海洋立国論

勉強のつもりで書いています。

弱点は日本かも。

自己中心的な行動で迷惑な中国ですが、各国軍隊はそれなりに対抗しようとしています。
 
もはやアメリカ単独では中国を抑えることはできないのは明白ですし、米軍関係者からもそのような声が聞こえてきています。
 
日米豪印英加などとの連携をすすめ、中国も署名批准しているUNCLOS(国連海洋法条約)などのルールに則った海洋利用と、力による一方的な現状変更をさせない姿勢を明確にする必要があります。
 
【米国】
バイデン米大統領の就任早々、オースティン氏が国防長官に決定しました。
軍人だった人が就任するには退役後7年を経過しているか、またはこの規定の例外とするため議会での承認が必要なのですが、私は巨大防衛産業レイセオン社の役員でもあった人が国防長官になることは無いと思っていました。
 
しかし大統領の就任後たった2日で圧倒的賛成多数(93:2)で承認。軍事に無知な素人が国防を担うより、精通しているプロのほうが望ましいのかもしれませんが、軍のシビリアンコントロールを重視するアメリカにしては意外でした。
(トランプ政権の初代国防長官マティス氏も例外として承認)
 
国内と軍の安定化も勿論ですが、NATOとの関係修復、何といっても対中国の事を考えるとノンビリしていられないというところでしょうか。
また同氏は黒人である事も政権には重要な要素であったかもしれません。
どちらにしても経歴からしてかなり優秀な方のようです。就任直後のコメントが「さぁ仕事にとりかかりましょう」ですからね・・・部下にとっては厳しい上司。今後を期待しましょう。
 
米軍は老朽化した兵器や対中国に役立たなさそうな兵器の早期退役を進めているようですが、これは維持コストを抑制し新兵器開発などに予算を回すためでしょう。勿論、対中国を睨んでのことだと思います。潜水艦に対する予算も増額されているようですしね。
 
【豪州】
イマイチ頼りないオーストラリア海軍ですが、中国の脅威は日本と同様に感じており、海軍の近代化に巨額の投資を計画しています。
 
新型の潜水艦をフランスと共同開発していますし、対中抑止を睨んでオーストラリアでは、巡航ミサイルの長射程化(1,500km)、スタンダードミサイルSM-2/SM-6の能力向上の為の投資もおこなうようです。
 
自衛隊
自衛隊も動きが早くなってきました。陸自装備の12式対艦ミサイルを原型として、
 
(1)射程延伸 200kmから1,500kmへ(最大目標2,000km)
 
(2)ステルス化 レーダー断面積(RCS)を減少させることで、レーダー探知を遅らせてリアクションタイムを減らします。
 
(3)マルチプラットフォーム化 発射器のみならず、老朽化してきたF-15J戦闘機にも搭載できるようにします。
ステルス性の無いF-15Jでも長射程ミサイルキャリア―として敵の防空圏外から攻撃をおこなえるようになります。
これには対艦・対地両方の能力を付加します。
 
(4)データリンク 敵の位置情報の取得をデータリンクを通じて更新できるようにします。
これによって命中精度を高めるとともに、最終段階(着弾前)にも迎撃回避の為の飛行ルートの変更をできるようにします。
 
これを2023年度までに開発するとしています。マジすか??
しかし、予算は増えず人員も増えずでは対応にも限界があるでしょう。予算の増額を望みたいところです。
 
【連携】
イギリスは「日米豪印」のいわゆるQuad(クアッド・4か国戦略対話)、CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定 )に加わる動きも見せていますね。
 
派遣が決まった英空母QEには米海兵隊のF-35Bも搭載し米駆逐艦も随伴だそうです。
南シナ海あたりで米海軍、海自と共同訓練しつつ日本へ寄港するかもしれませんし、経済で中国依存が強かったドイツも苦しい人員をやりくりしてフリゲート艦を派遣するようですので一緒に訓練することがあるかも。
 
ドイツ海軍はさほど力がありませんが、QuadとNATOが連携して南シナ海東シナ海での中国の振る舞いに対処しようということでしょうか。
 
そうそう・・・実はフィリピンも新型フリゲート艦の導入を進めています。(韓国・現代重工業製2,600トン)艦砲もミサイルも載ってる立派な「軍艦」ですよ。
 
【中国】
中国は早速にもバイデン大統領の様子を伺ってきています。
台湾の周辺にうっとしいい行動をとっています。
 
台湾の防空識別圏ADIZ)に1/23日にY-8対潜哨戒機×1 H-6K爆撃機×8 J-16戦闘機×4、 24 日にはY-8対潜哨戒機×2 Su-30戦闘機×2 J-16戦闘機×4 J-10戦闘機×6 Y-8電子偵察機×1 の述べ28機の侵入させています。
領空とは違い、防空識別圏ADIZ)進入そのものはさほど問題はありません。ロシアも26日にアラスカの防空識別圏に2機のTu-142(哨戒機)を侵入させていますしよくある事。
 
しかし今回は「爆撃機」を8機も入れている事は示威行為であり、飛行コースも南シナ海で航行中の米空母打撃群の比較的近くであったことを考えると、これは台湾に対する威嚇であり、核心的利益である台湾は離さない、アメリカに関与させないという意思表示であり、バイデン政権の出方を伺っての行為としか考えられません。
 
中国による南シナ海での実効支配もなかなか進んでいませんが、この海域での活動を通じてバイデン政権を値踏みすることは今後するかもしれません。
どこがデッドラインか測るため、従来より少し強硬な姿勢や行動をとる可能性があります。
 
【ミサイル長射程化の利点】
ミサイルの長射程化には多くの利点があります。
南西諸島防衛を考えた場合、前線となる尖閣やその周辺に対しては沖縄諸島など各所にランチャーを設置できます。
沖縄本島なら島内を移動しやすく発射器の遮蔽、補給、人員の配置など全てにおいて有利です。
 
島内に無差別に着弾させるなんて流石にできませんから、中国はランチャーを破壊するには位置の特定をし精密誘導兵器による破壊をしなければなりませんが、ランチャーは発射後に島内の道路を利用して移動すれば良いため、簡単にはランチャーを狙えません。
 
また長射程ということは長く飛ぶ訳ですから、飛行ルートや飛行高度の選択肢が増えますので迎撃がしにくくなります。
自衛隊の計画どおりにマルチプラットフォーム化されれば、戦闘機からも発射できますので、防御側(艦船)にとっては厄介です。
 
ただし長射程が有効に機能するにはセンサーが重要で、リアルタイムで相手の情報を把握できるようにならなければなりません。
 
イージスアショアで茶番劇を演じた我が国ですが、限りあるリソースを対中・露・北朝鮮にどれだけの量と比率で配分するのか、どのように抑止し破れた場合はどう戦えば負けないかを事前に十分練り上げる必要があります。
 
相手チームの連携を崩すには弱点を突くのが常道ですが、その弱点になりたくはないですから。
もはや「安保と水はタダ」と言われた時代はとっくに終わっていますね。