国連の限界
北朝鮮問題で・・・
北朝鮮関連で危機管理能力、抑止力、法整備などが問われています。しかしおそらく多くの日本人のイメージでは国家間のイザコザを調整するために存在するはずの「国連」(英語名はUnited Nations 、直訳すると連合国となりますが日本では国際連合と呼ぶ)」は一体何をしているのでしょうか。
国連とは・・・
ご存知でしょうが改めて。
そもそも国連は第二次世界大戦の戦勝国(連合国側)が中心となって設立した「集団安全保障機構」ですが、国際紛争を平和的に解決することを大きな目標としています。もし領土や主権侵害、威嚇や武力行使を受けた場合は、安全保障理事会(以下、安保理)の制約の下で他の加盟国が協力して制裁を加えることとしていますが、その脅威の認定は安保理がおこないます。
その機能は安保理常任理事国5か国(米・英・仏・中・露)の軍事力を背景として平和を維持するのが当初の目的です。それゆえ5か国の協調が前提であるために「拒否権」が与えられています。しかし5大国の国益や思惑が交錯し、この前提は崩れ去り安保理はまともに機能していません。(2003年のイラク戦争も国連の同意を取り付けることなく米英は開戦しました。)
PKOの役割
軍事力行使に変わる新たな活動にPKO(国連平和維持活動)がありますが、意外かもしれませんが憲章には規定もなく公式な定義もありません。この軍事的強制力の無いPKOは麻痺していた国連の集団安全保障機能の一部分として定着しています。
しかし国連は中立的立場をとり、紛争当事者の停戦合意が必要であることや、軍事力は自衛のみが認められているため、自ずと限界が低くなっています。
また冷戦崩壊後は内戦が頻発し民族浄化や宗教戦争などが多くなり、内戦による破たん国家の出現は、PKOでは平和構築ができないことを示しました。破たん国家では政府機能が停止しており、警察力も法の制約もなく無秩序と言える状態ですので、停戦監視もままならず、国連の要員の安全確保すらできない有様で、混乱回復のための経済支援、難民帰還、武装解除すら難問となりました。
ブラヒミ・レポート
このことを踏まえ当時のアナン事務総長の設置した「国連平和維持活動検討パネル」が2000年8月に「ブラヒミ・レポート」という報告書を国連に提出しました。
このレポートの特徴は、平和維持活動においては原則として
1、当事者間の同意がある事
2、中立である事、
3、武力行使は自衛限定
としつつも、和平合意を犯した「破壊者」に対しては毅然とした態度で臨むべきとしています。
これは軍事的圧力を意味しているものですが、当事者間の仲介として守るべきは中立性よりも公平性としています。どっちつかずの態度より一定のルールに基づいて行動するということです。ルールを破れば(基準を超えれば)対象がどちらであろうとも強制力を持って行動するべきとしました。
報告書は平和維持活動を武力行使前提とはしていないものの、軍事力の裏付けが無ければ複雑な要因を含む現代では、平和維持活動の維持継続すら困難であるとしています。一方で、軍事力のみでは平和は作れないが、平和構築の空間を作ることができるとしています。
限界点
しかし次の問題にいきつくことになりました。
1、加盟国が犠牲を強いられる活動には要員を提供しない。(他国のもめ事に命がけにはなれない)
2、予算(資金)が潤沢では無いわりに平和維持活動の必要な国が多い
3、圧倒的軍事力を持つ国の支援が無いと実行できない
など国連の限界がここに見て取れるのではないでしょうか。このような現状もあり、我が国では国連に期待するような行動はできません。北朝鮮問題は中・露が深く関与しているため、安保理自体が十分機能するとは思えませんし、経済制裁決議以上の行動はありえません。
日本だって自衛隊の派遣は反対するのに世界平和を叫んでいる人がいますが、勝手な理屈にしか聞こえません。
国連には国際世論の同意を取り付ける以上の効用は期待しないほうが賢明でしょう。国連を平和の使者かのように思っている人がいるのかもしれませんが、その国連ですら軍事力の背景なしに平和構築の限界を認めています。この冷徹な現実を我が国は突きつけられているのではないでしょうか。