海洋立国論

勉強のつもりで書いています。

他に方法は無いのか

自国の安全を確立する方法は「集団的自衛権」の行使以外にも色々あるはずです。
勇ましい方々は「核武装すべき」や「自衛隊を強化し個別的自衛権で対応すべき」と言う声も聞きます。逆には「憲法9条に従い丸腰になるべき」や「個別的自衛権のみ(従来通り)で良い」と言います。核武装を唱える人は私の周囲にもいますし、憲法9条堅持・軍備破棄など様々です。そのなかで今回は「核武装論」を検証してみたいと思います。

核武装論について
核による抑止力を期待し核兵器(核弾道ミサイル)を保有することを目指すべきだと言う声があります。
確かに、我が国は民生用ロケット技術は世界最高水準に達しています。完全自国生産可能でイプシロン、H2-Bでの豊富な運用実績などもあります。原発は稼働しており濃縮技術もあります。
しかしこの「核武装論」は「丸腰案」同様、極めて非現実的です。理由は以下が考えられると思います。

1.核拡散防止条約(NPT)を批准している。
条約では核兵器保有している5か国(米英露中仏)のみが認められており、不公平であるとの意見もありますが、不公平だろうとなんだろうと、我が国は批准しています。批准=不公平でも受け入れたということです。
但し「日米安保」が効力を失うなど深刻な事態に陥った場合は、脱退する権利を留保しています。逆説的に言うと「核武装」には「日米安保」の破棄となり、米国との同盟関係を解消せざるを得ません。が・・・米国は自国の安全保障上、我が国を「前線基地」とし「不沈空母」として活用したいので、「日米安保」は解消させません。しようとするとあらゆる圧力をかけてくるでしょう。米国は我が国に相応の負担をこれからも求めて来るでしょうが、核保有だけは認めることはありません。万一我が国が親中や反米政権になったら?核はそのまま米国への脅威となります。
またNPTを脱退し国際原子力機関(IAEA)の査察を拒否することになると、発電用の核燃料の輸入もストップします。

2.核弾頭の開発ができない。
ロケット技術は一応ありますが、そもそも核弾頭を製造できません。
正しくは製造しても「実験」ができません。この国土のどこにそんな実験ができる場所があるでしょうか。核を持つことはアメリカとの摩擦も覚悟の上でのこと。米国本土での実験もできませんし、国際的な非難は巻き起こります。実験の無いままですと核弾頭の有効性が問われ「核抑止力の保持」を他国に疑われることになり、核の効能が低減します。

3.軍拡競争となります。
世界で唯一の被爆国として、核廃絶を訴え続ける以上、その言葉の責任があります。それなのに我が国の経済力と防衛力が「核兵器保有」すれば周辺国に「脅威」を与え「口実」を作ります。その結果、軍拡競争に突入することになります。その覚悟も無しに唱える核武装論は無責任です。周辺国の脅威に備えるつもりが、かえって脅威を増すことになりかねません。

4.報復力の確保ができるのか。
核弾道ミサイルや戦術核巡航ミサイル保有した場合、発射施設は先制攻撃(初撃)をうける可能性が高くなります。米国と異なり、日本は北朝鮮・中国などの「(公式・非公式に)核攻撃の可能性を排除できない国」と近距離に接しています。相手国の発射を察知し先制攻撃によって発射を阻止できるのか、また完全な迎撃ができるのかといえばほぼ不可能です。
核抑止論は以前にも書きましたが「報復能力」を保有しなければ成り立たず、報復力確保の為に移動型や戦略原潜も含めての装備が必要になります。それには膨大なコストを支払わねばなりません。
そのコスト負担は従来は「安保条約」によって米国が大半を負担していますが、我が国はその負担増に耐えられるのでしょうか。

被爆国でもあるためでしょうが、「核アレルギー」と言えるほど過敏な反応をします。政府も勿論多くの国民も「核兵器廃絶」を願うなら、理性的に核兵器についての勉強はしっかりと行なうべきです。
そうしてこそ正しい知識が広まり、安易な核保有論に歯止めをかけることができるからです。

他にも多くの問題がありますが、要は「国際世論と圧力により実現不可能」です。核を持つことを宣言したとたん(核についての検討をした段階でも)世界中の非難を浴び「経済制裁」を受けます。それに耐えて核武装する事はできません。
そう考えると、「集団的自衛権」を保有し「日米安保条約」に基づく同盟関
係を維持するほうが、現実的かつ安価です。

(写真はパトリオットシステム。航空自衛隊主要装備より引用)

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