海洋立国論

安全保障・軍事について自分自身の勉強のつもりで書いています。

2018年の軍事費について

スウェーデンとSIPRI

ストックホルム国際平和研究所(略称SIPRI)という、軍事関連を主な研究としている国際的に評価も高いシンクタンクがあります。

所在地のあるスウェーデン北大西洋条約機構NATO)非加盟で軍事非同盟を政策の基本として、おおむね中立の立場をとりながらも、ロシアに近い事などもあって自国開発・生産の兵器を揃え、ロシアのクリミア併合など自国の安全保障環境の変化に対応して徴兵制復活させた重武装な国家です。

 

スウェーデンの兵器産業で有名なのはサーブ社です。

サーブ社は優秀な戦闘機を開発しており、現行のサーブグリペンEは高い電子戦能力で自国領内で戦うことに特化しており、西側の多種の対空ミサイルや最新鋭の長距離空対空ミサイル・ミーティアを搭載可能、高速道路の僅かな直線(800m)でも発進できる短距離離着陸性能、再整備後に再出撃するまでが短時間で済む、維持運用経費が極めて安価など高性能の機体です。

日本の装備品調達に関してのあらゆる制約を無視すると、個人的には陸上運用に限ってはF-35ではなくグリペンEが最良の選択では無いのかなと思います。

中立的とはいいながらも、国際平和協力活動(PKO)などやNATOEU諸国との防衛協力は積極的に推進しています。平和賞を除くノーベル賞で有名な国ですね。(実は今回のノーベル賞発表で思いついたネタです)

 

軍事費は増えている

今回はそのSIPRIのレポートから軍事費についてご紹介します。軍事費は各国の脅威・緊張度の高まりを考えるのに理解しやすい指標です。

 

以前にも書いた通り、民主国家では軍事費は抑制したい支出(軍事費が増える事は平和の配当の減少)です。緊張が無い場合は減らしたい支出ですので、冷戦崩壊後は低水準のレベルでしたが、近年はかなり増加しています。

2018年の世界の軍事費は、前年比2.6%増で、支出上位5か国は 1:アメリカ 2:中国 3:サウジアラビア 4:インド 5:フランスであり、これらで全支出の60%、全軍事費の対GDP比平均は2.1%であり、冷戦後(1995)最低だった軍事費よりも75%増加しています。

アメリカは6,490億ドルとトランプ政権による積極的な武器調達によって増加、中国は2,500億ドルで24年連続支出が増加し1994年のおよそ10倍と激増。これは全世界支出の14%です。米中の軍事費増が全体を押し上げています。

 

アジア・オセアニア

アジア・オセアニア地域としても増加をしており、全世界支出のうち1988年には9%であったものが、2018年には28%です。

インド VS パキスタン、 覇権国アメリカ VS 挑戦国の中国、高いレベルで推移する韓国などの支出が主な理由です。

特に中国はこの地域の支出のおよそ半分を占めています。10年ほど前はおよそ3割であったことを考えると周辺諸国が脅威を感じるのには十分な数字でしょう。

主任研究員のSiemon Wezeman氏のコメントは、「アジアの国々と中国と米国の間緊張が、この地域における軍事費の継続的な成長の主な原動力です」と述べています。

シリア情勢で注目されるトルコですが、軍事支出は極めて高いレベルで増加しており、2018年は前年比24%増となっています。日本は軍事費(防衛費)は9位ですが、GDP比1%の枠は超えていません。

ロシアは6位とはいえ前年から3.5%減少していますが、ロシアの脅威が高いウクライナなどは21%増となっています。東欧諸国は比較的高い比率です。

 

中東

また、中東は軍事的緊張が高いレベルであるため、軍事費のGDP比は高くなっており、GDP比の高い国上位10か国のうち6か国がサウジアラビアオマーンクウェートなどの中東諸国です。まぁいつ爆発してもおかしくない地域ですので怖いですね。

 

誤認を防ぐために 

ただし軍事費の扱いについては各国によってバラつきもありますのでこの数字が全てでは無い事には注意が必要です。総額だけではなく内訳や装備品の性能も重要な指標です。特に中国は正確な軍事費を公表していませんし、また経済成長と軍事費は必ずしもリンクするものでもありません。

戦争の原因について多くの研究者が分析し研究し続けていますが、そもそも定義が曖昧でいまだ結論がでていません。戦争~紛争には様々な種類と数があり、分類するのでさえ難しそうです。

しかし誤認が戦争の遠因であるとする論やそのような分析もありますので、軍事費の透明性の確保によって相手に脅威を与えない仕組みや努力は必要です。

民主主義を採用している国家の殆どは内訳を公表していますが、覇権的な国は積極的に公表しない傾向にありますので、国際的なルールづくりができればいいのですが、国家よりも上位政府が無いアナーキーな現実世界では、ハードルが高い目標かもしれません。