海洋立国論

勉強のつもりで書いています。

南シナ海は波高しなのか

中国の国力増大に伴い、海洋進出が目覚ましくなっていますが、最も注目されているのは「南シナ海」でしょう。南シナ海のせめぎ合いについて整理しておこうと思います。

 

2013年12月、中国はスプラトリー諸島(中国名:南沙諸島)の埋め立てを開始しました。(占領そのものは1988年より)2015年末までに13万平方キロメートルを埋め立て、「ビッグスリー」と呼ばれる3つの岩礁(スービ・ファイアリークロス・ミズチーフ)には3,000m級滑走路を整備。

その後インフラ整備が進み、対空ミサイル(紅旗9型か)対艦ミサイルを配備、通信設備、兵舎、格納庫、軍港などを建設。最近は駐留兵士の家族の為なのか小さな街が建設され、滑走路にはY-8輸送機(軍用機)の離発着がおこなわれるなど、急速な軍事拠点化がすすんでいます。

各国海軍が周辺海域へ展開したり、アメリカ海軍が当該島嶼の近海を航行し圧力をかけているにも関わらず、中国の姿勢は変化しておらず「中国軍の軍事プレゼンス」は高まっていると言えます。

 

 しかし、この地域は「係争地」であり以前から周辺国が領有権を争っている地域です。

南シナ海を取り囲む国は、中国・台湾・ベトナム・フィリピン・マレーシア・ブルネイシンガポールですが、そのうちのフィリピン、台湾、マレーシア、ベトナム岩礁を埋め立てて1980年代までに軍用機が発着可能な滑走路を既に持っており、軍事要塞化しています。中国が最後発で滑走路を建設しました。

このように中国以外の国々も滑走路の建設、港などのインフラ整備は以前より行い、それなりの実効支配をしていますが、中国の開発は急速で大規模なことと、周辺国に比べて圧倒的な軍事力を持っている事、領域支配の主張が不明確な歴史的根拠に基づく事であり、中国政府の説明「民間船・航空機の避難などの民生利用、また最低限の自衛的処置である」との主張を周辺国やアメリカ・日本が信用できないことにあります。

 

中国も国内政治的には政権安定の為に「人民解放軍」を味方につける必要がありますが、その人民解放軍の考え方は、2011年に馬暁天総参謀長の論文にある「戦略的チャンス期で積極的に大いに振舞うことで発展できる」との考えです。

また、世界2位の大国として超大国アメリカへの挑戦国の位置にたったことは、国民に自信を植え付けました。

一方で2010年の共産党国務委員の論文では「先頭に立たず覇を唱えず求めないことが戦略的選択であり、平和発展こそが国是である」としています。この論文は中国国内メディアが報じたのにも関わらず、人民解放軍機関紙は報じませんでした。微妙な距離感があるのでしょうか。

ただでさえデモ・暴動で苦しめられている国内世論を纏める為には「大国らしく振る舞う」事が必要であり、それが周辺国には強圧的な態度となっているのでしょう。

 

中越戦争を戦ったベトナム、完全な支配を目指す台湾、フィリピン、シンガポールなどの中小国に対して遠慮はできない意思表示表れなのかもしれませんが、アメリカが航行の自由(FONOP)作戦の実施を強化した事への対抗処置もあるでしょう。

 

中国・フィリピン間での南シナ海仲裁手続きは、中国側の全面的「負け」という結果に終わりましたが、中国は「公平でない」ことを理由に裁定を拒否しています。

しかし、これは中国にとって国際的にはネガティブな結果であり、対抗処置としてこれを覆すだけの事実を積み上げるしかありません。もし、関係国と政治的破たん状態になった時には、他国はこの裁定を名目として中国を国際的に非難できるうえ、連携して中国を取り囲むことに利用もできるからです。

 

一方では軍同士の偶発的な衝突を避けるための枠組みやルール作りも進められており、米中間では「洋上で不慮の遭遇をした場合の行動基準」に基づいた各種ルールの合意や、相互通報制度の設置など各種の危機管理をおこない、コントロールする努力も続けられています。リスクコントロールの取り組みの一端です。

また、国際ルールを学んできているのか、近頃の中国海軍はやや紳士的な振る舞いがみられることもままあるようです。

日米豪仏英などの海軍艦艇が南シナ海を通航する時や、アメリカ海軍のFONOP実施の際にも抑制の利いた警告、視認可能で衝突回避可能な10kmの距離を保ったままの追尾などの事例もあります。

一方隔年で開催している国際的な演習であるリムパック演習では過去2回参加していますが、国際ルールを無視したような振る舞いが問題視され今回の演習には招待されませんでした。アメリカの対中姿勢がトランプ政権後に強硬になってきていることも関係あるのではないでしょうか。

 とはいえ、周辺国に脅威を与えている事は間違いなく、中国は今後も経済的利益を得るためにはアメリカへの挑戦を続けることになるのではないでしょうか。

ボーダーラインはスプラトリー諸島の飛行場への戦闘機の配備とみています。対艦ミサイルや対空ミサイル配備の良い訳はできても、明らかに攻撃兵器である戦闘機の配備は緊張を一気に違うレベルへ引き上げる恐れがあります。

しかし総じて南シナ海においては「高いレベルの緊張状態」ではあるものの、係争国や日本、アメリカまども交えた事態をコントロールする努力も続けられていますので、我々はあまり感情的にならず相手の手法や事情を理解しつつ、この問題の各国の対処方法や立場を東シナ海尖閣諸島)で利用するぐらいのずる賢さや視野が欲しいものです。

 

 

 

病院船マーシー寄港しましたね。

東京湾アメリカの病院船「マーシー」が寄港しました。
以前(2017.8)に病院船について取り上げましたが、追記し再掲します。

「病院船」という船をご存知でしょうか。主に海軍によって運用される文字通り「病院機能を持った船」です。写真のように国際的な戦争時の決まりである、ジュネーブ条約によって以下の要件(抜粋)が定められた船のことを言います。
今回寄港した「マーシー」は、およそ全長272m排水量7万トンの元・タンカーであった巨大船でアメリカ海軍所属。

 

平成25年8月31日に尾鷲沖で、海自の輸送艦「しもきた(LST-4002)」を用いて、南海トラフ地震発生後36時間後を想定し、実証訓練を行っています。
26年度にはカーフェリー「はくおう」、護衛艦「いずも(DDH-183)」等も訓練・試験に使用され調査をおこなってています。
内閣府(防災担当)は、この機会を捉え16日に一般見学会、19日にシンポジウムを実施します。(申し込みは締め切り)

今回の寄港は病院船導入に向けて弾みをつけるでしょうか。

 

病院船の要件は
1.船体は白色 2.赤十字の表示 3.非武装 4.軍事活動の禁止 5.係争国への通知

となっており病院船への攻撃は「戦争犯罪」となり禁止されています。

アメリカ海軍はタンカーを改修した大型の病院船を2隻保有し西海岸と東海岸に配備しており、米軍の軍事作戦への従事は勿論、ハイチ地震人道支援団体への医療支援活動などを実施し、米国民のみならず捕虜に対しても治療活動を実施して成果をあげています。

中国もアメリカほど大型ではないにしろ、高性能な病院船を運用しており、大規模災害発生時は勿論、平時でも島嶼部や医療の不備な地域への派遣など中国の存在感をアピールするためにも運用されています。中国海軍の海外での評価は実は高いのです。

さて病院船に必要な機能とはなんでしょうか。
1)災害時に派遣する場合、着岸(波止場へ横づけ)できない場合もあるため、傷病者の搬送に必要なヘリデッキを持つこと。
2)高度な医療機器の装備、入院設備を相応の数が装備されていること。
3)潤沢に淡水を供給できる能力があること
4)荒天時でも動揺を抑えられること
5)長期間の従事になるため居住性がよいこと

などがあげられます。この為、高機能で大型の船になり建造費、維持費とも高額になります。

日本でも阪神大震災の時に検討が始められましたが、その時は大型輸送艦おおすみ型」の就役など、ある程度に必要な機能を持つことができる艦船の就役、そして自衛隊法改正により「邦人輸送」が可能になった事などから、輸送、宿泊、医療の機能はこれらで対応可能と判断されました。

その後東日本大震災が発生し平成24年4月「病院船(災害時多目的)の建造推進、超党派議員連盟」が発足し、5月に政府に要望書を提出しました。
それに基づき、調査費が予算計上され「災害時多目的船(病院船)に関する調査検討報告書」が内閣府・防災担当から提出されました。類型を3型に分類し検討されています。

ざっくりと整理してみます。

1.総合型病院船・・・急性期~慢性期の医療を総合的に受け持つ。入院機能あり。72時間以内に被災地へ到着し患者はヘリコプター搬送を行う。災害拠点病院の機能を持つ。

2.急性期病院船・・・72時間以内に被災地へ到着し患者はヘリコプター搬送を行う。急性期の応急処置を行い、その後に拠点病院へ搬送する。

3.慢性期病院船・・・被災地内の病院も被災しているので慢性疾患患者の対応のための機能を持つ。1週間を目途として到着し近辺に着岸し活動する。

報告書ではそれぞれについて「医療装備」「船舶装備」「要員数」「費用」について検討し各種諸元を設定しています。隻数は2隻としておりそれらから生じる「問題点・課題・法律上の制約」を整理しています。また代替案についても検討されています。

詳細は省きますが、結論としては「建造~運用コストがかさむこと、転用がしにくいこと、オペレーション上の問題が山積していること、人員確保の点でも容易でないこと」
また海外派遣には「海賊船対処」などの問題もあるとして新規導入よりも既存の艦船(民間船・自衛艦など)に医療モジュールを搭載するなどで対応することがいいのではないか。と纏めています。

個人的には「病院船」は海外派遣時に派遣先の国に着岸して医療行為をするということは、世界への貢献のみならず、相手国への相当なアピールに繋がり日本の地位を高める一助になると思うのですが。報告書ではそのあたりにはあまり触れておらず、もっぱら内向きな事情が語られています。「島国根性まるだし官僚の報告書」で世界を見ていないと断罪したいくらいです。

お金の問題だけに絞って考えると、建造費は最大で350億円、年間維持費は最大20億円(一隻あたり)と見積もっています。

 

防衛費について考えてたら・・・

普段は可能な限り「論理的」に書いているつもりですが今回は思いつくままに書こうと思います。

 

北の委員長は国民を虐げたり身内でも殺害するし、核は保有し「落とすぞ!」と恫喝するし、決していい奴ではないぞ。最近なんだか「あれ?想像と違うぞ?」となっているけど、いつも言うように、それは「映画版・ジャイアン理論」だから。日本の地方の県くらいのGDPなのにその大半を軍事に使えばそりゃ国民は飢えるぞ。

 

おそロシアでは政権批判したジャーナリストは消されるし、もう50人くらいかもっと多いかも。周辺国が気になるのはわかるけど、シリアやウクライナでも傍若無人ぶりを発揮したのに「なにもやってない」って知らんぷりするし、本心は北方領土は返す気無しなのに経済交流はしたいとかどの口が言うのかね。昔の話を持ち出すけど、占領時に民間人を多数虐殺したり、満州侵攻時には捕虜をシベリアで強制労働させ多数死亡させたし。一応かっこだけでも選挙して大統領を選ぶだけマシなのか?

 

五星紅旗の国では反体制派は「汚職」を名目に死刑になったり、人権派弁護士は投獄するし、天安門事件は歴史から消すし、「皇帝」になるつもりなのか任期は無期限やし、(プーチンでさえ”一応”任期あるぞ)東シナ海を勝手に自国に組み込む宣言と埋め立てと軍事基地化を堂々とするし。そもそも最初は「調査目的」とか言ってたくせに。そういや空母「遼寧」も買い取った時には「海上カジノ」にすると言う言い訳だったでしょうが。専門家は誰も信じて無かったけど。日中中間線でのガス田開発はどーなった?勝手に掘られてガスは持ち逃げ。まぁ、採算割れするんで日本が及び腰なのはわかるが、あれで日本相手にサラミスライス戦略で領土拡張が可能だと思わせてしまったわな。まぁ、「平和目的です」と嘘ついて「軍事利用」「領土拡張」が常套手段。この国の言うことを信じてる人がいるのが信じられない。

 

イアンフガ―!と五月蠅いお隣では、大統領辞めたら罪人だし、竹島は不法占拠したうえ漁民を拿捕・殺害したし、基地化していってるし、朝鮮戦争後は米軍に駐留してもらって安全担保してるのに、中国の腰ぎんちゃくだし。そのくせイージス艦保有するし、最近は原子力潜水艦を購入しようとしてるし。近海での作戦が主なくせに何に使うつもり?想像しただけでも対北朝鮮だけではないな。(まぁ半島国家の悲哀は理解せんでもないが)周りはこんな国ばっか。

 

 

その周辺を認識してるのか?と言いたくなるような野党の体たらく。如何に国家を安定させ安心安全を担保するのかをもっと議論すべきなのに。それは経済・外交・文化・そして軍事もセットでしょ。北の委員長がトランプ大統領に会ったのは、やはりアメリカは「でかい拳骨」を持ってて、「いつ振り下ろすか判らない」から。と言うのも一理あるでしょ。優秀な野党があってこそ与党が緊張感を持って政治をおこなうのだとしたら、現状では損をするのは国民。

日本にはなぜか「専守防衛」という実際は実現不可能な政治的枠組みが。現代の兵器事情や周辺国の様子を見て、「専守防衛」なんてできると思います?銃剣で突撃する時代じゃないんですよ。情報・輿論をコントロールし有利に下地を作り、いざと言うときには遥か彼方から、ミサイルが飛んでくるんですよ。レーダーの覆域圏外からね。ミサイルが落とされるまでは核か非核か区別つかないものをありますし、迎撃数を上回る数を撃たれたら被害は確実。それを撃たれるまで撃てないでは、自衛隊があまりに可哀想だ。もう安価な無人機・無人船が群れでやってきて攻撃可能な時代。数が多いし兵士の命のコストがないから、攻撃の閾値が低くなってるのに。

ハッキリ言うと一部の政治家・国民揃って「自衛隊員は死んでもいい」と思ってるとしか思えん。国民を守ってくれるのは自衛隊だが、自衛隊を守るのは国民なんですよ。国民の理解と支持によって。

 

仮想敵国がロシアであるEUですら国防費は増加傾向だったり、増加の議論もでているのに、ロシアのGDPの10倍以上のGDPを持ち、戦略的に有利な広大な国土を持つ中国や、独断でなんでも実行可能な北朝鮮、西組か東組か判らない韓国が背後にある日本が防衛費GDP比1%なんて三木内閣(1976)の決めた枠組みという昔話に執着して、中曽根内閣(1986)の時に撤廃したはずなのに、いまだに捉われつづける自民党がバカじゃないだろうか。しっかり議論し国民に説明し理解を得る努力を十分してますか?

 

安全保障の費用は環境によって変わるのが普通に考えても判る。そして国家の資産や資本力に応じて費用は増減すべき。

ただし、安全になれば大胆に削減できるかといえばそうはいかないのが防衛費。防衛に関わる装備や人員、練度すべて時間がかかるので、いざ桶狭間!になってからすぐに揃えられない。一旦増やすと減らしにくい。

だから増減も質や種類も熟慮すべきなんだが、「シビリアンコントロール」と言う言葉が好きな野党議員の熱い議論は聞いたことが無い。自民党はまだましで、政務調査会・国防部会などでちょっとくらいは議論し提言している。アメリカの会計検査院なんて、装備の中身までグイグイくる。無駄遣いをしっかりチェックしてる。その結果、最強ステルス戦闘機F-22、海中無双のシーウルフ級潜水艦でさえ、計画途中で調達中止させられたし。これこそ「シビリアンコントロール」の一例で、某議員に暴言を吐いたとされる「自衛隊士官」を恫喝することではないでしょ。

 

自動車保険だって初心者の時から40歳代が安くなり、高齢者は高い。事故リスクに応じて保険料も変わる。それにクルマの価格に応じて車両保険も変わるでしょ。

GDP3位の日本はどう見ても「お金持ち」にあたる。(個人レベルの実感の有無の話なんてしていない)高い技術も行き届いたインフラもある。(細かい重箱の隅をつつくような批判する人もいるけど)でもその国の周りには冒頭で書いたような国がある。防衛費はその観点からこそ議論すべき。1%云々なんて「率」に捉われてる時代はもう終わりにしましょうよ。

そして装備は適切か、外交によって補完できる部分はないのか、緊張緩和の為にできる文化交流などはできないか、米軍との関係はどうすすめるのか、不埒ものには力の外交をする決意を固められるのか、その為に憲法・法律はどうあるべきか、国論を二分するような大議論をしてこそ先進国でしょうに。

戦争での死者の数は戦争の抑止に繋がっていない。第二次世界大戦で日本は310万柱を数えたが、ソ連は2000万人なのだ。でも戦争・紛争をやめていない。残念ながら人命は暴力の抑止力として働かないのだ。どの国にも個人的には良い人っていっぱいいるでしょうけどね。

 

「米軍でていけー!」と叫んだり「日本最強!」と根拠のない夢想してる暇があるなら、四方を海に囲まれ四季美しいこの国を、どうやって誇り高く子孫に残していくのかをこそ私は描きたい。

 

あーちょっとスッキリした。

見て欲しいですね。

海上自衛隊の動画です。(海上自衛隊公式広報ビデオ2018/5/24公開)

30分以上ある長いムービーですが、海上自衛隊の任務が紹介されています。

しかし、本当はもっと多くの職種があり、海に出るだけじゃないんですけどね。

このムービーを全編ちゃんと見てそれでも自衛隊違憲だ!と言う人はどうかしてる。

 

www.youtube.com

 

トム・ハンクス主演の映画で「キャプテン・フィリップス」(2013年・134分)という映画があります。ソマリアの海賊にシージャックされたコンテナ船と船長、人質となった船長と米海軍との駆け引き。

無法な暴力には圧倒的で法に則った武力で毅然と対応する姿が描かれています。

 

陸海空自衛隊はこのソマリア沖・アデン湾における海賊対処にも派遣されています。

CTF151(多国籍部隊・第151合同任務部隊)の司令官は2015年より自衛隊が担っています。

海賊対処・民間船護衛・漂流者救助など任務は多岐にわたっており、一時は年間千名以上もの海賊による民間船乗り組み員の拘束がありましたが、2014~2016年は0名、2017年は39名と激減しています。

直接感じるものでは無いかもしれませんが、国民の安全をこうして守ってくれています。

原子力潜水艦がいいな・・・(1)

以前にも書いたのですが、私は「空母保有」については基本的に反対です。

それよりも・基地の抗堪性強化・早期警戒機の増勢・潜水艦戦力の増勢が優先であろうと考えています。そのうえで原子力潜水艦の配備が最も効果的であると考えていますが、我が国では空母保有以上にハードルが高いですね・・・

 

今回はなぜ原子力潜水艦(以下:原潜)が効果的であるかを考える前に、まずは現状を整理します。

・日米同盟下での海上自衛隊の基本的役割とは

  a シーレーン海上交通路)の安全確保

  b 有事の際の米軍来援基盤の維持

つまりはこの2点であり、その為の防衛力整備に注力してきました。確かに軍事組織であるが故の自己完結性を活用して災害派遣に、機動力を活かして離島からの急患輸送、軍隊であるが故の南極への輸送任務や流氷観測などの任務も実施していますが、あくまで主任務は上記2点であり、他国の領域への軍事侵攻や侵略、威嚇などは行いませんしその能力もありません。

四海に囲まれ、資源の輸入も製品輸出もすべて海を超えなければならない日本は間違いなく「海洋立国」であり、アルフレッド・セイヤ―・マハン(1840-1914・米海軍・戦略家)が提唱した「シーパワー」が必要な国であり、地政学の基礎となった、マッキンダー(1861-1947・英地理学者)は、日本をシーパワー大国とみなしていました。

資源確保は国家運営の基礎であり、安全保障上最重要項目と言えます。

先の大戦では日本が資源獲得の為におこなった南部仏印(フランス領インドシナ)への進駐は米英の経済制裁(対日石油輸出禁止など)に繋がり、日本国内の早期開戦論に勢いを与えたことで戦争回避が不可能な状態へと進みました。

資源の多くが通過するシーレーンとは海上交通路と訳されますが、ある国家にとって経済・軍事面で極めて重要なルートのことです。

日本の生命維持にとって重要な原油を運ぶシーレーンは、ホルムズ海峡を出てアラビア海を通りマラッカ海峡ロンボク海峡(これらをチョークポイントと呼びます)などを通過、南シナ海を経て日本へやってきます。石油などのエネルギーは生命線であり、これを干しあげられるとどうにもなりません。特にチョークポイントを抑えられるとどうにもなりません。

つまりシーレーンの確保は国家の安全保障上、最重要と言えます。

 

海洋国たらんとする中国の意図

中国は貿易など経済面でも日本とは深いつながりがあります。また、日本には本国以外では最大の戦力を置いている在日米軍があります。正面からの武力による侵攻や威嚇は日米中での全面戦争の引き金にもなりかねず、自国にも大きな損失を与えることになります。偶発的な事態から戦争に発展すること(エスカレーション)を避けるための連絡メカニズムなどの構築もされており、大国間での全面戦争はまず起こりません。マスコミや一部の人の危機を煽るような論調には同意しかねます。

しかし、中華思想と言われるように中国は世界の中心であろうとしているのは多くの事例から認めざるを得ないですし、中国にとっての安全保障観からすれば、アメリカと太平洋の出口である日本が邪魔で仕方がありません。

長期間をかけて南シナ海を自国の保護海域とし、アフリカ諸国などの小国を中華マネーでコントロールし、米海軍を自国沿岸から遠ざける装備体形を整えてきました。

また、2003年中国中央軍事委員会において採択された「三戦(輿論戦、心理戦、法律戦)を駆使してきました。

もし、我が国の尖閣諸島で武力紛争が発生し、日本が自衛権を発動した時、中華マネー(旅行者や投資など)を日本から撤退させるでしょう。それは一部の日本国民・企業が反発するでしょう。そうなれば領土(例えば尖閣)を放棄して中国と和解する政治家も多く出るでしょうし、政府も妥協するかもしれません。

これはハーバード大教授ジョセフ・ナイ(1937-)が提唱する「ソフトパワー」の行使の二段階モデルと言われるものに相当しています。つまり相手国の国民等への働きかけなどにより、エリートの決定に間接的に影響を与えようとしています。現代ではSNSやメディアを通じてのプロパガンダフェイクニュースも活用しています。シリア問題に対するロシアが好例ではないでしょうか。

あとはアメリカを追い出す(もしくは遠ざける)だけです。

その為に、南シナ海戦略原潜の聖域とし、新型中距離弾道ミサイル(DF-26・射程4000km核非核両用)を配備し、沖縄の在日米軍やグアムの米軍にプレッシャーをかけています。第一撃を避けつつ反撃を期するには米軍はグアムより遠方に遠ざける必要がありますし、そうなれば東シナ海での軍事行動がやりやすくなります。日米は軍事同盟の最重要課題である「即応性」が失われることになります。軍事同盟は「即応性」「双務性」がなければ成立(信用)できません。

米軍を追い出すには日本国内の反米感情を高める必要もあります。基地問題に乗じる手もありますし、オスプレイを取り上げる方法、SNSでローカルな事件事故を拡散する方法、一見エビデンスがあるようなデータを列挙し不安をあおる方法・・・あの手この手を使います。軍隊と言うのは相手国の信用や良好な関係がなければ駐留しにくいものです。

世界中でパワーバランスや安全保障環境が30年前とは大きく変わっています。日本は独自の安全保障観とドクトリン(基本原則)や法整備と防衛力整備を急がなければなりません。

==次回につづく==

 

現代の空母事情

さらに今回も空母ネタです。

海上自衛隊ヘリ空母「DDH183-いずも」の空母化(F-35Bの搭載)から始まった空母ネタ。前回は先の大戦時において日本帝国海軍が空母大国だったことを書きました。では現状の世界の空母保有状況はどうなのでしょうか。

==アメリカ==

アメリカ合衆国海軍】

空母の最大保有数、展開能力ともアメリカはダントツです。11隻保有しており全て原子力推進空母です。(「ニミッツ級」10隻と最新型の「フォード級」1隻)

ニミッツ級は1番艦「ニミッツ」が1975年就役、その後順次建造がおこなわれ、10番艦の「ジョージ・H・W・ブッシュ」は2009年就役と長い間作られてきました。横須賀を母港とする「ロナルド・レーガン」は9番艦です。

建造中に技術の進歩と共に少しずつ異なりますが、基本は同じで各艦70~90機を搭載しています。搭載機は多種に及び、戦闘攻撃機、警戒機、ヘリコプターなどです。

今後の旧型の退役に伴い新型の「フォード級」が3~4年ごとに就役し11隻体制(若しくは12隻)は維持するようです。新型のフォード級排水量およそ10万トン、原子炉の炉心寿命が50年となり退役まで運用可能、電磁カタパルトという新型のカタパルトを装備しています。建造費は1隻だけでも1兆円を大きく超えています。他にも強襲揚陸艦保有し固定翼機を運用しています。

==中国==

人民解放軍 海軍】

中国は過去に幾つかの退役空母を他国から購入し調査して学んできました。そしてウクライナから入手した「ワリヤーグ」を改修し遼寧(りょうねい)として保有(練習空母的存在)しています。現在は国産の通常動力型空母001A型と002型を建造しています。その後も10万トンクラスの大型空母建造を計画しており、今度の動向が注目されます。中国は外洋海軍(ブルーウォーターネイビー)を目指しています。外洋海軍とは世界各地へ遠征し軍事力を行使でき、洋上補給などの手段を用いて長期間継続して展開できる海軍です。アメリカ、イギリス、フランスは能力を保有しており、海上自衛隊もその範疇に含まれます。(ただし、海自は展開し対潜哨戒、シーレーン防衛はできても、敵地を攻撃するような能力は保有していない。)

==イギリス==

ロイヤルネイビー王立海軍)】

イギリスは昨年新型の空母を就役させました。「クィーン・エリザベス」です。2番艦が「プリンス・オブ・ウェールズ」(建造中)でどちらもF-35Bを搭載する予定にしています。以前、雑誌で艦内の様子を見た事がありますが、やはり「イングランドっぽい」印象でした。軽空母も運用していましたが全て退役済みです。

==インド==

中国の脅威を感じているインド海軍は急速に数・質とも増勢してきています。かつてはイギリスの中古の空母を購入し運用していましたが退役。ロシアから購入した空母「ヴィクラマディチャ」、建造中の国産空母「ヴィクラント」、計画中の「ヴィシャール」があります。「ヴィシャール」はアメリカの技術供与によって電磁カタパルト装備となる予定です。

==フランス==

アメリカ以外では唯一の原子力空母「シャルル・ドゴール」を運用しています。回転翼機搭載の強襲揚陸艦ミストラル」級3隻とともに任務に就いています。空母は少ないですが原子力潜水艦は沢山持ってます。

==イタリア==

空母「カブール」を保有。他用途に使えるように建造され揚陸任務、輸送、病院船などの機能盛り沢山なフネです。イタリア海軍ってイメージあまり無いですね。

==ロシア==

「アドミラル・グズネツォフ」のみ保有。艦齢が高いため近代化改修を施しているとみられますが、最近までシリアへの空爆を実施しています。大型の原子力空母建造計画はありましたが、政権の意向によって中止されたと報じられています。

 

他、タイやブラジルも保有したり計画していたりしますが、どちらも低調ですね。やはり高額な建造費と搭載機とその維持費に苦しんでいるようです。

スペインやオーストラリアでは強襲揚陸艦(軽空母)を運用していますが。オーストラリアは固定翼機を載せず、スペインは「ハリアーⅡ」を搭載(今後F-35Bに)しています。

 アメリカ、中国以外は建造費・維持費に苦しんでいます。計画はしても財政上の理由から中止になった艦も多くあります。日本が検討しているのは「強襲揚陸艦」クラスの中型空母ですが、それでもそれなりに高額になるのは間違いありません。空母保有となれば護衛する艦や補給艦も必要です。ミサイル防衛も進めなくてはならない状況で空母保有は難しいのではと思うのですが、3月20日自民党の安全保障調査会は次期「防衛計画の大綱」に空母保有を提言することを決めました。新造か改修どちらかは決まってはいないですが、前々回(3/13)に書いた問題点はどう解決するんでしょうか。

ただ、「日本が空母保有を検討」という情報を流すことは、中国の海洋進出の脅威を訴える効果はあるでしょうし、対中国を考えると「日本を刺激すれば防衛の為に空母保有しますよ。いいんですか?」というアピールには繋がります。

 

帝国海軍は空母大国

前回、先の戦争開戦時にはすでに日本は空母大国だったと書きましたが、どのようなものだったのかを振り返ってみようと思います。

当時はまだ戦艦が海戦の主役と考えられてはいましたが、空母による航空攻撃こそ重要であると、海軍の山本五十六(いそろく)や井上成美(しげよし)は考えていました。

早い段階で空母の研究をすすめ開戦時には高い技量で世界一といえるものになっていました。

開戦後にも空母は造られていきましたが、資材不足などもあり計画通りには進んでいませんし、商船や他の艦種から改装や変更をおこなって空母にしたものも多くあります。

また、小型の空母は艦隊護衛や哨戒任務、航空機輸送などの任務が主でした。

対するアメリカは開戦時には空母戦力では日本に劣るものの、巨大な工業力を背景に一気に増産をおこない、小型空母(護衛空母と呼称)に至っては毎週末にどこかの造船所で進水していると言われるほど圧倒的でした。

今回はその空母たちの一部概要を見てみようと思います。但し最初から空母として建造されたものと戦艦や商船からの改造などもありますが、区分しないでおきます。

数字は(竣工年/基準排水量トン/全長m/搭載機数)の順。数字はおよそで表記。搭載機数は補用(予備)は含まず。()内は戦没・沈没した場所。なお、資料によっては数字が異なるものもあります。

==第一航空戦隊==

赤城(あかぎ)昭和2年 36,500トン 250m 66機(ミッドウェー海戦

加賀(かが)昭和3年 26,900トン 238m 60機(ミッドウェー海戦

==第二航空戦隊==

蒼龍(そうりゅう)昭和12年 15,900トン 227m 57機(ミッドウェー海戦

飛龍(ひりゅう)昭和14年 17,300トン 227m 57機(ミッドウェー海戦

==第三航空戦隊==

鳳翔(ほうしょう)大正12年 7,500トン 180m 15機(戦後復員船、その後解体)

瑞鳳(ずいほう)昭和15年 11,000トン 205m 27機(レイテ沖海戦

==第四航空戦隊==

龍驤(りゅうじょう)昭和8年 8,000トン 180m 36機(第2次ソロモン海戦

祥鳳(しょうほう)昭和17年 11,000トン 205m 23機(珊瑚海海戦)

==第五航空戦隊==(のち、第一航空戦隊)

翔鶴(しょうかく)昭和16年 26,000トン 257m 72機(マリアナ沖海戦)

瑞鶴(ずいかく)昭和16年 26,000トン 257m 72機(マリアナ沖海戦)

 

==そのほかにも==

大鳳(たいほう)昭和19年 29,300トン 260m 52機(マリアナ沖海戦)

信濃(しなの)昭和19年 62,000トン 266m (回航中に沈没)

雲龍・天城・葛城(うんりゅう・あまぎ・かつらぎ) 昭和19年 17,500トン 227m 57機(東シナ海・呉湾外・除籍後復員船)

 他にも商船・客船から改装された小型の空母が多数あります。

飛鷹(ひよう)隼鷹(じゅんよう)大鷹(たいよう)雲鷹(うんよう)沖鷹(ちゅうよう)神鷹(しんよう)海鷹(かいよう)千歳(ちとせ)千代田(ちよだ)などなど。 

変り種は「信濃」でしょうか。大和型戦艦の3番艦として設計変更され、竣工10日後に横須賀から呉に回航中に魚雷攻撃で沈みます。あっけない最後でした。

その他もほとんどが沈没しています。敵に見つかれば真っ先に狙われるのは空母なうえ、飛行甲板は無防備、艦体の装甲も比較的脆弱。勿論対空機銃などは装備されていますが、さほど命中するものではありません。また艦内には航空機用燃料、弾薬などが大量に搭載されていますので火災が起きれば誘爆してしまいます。

しかし、世界初の空母撃沈は日本の第一、第二、第五航空戦隊が撃沈したイギリス海軍の空母「ハーミス」ですし、空母による大規模な航空攻撃を実施したのも日本が最初です。

対してアメリカは120隻近くが戦中に建造されています。(開戦前は8隻)

当然、パイロット育成も飛行機生産も桁違い。海軍左派が開戦に反対したのはこの事を分かっていたからですね。

しかし、開戦劈頭日本海軍の空母艦隊は無敵といえるものでした。その思いがあるのかどうかは分かりませんが、海上自衛隊に空母を!と言う声は昔からあり、今回の「いずも」空母化計画はどうなるのでしょうか。

個人的には問題が多すぎて実現不可能だと思いますが。