海洋立国論

勉強のつもりで書いています。

北朝鮮情勢の今後

前回書いたものを含め「当面軍事行動はない」としましたがもう少し掘り下げておきます。

 

・非戦闘員の退避を実施していない。これは最大の理由と考えています。

ソウルは38度線(休戦協定ライン)に近く、迎撃が困難なロケット弾、自走砲などの北朝鮮の火砲の射程内であり、開戦後にソウルが火の海になる。韓国人はもとより、旅行、出張、駐在などで多くの外国人が滞在しているので、安易に巻き添えにする訳にはいかない。

但し退避命令や渡航禁止に従わない人や、火中の栗を拾いに行くジャーナリストなど事は配慮しません。軍事目的達成の為に極限的な被害を許容するのが米国。もっと平気なのはロシア。これは是非では無く考え方の違い。

ソウルほどの大都市の退避作戦の困難さはベテラン軍人のマティス国防長官(海兵隊出身)、マクマスター補佐官(陸軍出身)は良く知っているでしょう。

米韓は朝鮮戦争以来「国連軍(多国籍軍)」を形成しており戦時の指揮権は米軍にあるのですが、休戦を破棄し軍事行動をするなら「韓国軍」との連絡調整が必須。現在韓国大統領が不在で国家の命運を左右する重要決定を「代行」がおこなうとは思えない。つまり可能な限り「現状維持」を望むでしょう。

※勘違いされている方もいるかもしれませんが、国連憲章7条に基づく正規の国連軍は結成された事がありません。

 

・米国「核実験すれば予防攻撃をおこなう用意がある」との声明

核実験以外には米国は反応しない。軍事的威圧をおこなうが、核実験以外では先制攻撃する意思はない。とも解釈できる。米中会談で「中国が韓国をなんとかしろ。」となっているのに、中国が動く前に一方的に戦端を開くわけにはいかない。戦後を考えた時に中国の協力なくして「朝鮮半島」の安定化は望めず、会談したばかりで習近平の顔を潰す訳にはいかない。そんなことをすれば半島のみならず、南シナ海東シナ海でどのような行動をするか読めなくなる。中国は米国のシリア攻撃に際して安保理で「反対」せず「棄権」することで米国に配慮した。このような経緯から当面は中国の動向を見守ります。

 

ということで、この2点からだけでも「当面、軍事行動はない」という事ですが、「当面」というだけで「無い」とは断言できません。メディアに煽られて騒ぎたてるのは愚かな行為ですが、一般人にとって未だ情報源の主要な地位を占める「マスメディア」からの情報を鵜呑みにするのは仕方のない事かも知れません。しかし、政府はそうはいきません。自衛隊の最高指揮官は内閣総理大臣であり、国の使命は「国民の生命・財産を国土・文化・歴史を守る事」であるからです。

 

「~だろう」や「~はずがない」は禁句であり、今回の事態を奇貨として「最悪を想定」した準備を粛々と進めるべきなのです。

完全無欠な防衛もありえず民間人の退避方法や有事立法、自衛力を高める装備、体系、法律など問題は山積しています。問題点を整理ししっかりと対応していく必要があります。

北朝鮮がチキンゲームを好み、核実験を強行することも十分に考えられます。その際は、米国は動かざるを得なくなりますので、準備は必要です。その点は十分と留意しながら、「何も起きずによかった~」で済ませていけません。

日本は戦後72年間、戦争はおろか戦闘すらしていません。戦死もありません。しかし、世界では、中東戦争朝鮮戦争ベトナム、イラン・イラク、湾岸などや、紛争~内戦と呼ばれるもの至っては書ききれないほどです。

過去、国際社会が送り続けてきた対話のメッセージを無視し続けた北朝鮮は今後どうするつもりなのでしょうか。武力衝突が起きると限定的であれ人命を失うことになります。

1994年の最初の核危機以降、米朝枠組み合意~六か国協議、国連決議、経済制裁など話し合いの場を持つ努力と武力以外の圧力を加えてきましたが、自国への脅威も目前にして、もはや話し合いの段階は済んだと米国が考えるのも無理のないことかもしれません。

軍事的に威圧する段階を徐々に引き上げていき、「抑止」から「強制」の段階に至ったのかもしれません。

 

我が国が経験したように、米国にとっては「抑止(かなり強力だが)」の「ハル・ノート」を「最後通牒」と解釈し、国民の熱狂によって戦争に突入したようになるのでしょうか。