海洋立国論

勉強のつもりで書いています。

”狂犬”マティス国防長官の辞表

あまり時事ネタ的なものは書かないのですが、どうしても書きたいネタができたものですから。

 

先ごろアメリカのマティス国防長官が辞表を提出しました。これに対してトランプ米大統領は「更迭」の形をとることにして、マティス国防長官の希望する2019年2月28日を受け入れず、2019年1月1日としました。 

トランプ大統領の考えは分かりませんが、強固な同盟関係である日米同盟の行き先も左右するかもしれない人事ではないでしょうか。

マティス国防長官の辞表は公開されましたので、日本語訳もあります。以下から読めます。

マティス国防長官「同盟国に敬意を」 辞表を公開 (写真=ロイター) :日本経済新聞

 

辞表全文(赤字は筆者による)====================

親愛なる大統領閣下

私は第26代の国防長官として国防総省の職員らとともに米国の国民や理念を守る職務を担当してきました。

2年間で国家防衛戦略に盛り込んだいくつかの重要な目標に向けた進展があったことを誇りに思います。たとえば、国防総省の財政基盤を整えたり、軍の機動力や攻撃力を高めたり、高いパフォーマンスを実現するために省の働き方を変えたりしたことがあります。米軍は紛争で勝利し、世界での強い影響力を維持する能力を提供しています。

国家としての強みは同盟やパートナーシップという唯一無二で包括的な概念と緊密に結びついていると私は固く信じています。米国は自由な世界において不可欠な国でありますが、同盟国との強い同盟を維持し敬意を示さなければ、国益を守ったり、国益を追求したりすることはできません。あなたと同じように私も米軍は世界の警察ではないと言ってきました。その代わりに、同盟国に効果的な指導力を示すことを含めて(同盟国の)共同防衛に向けて、米国が持つ全ての手段を提供する必要があります。民主主義を重視する北大西洋条約機構NATO)29カ国は2001年9月の米同時多発テロ後に我々に寄りそって戦うと約束してくれて(同盟の)強みを証明しました。(過激派組織の)イスラム国の壊滅に向けた連合軍ももう一つの同盟の証しです。

同様に戦略的利益が我々の利益と衝突することが増えた国に対しては、我々のアプローチを断固かつ明確なものとしておく必要があります。中国やロシアが自国の利益を追求するために経済・外交・安全保障に関する他国の決断を否定し、権威主義的な政治モデルと整合的な世界をつくりだしたいと望んでいるのは明らかです。だからこそ、我々は共同防衛に向けて、あらゆる手段を尽くさなければならないのです。

同盟国に敬意を払い、悪意に満ちた者や戦略的な競争相手に注意を払うべきだという私の考えは、こうした問題に取り組んだ私の40年以上(の経験)に基づき、培われたものです。我々の安全保障や繁栄、価値観に最も資する国際秩序を推進するためにできることは全てやるべきです。我々は同盟という結束によって強くなるのです。

あなたは、これらの点について、あなたの考えにより近い人物を国防長官に据える権利があります。だから私は身を引く時だと考えています。私の任期の最終日は2019年2月28日とします。この日付にしたのは、次期議会の公聴会や2月のNATO防相会合で、国防総省の利益を適切に説明し守っていくだけでなく、後任が指名され承認されるために十分な時間を確保するためです。さらに来年9月の米統合参謀本部議長の交代に先立って新しい国防長官に移行し、省内の安定を確かなものにするためでもあります。

私は215万人の軍人や73万2079人の国防総省文民が職務に集中し、米国民を守るための不眠不休のミッションを遂行できるよう円滑な移行に最善をつくすことを誓います。

この国や軍人たちに仕えることができて大変感謝しています。

 辞表ここまで======================

 

マティス国防長官はバリバリの軍人だっただけあって、国家の安全はどのように保たれているのかを十分理解し活用し評価している人物ですね。がちがちのリアリスト。トランプ政権にあって唯一(日本にとって)頼りになる人物だったと思います。

アメリカが片務的な軍事負担を負うのではなく、日米同盟やNATOを強化・重視し、中露やIS(イスラム国)などのテロ組織などの不当な行為は同盟国との共同防衛を行う事が重要で、それがアメリカの国益にも叶うと。その為に同盟国には敬意を表すべきと言っています。でも大統領とはその点で食い違うので辞めますということですね。見限ったのでしょうか・・・

アメリカ】は挑戦国である【日本】に勝って覇権国家の地位を確立し、冷戦では【ソ連】を退けましたが、次は【中国】がその挑戦国となりました。これを退けなければ覇権国としての地位は危ぶまれますし、無理やり維持しようとすれば戦争になります。この状態を【トゥキディスの罠】と呼びますが、そうなれば第二次世界大戦の惨劇の比ではありません。かといって中国がとって代わると従来の自由主義的価値観は否定されるでしょう。

アメリカは【西側】に太平洋が広がり、ハワイ、グアム、日本を前線基地とし、【東側】には大西洋があり、NATO諸国が防衛ラインを引いています。地政学的に極めて有利な国家ですが、日本やNATOがあってこそその地位が確立されています。

我が国に限って言えば、日米同盟があるからこそアメリカは防衛ラインを米本土から遠ざける事ができました。我が国は米軍の強大な軍事力を「矛」として活用できたので、片務的な日米安保条約の中で自衛隊は「楯」としての役割の一部を負えば良く、結果的に憲法違反することなく低コストな防衛費で国家を維持できました。(しかしこのあたりは新たな「防衛計画の大綱」でも今後どうすべきかが語られています)

 

兎に角も同盟と協調重視のマティス国防長官の退任は非常に残念でなりません。

 この人事が負の世界への出発点だったと後世が記録しないですむようになる事を願います。「日本は世界と繋がっている」と語るのなら、最も繋がりの深いアメリカの国防戦略は注視せざるを得ないでしょう。これは日本に最も影響するのです。

 

日本と韓国(朝鮮戦争ー1)

日本の若者の多くが「太平洋戦争(大東亜戦争)」を知らないと聞きますが、韓国でも「朝鮮戦争(他にも呼称あり)」を知らない世代が増えているそうですね。ある調査によると約半数とか。日本でも隣国で起こった戦争の事をあまり知らない人が多いのも仕方が無いのかもしれません。

 

【時間軸

かなりざっくりですが。

1910年(明治43年)8月29日、ロシアの南下を恐れた大日本帝国は、大韓帝国を「韓国併合に関する条約」によって併合し統治していましたが、1945年(昭和20年)9月9日の朝鮮総督府による降伏文書調印をもって終わりました。(伊藤博文は当初は併合に反対。その後桂太郎首相、小村寿太郎外相の説得に応じる)

その後38度線以南をアメリカ、北部はソ連が統治。1948年(昭和23年)8月15日、李承晩(後の韓国初代大統領)による独立・建国宣言によって韓国が成立、9月9日に金日成による北朝鮮建国。1952年4月28日サンフランシスコ講和条約発効により、日本と連合国との戦争状態終結

 

朝鮮戦争勃発】

1950年(昭和25年)6月25日、北朝鮮軍が38度線を超えて南下し進軍。朝鮮戦争が始まりましたが、中国とソ連の支援を受けた北朝鮮軍が当初は優勢でした。開戦3日後には首都ソウル陥落。しかし最終的には国連軍(アメリカを中心とした16か国)の反撃によって押し戻し、1953年7月27日に休戦し38度線を休戦ライン(軍事境界線)としました。

 

【日本の後方支援】

この戦争の時にアメリカが中心となって国連軍を構成し反撃したのですが、先の大戦を終えたばかりの日本が、そのバックアップとして韓国を支えた事はもっと知られてもいいのではないかと思います。

 

戦後の荒廃から立ち直ろうとしている我が国には当時の韓国よりも技術や人員、ノウハウが残されており、国連軍の支えになり、出撃を支え兵站・補給基地として機能しました。

アメリカ本土から朝鮮半島へ直接出撃するよりもはるかに効率的であるうえ、兵士、兵器や装備品の保管や輸送、兵士の休息や医療にも、旧帝国軍人とそのノウハウを活かした海上輸送、後方支援能力、高い技術水準とを持つ我が国だったからこそ基地機能を果たす事ができ、米軍を支え休戦に持ち込めたのです。日本の商船も人員や物資の海上輸送に深く携わり、日韓両国で荷役作業にも多くの日本人が従事しました。

 また韓国国内の日本人も支えました。朝鮮総督府関係者は勿論、出張と言う形で日本から韓国へ渡るなどして、海運、港湾荷役、鉄道輸送、兵器の製造や修理、通信などで8000人とも言われる人が働き、半年で400名弱の死傷者があり、個人ベースでは日本人パイロットによるスパイ空輸、諜報活動などもあったと言われます。

 李承晩ライン(竹島領有のきっかけ)の設定などで有名な李承晩初代韓国大統領は、日本人を毛嫌いし戦争に関与させまいとしたようですが、日本人の代わりができる韓国の人材が非常に少なかったことなどから、戦争遂行に問題を抱えたくないアメリカがその要求を飲みませんでした。

 

もし、アメリカが日本に戦略拠点を築いていなければ、敗北していたかもしれませんし、そうなれば韓国の消滅、日本の共産化(中国やソ連の占領)もありえたかもしれません。過去の日本による併合はロシア(ソ連)を畏れたゆえですが、戦後はその肩代わりを結果的にはアメリカがしたのです。

一方、戦後のインフレに苦しむ我が国には「特需」が舞い込み一気に復興が進みましたが、そこだけがクローズアップされてしまい、韓国では「日本人は朝鮮戦争で儲けた悪い奴」とのイメージがあるようです。

 

【日本特別掃海隊】

海軍の戦闘艦艇の作戦上も、地上軍の進行に伴う物資補給にも海路の安全確保は必須でしたが、最も有名なのが海上保安庁の「日本特別掃海隊」による機雷掃海です。

 

1950年10月~12月にかけて元海軍軍人隊員1,200名、掃海艇46隻、327kmの水道と607平方キロ以上の掃海を実施。27個の機雷を処分しました。

当時は「極秘」とされた任務ですが、これは朝鮮海域への機雷掃海任務であり、戦闘行為への参加とも解釈される行動です。元山沖で掃海作業中に1隻爆沈し殉職者(戦死)1名、重軽傷者18名を出しました。派遣の事実は30年間、公にはされませんでした。

 

3次にわたる試行船「桑栄丸」による朝鮮海域への派遣は、「人の命1万円で買います。乗務員募集」という広告が新聞に載るほど命がけの任務でした。旧海軍出身者のノウハウが活かされたこの命がけの任務は朝鮮戦争での国連軍を支え、海上自衛隊の創設にも関わり、また講和条約の締結にも有効に働いたでしょう。

 

当時発足したばかりの韓国海軍は、戦闘艦と言えるようなものは無く、また機雷掃海能力もありませんでしたし、米海軍も能力不足でしたので、旧帝国海軍省から掃海業務を引き継いでいた日本が適任だったと考えられました。但し終戦後に徐々に規模を縮小されており、もう少しでこの能力も無くなるギリギリのタイミングでした。

 

このあたりのことは国会でも中曽根内閣当時(参議院通常国会第108回)に質問がされていますが、政府の答弁は「確認しえない」「承知していない」であり、公式には政府は関与していないことになっています。

占領下の日本で米軍極東海軍司令官の命令によるものだからです。実態はマッカーサー元帥の命令を受けた吉田首相が逆らえる訳ではありません。逆らって講和が遅れたりすることや講和条件が厳しくなる事を避けたのでしょう。その証左に吉田総理から特別掃海隊宛に、「我が国の平和と独立のため、日本政府として国連軍の朝鮮水域に於ける掃海作業に協力する」と電報が届けられています。

 

当時の掃海隊が韓国軍兵士に言われたエピソードで、「自分の国の危機に日本特別掃海隊が手助けにきてくれているということを皆大変感謝している。中には日本を憎んでいる者もいるが、こんな皆さんの仕事を知らない人が多い。」残念ながら今も現状はかわっていません。

 

派遣された隊員も心中は複雑だっただろうと思いますが、隊の解散の際の海上保安庁長官訓示「国際社会において、名誉ある一員たるためには、手をこまねいていてはその地位を獲得できない。私達自らの努力と汗で獲得しなければならない」との言葉に従ったのでしょうか。私にはわかりません。

にも係らず30年間も秘匿され続け、命がけの努力が日韓どちらにも認められなかった隊員の心情は察するに余りあります。このことを思うと激しい憤りを感じます。しかし米軍の反日感情は和らぎ、そして信用となり後の日米同盟に繋がりました。

少なくとも現代を生きる我々日本人は記憶に留めるべきですし、韓国の人にも知って欲しいと思います。

 

【日韓の安全保障】

日本の安全保障は韓国の安全保障と直結しています。「反日」「嫌韓」でネットは時々荒れますが、安全保障上は切っても切れない関係です。

旭日旗問題、慰安婦像、徴用工裁判、原爆Tシャツ・・・怒るのは理解できますし、私も腹立たしい。

だからといって「国交断絶」などど簡単に言う人がいますが、そんな簡単にできません。万一「韓国」の北朝鮮化が起こればどうなるのでしょうか。背後には中国がついています。中国は第2次大戦後に次々と国境紛争、戦争、民族問題、宗教弾圧、果ては天安門事件のような弾圧を起こしており、今も南シナ海尖閣諸島で関係国と争っています。その事を踏まえると断絶はできません。

韓国も軍事政権から近年ようやく民主化が進んできましたが、北朝鮮のような独裁国家に飲み込まれることを望むのでしょうか。

 

【挨拶ぐらいが丁度いい】

日本と韓国は地政学的にも経済的にも民族的にも近しい関係ですが、近すぎると軋轢を生むのかもしれません。フランスやオランダなどの植民地を支配していた欧州諸国もかつての植民地に謝罪はしていませんし、緊張関係が続いていますので、無理に「和解」などを期待せずに緊張感を持ちつつ「是々非々」で「丁々発止」やり取りをするのが正解なのかもしれません。

国家間の約束事を守らないことに関しては、現実的な対処を取る必要があります。それが対等な国家間の付き合いであって、慣れ合いは決していい結果は生みません。日本は毅然とした態度を、韓国は国際ルールに基づいた内政をしてほしいものです。

 

 

軍もSNS。

最近、仕事が忙しくあまりブログ書く時間も無くなってしまいました・・・ネタが思いつくと、検証の為に本や論文を読んだりしてから書くのですが、その時間が「ごはん中」とかぐらいになってしまいました。行儀悪いですね・・・

 

睡眠時間を削ればいいじゃないか。と昔は思っていたのですが、「寝不足は良い仕事の敵だ」とポルコ・ロッソが言うもので。早寝早起きです。

 

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さて、先日まで実施されていた「キーンソード19(2018年)」の写真を見つけました。

 

『キーンソード』とは隔年実施の陸海空自衛隊アメリカインド太平洋軍との日米共同統合演習(軍事演習)で10/29~11/8まで実施されました。
自衛隊は47,000人艦艇20隻航空機170機・アメリカは第7艦隊、第5空軍ほか10,000人、カナダ軍も艦艇が初参加、オーストラリア、イギリス、フランス、韓国もオブザーバー参加。

 

アメリカインド太平洋軍とは、第7艦隊や在日米軍などひっくるめた巨大な統合軍です。】

 

即応性や相互運用性、指揮統制能力の向上などを演習し運用能力と抑止力を向上させます。今回、独善的な活動を続ける中国海軍を想定した訓練(対潜作戦)も行われた模様です。

他にも夜間発艦訓練、脱出したパイロットを捜索救援する訓練など大規模なものです。
大規模演習は対外的なアピールの目的もありますので、このようにSNSでかなり高画質の写真を公開しています。艦艇の運用練度では海自は世界一とも言われるほど高い能力を持ちますが、米海軍との連携は高いレベルで必須です。練度に上限はありません。今後はインド軍やオーストラリア軍との連携もさらに深めていくでしょう。

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【これはU.S.Pacific Fleet Flickrからダウンロードしたものです。】

 

SNS活用という点では、自衛隊は遅れている感じですね。もっと組織的にSNSを活用し一般国民に多くを知らせるべきだと思います。一応各種アカウントはあるんですが、広く知られているとは言い難い。邪推ですが日本的組織運営が邪魔してる?自衛隊の上のほうの方々が実はSNS音痴だったりして理解が無いとか・・・まぁでも自衛隊ごとの公式や、基地隊のものなど各種あるので是非フォローしてください。どのような活動をしているのかよく判ります。「守る」のが自衛隊の役割。災害からも急患も水不足からも、勿論外国の脅威からも。その為に日々どのような事をしているのか、まずは知ることができます。大臣記者会見や各種文書は少し敷居が高いですが、SNSなら気軽に知る事ができます。

 

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【写真】なんとか判別してみたんですが間違ってるかも(>_<)


左側に「空母ロナルドレーガン」,右は「DDHひゅうが」

航空機前列は左からF-15×2 F-2×2 中央でかいのがB-52 右はF/A18×4 後列中央はP-1対潜哨戒機を挟んで両翼にF-15

潜水艦は(左)ロサンゼルス級 (右)そうりゅう型

艦艇は班別しづらいですね。「DDGあたご」他、あきづき型、ましゅう型補給艦、など。

個人的にはF-2A戦闘機の「洋上迷彩」ってやっぱり迷彩してるなーと思いましたが。

 ダウンロードしたこの写真は個人PCのデスクトップに使っていいそうです。(在日米軍公式ツィッターより)

 

さて、日韓は旭日旗問題や労働者の問題などで騒がしいですが海軍は連携を図らなければいけません。実は海軍同士は仲が悪い訳ではないようですが、そうであるなら旭日旗問題は韓国海軍にしてみれば辛い立場だっただろうと思います。今回の所謂徴用工判決問題や旭日旗問題を契機に日韓関係の軍事的意味合いを改めて書こうと思います。

 

たまには軽いネタを。

これは在日米海軍司令部のツィートで見つけた写真。

 

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空母ロナルドレーガンの格納庫だそうで、乗組員宛にヘリなどで荷物や郵便物を空輸などしてくるのだが、「アマゾン」からも沢山届いています。

ロナルドレーガン第7艦隊。西太平洋からインド洋までが任務海域。

宛先はどうなるのか?アマゾンで買って空母にまで届けさせるほど欲しいものって何なのか?

送料は幾らなのか?お急ぎ便は使えないだろうけど、プライム会員の扱いは?

興味が尽きません!

 

米海軍士官などは物凄く勉強している(一定の学位などが無いと辞めさせられる)ので、書籍等は勿論あるだろうとは思いますが、箱のサイズをみると書籍サイズでは無いようにも思えますし。

艦内生活の為のDVDとか・・・プラモとか・・・シェーバーとか・・・お気に入りのシャンプーとかありそう。

3種類のパワー

Yahoo!ニュース 「【ロンドン時事】スウェーデンの首都ストックホルムを訪れた中国人観光客に対する警察の処遇が「人権侵害」だとして、中国がスウェーデン政府を非難し、外交問題に発展している。(時事通信)」 という記事を読んでいて思いだしたものがあるので、今回はそれをテーマにします。

このニュースの元記事はこちら

ざっと掻い摘んでみると、9月2日に中国人家族3人が宿泊予定ホテルに前日到着したため、ロビーでの寝泊まりを要求、ホテルは拒否(防犯上もそりゃ無理でしょう)。

居座る家族に対し警察に通報し強制的に連れだし、その際に「これは殺人だ!」と叫びながらの映像がSNSに流出、中国政府は「人権侵害で謝罪と賠償を要求」し、外交問題化しているというもの。スウェーデンダライ・ラマ14世が訪問したり、共産党批判本を扱う香港書店関係者のことなどが背景にあるとされています。

 

このニュースを読んで思いだした言葉が3つあります。

それは「ハードパワー」「ソフトパワー」「シャープパワー」です。

 

パワーとはなにか・・・解釈や多くの理論があってやや複雑なんですが、ざっくり言うと以下のようなことでしょう。

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 国家は国益を追求するものであり、国益とは行動目標であり、他者よりもより多くの利得を求める。国際社会は上位の政府が無くアナーキーであり、国家の頼りにするものは自助であってその為にパワーを必要としパワーによって望ましい結果を得るために他者に影響(他国の内政・外交)を与えようとする。パワーを生みだす源泉は資源(領土・人口・地政学的位置・天然資源・経済規模・軍事力など)であり、これを変換するプロセスを経なければならない。

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第1のパワー「ハードパワー」

ハードパワーとは、そのものずばりなイメージですが、昔から国家(または集団)に多用されてきた、「軍事力」「経済力」などある種直接的・物理的な強制力や支配力を言います。主体は国家や企業であり未だ決定的に重要なパワーです。個人的にはこのパワーは世界を理解するための基礎であると思っています。ODA(政府開発援助)などはその為に活用されていました。決して善意のみで円借款や無償援助をしたのではないでしょう。

第2のパワー「ソフトパワー

ソフトパワーとは、ジョセフ・ナイ教授(ハーバード大が1990年の著書で初めて用いた言葉です。国会議事録を検索すると「ソフトパワー」と言う用語が多くでてきますし、書籍も多数ありますので、言葉や概念は定着したと言えるでしょう。

これは相手を引き付ける「魅力」とでも言うもので、その源は文化・歴史・国民性・価値観など有形/無形・可視/不可視に限らないもので、主体は必ずしも国家や政府ではありません。個人や団体、地域だってソフトパワーの担い手であり、他者に対して影響を与える可能性があるものです。

しかしソフトパワーの源泉はハードパワー(経済力や政治力、軍事力)に依るところが大きく、ましてハードパワーに取って代われるものでは無いものです。

我が国でも「観光立国」としてインバウンド受け入れ増大を図っていますし、海外で日本食サブカルチャーなど日本を紹介するイベントを多数実施していますが、これらによって日本に対し理解を深めてもらうとともに、他者の選好に少なからず影響を与えようといています。

アメリカは強大な軍隊、世界一の経済という「ハードパワー」とマクドナルド・ディズニー、ハリウッドなど「ソフトパワー」の輸出で世界の覇権国となりその地位を守り続けています。

第3のパワー「シャープパワー」

しかし近年新たに「シャープパワー」という概念が提唱されました。

シンクタンクである全米民主義基金(NED)が提唱し、前述のジョセフ・ナイ教授によって明確に定義づけられました。

ハッキリ言うと中国・ロシアが民主主義国の開放性を逆手にとり、影響力を行使し言論・報道の自由などの価値感に影響を与えているとするものです。「買収」「威嚇」「情報操作」など悪意をもった手段を行使し世論工作を行うのです。

このことについては、英エコノミスト誌(2017/12/16-22号)が記事にしており日経新聞が邦訳し話題となりました。(一読をお勧めします)

記事の中でその行動は最近、威嚇的で幅広い範囲に及びつつある。中国のシャープパワーは、取り入った後に抵抗できなくさせる工作活動、嫌がらせ、圧力の3要素を連動させることで、対象者が自分の行動を自制するよう追い込んでいく。」と言いきっています。

中国政府を批判する研究者、ジャーナリスト、報道機関などにはビザの発給停止や学会へ招待しない、民間企業への圧力(社員のスパイ容疑や課税など)、報道機関への資金提供による世論誘導、中国語教育の「孔子学院」での思想教育、政治家・官僚への資金提供などを通じた政界工作・・・

冒頭で書いた抗議やノーベル平和賞劉暁波氏に授与したノルウェーへの経済的な報復、国際的な研究機関への資金提供によって中国の不利益になる研究の抑制、国際機関への不当な介入など枚挙に暇がありません。

北朝鮮に韓国がTAARDミサイルを配備した時、中国は韓国への旅行を制限し観光産業に影響を与えました。

中国がオーストラリアのダーゥイン港の99年租借権を得ることができたのもそのパワーを行使したためかもしれませんし、習金平主席の「一帯一路構想」もシャープパワーのひとつと見なされています。

国家が国民の活動を監視し制限できる「権威主義国家」なればこそです。

 

しかし、 これらは自由主義社会の「開放性」を利用した「脆弱性の窓」と言えるものです。かといって自由主義社会において規制強化や排除を過度に進めると人権弾圧や不平等性を生むことにもなりかねません。しかし制度上の問題は解決しなければなりませんし、国家の価値観を破壊するような行為は糾弾しなければなりませんが、民主義国家の「良い点」も守っていかねばなりません。ジレンマですね。

オーストラリアは中国のこうした行為に対抗するため、2018年6月に外国政府干渉対策法を成立させました。外国政府によるロビー活動、政治行為への資金提供などの規制や禁止などの項目から成り立っています。

他にもドイツ、ニュージランド、アメリカ、韓国、ニュージランド、カナダ・・・各国ともシャープパワーを脅威と認識してきており、対抗しようとしているようです。

アメリカの政治学A.F.Kオーガンスキー(1998没)は(現状への)挑戦国は国際社会において自分のための新しい場所を確保することを求めつづける。自分たちは力をつけつつあるので、その権利を有すると感じるようになるからである。こうした国家のほとんどは力を急速に増長させているものであり、さらに成長は今後も継続すると見込んでいる。つまり、台頭国家は好戦的になりやすいということである。としています。

挑戦国「中国」が覇権国「アメリカ」に対抗するには、ハードパワーだけでは挑戦するコストが高すぎるため、他の2つのパワーを利用し挑戦するコストをさげる効果が見込めます。

先ほどのエコノミスト誌ではこうも書かれています。

「中国のシャープパワーの手口を白日の下にさらし、中国にこびへつらう者を糾弾するだけでも、その威力を大いに鈍らせることになる」辛辣ですね。近頃英海軍が南シナ海に進出しており中国に軍事的圧力をかけつつありますが、脅威認識の現れでしょうか。

日本にとって

我が国は隣国です。そして中国の海洋進出にとって最大の障害です。シャープパワーを最も行使するなら日本でしょうし、沖縄はその例ではないでしょうか。沖縄の「行政、世論」を中国に有利な状況に導くことは、中国にとっての優先事項ではないでしょうか。北海道の土地を大規模に買収しているのも、単なる土地取引、投資と楽観視してよいかどうかも怪しむべきかもしれません。

(日米なら資金次第で双方の土地でも企業でも対称に買収できますが、中国とは非対称です。)

急激に成長した軍事力・経済力だけに目を奪われていてはいけないようです。第3のパワーにも今後注目していきたいと思います。

 

 

ルールオブエンゲージメント

戦いのルール

ルールオブエンゲージメント(Rules of Engagement・以下ROE)とは、いわゆる交戦規程と言われるものです。(自衛隊呼称は部隊行動基準)

これは軍隊などがどのような事態の時にどう行動するのか、武器使用はどこまで認められるのかなどを詳細に規定したものですが、これがなければ現場は非常時にどのように対処してよいのか分からず混乱を招いたり、被害を拡大させたりすることになりかねませんし、武器使用の結果、過剰防衛に問われ裁かれたりすることも想定され、最前線の兵士は武器使用を躊躇することになります。

それは正当な行為(自衛)を妨げる事になりかねず被害が拡大したり、その逆に無制限の武器使用による事態の深刻化・戦闘のエスカレーションを招きかねません。政治が軍を適切にコントロールするには必要なものです。つまりROEは強大な武力を持つ軍隊を政治のコントロール下におき、また現場指揮官の政治的判断から開放し、純粋に軍事作戦の指揮に専念できるようにしようとするものと言えます。

 

我が国では

驚くことにわが国では2000年ごろまでは明確な決まりがありませんでした。自衛隊はあくまで「軍隊ではない」と言う建前もあり、国内世論の反発を恐れて政治が後手に回っていました。

その後イラク派遣などのPKO活動の参加、テロ組織の活発化、東シナ海での緊張の高まりなどもあり、2000年12月4日(平成12年12月4日・防衛庁訓令第1号)において、部隊行動基準を策定することになり、その2条、3条には、(要約し抜粋)

国際法や慣例・国内法の範囲内で自衛隊がとり得る具体的行動の限界を示し、行動し得る地理的範囲、使用し又は携行し得る武器の種類、選択し得る武器の使用方法その他の特に政策的判断に基づく制限が必要な重要事項に関する基準を定めたもの」

であって

統合幕僚長が策定し防衛大臣の承認を必要」

とします。

統合幕僚長とは昔でいうところの「参謀総長(陸軍)と軍令部総長(海軍)」を足したような立場で、陸海空自衛隊のトップ

 

国際的な取り決め

現代では自衛戦争と集団安全保障に基づくもの以外の武力行使は違法です。しかし戦争は起こり続けていますので、戦争にルールを設けることで、一定の制限を加え戦闘行為の拡大や民間への被害の極小化を目指しており、ジュネーブ条約やハーグ陸戦条約に代表される「戦時国際法」ととか「武力紛争法」と呼ばれる法体系がありますし、一般的には国連憲章や、国連安保理決議など非常に多岐にわたっており複雑ですが、とにかくも国際関係では第一次世界大戦以降少しずつ整備が進められていますし、多くの国が自国の法律、国際法などに基づいてROEを作成し運用しているようです。

 

非公開が原則

ただしこのROEはあまり開示されていません。それは開示すると敵対勢力(軍・テロ組織など)がそれを逆手に取って攻撃するかもしれません。この件に関しては防衛大臣の諮問(H28.11.1・諮問第661号)に対する答申(H29.5.24・答申第64号)では「存否情報は,これを公にすると,特定の状況における部隊行動基準の適用の有無が明らかとなり,今後,自衛隊の任務遂行の妨害を企てる悪意の相手方が,特定の状況下にある部隊等の緊急事態における対処態勢や準備状況を推察することによって,対抗措置を講じることが可能となり,ひいては国の安全が害されるおそれがある」このことから情報公開法5条3と8条に基づき非公開は妥当と判断しています。

また、参議院での藤末議員の質問に対する首相答弁(H28.3.29)でも、「存否を含め答弁を差し控える」となっています。

軍事機密に属する重要な情報です。

このように「ROEはあるだろうけど、内容はちょっと分からない」のが実態ですが、我が国もROEは作成しているでしょう。多くの国連PKO活動等に自衛隊を派遣していますので、その状況や任務に応じて都度作成されて要るんだろうと思います。

ROEで重要なのは「やってはいけないこと(ネガリスト)」化することです。「やっていいこと(ポジリスト)」では、想定しきれない事態に対処できるかどうかはわかりません。また、簡潔に末端の隊員にも理解できるようにしなければなりません。

 

軍事司法制度

次に考えなければならないのが、「違反したら」どうするのかです。海外に派遣される自衛隊員は、対象国と締結する「地位協定(通称)」によって身分が確定し、派遣先でも日本の法律によって裁かれます。例えばジブチ共和国ジブチ海賊対処派遣)との地位協定でも、派遣要員は日本の法令(刑事裁判権など)が適用されます。

しかし、訴追され刑事裁判となると裁判までの起訴手続きや実況見分、証拠収集などを不安定な紛争地などで実施できるのか、長期間にわたる裁判期間中は事案が正当なのか不当なのかが分からない、被告を召還できるのか、召還したとしたら代替要員はどうなるのか、専門性が高く軍事機密を扱う事案に裁判官や検察が対処可能か、などの問題も考えられます。

この問題に対しては「軍事裁判(軍事司法制度)」を設けている国が多くあります。裁判官が軍人であるため専門性が高く迅速に判断を行える利点があります。

 

 正式名称は「ジブチ共和国における日本国の自衛隊等の地位に関する日本国政府ジブチ共和国政府との間の交換公文」・・・長いわ!

 

最後に・・・

国家間の大規模戦争は起こりにくくなったとはいえ、可能性が無い訳でもありませんし、訪日外国人の増加に伴いテロの可能性は増すばかりですし、「日本を火の海にするぞ!」と恫喝する国がすぐ近くにあり、EEZに不法侵入を繰り返す国との島嶼部での領域紛争は起こると考えるべきでしょう。 

ROEを含めあらゆる法や制度を整備することは日々任務についている自衛隊の法的根拠を強め、それを国際的にも認知させることで抑止力が向上し、その結果として自衛隊員の安全と身分を保証するものです。

それにはまず現実の国際関係と武力の存在を認めたうえで、憲法を改正し自衛隊を軍として認める必要があると思います。

 

いつも言う事ですが、我々を守ってくれるのは自衛隊ですが、自衛隊を守るのは我々なのです。

 (写真は陸上自衛隊HP・フォトギャラリーより引用しました)

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玉音放送はしたものの・・・

明日8月15日は終戦記念日です。

政府主催の全国戦没者追悼式を行っていることから、一般的にはこの日を「先の大戦(太平洋戦争・大東亜戦争)が終結した」と認識されていますね。昭和20年(1945年)8月15日・正午の玉音放送があったことから、国民サイドとしては異論があまり出ないところだと思います。

玉音放送と一般的に呼ばれますが、これは「大東亜戦争終結詔書終戦詔書)を、天皇自身の肉声を録音しラジオで放送したものを言います。

 

さて、日本国内ではこれでいいんですが、戦争状態の正式な終結は9月2日のアメリカ戦艦ミズーリの艦上での「降伏文書への調印」をもって、正式に終結しています。

つまり、日本としては8月14日に降伏を受け入れたものの9月2日まで正式な降伏にはなっていません。当時のソ連中華人民共和国などは9月3日を対日戦勝利の日などとしています。

 

 昭和20年8月15日以降になにがあったのか

我々はその間に一体何があったかは忘れてはならないと思います。

明治38年ポーツマス条約で南樺太(北緯50度以南)は日本領となり、開戦時には40万人以上が暮らしていましたし、開戦後も戦場から遠いため比較的平穏だったようです。

anzenhoshounobenkyou.hatenablog.com

 

ソ連の進出

8月6日の広島への原爆投下を知ったソ連は、8月8日に日ソ中立条約を一方的に破棄し宣戦布告し翌9日には、南樺太満州北朝鮮に進軍します。(予定は8月11日)

総兵力150万以上、対する関東軍は75万とは言え精鋭部隊は南方に取られており張り子の虎同然の裸部隊でした。

8月16日に日本は「即時停戦命令(自衛戦闘を除く)」を出しますが、南樺太・北海道のソ連による占領を防ぐため、大陸命第千三百八十二号にある止ムヲ得サル自衛ノ為ノ戦闘行動ハ之ヲ妨ケス』により自衛戦闘は継続した。

南樺太~北海道の利権を欲しがったスターリン首相は、トルーマン米大統領に分割統治を要望しますが、共産化の南下を防ぎたいトルーマンは8月18日に拒否(その意味もあっての原爆投下)

進軍するソ連軍は各地で日本軍守備隊を全滅させ、また停戦申し入れに向かった将校・軍史も多数銃殺、民間人への無差別攻撃を実施、一般家庭への強盗・強奪、女性への強姦などが続発。8月20日には樺太の真岡に上陸した部隊が無差別攻撃を行い約800名を殺害、真岡郵便局では電話交換手の女性がソ連軍の女性への暴行を恐れ集団自決(真岡の悲劇)。樺太から避難する民間人を乗せた船団を魚雷や爆撃で沈め、子供・女性・老人など1700名以上が死亡しました。この事実はソ連崩壊後までソ連は秘密にしていました。このように国際法を無視した不法行為を続発させました。

満州でも同様に悲劇がおこりました。(書くのも辛い)

 

北海道での自衛戦闘が無かったら、南樺太北方領土に限らず、北海道もソ連領だったかもしれません。不法占拠とは言えロシアの姿勢は「領土は一寸たりとも返さない」(メドベージェフ大統領:当時)です。取られたら返ってこないのが領土。

※因みに米軍は8月15日午前は攻撃してきたものの午後はマッカーサーの命令で攻撃中止されています。

 

信義に信頼できるのか

戦争は悲惨なものです。起こると止められないものですし、軍民双方の人的被害に収まらず、歴史・文化あらゆるものに影響は及びます。

また、条約は「紙切れ」での約束です。簡単に反故にされるのです。戦争により得られる利益(若しくは損失)と天秤に掛けられその損得で「紙切れの価値」は変わります。

同様に日米関係を信用し国家防衛を丸投げするのも無謀です。アメリカとて自国の利益と損失を比べつつ「日米安全保障条約」を運用するでしょうしまたそれが当然ですし、現在のシリア情勢を見ていると、ロシアも信用ならない国です。

 

そう考えると、日本国憲法・前文の一節「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」は、ロシア・中国・北朝鮮に囲まれた我が国が、この理想を掲げている事は夢想しているとしか思えないのです。どの国も「国益」が最優先です。

 

毎年この時期になるといろいろ考えさせられます。