オレ様的夜ネタ ~平和を守るために~

安全保障・軍事について自分自身の勉強のつもりで書いています。

ガス田開発と尖閣諸島

アメリカの大統領選挙で盛り上がってたので、すっかり影に隠れていましたが、東シナ海日中中間線付近で中国がガス田開発をさらに活発にしています。
一部報道もありましたし、官房長官の記者会見でも取り上げられていました。

中国のガス田開発の狙いはなんでしょう?エネルギ―確保でしょうか。
もし十分に埋蔵量があって生産コストが低ければそれが主目的だと思えますし、我が国も積極的に開発すべきではないかとも思います。石油もあるとの調査結果もあります。

しかし、我が国は「共同開発」との合意をしつつも、積極的にはガス田の開発は行っていません。
ガスはプラントで液化しタンカーで輸送する、もしくはパイプラインで運ぶことになりますが、プラント上での液化は高価な設備になりますし、パイプラインは途中の「沖縄トラフ」が問題です。

国の調査によると埋蔵量がそれほどでも無いこともあり、取り合うほどのエネルギーでは無いとの判断でしょう。
しかし、後述しますがこれは間違いで係争地であればこそあらゆる権利主張のためにはそれなりの活動はしなければなりません。

対して中国はかなりのコストをかけてプラント建設をおこなっています。日本と同様にコスト高のガスになるかもしれないのに。

この東シナ海でのガス田開発ですが、いわゆる「日中中間線」でせめぎ合っています。

海底資源もいわゆるEEZ排他的経済水域)によってどこまで使えるかは決まっていますが、これは実は結構いい加減な決め事です。

国連海洋法条約(UNCLOS)の締結国はこれに従い、自国のEEZを確定させるのですが、揉めにもめて妥協の産物みたいな一面もあるのでグレーゾーンが多い条約です。

おさらいすると基本は、沿岸から200カイリ。
関係国の沿岸からそれぞれ200カイリ以下しか海がない時は、その中間をとる(中間線論)。
もしくは大陸棚が延びていたら最大350カイリまで(大陸棚自然延長論)。

問題はこのどちらでも解釈できる場合にどうするかが明文化されておらず、関係国の協議で決着しない場合は、国際司法裁判所の裁定に従うことになります。
しかし裁定と言っても強制力が無く、提訴そのものも係争国同士が提訴に合意しなければなりません。

南シナ海で中国が無視したのは「仲裁裁判所」であり、この「国際司法裁判所」とは異なり、一方の(今回はフィリピン)提訴で手続きが進められます。
この件は中国が「自衛権」「安全保障」「エネルギー政策」を絡めており、今後新たな展開があるでしょう。裁定を無視した例は他の先進国でもあるので、中国だけが「無法」とは言えないかもしれません。

例えば「IMF」に対して「AIIB」を作ったように、アジアでのアジア版国際司法機関を作り、自国有利な裁定を出すなど。そうして正当性を保とうとします。

また強引な現状変更をしておくことで、後の交渉により相手に多少譲ったとしても、中国としてはプラスです。
フィリピンやインドネシアなど相手国は軍事的、経済的にも弱小であり、飲まざるを得ない条件になるでしょう。
中国にとっては、プロスペクト理論でいうところの参照点の移動が達成されるのです。次の一手もこの変更後の参照点から打てるので有利です。

そして東シナ海はまさに同じような係争地です。ガス田付近では日本は「中間線論」中国は「大陸棚自然延長論」を主張しています。

問題はコスト高にも関わらずなぜ中国がガス田開発に積極的であり、「大陸棚自然延長論」を主張し、問題解決のために国際司法裁判所(ICJ)に持ち込むことに同意しないのかです。

ガス田の埋蔵量に関しては不確定な要素もあり、今後豊富なガスが見つかるかもしれないことはあり得ます(それでも採算があうのか?の疑問は大いにあります)。大型のプラントはヘリポートや対空・対水上レーダーなどを備える事で、軍事転用可能なプラットフォームとして使えます。

ICJでの裁定を拒否する理由はなんでしょうか?構造的にには沖縄トラフは「海溝」ではなく「背弧海盆」と呼ばれ、フィリピン海プレートの引きこみによりユーラシアプレートが反発して出来上がった「海の盆地」であり、「大陸棚自然延長論」には無理があります。

過去にいくつかのICJの裁定でも「中間線論」を軸にしており、中国もベトナムとはトンキン湾での係争において「中間線論」で境界を確定しています。
そうなるとますます「日中中間線論(状況によって必ずしも中間では無い)」となるのですが、そうなると「尖閣諸島」は日本のEEZ排他的経済水域)に確定されます。
不自然な主張、コスト高の開発をしてでもガス田海域は係争地(グレ―ゾーン)にしておいたほうが、後々の尖閣諸島領有には有利です。

尖閣諸島には中国の公船(軍艦ではない)の接近が常態化しており、中国はあの手この手で領有化を目指しています。 これも領域をグレーゾーン化する効果があります。世界には「係争地」として認識されます。
実効支配地域をグレーゾーンと現状変更することは、まさに「参照点の移動」です。

東シナ海のことなど、アメリカやEU各国からすれば「極東地域」のひとつの出来事。
日中間のもめ事に過ぎず、日本が中国の不当性をいくら訴えたところで、自国に不利益が生じ無い限り動く事はありません。世界中では同じような係争が常時あり、それは自国で解決する努力をするのが世界の常識です。

アメリカも中国を第一列島線に封じ込めておけるだけで十分なので、経済的な結びつきが深い中国と簡単にはコトを構えることはしないでしょう。

我が国もこの点を見据えてガス田に関しても「共同開発の合意」に基づいた活動や中国へのデータの提供などを厳しく要求すべきです。
尖閣においても海保や自衛隊のパトロールや監視などしっかりと自国領土の主張は淡々と繰り返さなければなりません。領土は1ミリとも渡さない。この決意を世界に伝え続ける必要があります。

こういうことを書くと「戦争」を想像する人がいますが単純で困ったもんです。
如何に戦争にしないように戦うかが大切です。

さて中国がなぜ「尖閣諸島」にそれほどこだわるのかは回を改めて。

※余談ですが、常設の「国際海洋法裁判所」というものがあり、「国連海洋法条約」に基づいた司法解決をはかる機関があります。そこでの分担金は日本が最大の拠出国。(約15%2億円)

※地図はGoogleマップに必要な項目を書き加えたものです。

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