海洋立国論

四方を海に囲まれて。

茹でガエルニッポン。

中国の軍事力については多くの報告や分析がありますが、まずはデータをおおざっぱにいくつか纏めたいと思います。

防衛省防衛白書」、米国防省「中国の軍事力2020」、CSIS戦略国際問題研究所(米・シンクタンク)CSBA戦略予算評価センター(米・シンクタンク)SIPRIストックフォルム国際平和研究所(スウェーデンシンクタンク)など多くが研究、報告していますが、それらをひっくるめて概要だけでも掴めたらと思います。(細かな点で注意は必要です。)

 

【国防予算】

中国の20兆3,000億円に対し日本は5兆7,000億円とすでに大差。中国経済を反映し軍事費の伸びは鈍化していますが、この10年間でおよそ2.4になっています。

日本はGDP比1%の大枠がありますので、GDPが延びない近年は実質の伸びは小さなものです。そのうえ日本は福利厚生費や給与などの人件費もコミコミなのに対し、中国の軍事予算にはそれらが含まれておらず、ほとんどが武器装備、演習などの予算と考えられていますので、その実態の差は大きいでしょう。

まして各国から機密情報を盗んでるようですので、開発コストと期間を抑えられます。ちなみにアジア地域の軍事費のだいたい半分は中国ですので軍事大国の道を歩んでいるのは中国です。安保法制ぐらいで騒ぐ日本人はお目出度いと言わざるを得ません。

 

【ミサイル】

冷戦終結に一定の役割を果たし、核戦争の可能性を低下させたINF(中射程及び短射程ミサイルの全廃に関する米ソの条約)でミサイルの規制があった米ソ(ロシア)とは異なり、中国は自由に開発できたため、多数の中距離ミサイルを保有しています。

このミサイルバランスの偏りがアメリカがINF破棄に至った一因で、先ごろ、防衛省防衛白書」、米国防省「中国の軍事力2020」でも報告されています。

注意していただきたいのは、以下の数は『発射器の数』であってミサイルの数ではありません。

再装填し攻撃する事を考えると、発射器<ミサイルですし、ICBMなどは一発のミサイルを多弾頭化していますので、ミサイルの種類によってはミサイル数の10倍の弾頭数がある可能性があります。

発射器も移動式でいつどこから発射されるのか分かりにくいうえ、即応できる固体燃料式が主力です。

ICBMは全て核、それ以外は核・非核両用が多いことも注意です。

 

ICBM大陸間弾道ミサイル・射程5,500km以上)100基

IRBM(中距離弾道ミサイル・射程3,000~5,500km)200基以上

MRBM(準中距離弾道ミサイル・射程1,000~3,000km)150基以上

SRBM(短距離弾道ミサイル・射程300~1,000km)600基以上

GLCM(地上発射型巡航ミサイル・射程1,500km以下)300基以上

 

【海軍力】

近年強大な戦力となってきています。もはや数では米海軍を追い越しているかもしれません。

ただし近代化されていない旧式艦もありますので、実践経験豊富な米海軍と単純な比較はできませんが、その米海軍でさえ米国防省では「規模は米海軍を追い越した」と認識しているようです。ましてや海上自衛隊は差を付けられる一方です。

ある報告では2030年の中国海軍の規模は以下になるだろうと推定しています。

巡洋艦駆逐艦60隻 フリゲート艦50隻 強襲揚陸艦10隻 空母4隻 通常型潜水艦60隻 攻撃型原子力潜水艦16隻 弾道ミサイル原子力潜水艦8隻

その他で750隻・排水量200万トン程度と推定しています。

 

一方海上自衛隊は、護衛艦48隻(ヘリ空母4隻)通常型潜水艦20隻 などが主力で補助艦艇も含め138隻・50万トン。※2020年度防衛白書資料6より

 

艦艇に搭載される垂直ミサイル発射器(VLS)の数でも中国は海自の倍近くまで差を広げようとしています。

 

勿論、自衛隊は米軍の弱点を補う相互補完関係の戦力として整備されてきた経緯もありますので、全面戦争時には米軍が加わる事には一応なりますが、その自衛隊が弱いとなれば米軍の作戦にも支障がでる恐れがあるでしょう。

それは日米とも避けなければなりませんし、自衛隊を強化することは、米軍に日本周辺での有事に関与させやすくなります。

 

台湾有事などで中国が第一列島線を突破しようとした場合には、海自が米軍と共に戦うことになるかもしれませんし、その時中国軍は尖閣まで進出します。その際に一義的には自国防衛ですから自衛隊が戦うことになります。

 

単純に双方が全戦力を一気にぶつけ合う訳ではありませんし、運用能力など多くの要素も絡んできますので、単純に論じられませんが、比較優位の能力を持った時に共産党がその気になれば抑止が効かず、戦闘行為が始まります。日米安保によって安易にそうできないのが現状ですが、台湾を統一することは共産党政権の核心的利益の筆頭です。

 

【各国の動き】

隣国がそんな状況であり、経済力と軍事力を背景にますます権威主義的態度を強め、力による現状変更を推し進め、WHOのように国際組織を取りこんでルールメーカーになろうとしているときに、欧州や米豪は明確にNOを突きつけています。

台湾蔡英文総統は9日に出席したフォーラムで「中国が周辺地域で示している拡張主義に対し、民主主義諸国は立ち向かおう」と言い、ドイツは中国依存から転換し日本など共通の価値観の国々と連携すると言い、チェコ上院議員が「私は台湾人」と発言し、EUを同調させるなど動きが早い。

 

【日本の動き】

安倍総理は「自由で開かれたインド太平洋」構想で、アメリカとインドをこの地域に巻き込み、日米安保を強化しましたが、これによって中国の東西からアメリカとインドの関与を強め、日本に対する中国リスクを分散させることに成功し、安保法制の拡充で価値観を同じくする英・豪・印などとも連携が深まりました。

 

河野防衛大臣は先ごろCSISで「国土の1センチであれ守る用意がある。日米共同で尖閣防衛のため武力行使も辞さない。何もしなければ南シナ海のようになる」と言いました。多分に総選挙、次の総裁選を意識したのかもしれませんが、国家の意思表示は重要です。

 

尖閣沖中国船衝突事件 で、大局から国益を考えず、APEC議長としての見栄の為に中国人船長を釈放した菅直人元総理とは大違いです。中国の国内事情もありますが、あれ以来尖閣への圧力を強めたんですから。

 

【茹でガエル】

しかし核ミサイルが東京に落ちるより、迎撃ミサイル部品の落下を心配した一部世論や、一地方が反対したためイージスアショア配備取り止めとなる不手際、「攻撃」は言葉が悪いので「反撃」にしようとか言葉遊びし、それも対北朝鮮なのか対中国なのかもあやふやなまま議論を進めています。

尖閣沖中国船衝突事件を経験したにも関わらず、領海警備の為の法整備もほったらかしにしている国会議員もどうかしています

 

政府の説明も不足しているとは思いますが、野党もスキャンダル追及ばかりで肝心な議論はしていない。

それもあって多くの国民が状況を正確に把握しておらず、またメディアが正しく伝えないため、危機意識が低い。専門家でもない人や芸能人がテレビで感傷的に喋り世論に影響を与える。そのうちに危機はレベルを上げていく。こういうのを「茹でカエル」と言うのでしょう。高校ぐらいで安保や軍事学を必修科目にしたいくらいです。

 

CSISのレポートに「中国はメディアを通じた影響力行使を沖縄で図っている」(シャープパワーの行使)と報告され、「日本の非対応」を指摘しています。

沖縄の地理的重要性は今更言うまでもないでしょう。

 

数的には圧倒されている日本がとれる手段はなにか、相手の優位を如何に減ずるか、有事の際のエスカレーションを如何に制御するか、どのような戦略で抑え込むか、日米同盟の信ぴょう性をどこまで高めるか。国も国民ももっと危機感を持たないと、本当に亡国になります。

 

自衛隊は練度が高いとか、質が良いとかいう勇ましい人、大丈夫ですか?

戦いは数がモノを言いますし、頼みの質でも日本はスペースジェットすら未だ飛ばないのに、中国は曲がりなりにも第5世代戦闘機飛ばしてます。

 

安全保障とは自己・相手を知ったうえでのリスクマネジメントによる抑止と被害軽減のためのダメージコントロールだと思います。

 あ、マネジメントって日本の一番苦手分野( *´艸`)

photo by U.S. Pacific Fleet

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