海洋立国論

勉強のつもりで書いています。

MRJさん、お先に失礼。

先日、MRJ(ミツビシリージョナルジェット)が初飛行し話題をさらいました。日の丸の翼の復活だ!と。美しい機体ですが実はそれよりもちょっと前に。。。

海上自衛隊には対潜哨戒機(潜水艦を探すのを主な任務とする航空機)があります。現用の防衛装備品はP-3Cロッキード社製)という米国からのライセンスを受けて生産している航空機がありまが、調達開始からおよそ40年。機体の老朽化に伴い順次退役をはじめました。

そこで自衛隊では完全国産の新型機を開発し、2015年度から本格的な調達を開始しています。(ただし搭載されている電子機器などの一部は軍事上の事情もあり、完全国産という訳ではありません。)

この機体はP-1と呼ばれる対潜哨戒機。本年度の予算によると20機の調達です。

実は国産ジェット機というカテゴリーで、P-1はMRJよりも先行しているのです。

機体のサイズはMRJをちょっぴり大きくしただけですが、その能力は高いものになりました。
比較してみます。(P-1:MRJ)で表記します
エンジン数はP-1が国産4発に対してMRJが米国製2発。航続距離は8,000kmと3,300km。最大離陸重量は80トンと40トンとなっています。

民間機と軍用機なぜ同じような航空機でこれほど違うのか?というのは、海上を長時間哨戒飛行する哨戒機は被弾やエンジントラブルがあってもすぐに着陸できない事が考えられます。その為に余分にエンジンを搭載し「生存性」「冗長性」を高めています。
また膨大な電子機器を搭載しているため、その電力を確保する意味もあってエンジンが多いのです。

そして航続距離はそのまま任務に影響します。3,000km程度だとすぐに着陸もしくは給油する必要があります。これには燃料タンクを大きくしエンジンの効率をあげて長時間飛行します。

また最大離陸重量はP-1が倍です。これはP-1の任務には軍用機ならではの重要なものが考慮されているからです。

それは・・・見つけた敵を攻撃する事。
そのため、翼下には「ハードポイント」と呼ばれるものがあります。ここには対艦・対地ミサイルを吊り下げます。爆弾倉もあり、そこに対潜爆弾、短魚雷などを搭載します。

また、機体の下部には穴が沢山ありますが、そこからは「ソノブイ」と言うソナーやマイクを組み込んだブイが投下されます。海中の潜水艦を音で探し、探知したらその位置を母機に送信します。

機体尾部の棒のようなものは「MAD」と呼ばれるもので、磁気を探知し潜水艦を探します。仕組みはというと・・・潜水艦は鉄(高張力鋼)の塊。艦体は磁気を帯びますし、地球の磁場を少し狂わせるため、その狂いを探知し発見しようというものです。
(このため、潜水艦はドックに入ると艦体の磁気を除去する作業をおこないます。またアメリカのシーウルフ級潜水艦は磁気を帯びないチタン製という高級品)

これ以外にも多種多様なレーダーと、各種分析機器、コンピュータ、データリンクシステムがこれでもかと装備されており、「飛ぶ電子機器」です。
操縦系統はフライバイライトと言われる技術で、光ケーブルを配し各種機器を制御します。従来はフライバイワイヤというものが主流で、いわゆる電線。光ケーブルによって電気ノイズと重量が軽減されました。

開発参加企業は大手だけで、三菱重工富士重工・NEC・東芝・IHI・住友精密工業三菱電機島津製作所 と多岐にわたり、その下請け企業たるや・・・MRJも同様です。

航空機産業や国産化ということはそれだけ多くの産業を生み出し、技術を蓄積させます。

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