核の分類
核兵器と一口に言っても様々な分類があります。国際間での交渉上便宜的に分類されている程度で特段に国際的な取り決めがあると言う訳ではありませんが、一般的になっているものをここで整理しておきたいと思います。
当然ですが、核兵器は「弾頭」(核)と運搬手段が組み合わさっています。
ミサイルに搭載すれば核ミサイル、爆弾で爆撃機などで運搬し投下するなら核爆弾というふうに。
運搬手段であるミサイルも、「弾道ミサイル」と「巡航ミサイル」があり、アメリカは巡航ミサイル「トマホーク」に核弾頭を載せていた時代もありました。今はありません。
今回は核の運搬手段として一般的な「弾道ミサイル」の基礎知識です。弾道ミサイルは文字通り、ロケットと同様に打ち上げて弾道コースを飛行し高速度で自由落下させるものです。
このため、命中精度は他のミサイルに比べて低くなっています。巡航ミサイルやSM-3ミサイルのように誤差数センチ~数十センチの精度ではありません。
巡航ミサイルなどは当たるまで制御されるのにたいして、打ち上げ後はミサイルにお任せが基本だからです。ピンポイントで命中しない以上、核弾頭を搭載し周囲を一気に薙ぎ払うのがコンセプトです。
ミサイルの命中精度を表す指標に半数必中界(CEP)というのがあります。
わかり易く言えば、10発撃ったらその半分がどのくらいの範囲に落ちるか?です。ソ連のミサイルは100~200mくらいと言われますが、開発した国よってかなりバラつきがあるようです。
そのことを考えるとやはり弾道ミサイルは核とのセットで運用するのです。
核弾頭はミサイルに搭載する以上、小型化する必要があります。ミサイル弾頭部の容積を超えることはできませんし、重いと飛距離が落ちることになるからです。さらにもっと小型化すると複数の弾頭をミサイルに搭載でき、一発のミサイルで広範囲に攻撃が可能となります。複数の弾頭をそれぞれ誘導できるとすると一発のミサイルで複数の拠点を同時攻撃できることになります。北朝鮮の核開発ではミサイル技術も勿論ですが、核弾頭の小型化が重要なポイントになります。
発射軌道は概ね3種類あります。
(1)ミニマムエナジー軌道・・もっとも効率的に遠くへ飛ばす軌道ですが、高度をとらない為、位置エネルギーが少なく多少落下速度(終末速度)が遅くなります。
(2)ロフテッド軌道・・北朝鮮のミサイル実験で有名になりました。高く打ち上げてその位置エネルギーを使って落下速度をあげます。迎撃が難しくなります。
(3)ディプレスト軌道・・高度を抑え発見されにくくする軌道。あまり使われないか。
もともと大気圏外から一気に落下する弾道ミサイルは非常に高速で迎撃が難しいのです。
この弾道ミサイルにも飛距離に応じて分類があります。
(1)大陸間弾道弾(ICBM) 射程5500km以上(6400kmという場合もあり)
(2)中距離弾道弾(IRBM) 射程2000km~6000kmくらい
(3)準中距離弾道弾(MRBM) 射程800km~2000kmくらい
(4)短距離弾道ミサイル(SRBM) 射程~800kmくらい
発射システムの仕組みも現在はおよそ3種類あります。
(1)固定サイロ・・・地下に埋めた発射筒から打ち上げるもので、大型の弾道ミサイルはこの方式を使っていますが、サイロの場所が特定されるため、先制攻撃の場合は先に狙われます。
(2)移動発射式・・・車輪や軌道(キャタピラ)の違いはありますが、大型車両から発射するもので、北朝鮮の軍事パレードでミサイルを載せていた映像を覚えているでしょうか。
(3)潜水艦・・・勿論潜水艦から発射するものですが、潜水艦なので自分の場所が代わります。見つかりにくい代わりに命中精度は低めになります。また、長期間海中に隠れる必要があるため、通常は原子力潜水艦が使われます。
発射にあたっては、ホットローンチ方式とコールドローンチ方式がります。ホットローンチは、発射筒内でエンジン(モーター)を燃焼させ発射するのですが、燃焼の熱で内部が傷むため再利用ができない場合があります。その為今はコールドローンチという発射方式が主流で、まずは圧縮空気(ガス)などで発射筒の外に送り出し、その直後に点火します。技術的にホットローンチよりやや難しいものです。
燃料は液体燃料式と固体燃料式がありますが、コントロール性や推力は液体燃料式が優れ、運用性は固体燃料式のほうが優れています。