海洋立国論

四方を海に囲まれて。

令和の日英同盟

本年も長文をお読みいただいた方、ありがとうございました。更新ものんびりのブログですが、来年もよろしくお願いします。
 
日英同盟破棄から100年】
日本は1921年(大正10年)ワシントン海軍軍縮会議において日英同盟を廃棄しました。それから丁度100年。令和の時代に新たな形で日英同盟が復活しつつあるようです。
 
【QE展開】
2021年初頭にも英海軍新鋭空母クイーンエリザベス(約6.5万トン)を中心とした「空母打撃群」が、アジア太平洋地域(西太平洋)に長期展開されます。
「空母打撃群」とは空母と艦隊護衛の戦闘艦、補給艦、潜水艦などで構成される艦隊です。(同型艦にプリンスオブウェールズ
 
海洋覇権を強める中国を牽制するため、各国との共同訓練や航行の自由作戦を実施するほか、EU離脱後の日本やアメリカとの外交強化など軍事・外交両面を睨んでの展開と考えられます。
 
【日本の存在感】
英国が空母打撃群を長期展開できるのは、ある意味日本のおかげとも言えます。その理由は、艦隊を収容できる港、整備に使える大型ドックを横須賀に保有しています。米第七艦隊も利用していますから実績も能力も申し分ありません。
ただキャパシティに余裕があるわけでは無いでしょうから、やりくりには苦労するかもしれませんね。
 
また、空母クイーンエリザベスは艦載機としてF-35Bを運用可能ですが、日米英とも共通の機体ですので、運用の柔軟性が高くなりますし、F-35Bを強襲揚陸艦で運用する予定の米軍にとっては強襲揚陸艦不足を助けてもらえます。
自衛隊も「いずも」「かが」をF-35Bが運用できるように改修していきますので、こちらでも共通の運用がおこなえます。空自はF-35を選定して正解でした。
 
さらにF-35のアジアでの機体整備拠点(リージョナル・デポ)は「小牧」にあるため、充分な整備も日本で行えます。
英軍の西太平洋への長期展開は日米にとっては対中抑止の助けになりますし、英国は日本の拠点を利用できます。
装備品開発においても協力しやすくなることで自国負担が小さくなったり、より高性能のものを開発できるでしょう。
 
香港の一件で一国二制度の約束を反故にされ大英帝国の面目を潰され、かつての植民地であった豪・印が中国に危機感を募らせてる今、知らぬ顔をする訳にもいかないでしょう。
 
【防衛協力】
対中脅威の高まりと共に日本は米国以外とも防衛協力を深化させてきており、オーストラリアとは2013年に日豪物品役務相互提供協定(ACSA)を日豪情報保護協定(ISA)を発効させ、2014年以降には防衛装備品技術移転協定を、2020年11月には日豪円滑化協定を大枠合意しています。
 
日本が他国と締結したこの種の協定では米国以外とは初めての締結で、オーストラリアは首相ステートメントで「日豪交流における歴史上の転機」「高いレベルの日豪防衛協力に、新たな章を切り開くもの」として高く評価しています。英国はEU離脱後を睨み、2021年1月の日英EPA発効に続き、この日豪円滑化協定にも関心を示しています。(英国の他にも仏・印とも協議中とみられます)
 
英国とは既に、2014年に新たな「防衛装備移転三原則」に基づき、2014年以降に防衛装備品技術移転協定、情報保護協定を締結しており、(他にもNATO・豪・独・伊・仏・印など)2015年には連絡幹部の常続的派遣の受け入れを開始、2018年に日英物品役務相互提供協定(ACSA)が発効しています。
 
これらに基づき、航空自衛隊保有するF-2戦闘機に代わる次期戦闘機、英国の次期戦闘機「テンペスト」に搭載できるとみられる新たなミサイル開発(JNAAM)にも着手しています。さらに日米英の三か国による共同演習も実施していますし、今後も増えるでしょう。
 
【新たな秩序】
世界は力の序列による宗主国と植民地のような「弱肉強食」「上下関係」の時代を経て、冷戦時代の「イデオロギー」で分断された時代に移行し、現代のような「航行の自由」を軍事力の誇示によって保証することで海洋覇権を維持するアメリカのもとで、自由に経済文化の交流を図り共通の価値観と利益を持つ国々と、それに異を唱える国々、「力こそ正義」な独善的な国々におおまかにグループ化されました。
 
当然日本は最初のグループですから、英国や豪・仏などとも連携が深まるのは当然なのかもしれませんが、同盟と言っても準同盟と言うべきレベルであって、日米のような関係にはなりません。
 
軍事同盟は「即応性」「双務性」が重要なため、純粋な意味では実現可能性は高くありません。
実現するとしてもかなり先の話でしょうし、そうでないならば中国の脅威が日英とも差し迫った状況になったときでしょう。
 
しかし「ファイブアイズ」に加盟する話がチラホラでたり、日米英仏豪印などとの多国間協力を深化させるうえで、現実的には日英同盟とも言える関係構築にいずれは繋がるかもしれません。
 
安倍政権が長期政権であったことと、安倍総理の提唱した「自由で開かれたアジア太平洋」構想が世界で支持された結果がここにも表れていると思います。
 
1905年の日本海海戦明治38年)で、バルチック艦隊を破った日本艦隊旗艦「三笠」、日本初の超弩級戦艦「金剛」は英国ビッカース社の建造であり、人材交流も含めて英国海軍から日本海軍は多くを学びました。帝国海軍の師匠とも言うべき存在です。
 
英国車は日本ではあまり人気がありませんが、クルマは左側通行。日本初の鉄道(新橋~横浜)を最初に走ったのも英国の蒸気機関車。日本は開国以来多くを英国に学びました。
 
開戦当初、マレー沖海戦で一式陸攻などによって沈められたのは「レパルス」と最新鋭艦「プリンスオブウェールズ」で、これは世界初の航空攻撃による航行中の戦艦の撃沈記録です。
 
空母の艦隊運用を本格的に行ったのは、帝国海軍による真珠湾攻撃ですが、空母として最初から設計し起工されたのはイギリスの「ハーミーズ」で、起工は遅れたものの帝国海軍の「鳳翔」が先に完成しました。
 
なにか不思議な縁があるように感じます。今後どのように日英の関係が深化していくのか注意深く観察したいと思います。
 
 
※ACSA・・・両軍間の物品・役務を相互に提供することや、その際の決済手続等の枠組みを定めた協定で、これにより共同訓練や共同での情報収集活動、PKO活動、人道支援災害派遣、外国での緊急事態における自国民の保護措置などがおこなえるようになります。物品については相手国の同意を得ずに第三者移転はできません。

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英空母クィーンエリザベス
(写真は英海軍HPより)