海洋立国論

勉強のつもりで書いています。

抑止力としての潜水艦(2)

抑止力としての潜水艦という部分をもっと踏み込んでみます。

一番有名(悪名?)なのは、相互確証破壊戦力としての潜水艦の運用です。

相互確証破壊というドクトリンは東西冷戦期に確立したもので、核保有国同士がのどちらか一方が核攻撃をおこなった場合、他方の反撃により互いが全滅することになり、戦争は起きないとするものですが、それは先制攻撃をされても反撃能力を残していることが条件となります。

保有国は「米露英仏中・印パ北朝鮮イスラエル?」がありますが、実際に、相互確証破壊が理論上成立しているのが米露です。二国間は戦争していませんが、これは例外的に成立したのかもしれません。
主題は潜水艦がどのようにかかわるか?ですので、このことについてはこれ以上触れません。

生存性が高くないとこの「核抑止力という相互確証破壊戦略」は成り立ちませんが、ここで潜水艦がでてきます。
この場合の潜水艦は「戦略原潜」と呼ばれる、巨大で潜水艦発射弾道核ミサイルなどを装備した潜水艦のことです。
通常の発射機やサイロからの攻撃は探知され、多様な手段で発射前に先制攻撃される、もしくは確実に反撃されますが、隠密性の高い潜水艦なら・・・

これにより、米露は互いにバランスをとってきました。誤認等での誤った攻撃・反撃を防ぐためのホットラインの設置などの仕組みも構築しつつ、全滅しても自動的に反撃できるシステムを開発するなど、危機的な状況スレスレの見かけの平和を維持しました。

ここに中国が入ってきます。
中国はこの土俵に上がるべく、巨額の費用を投じて潜水艦と核ミサイルの開発をおこなってきました。
以前は、潜水艦・ミサイルとも問題にならない性能で、ミサイルの射程距離も短く、攻撃するには相手国に近づかなければならず、かといって沿岸を離れると、潜水艦の静粛性が低いため、自衛隊や米軍に見つかり攻撃されます。
自衛隊は中国の潜水艦を探知した際に、短信音を当て続け、当該潜水艦を浮上に追い込んだことがあるとの噂もあります。
過去に中国が台湾海峡で演習を実施し、台湾を武力で恫喝した時には、米空母打撃群の接近による威嚇で、矛を収めざるを得ない事件もありました。

これは、大国意識に目覚めた中国には耐えがたい屈辱。

現在でも武力による制圧によって、中台統一を目指すとする主張は根強く、近年の驚異的な正面装備の近代化はこの時に米国に負けた屈辱が忘れられないのか、それとも国内世論なのでしょうか。

しかし、現在はミサイルの精度・射程距離も飛躍的に向上し中国沿岸から米国全土を攻撃できるようになりました。 つまり、量はともかくもほぼ「相互確証破壊」が成立したことになります。

つまり相手の「核」攻撃の脅威を封じ込めることに成功しました。さらに原潜の数を増やすことで常時運用できる数が増え、静粛性も高まっています。 最近の強気の姿勢はここに一因があるようです

このように潜水艦は強力な抑止力なのです。武力を背景にした国際的発言力の向上(つまり国際間のルールを作る側に立つ、または他国に文句は言わせない)は現実世界の話です。

平和を希求する我々日本としてどのように対処すべきでしょうか。考えている残り時間は多くはありません。

 

日本の防衛力整備計画や、ミリタリーバランスなど、沢山の分析した報告書があります。メディアで、気持ち良さそうに語る人の多くは読んでもいません。
国内の事情など、他国は斟酌しません。
国家、政治の目的は、自国の利益や名誉を最大限高めることです。勿論他国の犠牲の上に成り立っています。
一見、平和主義のようにみえますが、未だ不条理はあります。
フォークランドで何故イギリスは戦ったのか?マリで旅客機の捜索でフランス軍?ベトナムで中国は何をしてる?切りがありません。


写真は「アラバマ」です。Wikiより。映画「クリムゾンタイド」でも登場しました。