事で、陸上基地からの進出よりも時間的にゆとりが生まれる

(5)米軍は有事の際には沖縄の基地から航空機を後方へ分散配置することを検討しており、そのカバーの為には空母化は役に立つ。

 

=問題点=

(6)常時運用するには4隻程度必要になり、艦載機も含めコスト面で膨大になる。なぜか海自には「いずも型」2隻・「ひゅうが型」2隻=計4隻のヘリ空母があるんですが、これは偶然の一致です。多分。

(7)現在でも定員割れの状態で運用している海自の負担が大きくなり過ぎる。

(8)F-35B搭載の場合は、改修がかなり大幅になるうえ改修中は任務に就けない為、対潜哨戒網に穴が開く

(9)F-35B搭載分に応じて対潜哨戒ヘリを減らすことになる。これも対潜作戦には不利にはたらく。そもそも水上艦(特に空母)は潜水艦に弱いため、対潜ヘリの減少は避けるべきである。

(10)海自の本来任務は「シーレーン保護」と有事の際にはアメリカ(空母戦闘群)の「来援基盤維持」。その為の対潜哨戒であり、この能力を減じるのは本末転倒。さらには中国の潜水艦の数と能力は高まっており、数においては自衛隊を圧倒している。

 

などが考えられます。さてどうなるのでしょうか。

 

=運用は可能か?=

予算が潤沢なら新造でしょうが、艦載機と搭乗員もセットで4セット必要ですから、30,000~40,000トンクラスの艦を4隻、F-35Bを6機×4隻=24機、SH-60、MV-22、などの回転翼機を8機×4隻程度としても・・・ん~無理じゃ・・・

海上で運用するF-35Bはメンテナンスも頻繁で費用もかなりなものになると予想できるので維持費も馬鹿高いのではないでしょうか。

また従来の護衛隊群に配備するのか運用形態はどうするのか。

そもそも、費用の増大は国民の合意が得られるのか。いざ桶狭間!ってなった時にスムーズに運用できるだけの法整備はできているのか(できてません)

問題山積で簡単にはいきそうにありません。私はそれよりも以下の手法で海洋進出する中国に対抗すべきであると考えています。

 

=原潜とAWACS

最も効果的だと思うのは、ディーゼル潜22隻体制に原子力潜水艦を6隻程度配備することだと思います。原潜には魚雷と共に対艦ミサイルを搭載し牽制します。原潜は行動範囲が広いうえ、長期間の潜航が可能です。哨戒任務にはぴったりです。(現実的には原潜を持てないので夢です) また、AWACS早期警戒管制機)、空中給油機を増勢し、F-35Aの滞空時間を稼ぎ、LOR,EOR(簡単に言うと前方展開しているレーダーによる迎撃)能力によって対処します。もし敵が上陸したらEA-18Gグラウラー(電子戦機)による対空レーダーの妨害、その後にF-35Aによる攻撃、我がほうの基地の抗堪性(こうたんせい)向上と防空能力の向上、米軍のように分散後方配備による被害の極限、衛星による早期警戒監視システムの能力向上などもセットですが、空母より現実的だと思いますがいかがでしょうか。