海洋立国論

勉強のつもりで書いています。

そうだロシアだ。

このブログにほぼ登場した事が無いのがロシア。

中国、北朝鮮との軍事的摩擦がニュースの大半を占めていますが、ロシアにはもっと注意を払わなければなりませんね。全く不勉強で詳しくはないのですが、それでも幾つかの課題は感じています。

ソ連の崩壊以降、ロシアは経済的に困窮し軍事的には脅威が小さくなっていましたが、プーチンが大統領になった頃から、新興国のエネルギー需要の増大などを背景に経済力が復活しました。エネルギー資源に頼った経済開発は減速してはいるものの、一時の困窮ぶりを考えると、経済力の回復に伴って大国ロシア復活への道を進んでいるようです。ロシアは国連の常任理事国であり、アメリカと対抗できた過去の栄光があり、広大な国土には未開発のエネルギーは未だ豊富です。大国意識が高いのも頷けます。

ロシアについて整理しますと、州や市、地方、共和国など多くの構成体からなる連邦制国家ですが、その権限は構成体によって異なっています。

 

ロシア(プーチン大統領)は焦っているように思えます。

ロシアにとっては中国も商売敵ですが国境紛争は大幅に譲歩して確定させていてるので、当面の脅威は欧州諸国、NATOとアメリカ。日本なんて眼中にないと思いますが。

ソ連時代は本国の周囲は身内とも言える連邦国家群で固め、その周囲は経済的、軍事的影響力の及ぶ東欧諸国。この緩衝地帯ともいえる周辺国がロシアを守っていました。ワルシャワ条約機構だったり、コメコンなどの軍事的・経済的枠組みです。しかしソ連崩壊後、東欧諸国は次々とNATOやEUに加盟し、それに伴いそれらの国々が提供していた工業力、技術力、労働力などがロシアの元を離れていくことになりました。追い打ちをかけたのが温暖化で、一面では北極海の氷に守られていた国土が温暖化で氷に閉ざされる期間が短くなり(場所によれば凍結しない)艦船の侵入が容易になりつつあります。核報復能力として重視していた、戦略原潜は氷の下に潜る事で対潜哨戒から逃れていたものが、水上艦~航空機による発見を容易にしかねないようになり、これらによって相対的に西側諸国に比べて立場が弱くなりました。軍事力はソ連時代と比べて兵員数は激減しており、大規模作戦に必要な演習も足りず(最近は増えつつある)、近代化では特にネットワーク化はかなり立ち遅れているようです。

その為、あの手この手を使って国際社会に自国の行動が安全保障上正当であることを訴え、NATOの東方拡大による脅威、アメリカの一国独裁による世界観の横暴を訴えつつ、一方ではシリアに介入しアサド政権を支援し、ウクライナからクリミアを奪い、(クリミアはロシアが軍事侵攻でウクライナから独立させ、その後連邦に編入したもので力による現状変更は到底認めることはできないとするのが、NATOや日米の見解です。)大相撲の優勝力士”栃の心”の祖国ジョージアグルジア)とは以前に戦闘をしてまでNATO加盟を阻止(事情はもっと複雑ですけど)自国有利の地理的条件を固めようと躍起になっていると思います。

 

ソ連時代にはアメリカに対する核の報復力を維持する為に、北極海弾道ミサイル搭載原子力潜水艦(SSBN)を北極海に常時配備していましたが、ソ連崩壊以降、資金が無いため整備もできずにいました。その潜水艦戦力を復活させるべく順次新造~配備しており、核報復能力は復活してきています。潜水艦運用は中国と異なりノウハウと経験は豊富なので、これは新たな脅威となります。

沿岸域にも同時に多数の目標に対する攻撃能力を持つ長射程の地対空ミサイルシステムS-400を配備したり、対艦ミサイル、レーダーの設置などもすすめています。これはロシア版A2AD(接近阻止・領域拒否)です。

近年復活しつつあるロシア軍はシリアを実弾演習の場として使う事で、(つまり民間人も犠牲になる)兵器の能力、練度、指揮系統、運用などの各種能力向上を図っています。一時は鳴りを潜めていた空中パトロールも増加し米軍機に頻繁に異常接近したり領空侵犯も増加傾向になります。

このような事を考えた時にいつも思うのが、日本の北方領土です。ロシアの視点から考えた時、ロシアが4島どころか一部でも返還するとはありえないのではないかと。国後に対艦ミサイルを配備し戦闘機の展開や日本への領空侵犯の数も増加傾向です。また北方領土にも新鋭地対艦ミサイルを配備。

プーチン大統領安倍総理との会談で「北方領土はロシアのもの」と明言したと伝えられています。またいくら「法による秩序」を言ったところで、武力による現状変更と実効支配は世界中で起きており、そうなった時にはもう手遅れで取り戻せないのが実態です。

尖閣諸島・沖縄は中国が狙い、竹島は韓国に占拠されたままであり、北方領土は交渉すらできないまま。取り戻すことは容易でなく、ましてやこれ以上占拠されないという保証はどこにもありません。我が国が考えなければならない事は、効果的に相手の能力と意志を最小化することです。それは抑止力であり経済力であり外交ですが、夫々に限界があり見極めなければなりません。外交無き軍事力の向上は緊張を高めますし、軍事力の向上には経済力が必要ですし、安全が担保されなければ経済力も向上しません。

国際社会は優しい人で溢れている訳ではないのです。

中国が尖閣に武力侵攻をし実効支配を確立した時、世界は日本の味方になってくれると思いますか?極東の島国の小さな無人島と中国の巨大な消費市場を天秤にかけた時、その経済的メリットを無視しても日本に味方する国がどれだけあるでしょうか。

安全保障理事会で「武力侵攻」を非難する決議案がでても、拒否権を持つ中国が拒否して決議は採択されず、国連による「法」の正当性は得られないでしょう。

自衛権の範囲で対応するとしても、占領された土地を取り返す作戦ほど難しいものは無く、双方に戦死も多く出るでしょう。それを覚悟して奪還作戦を決意できる政治家はいますか?世論はその決意を支持しますか?

やはり、武力侵攻を躊躇するだけの能力と法整備、意思表示は必要であり、日本と経済的・技術的に交流しておくメリットを米欧印豪などと共有する仕組みは必要だと思います。それが憲法改正であり(それに伴う法整備)、TPPであり、防衛力整備であり、多国間合同軍事演習(信頼醸成処置)です。

残念ながらまだこの世界は互いを信用できる域までは到達していません。いつかはそうなると信じていますが。