海洋立国論

安全保障・軍事について自分自身の勉強のつもりで書いています。

”狂犬”マティス国防長官の辞表

あまり時事ネタ的なものは書かないのですが、どうしても書きたいネタができたものですから。

 

先ごろアメリカのマティス国防長官が辞表を提出しました。これに対してトランプ米大統領は「更迭」の形をとることにして、マティス国防長官の希望する2019年2月28日を受け入れず、2019年1月1日としました。 

トランプ大統領の考えは分かりませんが、強固な同盟関係である日米同盟の行き先も左右するかもしれない人事ではないでしょうか。

マティス国防長官の辞表は公開されましたので、日本語訳もあります。以下から読めます。

マティス国防長官「同盟国に敬意を」 辞表を公開 (写真=ロイター) :日本経済新聞

 

辞表全文(赤字は筆者による)====================

親愛なる大統領閣下

私は第26代の国防長官として国防総省の職員らとともに米国の国民や理念を守る職務を担当してきました。

2年間で国家防衛戦略に盛り込んだいくつかの重要な目標に向けた進展があったことを誇りに思います。たとえば、国防総省の財政基盤を整えたり、軍の機動力や攻撃力を高めたり、高いパフォーマンスを実現するために省の働き方を変えたりしたことがあります。米軍は紛争で勝利し、世界での強い影響力を維持する能力を提供しています。

国家としての強みは同盟やパートナーシップという唯一無二で包括的な概念と緊密に結びついていると私は固く信じています。米国は自由な世界において不可欠な国でありますが、同盟国との強い同盟を維持し敬意を示さなければ、国益を守ったり、国益を追求したりすることはできません。あなたと同じように私も米軍は世界の警察ではないと言ってきました。その代わりに、同盟国に効果的な指導力を示すことを含めて(同盟国の)共同防衛に向けて、米国が持つ全ての手段を提供する必要があります。民主主義を重視する北大西洋条約機構NATO)29カ国は2001年9月の米同時多発テロ後に我々に寄りそって戦うと約束してくれて(同盟の)強みを証明しました。(過激派組織の)イスラム国の壊滅に向けた連合軍ももう一つの同盟の証しです。

同様に戦略的利益が我々の利益と衝突することが増えた国に対しては、我々のアプローチを断固かつ明確なものとしておく必要があります。中国やロシアが自国の利益を追求するために経済・外交・安全保障に関する他国の決断を否定し、権威主義的な政治モデルと整合的な世界をつくりだしたいと望んでいるのは明らかです。だからこそ、我々は共同防衛に向けて、あらゆる手段を尽くさなければならないのです。

同盟国に敬意を払い、悪意に満ちた者や戦略的な競争相手に注意を払うべきだという私の考えは、こうした問題に取り組んだ私の40年以上(の経験)に基づき、培われたものです。我々の安全保障や繁栄、価値観に最も資する国際秩序を推進するためにできることは全てやるべきです。我々は同盟という結束によって強くなるのです。

あなたは、これらの点について、あなたの考えにより近い人物を国防長官に据える権利があります。だから私は身を引く時だと考えています。私の任期の最終日は2019年2月28日とします。この日付にしたのは、次期議会の公聴会や2月のNATO防相会合で、国防総省の利益を適切に説明し守っていくだけでなく、後任が指名され承認されるために十分な時間を確保するためです。さらに来年9月の米統合参謀本部議長の交代に先立って新しい国防長官に移行し、省内の安定を確かなものにするためでもあります。

私は215万人の軍人や73万2079人の国防総省文民が職務に集中し、米国民を守るための不眠不休のミッションを遂行できるよう円滑な移行に最善をつくすことを誓います。

この国や軍人たちに仕えることができて大変感謝しています。

 辞表ここまで======================

 

マティス国防長官はバリバリの軍人だっただけあって、国家の安全はどのように保たれているのかを十分理解し活用し評価している人物ですね。がちがちのリアリスト。トランプ政権にあって唯一(日本にとって)頼りになる人物だったと思います。

アメリカが片務的な軍事負担を負うのではなく、日米同盟やNATOを強化・重視し、中露やIS(イスラム国)などのテロ組織などの不当な行為は同盟国との共同防衛を行う事が重要で、それがアメリカの国益にも叶うと。その為に同盟国には敬意を表すべきと言っています。でも大統領とはその点で食い違うので辞めますということですね。見限ったのでしょうか・・・

アメリカ】は挑戦国である【日本】に勝って覇権国家の地位を確立し、冷戦では【ソ連】を退けましたが、次は【中国】がその挑戦国となりました。これを退けなければ覇権国としての地位は危ぶまれますし、無理やり維持しようとすれば戦争になります。この状態を【トゥキディスの罠】と呼びますが、そうなれば第二次世界大戦の惨劇の比ではありません。かといって中国がとって代わると従来の自由主義的価値観は否定されるでしょう。

アメリカは【西側】に太平洋が広がり、ハワイ、グアム、日本を前線基地とし、【東側】には大西洋があり、NATO諸国が防衛ラインを引いています。地政学的に極めて有利な国家ですが、日本やNATOがあってこそその地位が確立されています。

我が国に限って言えば、日米同盟があるからこそアメリカは防衛ラインを米本土から遠ざける事ができました。我が国は米軍の強大な軍事力を「矛」として活用できたので、片務的な日米安保条約の中で自衛隊は「楯」としての役割の一部を負えば良く、結果的に憲法違反することなく低コストな防衛費で国家を維持できました。(しかしこのあたりは新たな「防衛計画の大綱」でも今後どうすべきかが語られています)

 

兎に角も同盟と協調重視のマティス国防長官の退任は非常に残念でなりません。

 この人事が負の世界への出発点だったと後世が記録しないですむようになる事を願います。「日本は世界と繋がっている」と語るのなら、最も繋がりの深いアメリカの国防戦略は注視せざるを得ないでしょう。これは日本に最も影響するのです。