海洋立国論

勉強のつもりで書いています。

対潜哨戒任務

MRJにからめて海上自衛隊対潜哨戒機Pー1について前回概要を書きましたが、今回もその続きです。ではP-1は潜水艦をどう探すのか?そして・・・です。

対潜哨戒機の任務は潜水艦ハンターですが、見つけたい「哨戒機」対 見つけられてはいけない「潜水艦」。このかくれんぼに勝利しなければいけません。しかし、広大な海にひっそりと水中に隠れている潜水艦を見つけるのは容易ではありません。その為に必要な能力が沢山ありますが今回は「音」です。

もっとも有名なのが「音」を探す事ですね。潜水艦は独自の音を持っており、これを「音紋(おんもん)」と呼びます。指紋のように潜水艦ごとに異なった音を発しています。これはプロペラの違い、艦体の違いなどで音が異なるため識別できるのです。
その為に通常から「音紋」を収集しています。潜水艦はこれを採られないようにしなければならないのですが、どこの国も進水・就役した潜水艦はしつこく追いかけ、哨戒機・艦船・潜水艦で音を拾います。

そのデータをもとに哨戒機はソノブイ(前回登場)で水中の音を探します。(パッシブ探知) 映画などでよくあるシーンで「ピコーン・・・ピコーン・・・」って駆逐艦などの水上艦が音を発して探していますが、基本的には現代は行いません。(アクティブ探知)最終的な位置確認などで使用するのです。音を出す事はこちらの位置も知られますので諸刃の剣なのです。

そこで、水中にマイクを下して音(特定の周波数)を探します。これにはソノブイや吊り下げ式のもの(ディッピングソーナー)、曳航式ソーナー(TACTASS)などがあります。(護衛艦の艦尾などに丸い穴があったりしますがここからニュルニュルとでていきます)

これらの方法が現代は主流ですが、水中は変温層(水温の異なる層)などのため探知距離が変わったり、音が曲がる事によって探知できないゾーンがあったりします。また、多くの雑音もありますから非常に難しい探知方法です。

最近、尖閣周辺で中国の船がウロウロしていますが、そのなかで時折「調査船」のような船がやってきます。これは海流や海底の地形、季節ごとの水温などを調査し事前にデータを収集するための海洋調査船や音響観測船です。
潜水艦を運用する国には必須の船ですが、ここで収集したデータを潜水艦の探査にも活用します。これが無い場合は現代の潜水艦はほぼ見つからないと考えられています。

潜水艦はどんどん静粛化しています。艦体には無反響タイルや吸音タイルが貼られ、駆動部は振動を吸収するような構造になっていたり、さらには乗員の靴底にまで音を出さない工夫をしているといいます。
原潜は騒音が大きいと言われてきました。原子炉は常に冷却されなければならず、艦が止まっていても冷却水ポンプは動き続けるからです。
しかし速度を落とせば減速機からの騒音は減ります。通常動力潜水艦ではディーゼルを止めてバッテリー航行にスイッチするかAIPを使う、新しいところではリチウムイオンバッテリでゆっくり動かすことでかなり静かになります。ほぼ無音となってしまえば、パッシブ探知は不可能です。

P-1は最新鋭の機体ですが、探知方法は従来と変わらず任務は困難を予想されます。これらをカバーする為に、広範囲を探査する速度と高度、高性能な通信機能、リンク機能、分析能力が必要になりました。
衛星からの情報、米軍や他の護衛艦、哨戒機・ヘリからの情報などを瞬時に収集分析し、また海洋データや騒音データなど多くのデータベースと比較分析し発見の精度を高める必要があります。

潜水艦戦力は各国が重要視する戦力です。
海洋国家の我が国にとって海上の安全を脅かされる脅威はあらゆる手段をもって防ぐ必要があります。
特に中国は「接近阻止」「領域拒否」戦略をとっており(A2D2戦略)その主力として潜水艦整備に力を注いでいます。軍事費は公表ベースで過去25年で33倍、潜水艦は60隻(海自は19隻)。新型も続々と就役させており能力もかなり向上しています。
日米連携のうえで経済的、技術的、外交的などあらゆる手法をもって、現在のような独善的では無い、秩序ある海洋利用に努めるように硬軟織り交ぜていく必要があります。

もはや日本単独では対応できないところまできています。