海洋立国論

勉強のつもりで書いています。

抑止力の分類

「抑止力ガー!」と最近報道でよく耳にしますね。
では抑止とはどのようなものなのでしょうか。

大別して現在は3種類あるとされています。懲罰的抑止と拒否的抑止と報償的的抑止です。

 

懲罰的抑止とは、「やられたらやり返すぞ。戦争を始めたら受けて立つ。反撃し手痛い目に合わせるぞ。」
これだと相手国は、「勝つだろうが、かなりやられそうだ。勝ってもあまり大きな得は得られないかもしれない」となり、戦争になりにくいとする抑止の方法論。

 

「ボロ勝ちできそうだから始めるぞ」とか「損得勘定は関係無い!」と思われたらいけません。
そこで相手に合わせた武力を持とうとします。この加減が難しい。相手に「やや?ウチより強くなったのではないか?」と思われると、「やる前にやられるかもしれないぞ。怖い」となりますよね。これ、昔のドイツとロシアが同じ。(第一次大戦のきっかけのひとつ)

この恐怖から逃れるには「もっと武力を持って安心したい」となり、どんどんエスカレーションしていく事が考えられます。

 

しかし、このように相手に合わせて武力を持てる国ばかりではありません。エスカレーションを防ぐために各国は軍事費や使途の公開、国際間で共同訓練、武官の交流、緊張時の連絡メカニズム構築、多国間の安全保障協定などを進めて偶発的な戦争への突入を防ごうとしています。
日米やEUなどは70年ほど前は骨肉の争いをしていたのですよ。今では誰も戦争の心配をしていませんよね。

ところで北朝鮮はこの懲罰的抑止力が欲しくてたまらないのでしょうか。
本音は「体制を維持したい」→「アメリカはイラクフセイン政権を打倒した」→「アメリカは強い」→「こっち向くと怖い」→「だからやり返せる核兵器が欲しい」となる訳ですね。
このたびの騒動でも北朝鮮のニュースなどを聞いてると、「止めて―!怖ー!おい日本!仲介しろよ!」と解釈できる時って無いですか?

 

懲罰的抑止の代表が核による相互確証破壊です。核を撃ったら核を撃ってやり返す。その為にどこかに弾道ミサイルを積んだ原子力潜水艦があるぞ。と言う訳です。

さて殆どの国は軍隊を持っていますが、軍事はカネ食いムシですし、基本的には「死に金」なので、本当はもっと優先的に使いたいものがあるものです。バカバカと軍事に金をつぎ込めません。

 

そこで登場するのが、拒否的抑止という考え方です。例えば自衛隊保有する「ミサイル防衛」ですね。撃っても撃ち落とす。端的に言うと「やるだけムダだぜ」

在日米軍はその両面を持っています。例えば相手国が攻撃したら反撃される恐れは懲罰的抑止ですが、相手がアメリカだけに戦争をやっても勝てないだろうと考える部分が拒否的抑止です。
安全保障条約5条の適用範囲ですよと宣言すると、中国の船が尖閣に来にくくなるこの現実は拒否的抑止の一例です。
圧倒的武力を持っていると、言葉だけでも抑止になる一例です。

 

ただしこの理論、証明できません。抑止の有無でどうなるかなんて実験はできません。
無かっても何も無いかも知れませんが、何かあれば全てを失いかねません。
そんなリスクのある社会実験できません。悪魔の証明みたいなものですね。
所謂「9条バリア」はこれが論拠かも?「憲法9条があるから軍備無くても大丈夫」かどうかの実験はできませんから。

最後の報償的抑止は・・・これは抑止なのか?という疑問を自分で解決してからにします。

 

防衛省の論文から一部分を引用します。
(抑止概念の変遷、2015.12、後濱桂太郎

「一般論として、抑止は自身の意図と能力を抑止したい相手に伝達し、相手がこれを認識する、というプロセスを経て機能する」

「抑止とは相手に現状変更させない、すなわち現状維持が目的である、という定義に回帰してきた、と理解することが可能であろう。」

 

ま、さじ加減ですがこれが難しいんですけど。