海洋立国論

勉強のつもりで書いています。

オスプレイの事故について

沖縄でオスプレイが事故を起こしました。この件について情報が各所から出てきましたのでまずは墜落か不時着水かを整理してみましょう。

このネタはデリケートな部分を含んでいるので扱うかどうか迷いました。あくまで推測の域をでませんので。
しかし、まずは乗員の皆さんが無事であった事を喜びましょう。一部の方々の嫌う「軍人」ですが、同じ「人間」です。敵であろうと何だろうと「命」は同じですしね。
しかしその事と事故原因の解明、対策などは別問題です。

事故の発端はKC-130空中給油機(自衛隊保有)から、飛行中(飛行モード)に空中給油の訓練中にKC-130からのドローグ(給油ホース)がオスプレイのローター(プロペラ)に接触、損傷したことがきっかけですが、訓練空域から着水場所までは30kmほど離れており、その地点まで飛行している。制御でき
ているからこそ、そこまで飛べたのではないかと思います。

着水場所も絶妙ではないでしょうか。沿岸部で脱出して海を泳ぐことも少しで済むし、陸地に近づくと樹木などとの接触も怖い。火災のリスクも抑えられる。そこでギリギリの沿岸部を選択。かなりの制御が効いていたと思えます。

着水地点は干潮時のサンゴの上のようですが、墜落なら機体はバラバラになるはず。
オスプレイは胴体中央部分以外は、軽量化のために強化繊維プラスチックでできています。このため壊れやすいのですが、それでも事故直後の写真ではある程度原型を留めています。
だからこその「乗員が無事」だったのでしょう。

その後の映像ではバラバラになっていますが、翼の付け根だったり接合部だったりで大きな部品ごとで分かれています。その後に潮が満ちて波に打ち付けられ・・・接合部などの強度の低い部分から壊れていったと推測します。

着水時にはローターは回転していたはずです。着水後に波や不安定なサンゴなどで、機体が傾斜し回転しているローターがサンゴや岩場を叩き、その衝撃で主翼などは破壊されたと考えるのが自然ではないでしょうか。
この点はパイロットの誤算だったのではないかと思います。水深の浅い沿岸部で海底が砂地ならもっと衝撃は少なかったでしょう。夜間でしたので、水面下がはっきり視認できなっかった可能性があります。

左右にあるエンジンはそれぞれ連結され同調して動くようになっているので、一方にトラブルが生じても簡単には墜落しないはずです。ただ揚力などは当然激減するので、飛行能力はあまり無いでしょうが、直ぐに墜落するような状態にならないように作られています。

この点で言えば、ヘリコプターより安全。ヘリコプターならローターが壊れれば即墜落ですし、オートローテーションのような芸当ができるのも中型ヘリまで。

飛行能力が激減した状態では軽量化を先に行うでしょう。
ある程度給油しており燃料が沢山あったのなら、不要な量は空中投棄しています。
その為、写真では着水地点にはあまり燃料漏れの痕跡が認められません。
また、「着水」だったので衝撃が少なく、燃料タンクなどが壊れずに済んだのかも知れませんね。

以上のことから、墜落ではなく不時着水であり、着水地点も考慮された場所と考えます。
また、公式発表通り「機体の異常」ではありません。明らかに訓練中の事故です。

KC-130かオスプレイかどちらかが(若しくはどちらも)人的ミス・整備ミス・想定外の機体の動きなどいくつも原因があるでしょう。しっかりと対策を打って欲しいと願います。事故は危険で残念ですがこのような過程を経て安全性は高くなるものですから。

(2016.12.26)

中国軍用機と妨害弾

12月10日 中国軍用機が宮古海峡上空を飛行しました。防衛省資料によると、中国国防部は「中国空軍航空機が、宮古海峡空域を経て西太平洋における定例の遠海訓練に赴いたところ、日本自衛隊が2機のF-15戦闘機を出動させ、中国側航空機に対し、近距離での妨害を行うとともに妨害弾を発射し中国側航空機と人員の安全を脅かした」と発表しています。

この事案からいくつか考察してみたいと思います。

まず飛行ルートですが、防衛省の資料を画像としてアップしましたのでご覧ください。

沖縄本島宮古島の間を飛行しています。
ここは「防空識別圏ADIZ)」であって領空ではありません。ADIZは各国が独自に設定している空域であり領空に近づく航空機を判別する範囲を明示したものです。
この空域を飛行すること自体は基本的には問題はありませんが、通常はこのADIZを飛行する場合には偶発的な事態を避けるため、事前に通告(飛行計画の提出)がおこなわれるものです。

自衛隊は24時間体制でレーダーなどによる監視を行っており、この通告が無い場合は、識別を求めたり場合によってはスクランブル(自衛隊の場合はF-15戦闘機による緊急発進をおこないます)を判断します。
そして識別を行います。領空侵犯に対しては自衛隊法に基づき「領空侵犯処置」をおこなうこととされています。

中国の目的は一体なんでしょうか。通告無く頻繁にADIZを飛行しスクランブルを誘発させ緊張を高める行為の必要性はなんなのでしょうか。

今回飛行したのは、Su-30戦闘機2機 H-6爆撃機2機 TU-154情報収集機1機 Y-8情報収集機1機です。

最大の目的は情報収集です。現代は電波の戦いです。
情報収集機によってレーダー能力や周波数、通信情報、などの情報を収集したと考えられます。
またH-6爆撃機と護衛のSu-30戦闘機の組み合わせは、威嚇・示威行為であり沖縄などへの攻撃訓練の意味もあるかもしれません。両機は長大な航続距離を持ち(Su-30は3,000km、H-6は6,000km)空中給油しなくても沖縄は攻撃範囲に含まれます。

当日は沖縄で「航空祭」が開催されていました。航空自衛隊那覇基地は、官民共用空港(那覇空港)であり、民間人の多数集まっている状況での対応能力がどのくらいあるのかを見極めるつもりでもあったでしょう。

さて、今回相手国の発表によると自衛隊機(F-15J)が妨害弾を発射したとのこと。これはどういう意味でしょうか。

妨害弾というのはおそらく「フレアー」かと思われます。
防衛省の発表では「本件に関し対領空侵犯措置を実施したF-15戦闘機は、中国軍用機の状況の確認及び行動の監視を国際法及び自衛隊法に基づく厳格な手続きに従って行ったところであり、中国軍用機に対し、近距離で妨害を行った事実はなく、妨害弾を発射し中国軍用機とその人員の安全を脅かしたという事実も一切ありません。 」となっています。

つまり「近距離ではなく人員の安全を脅かしてはいない」が、「遠距離で人員に危害を加えない程度の妨害弾は発射している」とも解釈できます。

そもそも「フレアー」とは赤外線探知ミサイル(ジェット機の熱を追尾)に追尾された場合に、ミサイルのシーカー(いわゆる赤外線センサー)を欺瞞するため発射する物体です。
発射後すぐに高温で燃焼しますがすぐに消えてしまいます。
目の前で発射したなら兎も角、攻撃兵器ではないため危険はありません。

自衛隊機が発射したのはもしかしたら、Su-30などによる「ロックオン」があり、F-15の自己防衛装置がレーダー電波を逆探知、レーダー追尾ミサイルなら回避機動しますが、赤外線ミサイルの場合はレーダー電波を出さない為探知できず、パイロットが予防的にフレア―を発射したとも考えられます。しかし実際に撃たれていたら「撃墜」されることはほぼ確実です。

ミサイルは年々性能が向上し「先手」を取らない場合はまず撃墜されることになります。自衛隊は「先制攻撃」を行わないと値踏みされていますので、相手のされるがままとなります。日々警戒に当たっていただいている隊員の皆様のことを思うと胸を締め付けられる思いです。

中国側からするとこんなシナリオも描いていたかもしれません。「ロックオンで自衛隊機がミサイル攻撃されたと解釈し、反撃のつもりでパイロットが慌てて攻撃する。それを理由に国際社会へ日本の不当性を訴え、この地域を係争地にして紛争・軍事衝突に持ち込む。
オバマ大統領は弱腰であるうえ、トランプ次期大統領は日本の味方をせず、自主防衛すべきとの姿勢をとって静観を決め込む。そうすれば日米安保発動は無く、中国有利にコトがすすむ」ま、さすがに中国はこのシナリオには、ほとんど期待していないでしょうが。

戦争の火種はこのような小さなものや偶発的な衝突から始まるものです。「サラエボ事件(WWⅠ)盧溝橋事件(WWⅡ)義和団事件日露戦争)など、最初は規模の小さなものから始まっています。

このような事態を防ぐため、政府間で交渉中の日中間海空連絡メカニズムの構築が急がれますが、かなり難航(ほぼ停滞)しています。理由は「南シナ海問題で(日本が)根拠のない攻撃を繰り広げていることが悪影響を与えている 」と中国は言っていますが・・・どの口が言うのか・・・

このような現状の中、交戦権の放棄ははたして我が国、国民の安全に寄与しているのかどうなのか。しっかりと見極めねばなりません。

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護衛艦の推進方式

護衛艦とはひとつの分類です。

自衛隊の運用するフネ全般は「自衛艦」と呼び、そのうちの戦闘に従事するものを「警備艦」、さらにそのうちの護衛艦と潜水艦を「機動艦艇」と呼びます。これら艦艇は夫々に適した推進方式を採用していますが、今回は護衛艦の推進方式を軽く解説します。

推進方式といってもそれほど難しくはありません。

近年の護衛艦ガスタービンエンジンを採用しています。
これと電動機を組み合わせていたりしますが、その組み合わせ方や駆動方式によっていくつかのタイプに分かれます。

推進方式をざっとおさらいすると、風(帆船)、蒸気機関、ディーゼル原子力、そしてガスタービン電気推進 などがあります。

近年の戦闘艦艇が主に採用している、ガスタービンエンジンは、小型・軽量で出力の上昇は早いのですが、ディーゼルなどに比べて燃費が悪く大量の空気を必要とします。

このことは大きな燃料タンクや空気ダクトが必要となりますが、小型・軽量のエンジンは小部屋に収められており振動や騒音を外部に少しでも漏らさないようにしています。勿論、ご近所に配慮している訳では無く「潜水艦」を意識しているのです。

主機(主力とするエンジンなど)は、その組み合わせ方などでいくつかのバリエーションがありますが、海上自衛隊護衛艦が主に採用しているのは、COGAGという形式のものです。

これはガスタービンエンジンを複数組み合わせたもので、組み合わせるエンジンは同種、もしくは異種のものです。巡航時や低速時には低速用(もしくは一部のみ)だけを駆動し、高速時には高速用(もしくは全機)駆動させることで、巡航時の燃費を稼ぎつつ高速時の機動性も確保する目的があります。同種のエンジンを採用している場合はメンテナンスも容易ですので、戦闘艦艇にはぴったりかもしれません。

また、近年は電装品が非常に多く、膨大な電力を必要とします。このため推進用とは別にガスタービンエンジンを複数搭載しています。
その出力は膨大で、大型艦ならおよそ10,000KWほど。先日「DDH-182いせ」の一般公開時に副長が「小さな町なら賄えますが、フル運転するとすぐに燃料が無くなります」と言っていました。

また、先ごろ(2016.10.19)に命名進水式を終えた、汎用護衛艦「あさひ」(DD-119)は、COGLAGという形式を採用しています。これ流行のハイブリッドです(笑)

低速時・巡航時にはガスタービンエンジンの発電する電力で電動機(モーター)を動かして推進させ、高速時には休止しているガスタービンエンジンも動かしてその機械駆動も併用して推進力を得る方式です。
これは少し機構が複雑になるものの、燃費が優れるとされています。

採用するのは本級(あさひ型)が初めてですが、これは本級が「対潜水艦」任務を主としているためでしょう。
低速~巡航時に曳航式ソナーなどでの潜水艦の探知をしているときには電気推進なため静粛性の向上が期待されます。
結果として探知精度の向上が見込まれます。用途に応じた推進方式を採用しているのですね。

この推進方式は他の護衛艦にはまだ採用されていません。今後どうなるでしょうか。

ガスタービンエンジン・・・大量の空気を取りこみ圧縮機で圧縮、そこに燃料を噴射し燃焼。高温高圧になったガスがタービンを回転させます。回転軸(出力軸)から回転エネルギーを取りだし、回転運動に使うか、発電機を回すかします。回転エネルギーの代わりにガスの噴射を使うとジェットエンジン

(写真出典:海上自衛隊HPより)

ガス田開発と尖閣諸島

アメリカの大統領選挙で盛り上がってたので、すっかり影に隠れていましたが、東シナ海日中中間線付近で中国がガス田開発をさらに活発にしています。
一部報道もありましたし、官房長官の記者会見でも取り上げられていました。

中国のガス田開発の狙いはなんでしょう?エネルギ―確保でしょうか。
もし十分に埋蔵量があって生産コストが低ければそれが主目的だと思えますし、我が国も積極的に開発すべきではないかとも思います。石油もあるとの調査結果もあります。

しかし、我が国は「共同開発」との合意をしつつも、積極的にはガス田の開発は行っていません。
ガスはプラントで液化しタンカーで輸送する、もしくはパイプラインで運ぶことになりますが、プラント上での液化は高価な設備になりますし、パイプラインは途中の「沖縄トラフ」が問題です。

国の調査によると埋蔵量がそれほどでも無いこともあり、取り合うほどのエネルギーでは無いとの判断でしょう。
しかし、後述しますがこれは間違いで係争地であればこそあらゆる権利主張のためにはそれなりの活動はしなければなりません。

対して中国はかなりのコストをかけてプラント建設をおこなっています。日本と同様にコスト高のガスになるかもしれないのに。

この東シナ海でのガス田開発ですが、いわゆる「日中中間線」でせめぎ合っています。

海底資源もいわゆるEEZ排他的経済水域)によってどこまで使えるかは決まっていますが、これは実は結構いい加減な決め事です。

国連海洋法条約(UNCLOS)の締結国はこれに従い、自国のEEZを確定させるのですが、揉めにもめて妥協の産物みたいな一面もあるのでグレーゾーンが多い条約です。

おさらいすると基本は、沿岸から200カイリ。
関係国の沿岸からそれぞれ200カイリ以下しか海がない時は、その中間をとる(中間線論)。
もしくは大陸棚が延びていたら最大350カイリまで(大陸棚自然延長論)。

問題はこのどちらでも解釈できる場合にどうするかが明文化されておらず、関係国の協議で決着しない場合は、国際司法裁判所の裁定に従うことになります。
しかし裁定と言っても強制力が無く、提訴そのものも係争国同士が提訴に合意しなければなりません。

南シナ海で中国が無視したのは「仲裁裁判所」であり、この「国際司法裁判所」とは異なり、一方の(今回はフィリピン)提訴で手続きが進められます。
この件は中国が「自衛権」「安全保障」「エネルギー政策」を絡めており、今後新たな展開があるでしょう。裁定を無視した例は他の先進国でもあるので、中国だけが「無法」とは言えないかもしれません。

例えば「IMF」に対して「AIIB」を作ったように、アジアでのアジア版国際司法機関を作り、自国有利な裁定を出すなど。そうして正当性を保とうとします。

また強引な現状変更をしておくことで、後の交渉により相手に多少譲ったとしても、中国としてはプラスです。
フィリピンやインドネシアなど相手国は軍事的、経済的にも弱小であり、飲まざるを得ない条件になるでしょう。
中国にとっては、プロスペクト理論でいうところの参照点の移動が達成されるのです。次の一手もこの変更後の参照点から打てるので有利です。

そして東シナ海はまさに同じような係争地です。ガス田付近では日本は「中間線論」中国は「大陸棚自然延長論」を主張しています。

問題はコスト高にも関わらずなぜ中国がガス田開発に積極的であり、「大陸棚自然延長論」を主張し、問題解決のために国際司法裁判所(ICJ)に持ち込むことに同意しないのかです。

ガス田の埋蔵量に関しては不確定な要素もあり、今後豊富なガスが見つかるかもしれないことはあり得ます(それでも採算があうのか?の疑問は大いにあります)。大型のプラントはヘリポートや対空・対水上レーダーなどを備える事で、軍事転用可能なプラットフォームとして使えます。

ICJでの裁定を拒否する理由はなんでしょうか?構造的にには沖縄トラフは「海溝」ではなく「背弧海盆」と呼ばれ、フィリピン海プレートの引きこみによりユーラシアプレートが反発して出来上がった「海の盆地」であり、「大陸棚自然延長論」には無理があります。

過去にいくつかのICJの裁定でも「中間線論」を軸にしており、中国もベトナムとはトンキン湾での係争において「中間線論」で境界を確定しています。
そうなるとますます「日中中間線論(状況によって必ずしも中間では無い)」となるのですが、そうなると「尖閣諸島」は日本のEEZ排他的経済水域)に確定されます。
不自然な主張、コスト高の開発をしてでもガス田海域は係争地(グレ―ゾーン)にしておいたほうが、後々の尖閣諸島領有には有利です。

尖閣諸島には中国の公船(軍艦ではない)の接近が常態化しており、中国はあの手この手で領有化を目指しています。 これも領域をグレーゾーン化する効果があります。世界には「係争地」として認識されます。
実効支配地域をグレーゾーンと現状変更することは、まさに「参照点の移動」です。

東シナ海のことなど、アメリカやEU各国からすれば「極東地域」のひとつの出来事。
日中間のもめ事に過ぎず、日本が中国の不当性をいくら訴えたところで、自国に不利益が生じ無い限り動く事はありません。世界中では同じような係争が常時あり、それは自国で解決する努力をするのが世界の常識です。

アメリカも中国を第一列島線に封じ込めておけるだけで十分なので、経済的な結びつきが深い中国と簡単にはコトを構えることはしないでしょう。

我が国もこの点を見据えてガス田に関しても「共同開発の合意」に基づいた活動や中国へのデータの提供などを厳しく要求すべきです。
尖閣においても海保や自衛隊のパトロールや監視などしっかりと自国領土の主張は淡々と繰り返さなければなりません。領土は1ミリとも渡さない。この決意を世界に伝え続ける必要があります。

こういうことを書くと「戦争」を想像する人がいますが単純で困ったもんです。
如何に戦争にしないように戦うかが大切です。

さて中国がなぜ「尖閣諸島」にそれほどこだわるのかは回を改めて。

※余談ですが、常設の「国際海洋法裁判所」というものがあり、「国連海洋法条約」に基づいた司法解決をはかる機関があります。そこでの分担金は日本が最大の拠出国。(約15%2億円)

※地図はGoogleマップに必要な項目を書き加えたものです。

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F-35ロールアウト

先日最新鋭の機体であるF-35の日本向けの機体の初号機がロッキードマーチン社おいてロールアウトしました。これから順次42機導入します。

ではF-35とは何か?第五世代戦闘機と呼ばれる最新鋭の機体です。
戦闘機と言う呼び方はなじみ深いのですが、このF-35は「マルチロール」機と呼ばれます。
マルチロールと言うのはあらゆる用途に使えるという事で、現在の主な機体は全てこの形式です。
F-35は米国、イギリス、トルコ、カナダ、オランダ、オーストラリア、イタリアなど多くの国が導入します。

総生産数は5000機程度と見積もられており(内半数はアメリカが運用)、その整備拠点は米国外にいくつか設置されます。
ブラックボックス化された部分が多く機密保持の観点からも整備拠点は制限されており、厳重な管理のもとで行われます。
この機体の開発には10か国が関わっていますが、日本は国内のゴタゴタもあって開発段階では関わっていません。1~4号機はアメリカで生産しますが、5号機からは愛知県小牧の三菱の工場でライセンス生産されますが、日本には先ほど述べた整備拠点がアジアで唯一設置されます。

これは何故かと言いますと、

1.「米軍」は日本をアメリカ防衛の為に重要な位置にあると認識している。

2.技術力と管理能力がアジアで随一で、兵器運用にはそれら高い技術力が必要である

3.同盟国であるが韓国は信用していない。また半島有事を想定するとリスクが高い

などでしょうか。

3についていえば、F-35は韓国も導入予定なのですが、整備に関しては「日本に出したくない」との理由で拒否し、わざわざオーストラリアまで運んで整備することになりました。
日米、米韓は同盟関係ですが、日韓は軍事協定も無いことも理由でしょうが、韓国の対日感情もあるでしょう。

因みに我が国は戦闘機として現在3機種運用しています。そのうちもっとも古いF-4戦闘機の代替とされ運用する事になります。

この次に計画されるのが現在の主力戦闘機F-15かF-2の後継機になりますが、その為の開発が防衛装備庁で進行しています。
型式をX-2(先進技術実証機・実験用の航空機で試作機とは異なる)と呼び、現在世界の主力の第5世代戦闘機の次を狙った、第6世代に分類される最新鋭の機体です。

第5世代は米国のF-22、F-35、中国ならJ-20、ロシアならPAK FAなどがあり、ステルス性能を持った機体です。

第6世代では、カウンターステルス能力(ステルス機を補足する能力)を持ち、高いネットワーク能力と分析力、強力で瞬間的な打撃力(レーザー兵器など)を備えたものです。

他国に対し数的に圧倒的劣勢を強いられている我が国が、航空優勢(昔で言う制空権)を確保するには、質でカバーするしかありません。

戦闘機の開発のハードルは普通の航空機に比べても極めて高く、膨大な開発費を必要とします。それ故、現在の主流は「国際共同開発」(同盟国で分担)なのですが、なんのノウハウも持ち合わせないとそれにすら参加できません。

そうなると不利な条件での導入を強いられます。例えば日本には不向きな装備や機能があったり、価格が高かったり。
その為の技術獲得が主目的ではないかと思いますが、三菱重工業を中心に200社以上の企業が参加し殆どの部品は国産。
とにかく技術開発は絶え間なく行わねば、数で劣る我が国はあっという間に、軍事的劣勢に立たされることになります。

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(番外編)「シン・ゴジラ」 ~ネタバレ注意~

人に勧められたことと、家内が観たいと言ったので先日「シン・ゴジラ」を観てきてんけど、まぁ映画はエンターティメントであるので、その感想としては、十分面白かった。
ゴジラの目が可愛くなっちゃったことと、昔と違いゴジラを絶対悪的な表現をしていた事が新しい点やなと。

しかしこれでは「オレ様的」解説ではないので、「オレ様的」に解説してみようではないの。

つまりは軍事的にどうなの?って事ですわ。
映画の演出意図とかは全部無視しての話。

1.ゴジラ対策に「防衛出動」は不要。
 災害派遣で対処可能です。この点については自民党石破茂議員が答えています。 また災害派遣での武器使用も過去に前例があり魚雷まで使用しています。

2.上陸し海に戻る時の対応
 映画ではあれほどの巨体が海に戻ったあとで、海上自衛隊がロストしますが、現実にはありえません。生物?なので海中を泳ぐか海底を歩きます。ソナーは確実に補足しますし、あの海水を沸騰させるほどの「熱源」は確実に探知できます。衛星でも追いかけられるんじゃね?

3.上陸作戦は愚の骨頂
 我が国は都市部が海岸沿いにあります。上陸戦は即・市街戦となり戦闘も難しく二次的な損害も大きくなります。ですから自衛隊統合幕僚監部)が立案する作戦も水際での作戦でしょう。

4.戦闘ヘリの登場
 映画ではAH-1Sコブラ AH-64Dアパッチロングボウが登場し最初に頭部への射撃を行います。コブラは20mmバルカン砲と対戦車ロケットTOWを、アパッチは30mm機関砲とヘルファイア対戦車ミサイルを使用しています。市街戦で全弾撃ち尽くしているのですが、もともと配備数が極めて少ない戦闘ヘリの打撃力は疑問符がつきます。

5.10式戦車、16式機動戦闘車の使用
 10式戦車での行進間射撃が描かれていました。これは高度な射撃で、命中させられる戦車は世界にもそうありません。でもゴジラ相手には不要ではないかと。進撃しながらとか反撃を回避する意味が無い場所での射撃だったので。ま、見ていて楽しいですが。
使用する弾はAPFSDSで貫徹力が極めて高い。これで無傷?ないない。もし無傷なら圧延鋼板1000mm相当以上の強度があることに。
16式機動戦闘車は10式の120mm滑空砲よりもはるかに火力の低い105mmライフル砲装備。必要? ま、北海道にほとんどがある90式戦車を持ってこれないとしたらアリなのか?

6.なぜ視界外攻撃をしないのか。
 直接照準で攻撃する必要などなし。相手はレーザーのような直進する兵器で攻撃している。もっと遠距離からミサイル攻撃を最初の選択とすべき。陸自海自空自ともそれぞれ射程150km程度の対艦ミサイルがある。護衛艦の艦砲でも30km以上。映画でも登場したMLRS多連装ロケットで使用するロケットでも射程40kmほど。

今回はこのへんにしとこ。 思いだしたらまた。

ミサイル防衛はここまで進化している

米海軍が2016年9月13日に発表した資料です。参考URL

http://www.navsea.navy.mil/Media/News/Article/942188/navy-conducts-first-live-fire-nifc-ca-test-with-f-35/

これによると・・・

かねてより研究を進めている「ニフカ」というシステムとステルス戦闘機F-35によるミサイル迎撃実験が成功したとのこと。

これの何が凄いのかと言いますと・・・

私がよく取り上げる兵器に「イージス戦闘システム」がありますが、このシステムの特徴は多数の目標を同時に補足追尾できるSPYレーダーです。しかしレーダーである以上、超えられない限界があります。それが水平線の向こう側です。地球は丸く、電波は直進するため、水平線の向こう側は視えません。できるだけ遠くを索敵する為にレーダーを高い位置に取りつけますが。攻撃側は水平線の向こう側(OTH/超水平線)からミサイルを発射、ミサイルはなるべく見つからないよう、またできるだけ近づけるよう海面ギリギリを飛行(シースキミングと言います)します。まして中国が開発中の超音速対艦巡航ミサイルであれば、近くまで隠れて飛行しレーダーに捕捉されても速度が速いため、防衛側は対処する時間が短くなります。これは艦船にとって非常に脅威です。中国にしてみれば現在進めているA2/D2(接近阻止・領域拒否)戦略を実現するため、できるだけ以遠で米海軍や海自を迎え撃ちたいのです。

しかしこのニフカ、この問題を解決しちゃうのです。

まず高高度に最新のE-2D早期警戒機(航空自衛隊も導入します)を複数飛ばします。

(今回は互換性の確認の為にF-35Bを使いました)

飛行機なので勿論早く移動でき遠くまで見通せます。そしてこのE-2Dが敵のミサイルを探知します。この情報は(多機能先進データリンク)を使い、見通し外にあるリンク先の地上の基地や司令部、射手であるイージス艦などの艦船へリアルタイムで転送されます。そしてCEC(共同交戦能力)なども活用して適切な射手が選定され、SM-6ミサイル(ここ大事!)を発射し迎撃します。E2-Dは探知からデータの中継機能、管制と多くの機能を果たします。

SM-6(スタンダードミサイル6)は新しいミサイルです。現在SM-2が艦対空、SM-3が弾道ミサイル迎撃用として運用されていますが、このSM-6ミサイルは新型艦対空ミサイルで、従来のSM-2ミサイルが発射母艦からの誘導が必要であったのと異なり、発射母艦以外での誘導や、所謂「撃ちっぱなし」ができるミサイルで従来より長射程となりました。

このミサイルによってイージス艦はシステムの負担が減り「同時交戦目標数」が増えることになります。発射母艦であるイージス艦には最新のイージスシステムベースライン9が搭載されています。

このシステムは「イージスシステム・ベースライン9」と「E-2D」「SM-6」の組み合わせによって従来よりも飛躍的に高い防御力を提供するものです。

このシステムは陸上、航空、海上のあらゆるものと統合運用が可能であり、米軍では各種のテストが行われています。

さて、自衛隊にも同じものがあります。イージス艦は米海軍に次いで保有数が多く、E-2Dは導入が決まり、SM-6は運用が可能なイージスシステム・ベースライン9搭載艦が建造されれば(予定あり)導入されるでしょう。

そして、次に日米で共同防衛ですね。例えば米軍のE2-Dが探知、日本のイージス艦が迎撃し、米空母打撃群を防衛するとか・・・この場合においてもやはり「集団的自衛権」の運用になりますね。