コロナと周辺安全保障
新型コロナウイルスの影響で、世界中で経済が縮小し自粛と都市閉鎖まであってこの先の不安感は半端ないですね。そんななかでも、我が国の周辺の安全保障環境は厳しさを増しています。弱り目に祟り目、泣き面に蜂ですし、水に落ちた犬は叩け(毛沢東)とも言いますしね。
概要だけですが、頭の片隅にでも入れておいていただければと思いますので、少し整理します。
▲令和2年 尖閣諸島付近での中国公船による事案
1月 接続水域入域27日98隻 領海侵入2日8隻(19日70隻3日12隻)
2月 接続水域入域26日90隻 領海侵入2日8隻(16日54隻3日12隻)
3月 接続水域入域25日89隻 領海侵入1日4隻(16日60隻3日12隻)
全て前年を上回っています。中国武漢発祥とされるコロナウイルスが猛威を振るっていてもです。
※( )内は前年同月の数字。隻数はのべ数
▲北朝鮮ミサイル事案
3/2 2発 3/9 2発 3/21 2発 3/29 2発 3月合計8発
全て短距離ミサイル(北朝鮮側の呼称は超大型放射砲など)ですが、移動式発射器からの発射で発射場所が異なっています。3/21は日本のEEZ(排他的経済水域)外の日本海の島に着弾、ロシアのイスカンデル短距離弾道ミサイル同様の飛行後半での飛行経路の変更が可能とされます。これらは最高到達高度が低いディプレスト軌道で飛行するため、日米が運用するBMDシステムの主役、SM-3の迎撃最低高度以下なので対応できない場合があります。ただし現状では射程が短く日本の大部分には届かないため、このミサイルは対韓国用とみるべきですし、毎週発射のペースは国内引き締めを狙っての事かも知れません。
▲スクランブル事案
スクランブルとは国籍不明機が領空侵犯のおそれがある時に戦闘機を緊急発進させ対応するものです。令和元年4月~12月の期間の累計が公表されていますが、対中国は523回 対ロシア216回 と非常に多いのです。情報収集機や爆撃機の飛行、日本周辺の周回飛行などがおこっています。飛行時間で管理される航空機には負担が大きい任務です。
▲護衛艦しまかぜ事故
そして昨夜飛び込んできたニュースですが、3/30 20:28 東シナ海を航行中の護衛艦「しまかぜ」が中国漁船と衝突しました。被害は比較的軽微(20cmの破孔)ですが、気になるのは左舷後部を損傷したとする点。断定することはできませんが、これは漁船がぶつかってきたと考えるのが妥当かも。修理の間任務には就けません。
漁船がぶつかって穴が開くなんてと思う方もいらっしゃるでしょうが、近年の戦闘艦艇は機動性を与えるために軽量化しています。またコストを抑えるため装甲はペラペラ。近距離で大砲打ち合う戦闘なんて想定していませんし、現代兵器は少々装甲したところで無駄ですので。
この事故で思いだすのは2000年10月に米イージス駆逐艦コールが民間小型船に偽装したアルカイダの自爆攻撃を受けて大きく損傷、17名死亡、復帰に3年を要した事件です。
イージスシステムがあっても民間小型船の接近はアメリカでさえ許してしまい、被害を与えることが可能であることを証明されてしまいました。
今回の「しまかぜ」も中国海軍・民兵組織によるそのテストと考えれば恐ろしくなります。突然、偽装した民間船が突っ込んできても自衛隊は一方的に沈める事ができません。
▲米海軍
米空母「セオドアルーズベルト」にもコロナの感染者が出ましたが、フィリピン海での任務を中断しグアムに帰港するかもしれません。帰港しても乗員は簡単に上陸できず休養もできません。また想定しにくいですが戦略原潜に感染者がでた場合は、核報復能力の均衡が崩れます。米軍はわざわざ「積極的な対応により、空母セオドア・ルーズベルトは地域のあらゆる危機に対応できると確信している 」とコメントしていますが、即応能力低下への危機感の現れでしょう。3月27日には横須賀の空母「ロナルドレーガン」乗員の感染が判明し基地は一時封鎖されました。軍人や軍関係者の海外出張や会議なども制限されますので、演習や連携などに支障がでるかもしれません。
コロナ騒動が落ち着いても西側諸国は経済回復に全力を上げねばなりませんので、中国・イラン・ロシア・北朝鮮に対する抑止力の低下は免れないでしょう。非常時には民主国家より専制国家のほうに有利に思えます。
世界中がコロナの対応に追われている間に、発端となった中国はどのような振る舞いに出るのか気になります。
(写真は海上自衛隊フォトギャラリーより)