海洋立国論

勉強のつもりで書いています。

輸送量は大切ですね

自衛隊は勿論完璧ではありません。どのような組織であっても、いくつかの問題点が存在しますので、それへの対処は非常に重要です。

しかし問題点を指摘されていてもその当時の状況(人員・予算・緊急度など)に応じて問題解決の優先順位がつけられ対応していくしかありません。

北朝鮮弾道ミサイルを発射し初めて日本上空を通過した1998年以降、自衛隊は防空能力(弾道ミサイル対処)の向上が優先されてきました。その為、正面装備として優先的に予算が割り振られて来たのはBMD(弾道ミサイル防衛)能力の質的・数的向上でした。

しかし、北朝鮮情勢がひっ迫するにつれ新たな問題が浮上してきました。もし、北朝鮮が韓国との戦争状態に突入した場合、もしくはそれが目前に迫った場合には緊急に在韓邦人を帰国させなければなりません。(非戦闘員退避活動、通称:NEO)

ここで後回しになっていた問題点が顕在化します。

ソウルは38度線(休戦協定ライン)に近く、開戦後にすぐ被害が相当程度予想されるので避難には時間的余裕がありません。

まずは釜山などの南部の港へ避難させるとしても、そこまでのルート、移動手段の確保が必要ですが、避難するのは日本人だけではありません。勿論韓国や米国、豪州など他国の人も一斉に避難します。当然、混乱が予想されます。これを如何にしてスムースに行うか。最初の関門です。

開戦後は米軍が航空優勢を短期間に確保します。しかし韓国上空は戦闘空域であり平時の空ではありませんので、IFF(敵味方識別装置)の無い民間機は誤射の可能性も捨てきれず利用しにくい状況です。滑走路も混雑するでしょう。

海についても僅かでも脅威(潜水艦・機雷など)が想定されるなら民間船は使えないでしょう。万一民間船が攻撃されたら、政府は苦しい立場に追い込まれます。

そこで自衛隊の出番なんですが、以前はできなかった「邦人救出」が安全保障法制によって可能となっていますが、これには相手国の同意が必要です。なおかつ危険地帯(交戦地域)に侵入し邦人救出する場合では、全面的な武器の使用は認められていないため(警察権の範囲であり正当防衛まで)救出に向かう自衛隊員の安全確保ができない場合がありえます。北朝鮮はフリーハンドで攻めてきますから。

さらに韓国の反日感情によって自衛隊艦艇は入港は拒否される可能性があります。韓国軍の要請によって自衛艦艇が韓国に入港したときですら、自衛艦旗旭日旗)は掲揚できませんでした。(国際間のルールでは軍艦は掲揚することになっているんですが、反日感情に配慮したようです。)手を借りようと思っても米軍、豪軍などは自国民の確保で手一杯。外国人(この場合は日本人)は後回しになります。

そこで、日・米・豪・韓などで有志連合を構成し有志連合の任務として自衛隊輸送艦やC-130H輸送機などを使うとします。

ここで大事なのは輸送量です。ざっくりとした数字で見積もります。

 

輸送機

C-130H・・・90 25機 2250人

C-2・・・100人 5機 500人

C-1・・・60人 15機 900人

輸送艦 

おおすみ型(おおすみ・しもきた・くにさき) 1000名 3隻 3000名

 

輸送機、輸送艦が一斉に行ったとして、一度に輸送できるのはたった6650名

ただし自衛隊が民間の貨客船を借り上げて運航することはあります。その場合はもう少し輸送量が大きくなります。

長期滞在の邦人が約4万人、旅行などの短期滞在が約2万人の合計6万人として、単純計算で9往復。

勿論、飛行機のほうが早く往復できますが、飛行場や港は混雑しています。大規模な退避作戦のオペレーション経験もなく、韓国の反日感情の中で戦時に民間人の退避作戦が順調に行えるとは思えません。

 

非戦闘員退避活動(通称:NEO)は長らく想定してこなかった事態です。安全保障法制ができる前は、「邦人救出」は「海外派兵」と言われ「軍国主義復活だ」と非難されてきた為、政府も自衛隊も十分な訓練や装備の調達、シュミレーションがおこなえませんでした。

現状では軍事衝突の可能性が高いとは言えませんが、突発的な事態で急に戦闘が不可避になる可能性もあります。まずは旅行など不要不急の訪韓は控えつつ、訪韓時には外務省の海外安全HP・危険情報を確認する必要があるようです。(現在は問題無しです)有事に在韓邦人の数が少ないほど退避しやすいのは当然です。

 

ミサイル防衛が注目されていますが、輸送も極めて重要な問題です。

日本は太平洋戦争(大東亜戦争)時にも、指導者が輸送量を軽視する傾向があり、担当者が船腹量の不足を進言し作戦の問題点を指摘しても強行する事が多々あったようです。今回は資源輸送ではありませんが、「船が足らない!」そのような事の無い様にしたいものです。

(写真は航空自衛隊HP・フォトギャラリーより)

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