令和の日英同盟
本年も長文をお読みいただいた方、ありがとうございました。更新ものんびりのブログですが、来年もよろしくお願いします。
【QE展開】
2021年初頭にも英海軍新鋭空母クイーンエリザベス(約6.5万トン)を中心とした「空母打撃群」が、アジア太平洋地域(西太平洋)に長期展開されます。
【日本の存在感】
英国が空母打撃群を長期展開できるのは、ある意味日本のおかげとも言えます。その理由は、艦隊を収容できる港、整備に使える大型ドックを横須賀に保有しています。米第七艦隊も利用していますから実績も能力も申し分ありません。
ただキャパシティに余裕があるわけでは無いでしょうから、やりくりには苦労するかもしれませんね。
また、空母クイーンエリザベスは艦載機としてF-35Bを運用可能ですが、日米英とも共通の機体ですので、運用の柔軟性が高くなりますし、F-35Bを強襲揚陸艦で運用する予定の米軍にとっては強襲揚陸艦不足を助けてもらえます。
自衛隊も「いずも」「かが」をF-35Bが運用できるように改修していきますので、こちらでも共通の運用がおこなえます。空自はF-35を選定して正解でした。
さらにF-35のアジアでの機体整備拠点(リージョナル・デポ)は「小牧」にあるため、充分な整備も日本で行えます。
英軍の西太平洋への長期展開は日米にとっては対中抑止の助けになりますし、英国は日本の拠点を利用できます。
装備品開発においても協力しやすくなることで自国負担が小さくなったり、より高性能のものを開発できるでしょう。
【防衛協力】
対中脅威の高まりと共に日本は米国以外とも防衛協力を深化させてきており、オーストラリアとは2013年に日豪物品役務相互提供協定(ACSA)を日豪情報保護協定(ISA)を発効させ、2014年以降には防衛装備品技術移転協定を、2020年11月には日豪円滑化協定を大枠合意しています。
日本が他国と締結したこの種の協定では米国以外とは初めての締結で、オーストラリアは首相ステートメントで「日豪交流における歴史上の転機」「高いレベルの日豪防衛協力に、新たな章を切り開くもの」として高く評価しています。英国はEU離脱後を睨み、2021年1月の日英EPA発効に続き、この日豪円滑化協定にも関心を示しています。(英国の他にも仏・印とも協議中とみられます)
英国とは既に、2014年に新たな「防衛装備移転三原則」に基づき、2014年以降に防衛装備品技術移転協定、情報保護協定を締結しており、(他にもNATO・豪・独・伊・仏・印など)2015年には連絡幹部の常続的派遣の受け入れを開始、2018年に日英物品役務相互提供協定(ACSA)が発効しています。
これらに基づき、航空自衛隊の保有するF-2戦闘機に代わる次期戦闘機、英国の次期戦闘機「テンペスト」に搭載できるとみられる新たなミサイル開発(JNAAM)にも着手しています。さらに日米英の三か国による共同演習も実施していますし、今後も増えるでしょう。
【新たな秩序】
当然日本は最初のグループですから、英国や豪・仏などとも連携が深まるのは当然なのかもしれませんが、同盟と言っても準同盟と言うべきレベルであって、日米のような関係にはなりません。
軍事同盟は「即応性」「双務性」が重要なため、純粋な意味では実現可能性は高くありません。
実現するとしてもかなり先の話でしょうし、そうでないならば中国の脅威が日英とも差し迫った状況になったときでしょう。
安倍政権が長期政権であったことと、安倍総理の提唱した「自由で開かれたアジア太平洋」構想が世界で支持された結果がここにも表れていると思います。
1905年の日本海海戦(明治38年)で、バルチック艦隊を破った日本艦隊旗艦「三笠」、日本初の超弩級戦艦「金剛」は英国ビッカース社の建造であり、人材交流も含めて英国海軍から日本海軍は多くを学びました。帝国海軍の師匠とも言うべき存在です。
英国車は日本ではあまり人気がありませんが、クルマは左側通行。日本初の鉄道(新橋~横浜)を最初に走ったのも英国の蒸気機関車。日本は開国以来多くを英国に学びました。
なにか不思議な縁があるように感じます。今後どのように日英の関係が深化していくのか注意深く観察したいと思います。
(写真は英海軍HPより)