海洋立国論

勉強のつもりで書いています。

DDH-183「いずも」就役

先ごろ就役(引き渡し・護衛艦旗授与)したヘリコプター搭載護衛艦 DDH-183 いずも
退役した「しらね」の代替ですが、時代に合わせた運用を図るため、艦体は全く異なっています。
全通甲板(所謂空母の形状)を採用した護衛艦。前級の「ひゅうが」「いせ」に比べて、全長で約50m 基準排水量で6,000トンほど大型化しました。
(よく比較されるのですが、旧海軍の戦艦大和と全長はさほど変わりませんが、排水量は約1/3となっています。)

空母形状ですが、近年は各国ともこの船体を採用する場合が増えているようです。
巨大な格納庫は汎用性に優れ、大型車両の搬送や、航空機(ヘリコプター)の整備などに活用されます。また、病院船としての機能、大量の水や燃料を補給する補給船としての機能も付与されています。(東日本大震災時には、「ひゅうが」は物資の搬送のみならず、格納庫に風呂を設置し被災者に入浴する機会を与えた)

しかし、護衛艦(軍艦)ですので、主任務としては、SH-60K(哨戒ヘリコプター)を運用し、潜水艦の探知・追尾を行います。

イージスシステム搭載護衛艦など他の護衛艦とは異なり、艦の戦闘能力自体は低くなっており、「ヘリコプター運用」に特化した艦となりました。 そのため、建造費は前級に比べても安くなっています。(個艦防衛能力といいます
運用は「艦隊」の中心となり対潜哨戒(潜水艦を見つける)を主任務として、敵の攻撃には防空艦(イージスシステム搭載護衛艦やあきづき型など)が担うことになります。
つまり海上自衛隊が想定する「脅威」は潜水艦であるということです。
(潜水艦については以前書きました)

第一甲板(見えている平たいところ)は、SH-60Kが5機同時に離発艦できるようになっており、舷側(右舷)に設置されたサイドエレベータは大型機の収容も可能です
甲板強度は「ひゅうが」と同様に「オスプレイ」の着艦も可能ですが、耐熱処理がされていない為、「F-35B」などのS/VTOL機(垂直や短距離で離着陸するジェット機)の運用はできません。一部報道では(恣意的?)に戦闘艦としての取り上げられ方がありましたが、無知にもほどがあります。

戦闘機を搭載するには改修すればできると言いますが、上部が重くなると復元性が悪くなり運用に不都合をきたします。乗員の訓練の問題もありますし、なによりカタパルト技術は「アメリカ」の専売特許みたいなもの。
その代わりに近年は艦首部分に「スキージャンプ勾配」という傾斜をつけて、S/VTOL機の運用をしている国がありますが、「いずも」は艦首水線下に極めて大型のバウソナー(艦首に巨大な音波探知機)があり、フロントヘビーになります。
さらに、改修期間中は対潜哨戒網に穴ができる事になります。
そもそもF-35Bは未だ納入されていません。
現実的な選択ではありません。

ちなみに「空母」や「強襲揚陸艦」「駆逐艦」など呼称は各国でマチマチで、国際的な統一された艦種の区分基準がある訳ではありません。
一見同じような艦体をしていても、国ごとでドクトリンが異なるため、運用方法も異なります。
わが軍・自衛隊では「敵性国の侵略を未然に抑止し、侵略があった場合には、いち早く発見し撃退する」ことが任務で、上陸や空襲・空爆を行える装備はありません。
一番怖いのは、知らないのに(判らないのに)危険視し、デマや適当な報道などで踊らされること。
これも我が国には最高学府で軍事学が無いことや、軍事について語ること、学ぶことが危険人物であるような風潮があることです。
自動車だってある意味では危険物ですが、正しく学び運用することで、社会に貢献する道具になるのです。
最低限の仕組み(運用方法)が分からないままだと・・・暴走ですね。

軍事も同じ。きちんと知れば「監視」もできます。無知だと「騙される」かも知れませんよ?

(写真は海上自衛他サイト「装備品ギャラリー」より引用

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