海洋立国論

勉強のつもりで書いています。

海洋立国としての必要なこと(1)

広大な海を持つ日本

日本の国土面積は狭いですが、世界第六位の広いEEZ排他的経済水域)を持っていますし、資源や貿易はほぼ全てが海運に頼っています。447万㎢・・・広すぎてピンときませんが。

東には広大な太平洋があり、誰がどう見ても間違いなく「海洋立国」です。

EEZを簡単に言うと、経済活動・資源管理的には領海と同様に扱うが、国際間の利用(飛行や無害通航)などについては公海と同様に扱うということです。国連海洋法条約では、領海と排他的経済水域を除く海は「公海」ですから、それ以外を勝手に自国の海とする事は禁じられています。漁業資源と共に海底資源の埋蔵量も豊富と考えられている東シナ海では中国とのせめぎ合いも激しさを増しているところです。

 

FON「航行の自由」作戦

国際的に認められた海域や海峡を軍艦で通過しすることで、特定の国の一方的な主張を認めない行動をアメリカは各地で不定期に実施しており、これを「航行の自由」作戦(FON)と呼んでいます。南シナ海の中国の過剰な領有権主張に反発し、時折無通告で行っている「軍艦の無害通航」はこの「航行の自由作戦」の一環ですが、アメリカはそれ以外の国・海域にも行っています。台湾もイランやインドも。勿論日本に対して実施した事もあります。つまりFONは多くの国を対象としていますが、これは対中国だけに実施すれば中国を必要以上に刺激することになるため、その点はアメリカも配慮しているようです。

 

サラミスライス戦略(サラミ戦術)

現在中国が周辺国に対して実施しているのが「サラミスライス戦略」と呼ぶものです。「サラミスライス戦略」とは、サラミソーセージを丸ごと1本盗むとすぐにばれますが、少しづつ削り取るように盗んでいくとなかなかばれないことから例えられました。同様にして中国は領土領海を削り取る戦略を採用しているとされています。(サラミ戦略は領土に限った戦略を言う訳ではありません)

プロスペクト理論

この戦略の怖い点は少しずつなので、状況に慢性化し、慣れが国民の間に蔓延していく点です。日本でいえば尖閣に中国公船が侵入しだした頃は毎日報道もされましたが、近頃ではさほど騒がれ無くなりました。例えば尖閣のようなちっぽけな無人島の取り合いで「戦争」をするのは割りにあわないとして、譲歩したり看過しているとそこを足掛かりに次は「与那国島」「多良間島」「西表島」へと進むかもしれません。そこで慌てて「我が国に返せ」となるのですが、こちらは既に実効支配されている状態からの外交交渉になります。既に現状に対する参照点が変更されており、(4島減)外交交渉で人の住む「与那国・多良間・西表」の3島を取り返したとしても、「尖閣」は無人島であることもあって実効支配を許してしまうかもしれません。経済学の「プロスペクト理論」では、この参照点からの差を重要視しており、4島減から3島を取り返すと「儲けた」気分になりかねません。もっと取り返そうとすると「戦争」になると脅かされると「妥協」する世論も生まれます。民主国家では世論は強力ですから政府は動けないかもしれません。また、尖閣の取り合いで米軍は関与してこない可能性もあります。1988年に南シナ海ベトナム海軍と中国海軍の軍事衝突に関与せず、その後も南シナ海岩礁の占拠にはさしたる関与をしませんでした。その結果はご存知の通り南シナ海での中国の行動を許すことになっています。

 

だから譲歩できない

この視点から考えても領土問題は最初から一歩も譲ってはならないこと、一義的に自国で対応することが肝要です。言い換えれば「領土」はこうやって拡張するのです。正面戦争によって奪うなんて前時代的な事はしません。そうやって中国が侵攻してくると思うのは間違いです。小さな紛争程度で収めつつ削り取るのが上策です。また日中は経済的にも関係が深いうえ、現段階での武力侵攻は世界中の反発を招きます。この点をしっかり認識をしておきたいと思います。実効支配すれば「こっちのもん」であって、それを取り返すのが容易で無いのは「北方領土」「竹島」で実感していると思います。

 

マハンという人物

中国では近年アルフレッド=マハンという、アメリカ軍人でシーパワーの研究者の書籍がよく読まれているようです。マハンは海上権益確保についての研究で知られており、日本では秋山真之日露戦争時の海軍参謀)などは非常に影響を受けました。海洋進出を国是とする中国で「シーパワーの古典の名著」が読まれるのは理解できます。我が国の指導者層はどうでしょうか。いささか心配ではあります。明治政府や当時の海軍はシーパワーの重要性を認識しており、海軍力の急速な整備を急ぎました。

 

日本は世界第六位の広い海域を保護(権利の主張)するために相応の海軍力が必要になりますが、その点についてはまた。