海洋立国論

勉強のつもりで書いています。

軍事力の使い方の分類

「軍事力」と言ってもその使い方がいくつかに分類されています。今回はそのうち「抑止」「強要」を概観します。

多くの研究がされており言葉の定義やその範囲など細かな点では不一致がみられるものの、大まかにはほぼ同じようですが、この分野では2005年にノーベル経済学賞を受賞したトーマス・シェリング博士の著作「紛争の戦略」(ゲーム理論を使った研究)が有名です。 これには「力ずく」もあるんですが今回は省きます。

 

以前にも書きましたが、最も研究されており重要なのが「抑止」です。相互のバランスをとって有事に至らないようにするものです。軍事力という強制力をもって現状維持をはかるものです。

これにはおおきく3タイプの分類があります。(線引きが曖昧で厳格に分類できない場合もあります)

 

〇懲罰的抑止・・・「攻められたら反撃するぞ。」

 例えば、核による相互確証破壊。核攻撃するなら核によって反撃するので相手は手を出せない。(暴発されたら世界の破滅)

 日米安全保障条約なども該当しますね。「日本を攻めたらアメリカが反撃するぞ」ですし、今回のトランプ大統領訪問では「アメリカは令和初の国賓として来日し天皇陛下と会談するほど強固な同盟関係だ。だから日米安保は信用性が高いぞ」となり、抑止力を間接的に向上させています。紙切れの約束が何の役に立つんだ?と言う人がいますが、「もしかしたら・・・」が重要なんですよ。

 

〇拒否的抑止・・・「攻めても無駄だぞ。」

 例えば、イージスアショアなどのミサイル防衛システム。ミサイル攻撃してもかたっぱしから迎撃され効果が上がらず無駄になる。コストもかかる。そのうえ攻め手は国際的な非難を浴びるのは必至。

でも拒否的抑止にはお金がかかります。全て想定される事態に対応する装備や人員などはとても賄えるもんじゃありませんし、装備の更新や教育訓練費用も大変です。そのため、脅威度を判定し優先順位をつけて対応します。

過去、米ソ冷戦時代にはソ連の脅威が高かったため、北海道に陸上自衛隊戦車主力が駐屯していましたが、順次整理縮小廃止され、今は対中国に備え、水上艦艇の拡充や水陸機動団の創設など南西諸島防衛に向けた改変がされています。戦車ファンにとっては若干寂しいですが。

 

〇報償的抑止・・・「止めたらご褒美をあげよう」(いやなら武力で・・ゴニョゴニョ・・・)

 例えば、1994年の米朝枠組み合意。核開発の代わりに軽水炉を作ってあげたり、原発が発電できるまで発電用重油を供給してあげようとしました。しかしこれは失敗した好例?です。その間に核開発を極秘に進められてしまいました。

などがあります。

 

それと対のように言われるのが、「強要」と呼ばれるものです。

例えばA国がB国の現状に対し、A国が軍事力を強制力として使用すると脅す威嚇をおこない、B国の現状変更を要求、B国は威嚇されることでやむを得ずA国の要求に従った行動を選択するものです。

一般的に外交交渉とともに併用される手段でありA国の要求を達成するには、B国の行動が必要な場合には効果的な戦略とされています。

ただし軍事力行使や威嚇がどの程度なら「強要」に該当するのかなどは、明確な定義がないようです。

これにも「懲罰的」「拒否的」の2分類があるとされています。

〇懲罰的

B国がおこなう行動で得る利益以上のコストを課すぞとA国が脅すこと。

この場合はB国が課されるコストを受け入れてしまえば、A国はその行動を阻止できない場合があり得ます。そうなった時には、A国は実力行使にでるか諦めるかになってしまいますし、実力行使に出た場合でも、その強度次第ではA国にも相応のコストがかかり損得勘定が難しくなります。

〇拒否的

B国が選択した行動でB国が得る利益を得られないように阻むぞと脅すこと。

これによってB国の行動を変える事を目指します。

 

ざっと見ただけでも武力行使に至る前には多くの戦略が考えられます。

武力行使はどの国にとってもコストがかかるものであり避けるべきものでしょうが、どの線を超えたら武力行使をすると判断するのかは、国家の事情、国際関係、経済、文化、政治などの諸条件が左右しますので、明確な決まった閾値がある訳ではありません。

ですから、平時こそ正確な情報分析、それに基づく適切な軍事力整備、官民それぞれのあらゆる交流や外交努力、経済の深化などあらゆる手段を講じなければなりません。

特に我が国では法、資源の海外依存度の高さ、自衛隊の戦力などにおいても使える手段は限られます。

この点を理解していないと、丸山穂高議員の発言になります。その点で彼は安全保障を語る資格のある議員とは思えませんので、前回「辞職」を求めました。それもクリミアを併合するようなロシア相手に・・・