海洋立国論

四方を海に囲まれて。

菅外交と台湾問題

最近の動きを時間順に振り返り考えます。
 
2020/11/12
第23回日・ASEAN首脳会議
インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)で、日本が提唱する「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想を支持したうえで、国際法を尊重したパートナーシップ強化を確認し、その一番目に海洋安全保障を明記。ASEANは油断ならん相手です。特にフィリピン・ドゥテルテ大統領は何をしでかすか判らない。(寝返り・前言撤回・巻き込むなど)しっかり抑えておかないといけませんからね。
 
2021/03/16
日米安全保障協議委員会(日米「2+2」)
日米2+2でも「中国による既存の国際秩序に合致しない行動」を批判し、中国の海警法の改訂を問題視し、台湾海峡の平和と安定の重要性を確認しています。南シナ海では中国とフィリピンの仲裁裁判所の裁定(2016年7月)を最終的と述べています。(フィリピンに対するメッセージ)
また「将来的な課題」とありますが、これは中国との武力衝突を想定しています。年内に再度実施することも決まっていますが、それまでに実務者レベルの協議がどこまで進むか注目ですね。
 
2021/04/16
日米首脳会談
共同声明で中国を名指しで批判、2+2を全面支持。日米安保下での核を含むあらゆる防衛と尖閣への5条適用を確認。目標達成の為に日米豪印(クアッド)を重視、次にASEANとAOIP支持を、最後に韓国。このほかについても中国に対する日米のメッセージとしてほぼ満額ではないかと思います。
ただ米国軍事予算が激増している訳ではないことから、米軍は中東から手を引き対中国にシフトしなければなりませんので、まだまだ時間がかかることと、中東がどのような振る舞いをするのかは気になります。
 
4/17
防衛大臣・与那国駐屯地視察
日本最西端の駐屯地。共同宣言での「台湾」明記直後の視察で「曇りのため台湾は見えず」と発言し、台湾外交部は「 台湾を探してくれてありがとう。」と返信。
 
4/18
ネットに晒された?空母遼寧
中国空母遼寧の両舷にピッタリと張りつくように、米軍駆逐艦(DDG-89マスティン)海自護衛艦(型式不明だが、たかなみ型?)が監視している写真が一時公開されました。写真撮影しているのが米駆逐艦で正面に中国空母「遼寧」、その向こうに海自護衛艦が見えていました。
 
相当な至近距離で監視していますが、脆弱な空母が(空母が重要なのは航空機を積んでいるからであって、空母自体には攻撃力はほぼ無い)敵対する国の駆逐艦に挟まれているのは相当な屈辱ではないでしょうか。台湾にとっては米軍、自衛隊と2か国の巻き込みに成功しつつあるのでしょう。
 
4/19ミサイル欲しい
台湾高官が米国から長距離空対地ミサイル(JASSM)の購入を希望していると述べています。
台湾が親日・親米かは疑問点も無い訳ではありませんが、台湾の存続の為には反中であるでしょうし、その為には表向きだけでも親日親米でなければなりません。まぁ、台湾の安定はそのまま日本の安定にも寄与しますから、それで良いんですけれど。
 
4/20警察も動く!
日本の研究機関などにサイバー攻撃をしたとして、中国人民解放軍の指示でハッキングしていた集団に対する捜査を警視庁が開始し、中国共産党員を書類送検すると報道がありました。
 
中共同宣言(1972年)の時とは状況が大きく異なり、台湾有事が現実味を帯びてきました。
さて、台湾有事(半島有事でも同じだが)の際は、自動的に日本が前線となり参戦することになります。台湾上陸は中国にとってもかなりリスクとコストの高い軍事作戦ですが、米軍の本格的介入を遅らせる為には第一列島線まで中国軍(人民解放軍)は進出し接近拒否をおこなうことになります。(そんな簡単には戦争にならないとは思いますが想定だけはしておかないと)
 
しかし米軍はまずは沖縄から戦闘機が出撃します。そうなると日本は中国にとって敵国であり自動的に参戦国になります。
そのうえ、進出した中国海軍・空軍は尖閣や沖縄、与那国といった島々に攻撃をしてくることになるので、民間人は当然のこと、自衛隊の駐屯地への攻撃は、即防衛出動が発令され自衛隊が国防にあたることになります。新・防衛法制に従い、日米は一体運用もしくは強固な連携を図った作戦を実施します。
 
その為の作戦計画と装備体系を日米ですり合わせなければなりません、訓練も行わなければなりません。この点は既に2+2で明示されています。
具体的には沖縄への中国艦艇・航空機の接近阻止のため中・長距離対艦・対空ミサイルの配備やレーダ網(超水平線レーダーや衛星群、早期警戒機による探知)、潜水艦による艦船の接近拒否やP-1による対潜哨戒、離島防衛、F-35による航空優勢確保などです。米軍の本格展開までは持ちこたえなければなりません。
 
過去にも書いた「同盟のジレンマ」には「巻き込まれる恐れ」があるのですが、台湾有事はそのまま日本有事なので「巻き込まれ」ではありません。
中国が核で恫喝するのでは?という論もあるようですが、そうなると米国の「拡大抑止」によって核による報復の恐れがでてきます。そもそも核戦力は圧倒的に中国が不利です。
 
日本のすべきことは想定する相手(ここでは中国)の戦力を正しく分析し脅威度を判定し、米軍の再編成に合わせた戦略と装備体系の構築の為の予算の確保、そして不足するなら国内法整備をおこなうこと。
前にも書いたのですが「楯」と「矛」の関係は終わりです。根拠法が無いなら立法すれば良いし、そうして世論を喚起し説明を尽くす。(法も装備も)無いからできないでは、国家が自立していないことになります。
 
個人的にはもっとも対策を講じて欲しいのが、「非戦闘員(民間人)退避作戦(NEO)」です。
「防衛出動」下で国内であれば自衛隊は躊躇なく「国民保護等派遣」という根拠法によって動けますが、自衛隊は敵国に侵入して救出はできません。「在外邦人等保護処置」もそのような事態は想定していません。
中国に滞在する邦人は膨大ですからそもそも無理ですし、自衛隊にはそんな装備も根拠法ありません。これは完全に政治の役割です。
 
軍事学のクラウゼビッツは「戦争は政治活動の一部」としていますが、そうであるなら「政治とは戦争という交渉手段を含むもの」であるとも言えます。
また軍事に必須の戦略についての近年の理解は「戦争は政治に従属し」「動的な相互関係によって特徴づけられ」「戦時・平時問わず力の行使」であるとされています。つまり戦争を除外した政治によって作られた戦略は戦略ではありません。
 
今まで日本はその部分を米国に丸投げしてきましたが、米国の力が相対的に落ちてきている現代ではもう通用しません。
その事を十分理解しているからこそ、バイデン政権は早々に2+2で来日し、初の外国首脳訪米が菅総理だったのでしょう。私はそう理解しています。戦後に享受してきた安定と平和を今後も維持する為に、日本は旗幟鮮明しなければなりません。